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2015年6月4日(木)

【電撃PS】『英雄伝説 空の軌跡 FC Evolution』には今後の重要なネタバレも!? 近藤社長×小金澤Dが対談!

文:電撃PlayStation

 6月11日に発売されるPS Vita用RPG『英雄伝説 空の軌跡 FC Evolution』。発売中の電撃PS Vol.591では、日本ファルコムの近藤社長とキャラアニの小金澤ディレクターの対談企画を掲載した。ここでは、誌面で載せ切れなかった対談全文を一挙公開する! 『空Evo』の注目ポイントはもちろん、『Evolution』と『軌跡』シリーズの今後についても要チェックだ!!

『電撃PS』
▲『軌跡』シリーズの原点となる『空の軌跡 FC』。『Evolution』シリーズとして、メインシナリオのフルボイス化、ゲームバランスの調整などが行われ、より遊びやすくなる形で生まれ変わる!
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▲キャラアニの小金澤力氏(写真左)と、日本ファルコムの近藤社長(写真右)。2人のキーパーソンが、『空Evo』の魅力や開発秘話を熱く語ってくれた。

■ボイス収録は制作決定の前から行われていた!?

──まず、本作の制作が決まった経緯を教えてください。

近藤季洋氏:いつぐらいでしたっけ?

小金澤力氏:制作は『英雄伝説 碧の軌跡Evolution(以下、碧Evo)』が終わったころからです。

近藤:話自体は以前からしていたんですよ。キャラアニさんもやる気満々で、日本ファルコムとしても期待しているところがあって。企画が実現したときは感激でした。

小金澤:このときのために前々から動いていましたから。例えばクローゼ役の皆口裕子さんは、数年ほど前に海外留学をされていたのですが、彼女が『碧Evo』の収録のために一時帰国された際に、本作のボイスもいっしょに収録をさせていただきました(笑)。あと、ゲーム中にオリビエ役の子安武人さんが歌う“琥珀の愛”が挿入されるのですが、こちらも先行で話をまとめてさせていただき、歌を先に収録させてもらいました。

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▲オリビエは登場シーンから存在感バツグン!

 ちなみにこの歌は、オリジナル版の『FC』ではオリビエの登場時にしか歌われなかったのですが、せっかくなのでフルコーラスをあるタイミングで聞けるようにしました。子安さんにもノリノリで歌っていただけたので、ぜひ聞いてみてください。

近藤:本当に、早い段階からいろいろ動いてもらっていました。しかし、こうなると本当に企画が決まった時期は、正確にわかりませんね(笑)。

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──制作にあたって、とくに気を使ったところは?

小金澤:オリジナルのクオリティを落とさずに作る、という前提を踏まえたうえで、何を持って『Evolution』とするか、定義付けをすることから始めました。近藤社長に企画書を持ち込む際にも「どこまで変えていいですか?」と、何度もおうかがいを立てましたよね。

近藤:そうですね。私たちとしては、ぜひ変えてほしかったんです。とくに難易度は、当時のPCユーザー向けのハードなもので、じつは一番難しいのは序章でした(笑)。しっかりオーブメントをセッティングして、所持金を計算して装備をそろえたりしないと非常に厳しいバランスだったんです。

 これは、今のコンシューマのゲームとして出すなら、絶対に見直さなければならない部分だと思っていました。戦闘システムそのものも、昔風のコマンド入力式のバトルだったので、『零Evo』や『碧Evo』でつちかった要素をフィードバックしてほしかったですね。

小金澤:『FC』はストーリー上、2人パーティで始まりますし、序盤は範囲攻撃もあまりできなくて、難しかったですね。これをどうにかするために、フィールドアタックや新規のATボーナスといった要素を入れました。

近藤:企画書をもらったとき、こちらが入れてほしいと漠然と考えていた要素はほぼ網羅されていたんですよ。ですから、内容のすり合わせはスムーズにいきましたね。あと、ボイスについてですが、本作では本当にキャラクターがよくしゃべります。クエストが終わったあとの街中の会話だったり、まだ行けない場所へ行こうとするときに挿入されるセリフまでしゃべってくれますし。

小金澤:本作では“描き下ろしキャラは全員しゃべらせる&できる限りバストアップのイラストも作る”という目標で制作しましたから。サブクエストでの会話も増え、バストアップのイラスト付きのキャラも増えました。

近藤:イラストのチェックは全部私に回ってきて、すごくたいへんでしたけどね……(涙)。

──ボイスのキャスティングはどう決めたのですか?

近藤:キャラアニさんとはドラマCDの仕事を一緒にやってきたこともあり、キャスティングはとくに問題はなかったですね。ただ、メインキャラクター以外に、以降の『軌跡』シリーズでも明らかにされていない重要人物がまぎれていることがあるんですよ。

 その際は「このキャラは●●●なのでこの人にしてください」と声優さんを指定させていただくことがありました。ボイスがついたおかげで、すごいネタバレが発覚しちゃう可能性もあって、けっこうドキドキしています(汗)。

 あと、本作には専門用語がたくさんありますよね。これらのイントネーションを声優のみなさんに正確にお伝えする必要があって、専門用語を読み上げたものを録音して収録に使ってもらうといったやりとりもありました。専門用語の読み上げも私がやっていて、これもたいへんでしたね……(笑)。

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小金澤:収録の際は台本のまとめ方など、声優のみなさんからもいろいろ要望が来るので、その対応がたいへんでしたね。「シーンごとのシチュエーションを詳しく教えてほしい」と言われたときは、私だけではわからないことも多くて(汗)。そんなときは開発スタッフに連絡して、具体的な状況を説明をしてもらうこともありました。ボイスのワード数にしても、『碧Evo』よりも多くなっており、収録はかなりの長期間におよびましたね。

■ゲームを盛り上げる新規のBGMや機能を搭載

──そのほかの追加要素についてお願いします。

小金澤:イチオシは“メッセージ履歴”ですね。本作には専門用語も多く、ボイスを聞き逃すと話がつながらなくなってしまうこともありますので、絶対につけようと思っていました。しかも、ボイス単位で再生もできます。アドベンチャーゲームなどではよくある機能ですが、RPGでは珍しいので、声優ファンの方にもうれしい機能だと思いますよ。

近藤:これは、ファルコムのスタッフもうらやましがっていました。いつか『軌跡』作品でも実装したいですね。

小金澤:あと、町で迷子になるような状況は避けたかったので、STARTボタンで出口の方向や先にあるものを表示できるようにもしています。ほかには、BGMのアレンジにも気をつかいましたね。やはり、オリジナルのBGMのファンの方も多いですから。DLCでオリジナルBGMへの切り替えができるようにしたのもそれが理由です。

近藤:BGMのアレンジは、ファルコムjdkバンドのメンバーにやってもらっていますが、かなりたいへんみたいですね。オリジナルに対する思い入れもあるし、『FC』のアレンジは『空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン』のCDですでにやってもいますからね。彼らの努力の成果である、新たなアレンジBGMも気に入ってもらえたら幸いです。

小金澤:主要キャラのイラストの一新も注目要素ですね。

近藤:『FC』の当時のイラストは、さすがに時代を感じるものですので、ぜひ新しくしたいと思っていました。とはいえ、エステルだけでも表情パターンが100を超えるんですよね。ですから「やってくれませんか」と恐る恐る提案させていただいた覚えがあります(笑)。

小金澤:エステルとヨシュアは『零Evo』や『碧Evo』にも出演し、そのときにイラストも描き起こしています。同じ『Evolution』シリーズなのに、そのときと本作でイラストに違和感があったらおかしいですからね。試行錯誤の結果、現在のデザインに落ち着きました。ちなみに最初は『零Evo』のときのエステルたちをベースに作ったのですが、すぐに日本ファルコムさんからダメ出しが来ました(汗)。

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近藤:『零Evo』は『空』の2年後の話ですからね。冒険を経て成長したあとの2人なので、もう少し幼さというか線の細さが欲しかったんです。

小金澤:とくにヨシュアのデザインには苦労しました。髪型が特徴的で、右向きと左向きで印象も違っていて。しかも彼には女装シーンもあって、ちゃんと美形に描かなければならないので、かなり難航しました。逆にすんなりチェックが通ったのはティータですね。スタッフから最初にあがってきたイラストが本当にいいデキでした。

──本作は新規のイベントCGやアニメも追加されましたが、実際に見たときの感想を教えてください。

近藤:当時の自分たちではできなかったことばかりなので、どれも新鮮でしたね。

小金澤:イベントCGを挿入するシーンは、ユーザーのみなさんからの意見などを参考に候補を上げました。そのなかから分岐があるものを除外したり、なるべく同じキャラクターがかぶらないようにしてチョイスしています。最終的に20弱と『碧Evo』以上の数のイベントCGが見られますよ。

■『軌跡』10周年を祝うにふさわしい良バランスに!

──本作の完成を迎えての感想をお願いします。

近藤:プレイしていて、全体的に違和感がないんですよね。自分たちがこだわって作り、ユーザーのみなさんにも受け入れられた『FC』の魅力を、キチンと引き継いでくれていて、うれしく思っています。

小金澤:『軌跡』シリーズを知らない人にとっては、他社さんの大作RPGがスタンダードだと思います。それで、それらのあとに『軌跡』をプレイして、不満を感じさせるようではダメだと思うんですよね。ですから、ユーザーの声を取り入れ、ほかの大作RPGに負けないようにスタッフ一堂で努力を続けました。そのかいがあってか、体験版の評価は、キャラアニのタイトルで過去最高のもので、確かな手ごたえを感じています。

近藤:『軌跡』10周年としても、本作の発売は最高のイベントだと考えています。当時を振り返ると『軌跡』は作るのに時間がかかるし、人気もまだまだでした。それを考えると、今の『軌跡』人気と本作の発売は感慨深いですね。

 今、日本ファルコムでは『軌跡』の新作や『東亰ザナドゥ』の制作で忙しく、社内で大きな物量の仕事をするのは難しい状況にありますが、キャラアニさんというパートナーを得て、『FC』をリファインして世に贈り出せるというのは、この上ないうれしさがあります。

 キャラアニさんとはドラマCDやグッズ販売などで一緒にお仕事をさせていただき、『軌跡』については一番理解してもらえている最良のパートナーです。ゲームのクオリティも、オリジナル版の製作にかかわった1人として、納得できるものに仕上がっていると思います。

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──本作で一番好きなシーンはどの部分でしょうか?

近藤:アガット対ロランス少尉ですね。アガットが相手との実力差にどうしようもなくなって吠えるシーンは、彼の青臭さが感じられて、より好きになりました。

小金澤:私は演劇シーンですね。男女逆転で演じる劇が、声がついたことでより深く理解できたというか(笑)。

──ゲームバランスの調整で注意した点は?

小金澤:ゲームをストレスなく進められるようにするのが第一でしたが、『FC』で倒すのに苦労した敵がいるじゃないですか。それを簡単に倒せてしまうバランスは、『FC』の魅力を損なう感じがするんですよ。強敵は強敵のまま、それ以外の敵とのバトルはスムーズに、というバランスに調整するのには苦労しました。

近藤:当時は難易度も選べませんでしたからね。

小金澤:難易度は4段階に設定したうえで、エンカウントを有利にできるフィールドアタックを導入したり、オリジナル版で100%成功していた退却コマンドを%表示で失敗の可能性もあるシステムに変えたりして、全体的なバランスを取っています。

近藤:大量の経験値やセピスを稼げる“シャイニングポム”を倒しまくってレベルを上げるのもアリですね。

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▲シャイニングポムは防御力と回避率が高く、すぐに逃げてしまう。Sクラフトなどで速攻で倒したい。

──本作にはDLCも用意されていますが、内容はどのようにして決めたのでしょうか?

小金澤:こちらでリストを作って、日本ファルコムさんにチェックしてもらいました。

近藤:一番注意したのはクオーツですね。これを序盤で持っていていいのかと。あまり強いクオーツが手に入ると、ゲームバランスを崩しかねませんから。

──限定版の特典についても詳しく教えてください。

小金澤:限定版とキャラアニ限定BOXの2つがありますが、ユーザーのみなさんからの人気が高い設定資料集はそれぞれに別バージョンのものを同梱しています。

近藤:キャラアニ限定BOXでは、インタビューに答えさせていただいていますので、ぜひ読んでほしいですね。

■『Evolution』も『軌跡』も今後さらなる進化をとげる!

──『Evolution』シリーズの今後については?

小金澤:具体的には決まっていませんが、もちろん本作が好評なら、その続編を作る可能性も十分ありますね。

近藤:私どもとしても『Evolution』シリーズには期待しています。できるなら個人的に思い入れの深い、『ガガーブトリロジー』の『英雄伝説III 白き魔女』を、今の技術で表現できたらおもしろそうです。

──今後の『軌跡』シリーズについては……?

近藤:発売は少し先になると思いますが、今はエレボニア帝国編を舞台にした『閃の軌跡』の続編の制作を進めています。ただ、『閃』の物語が思った以上に広がっていて、『FC』のころから帝国編に入れようと思っていた内容もあり、今はボリュームをどうするかなども考え中です。

 そういった部分を解決しつつ、帝国の話をまとめていきたいと思います。加えて、『軌跡』シリーズの終着点や、あと何作品を作るのかなど、シリーズ全体の方向性も含めた内容を突き詰めているところです。それまでしばらくは、本作や『東亰ザナドゥ』などをプレイして、お待ちいただければと。

──最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。

小金澤:本作ではフルボイス化やオートプレイにとくに注力しており、まるでTV番組を見ているかのようにストーリーを進行していけます。素晴らしいストーリーや声優さんの熱演をごたん能ください。

近藤:『軌跡』の原点となる話ですし、今プレイしてみると、あとの作品にもつながる伏線もいろいろ張られています。ゼムリア大陸という同じ世界観のなかで、10年以上も続いているシリーズはあまりないと思いますので、興味がわいたのでしたら、ぜひプレイしてください。

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(C)2015 Chara-Ani Corporation. All Rights Reserved.
(C)Nihon Falcom Corporation.

データ

▼『電撃PlayStation Vol.591』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年5月28日
■定価:694円+税
 
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Amazon.co.jp
▼『電撃PlayStation20周年記念増刊 メモリアルキャラクターズ200』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年4月28日
■定価:1278円+税
 
■『電撃PlayStation20周年記念増刊 メモリアルキャラクターズ200』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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