2015年7月3日(金)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中。
第24回は、特別編として2005年7月26日にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)がアーケード向けに稼働し、今年で10周年を迎えたコンテンツ『アイドルマスター』のインタビューをお届けします。
第1弾のアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』、第2弾のサウンドチームへのインタビューに続いて、ラストを飾るのは『アイドルマスター』の中核を担う坂上陽三さんと石原章弘さんへのインタビューです。
【インタビューのお相手】
・坂上陽三さん(バンダイナムエンターテインメント)
『アイドルマスター』プロジェクトの総合プロデューサー。ガミPの愛称でも親しまれ、イベントに登壇した際は恒例の“ヘンタイ”コールで迎えられることでもおなじみ。
・石原章弘さん(バンダイナムエンターテインメント)
『アイドルマスター』プロジェクトの総合ディレクター。ディレ1の愛称でも知られる。ゲームディレクションやシナリオ執筆、ライブ演出、その他企画などを一手に担うミスターアイマス。
▲坂上さん(写真左)と石原さん(写真右)。 |
――まずは『アイドルマスター』が10周年を迎えての感想をお聞かせください。
坂上陽三さん(以下、敬称略):「10周年だから特別だ!」といった意識はなく、『アイドルマスター』はファンの方と一緒に1年づつ積み重ねてきていて、それがようやく10年経ったなという思いですね。もちろん、10年続けられたことはすごいと感じますが、1つの通過点でしかないなと考えていますね。
石原章弘さん(以下、敬称略):10周年というと特別に記念すべき年だ、という感じになりますが、実際、そこまで気負うようなものでもないなと思っています。
もちろん、キリのいい数字でもあるので、ライブなどは西武プリンスドームで開催させていただくのですが、石原も、坂上さんが言うように、1年ずつ全力を出してきた結果、多くの方に支えられて、数を重ねて10回目を迎えられたという印象です。
坂上:アーケード版が稼働した頃は、家庭用を出そうという計画まではあったのですが、それ以降はノープランでした。正直、よく10年も続けられたなぁと……(笑)。
石原:そうですね。最初のゲームPVの中で春香が「ドームですよっ! ドーム!!」とは言っていましたが、当時、開発チームとしてはそこまで大きなことを目標としてはいませんでした。
そもそもCDを出せるかどうかもわかりませんでしたし、ライブをするということは、考えてはいませんでしたから。役者のみんなはライブが終わるたびに、「次はドームで!」みたいなことは言っていましたけど、僕は「はいはい」みたいな感じで、とりあっていませんでしたから(笑)。
坂上:最初はゲームだけを一生懸命作っていたのですが、少しづつファンの方がゲームだけでなく音楽にも興味を持ってくれるようになって、ライブにも足を運んでくださるようにもなりました。
そういうのを見ながらゲームの中だけじゃなく、もっと『アイドルマスター』の世界を広げていこうと。そういった部分は初期の頃と比べて作る側の意識が大きく変わったところですかね。
石原:2nd Visionを発表した5年目あたりがいろいろと転機だったと思います。『アイドルマスター』がある程度の名を知られたのは、ニコニコ動画などの影響だと思っています。
しかし、ユーザーの手にブームの根幹をすべて委ねてしまうと、IPとしての“芯”がハンドリングできないこともあるなと思いました。そこで『アイドルマスター2』以降の頃からは、最初にアニメを提供して、次にゲームをという感じで先んじて仕掛けることを心がけました。
でも、プロデューサーさんが作っていく世界は大事にしたいので、互いに影響を与え続ける関係というのが理想です。いまだに、その関係性のバランスには苦労していますけれど。
――『アイドルマスター』に深く携わる、お2人的にはこの10年はどうでしたか?
坂上:う~ん……ちょっとマンネリ気味? ですかね(笑)。『アイドルマスター』が世に出たあと、動画サイトでファンの方が二次創作を楽しむようになった時代がありました。
その後、アニメを放映して『アイドルマスター』というものがどういうものか、多くの人に理解してもらえたと思います。それが最初の約5年の流れで、今はライブ活動に、音楽CD展開、アニメ、ソーシャルゲームなども展開して成熟しつつあります。
じゃあ、次はどこに向かおうかとなった時に……どうしようかなっと(笑)。
石原:『アイドルマスター』は最初にアーケードで出たわけですが、例えば、その時期にすでに稼動していたコナミさんの『クイズマジックアカデミー』は、まだアーケードで大絶賛稼働中です。
それに比べて『アイドルマスター』は、10年でアーケード→家庭用→ソーシャルと戦場を増やし続けて、「ずいぶん落ち着きがないなぁ」と自分でも思います(笑)。
アイドルの活躍の場を増やすことが、『アイドルマスター』のコンセプトではありますが、根本的には、制作側の人間に新しいモノ好きが多く、常にチャレンジしていたいのだと思います。CDもコミックもアニメも、今より少しでもよいモノを作ろうという情熱は失われていません。
坂上:正直、苦労が多いコンテンツなんですよ。ゲームが出発点ではあるんですが、音楽CDにライブ、ラジオなどファンの方が喜んでくれそうなコンテンツを、一番喜んでくれそうな時期で展開していったんですけれど、その結果権利関係の人が悲鳴を上げているという……(笑)。
石原:今でこそ、コンテンツ展開のフォーマットというか、サイクルのようなものができあがりましたが、ここまでは四苦八苦はしましたね。
次の展開をイベントで告知していくという、ファンを情報の中心としたコンテンツの流れも5年ほど続けて形になってきました。今は、同じような流れでコンテンツを運営しているIPも多く見られるようになり、その辺りは感慨深いです。
▲写真は2015年3月に行われた『アイドルマスター』10周年プロデューサーミーティングのもの。 |
――感慨深いというひと言では済ませられないような10年のスタート地点であるアーケード版『アイドルマスター』についてお聞きします。最初に9人のアイドルが世に出たわけですが、設定だけでお蔵入りになったアイドルはいたりしますか?
石原:最初は、ゲームでユニットを作るうえで、3人組でも2組でも作りやすい12人でいこうと決めていました。現状では、お蔵入りになったアイドルはいませんが、開発ボリュームが想定よりも多くなってしまったので、アーケードの段階では9人に絞っていました。
12人から9人に減らそうとなった時、双子の亜美と真美は個別キャラ扱いだったのですけれど、1組にまとめてしまい、貴音と響のプロトタイプのキャラをやむなく外しました。
貴音プロトタイプも大人系のアイドルだったのですが、3Dモデルの表現的に、髪がロングでウェーブがかっているのは難しい……ということで、泣く泣くお蔵入りに。響もプロトタイプは、かなり髪が長く、割りと同じような理由で泣く泣くお蔵入りさせました。
キャラ作りは窪岡先生とイラストのやりとりを行いながら、何度も何度もリテイクをかけつつ、やっていたので、3~4カ月ほどかかりましたね。
――各アイドルのイメージカラーも最初から決めていらしたのですか?
石原:そうですね。視覚的にわかりやすいほうがいいと思いまして。昔ながらの特撮らしく、青色はニヒル系、黄色は明るいみたいなイメージで性格と色を設定していました。
――アーケード版ではライブタワーがひときわ目立っていましたが、最初から設置する予定はありましたか?
石原:タッチパネル筐体だけだと、プレイスタイル的に周囲からどうしてもどんなゲームなのかわかりにくいので、お客さんの注意を引くために、最初から設計のイラストには入っていました。
ただ、タワーでも映像を操作できるなどの仕様は、わりと後付けです。ロケテストの時に、自分のプレイ結果を見る場所としてしっかり機能していたので、いろいろと機能を追加しました。
――アーケード版では公式の大会なども開かれましたよね。
石原:“スーパープロデューサートーナメント”ですね。特定の条件を満たした状態で引退したユニットの獲得したファン数を競うというものだったんですが、仕様的に中々できないことも多く、今思うと少し時代を先取りしすぎていました。スマホが普通になった現在は、本当にいい時代です(笑)。
――Xbox 360版が初の家庭用となるわけですが、完全新キャラとして星井美希が出ました。今となっては765プロの一員として、おなじみの彼女ですが、いかがでしょうか。
坂上:せっかくの機会なので、「家庭版ならではのキャラを出したい!」という気持ちから誕生したキャラクターですね。
もちろん、貴音と響を出すという案もあったのですが、家庭用版ならではの完全オリジナルキャラのほうがいいという話から美希ができました。
石原:後から入ってくるので、目立たないといけない! ということで、外見は金髪でスタイルのいい女の子となりました。
坂上:キャラの設定は、やる気ないけどやるとできちゃう天才肌みたいな子が『アイドルマスター』にはいないしいいかも、というところからスタートしています。
これにはスタッフがみんな共感してくれたので、設定作りには問題がなかったです。
ただ、1キャラしか追加しなかったので、物語の分岐を作ったり髪を切ったバージョンを作ったりと、美希にいろいろな要素を加えたくなってしまい、その結果作業が多くなってしまって……そこだけは本当に大変でしたね。
石原:1キャラしか増やさないなら、ボリュームだけでも2人分、せめて1.5人分はあったほうがいいよね、となりまして。髪の毛を切るというイベントも、物語の途中で髪を切ったポリゴンキャラはまだいないよね? やろう! って感じで決められていきました。
――髪を切るといったら茶髪の美希(通称:覚醒美希)ですよね。今後登場することってあるのでしょうか?
石原:あの美希はXbox 360版『アイドルマスター』ならではの要素というか、10年経った今、また過去の姿に戻るのもどうかなぁというのがありまして。
やっぱり、後ろに戻るよりも前に進んでいる感があるほうが、アイドルらしいし、ファンの方も喜ぶかなと思っています。
坂上:もちろん、茶髪の美希を懐かしんでいる方がいるのはわかっているので、皆さんの要望が高まればもしかしたら……。
石原:最近、『アイドルマスター SideM』に秋月涼が登場したように、今このタイミングでいたらいいかなと思えば、また登場してもらうかもしれません。
――続いて発売された『アイドルマスター ライブフォーユー!』は、前作とは違った遊び方が用意されていましたね。
坂上:『ライブフォーユー!』はそもそも、『アイドルマスター』のライブシーンをちゃんと見られている人が少ないんじゃないのかというところからきています。
『アイドルマスター』の仕様上、アイドルのパラメータが低いと、ライブ中にアクシデントが発生してちゃんとライブの演出ができないことがありましたから。なら、ちゃんと見せてあげようよ、ということでライブをメインにした作品にしました。
それに、『アイドルマスター』は1人のアイドルのプロデュース期間が長かったため、ファンの方でも全員をプロデュースしている人は少なかったかなとも思いまして。もっと手軽にいろいろなアイドルのライブを楽しんでもらえるようにとも思って作りました。
石原:さらには、OVAを付けるなど、ファンアイテムに近い形でした。あとは、最初の家庭用『アイドルマスター』のDLCが好評だったので、仕組みとして最初からDLCを利用して、毎月何かしら楽しみを拡張していくという形を目指していました。
売りっぱなしではなく、恒常的に楽しみを提供するというのは、アーケードの頃からのテーマです。
――ちょうどこの辺りから、動画投稿サイトに『アイマス』関連作品が多数上げられていましたが、ここから影響を受けたりはしましたか?
坂上:それはありませんでしたね。もちろん、プロデューサーさんが動画を作って、盛り上がっているのを見つつ、私たちも楽しませてもらっていましたよ。
ですが、あくまでも二次創作の範囲であって、公式でそこに寄り添い過ぎてもいけないなと思っていましたね。私たちは『アイドルマスター』がブレないように主軸をしっかりと見定めて、いろいろなコンテンツを提供していました。
石原:多くの人が楽しんでいてポテンシャルはすごく、高いなと感じていましたね。ニコニコ動画のイチユーザーとして、いろいろな動画を見て楽しみましたし、ファンの皆さんの熱量を感じて、制作者としてやる気も出ました。
ただ先ほども同じようなことは話したんですけど、同時に、そのままファンの方中心のコンテンツ展開になってしまうと、ファンの皆さんが飽きた時にすべてなくなってしまうので、ブームの流れをハンドリングしないといけないなとも思いました。
そういう意味では、動画投稿サイトでの流行からは、コンテンツとは? を考える大きなきっかけをもらいましたね。
――ここでプラットフォームがPSPになり、『アイドルマスターSP』が登場しました。『SP』で貴音と響が正式にお披露目されましたが、彼女たちをこのタイミングで登場させたのは何故でしょうか?
石原:さすがに3作目となるので、単純な移植にするのは違うなと思いまして。ハード的にも、ベタな移植はできませんし。それなら新キャラを入れて、ストーリーを楽しめるものにしよう! と思いついて、響・貴音などのキャラを復活させることにしました。
貴音をあらためて出す際には、少しリメイクをしました。最初の設定は京都出身などではなく、北欧のハーフでした。加えて、もともと金髪キャラでもありましたが、美希が金髪になったので、銀髪に。
響は最初大阪弁キャラの設定だったんですけど、元気はつらつ系のキャラということで、沖縄のキャラに変更となり、寂しがり屋設定などを付加していきました。
坂上:そもそもPSPで出そうとした理由は、『アイドルマスター』をプレイする年齢層を中高生に定めたことが大きいんですよ。Xbox 360だとちょっとハードが高価すぎるから、もう少し手が届きやすいハードにできないだろうかと考えた時に、PSPに白羽の矢がたったわけです。
ただ、そこで問題となったのが容量ですね。Xbox 360のように9人のアイドルをプロデュースして、3人でユニットを組んで……というのは無理でした。
なら、3タイトルに分けてみようかとなった時に、開発チームが出した案が“新しい物語としてライバルの存在”だったんです。
意識としては、アイドルが1人で歌って踊っても盛り上がれるような設定ってなんだろうと考えた時に、ストーリーの中にちゃんとライバルが出てきて、わかりやすくその子たちと絡むというところです。
石原:本当に容量の問題は大きかったですね。だからといってXbox 360版よりもクオリティを下げるわけにはいかないので、携帯機の利点を活かせるように努力しました。
細かいところですが、携帯機の画面だとXbox 360版の事務所の立ち位置では小さく見えてしまうので、少し立ち位置を画面手前に寄せていたりとか、そういう細部も携帯機用に修正していました。
――『ディアリースターズ』では、これまでの765プロ路線とは趣向を変えて876プロが登場しました。のちに346プロなども出てきますが、完全に765プロから主軸がうつった作品は本作が初めてです。プロデュースからアイドル自身の立場になるのも新しかったですよね。
坂上:中高生をターゲットにしつつも、765プロのキャラクター性を強めていこうというのが『アイドルマスターSP』でした。
『アイドルマスターDS』は、同じ中高生をターゲットにしてはいるんですが、違うターゲットもいるのではないかと思いました。
アイドルゲームのアプローチとして、自分がアイドルをプロデュースしたいっていう人たちと、アイドル中心の話を見たい人にわかれるかなというのが当時の話しの中にあって、アイドルのストーリーを見せる話にしようとしたのが『ディアリースターズ』ですね。
当初は765プロのアイドルで作ってはどうかという話もあったんですが、ちょうど『アイドルマスターSP』と制作期間が重なっていたので、だったらイチからキャラを作っていこうかとなりました。
石原:ちょうどこの時に会社もナムコからバンダイナムコになったので、プロダクション名もシンプルに876プロになりました。
坂上:『アイドルマスターDS』は2nd Visionの第1弾として発表されましたが、当初はその予定ではなかったんですよね。本当は第1弾として『アイドルマスター2』を発表したかったんですよ。でも制作が追いついてなくてできなくて(笑)。
石原:2nd Visionの構想が『アイドルマスター』の多彩なコンテンツを出していく、さらに横に広げていくというものだったので、『アイドルマスターDS』はちょうどいいなぁと思って発表しました。
876プロは物語重視ということもあり、1作品として完成しているので、中々765プロの展開と一緒に扱えず、ファンの方をやきもきさせています。展開に関しては、正直、マンパワー的な問題が大きいんですが。
坂上:一番の悩みは、『アイドルマスターDS』を熱心に作ってくれたスタッフたちがみんないなくなってしまったことですね。876プロは765プロとは違う独自路線を貫いていく予定だったんですけどね……世の中うまくはいかないものです。
石原:ただ最近では、『sideM』で秋月涼が男の子アイドルとしてデビューしました。
涼は男なので、他IPの女性アイドルと混ぜてしまうと、引っかかる人もいるだろうなと長く思っていたこともあり、男としてはっきりとさせたほうがいいんじゃないかと考えたいたら、『sideM』のプロデューサーからちょうどいい提案もあって、送り出しました。
――続いては『アイドルマスター2』についておうかがいします。アイドル全員が+1歳されたことにより、ビジュアルの変化などもあり、特に伊織は大人っぽくなったと思います。デザインの変更に関してはいくつか候補があったのでしょうか?
石原:デザインを担当した田宮清高(※)は複数のデザインを出してくれましたが、だいたい最初に出されたもので決まりましたね。
※田宮清高氏:『アイドルマスターディアリースターズ』、『アイドルマスター2』、『アイドルマスター ワンフォーオール』でキャラクターデザインやパッケージビジュアルを担当。『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』では、『ミリオンライブ!』のキャラクター原案も手掛けた。
坂上:1年経つと、当時こういう風になりたいと思っていたものに近づきたいというか、そういうものありますよね。真が女の子らしくなりたいと思っているなら髪を伸ばしているんじゃないか、みたいな。
それで最初、真はかなりのロングヘアーになる予定だったのですが、チームの真好きなスタッフから「これは真じゃない!」と言われて(笑)。そこから調整して昔の髪型とロングの中間に落ち着きましたね。
石原:真以外でも、伊織は髪型のことを言われることも多かったので、この機会にもっとみんなにかわいさをわかってもらえるようにと、いろいろマイナーチェンジしていきました。
亜美・真美は1年経てば背が伸びるだろうとか、みんなでどういう風に変わるかなぁと話し合いながら決めていきました。千早はいろいろと髪型や服装を変えてもらったのですが、やっぱり襟がついた服が一番似合うなということで、ほぼ、元のままになりました。
石原:本当は春香や美希たちも、もっといろいろ変えたいと思っていたんですが、変えすぎると不思議と似合わないし、そもそも、誰なのかわからなくなってしまうんですよね。
衣装などはどういうものがいいのか聞かれた時にに、僕は大宮のル○ネで、2,980円で売ってそうな服とか話します。
そういえば、田宮がデザイナーとして表に出たのは、『アイドルマスターDS』ですが、『アイドルマスター2』のパッケージのイラストも田宮が手がけていて、すごく彼の色が出はじめた頃だと思います。
――そして現在DLCが好評配信中の『ワンフォーオール』ですが、『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』のアイドルがゲストとして、CGモデルで登場しますが、開発段階からDLCとして配信する予定はありましたか?
坂上:開発の段階で『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』はすでにサービスが開始されていましたので構想はありましたね。今でこそ『シンデレラガールズ』のアニメがありますが、当時は彼女たちが動く姿を見る機会がなかったので、それをファンに見せたいという思いもありました。
ただ、もともとはイラストでしかない『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』のキャラたちが、ポリゴンで登場することにファンはどう思うのか、不安な部分も多かったです。
あまりに765プロのアイドルたちと混ぜすぎると世界観が破綻するのではないかということも心配でした。なので、今回はテストという意味も含めて、フェスのライバルキャラで登場してもらいました。
石原:『シャイニーフェスタ』でも、『シンデレラガールズ』の子たちがいるモードがあります。このあたりからアーケード版の『アイドルマスター』などにいた、正体のよくわからなかったライバルアイドルたちを、『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』の女の子たちにすることができるようになりました。
あと、『アイドルマスター2』ではゲストアイドルという仕組みを用意していたので、これらをうまく組み合わせて、ライバルにもキャラクター性を持たせていった感じですね。
――話題にも出た『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』では、かなりの数のアイドルが登場していますが、1人1人生み出していくうえで苦労したことはなんでしょうか。
石原:いろいろ苦労はありますけど、個人的には名前を決めるのが本当に大変です。
坂上:『アイドルマスター』の最初は昔の軍艦からつけていたけど、星井美希あたりからなくなったもんね。
石原:初期アーケードキャラは軍艦など、日本の艦船から名前を取っていました。『ドラゴンボール』や『ワンピース』みたいに、法則性のあるネーミングのほうが、作りやすいと思っていましたので。
それで、『ミリオンライブ!』は最初、高速のパーキングでいこうとしていたんです。美女木とか小菅とかもあったんですけど、意外と地味な感じになることが多く、結局は“箱崎星梨花”の箱崎を残すのみとなりました。駅名シリーズでは、舞浜や天空橋などが残っていますね。
▲箱崎星梨花。余談ですが、箱崎パーキングエリアは首都高の6号向島線上にあります。 |
▲天空橋朋花。天空橋駅は東京モノレールでおなじみですね。 |
キャラの設定を決める時ですが、結構、やり方がバラバラです。設定をもとに、イラストを描いてもらったら、それでOKの場合もありますし、そのイラストのイメージをもとに、設定を直したり、別の設定のキャラにあてはめたりなどしていました。
いずれにせよ、声をつけるのは、セリフとイラストができてからですね。
僕は音声オーディションを、最初からずっとやっているのですが、声の本質を大事にしています。攻撃的な声の持ち主は、表向きは柔らかいキャラでも、本当はSっ気があるかなというキャラに割り振ったりと、いろいろ考えてはいますが、まあ、最後は感性です。
――やはり、登場するアイドルが増えるにつれてとても苦労されていらっしゃるのですね。そんな横への広がりも見せている『アイドルマスター』の今後の展開についてお聞きしたいのですが、次回作の開発はどうなっていますか?
坂上:今まさに作っていますね。今の段階だと、画面にポリゴンのアイドルがいて動いていますとしか言えませんが(笑)。
石原:10周年のタイミングで何かしらの情報をお伝えできるように、頑張っています。
――今となってはライブを毎年開催されていますが、『アイドルマスター』を企画した段階からライブを行うことは想定されていたことなんですか?
石原:最初にも少し触れましたが、まったくなかったです。そもそも、僕は声優さんの名前を表に出すのも、最初はやめようと思っていました。二次元のアイドルに“CV:○○”って出ていたら、アイドルとして個性が立ちにくいかもしれないって思っていました。
でも、イベントなどで声優さんが出演する際に不便だし、結局は、今の形になりました。結果的には、『アイドルマスター』は声優さんとともに、アイドルを育む形となり、イベントはプロデューサー同士が集まるコミュニケーションの場として機能していますので、思い直してよかったです。
▲10周年のライブタイトル“M@STERS OF IDOL WORLD!!2015”も発表されました。 |
――前回のインタビューで、中川さんからライブのセットリストは石原さんが1人で作っておられるとお聞きしましたが……。
石原:そうですね。毎回最初にテーマを決めて、いろいろと考えています。9周年ライブの時は地方公演の回数が決まっていたので、各公演ごとに、伊織なら伊織の魅力を最初から最後まで余すことなく伝えられるようなセットリストを組みました。
今回の10周年ライブは、やはりベスト版に近いようなテーマを持っていますね。これまで他の会場でやった曲でも、西武プリンスドームでやることに意義があると思うんです。
セットリストもかなりギリギリまで考え続けました。あれもやりたい、これもやりたいと考えていると、曲数もどんどん増えて、毎回泣きそうになるのですが、今回は2日で100曲近い曲を披露することになります。
坂上:えぇ!? 大丈夫?
石原:炎天下の中での公演になるのでファンの方の休憩時間をとれるようにはしています。あと、西武プリンスドームでは21時以降の鳴り物は禁止というルールがありまして。なので、21時前には終了します。
10周年の祭典ですけど、こまめに水分補給をするなど、何よりもまずは体を大事にしてほしいです。特に暑さ対策はしっかりとお願いいたします。
そして、このインタビューが掲載されるタイミングでは、ライブビューイングの開催も決定しており、チケットも販売中です。スケジュール的に現地には行けない……という、プロデューサーさんたちは、ぜひお近くの映画館でお楽しみください。
●“THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2015”テーマソング試聴動画
――それでは最後に『アイドルマスター』の今後の展望や意気込みをお願いします。
坂上:冒頭でもお話しましたが、10周年とはいえ、皆さんと一緒に積み重ねた10年なので、皆さんここまできましたよというのが感想です。本当にありがとうございます。
一方で『アイドルマスター』としては、10周年を迎えることが目標でも目的でもないので、これからも1年1年を積み重ねていければと思っています。引き続き『アイマス』をよろしくお願いします。
石原:いまだにゴールがあるのか、ないのかもわからないですが、たくさんのプロデューサーさんが応援してくださることをエネルギーに、制作スタッフ一同、頑張り続けています。
何年目とかは考えないで、11年目も楽しいことができるように歩み続けていきますので、よろしくお願いします!
【周年連載 バックナンバー】
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