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2015年6月22日(月)

ダイアモンド兄弟は実在する!? 『ダンガンロンパ』シリーズの開発話も出た小高和剛さんの講演会in京都

文:電撃オンライン

 6月6日に京都・立命館大学衣笠キャンパスにて行われた“関西ミステリ連合・春の総会”にて、スパイク・チュンソフトの小高和剛さんの講演会が行われた。学生や来場者から質疑応答形式で行われた、本講演の様子をお届けする。

 『ダンガンロンパ』シリーズの企画/シナリオを担当する小高さんに直接質問ができる貴重な機会ということで、来場者からはゲームに関すること、シナリオライターという職業に関することから小高さん本人へのプライベートな事柄まで、質問は幅広く及んだ。

“関西ミステリ連合・春の総会”

 記事では項目ごとにわけて、内容を掲載する。

■シナリオライターになるのに必要なこと

 一番大切なのは人とのつながりだという。小説家などと比べて、ビジネス寄りだというシナリオライターの特徴をあげつつ「プロジェクトでシナリオライターがメインを張れることは少なく、フリーランスであれば請け負うかたちであったり、会社員であればチームで製作にあたるという場面も多いので、コミュニケーションが大事。TVアニメの脚本家や著名なライトノベル作家の知り合いをみても、人付き合いが苦手な人はいない印象。閉じこもって作品作りに没頭している人は少ないのでは」と述べた。

 また、負けず嫌いであることも重要と語った。ファミコン好きが高じて、所蔵コレクションは600本を超えるという小高さん。過去にファミコンショップでバイトをしていた時も、好きだからこそ一生懸命頑張っていたというエピソードを披露した。

■作品作りについて

 シナリオを執筆している時は、どのキャラクターも好きで、思い入れがあるという小高さん。「好きなキャラクターを作中で殺したくないという人もいるが、死んで終わりじゃない。死んでもユーザーさんや見た人の心に残っていれば、生きていると思う。フィクションにおいては死ぬことはジ・エンドではないという風に思っているので、好きなキャラクターを作中で殺すことになっても罪悪感はない」と語り、小高さんなりの物語作りへの臨み方を教えてくれた。

■『ダンガンロンパ』シリーズ開発裏話

 開発当初はゲームをプレイするであろうユーザーの年齢層を高めに設定していたという『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』。ゲーム発売直後に10歳ぐらいのユーザーから苗木誠役の緒方恵美さんのラジオに「おもしろかったです」という旨の投稿があり、予想していなかった若年層にも受け入れられたことに驚いたという。

 また、『ダンガンロンパ』シリーズで随所にちりばめられたパロディネタは「好きで入れているのか?」という会場からの質問には、映画監督のクエンティン・タランティーノが自身の映画に採用しているようなパロディのスタイルをやってみたい、と思って取り入れた結果、癖になってしまったという。

 うまくいったものに、『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』で「今でしょ!」のネタを落とし込んでいたら、ちょうどゲーム発売時期に流行していた、ということがあったそうだ。

“関西ミステリ連合・春の総会”
▲モノクマというキャラクターは、学園生活でのルールを一方的に押し付けてくる、神様みたいな存在だし、自身の考えをしゃべらせることができてとても便利だという。
“関西ミステリ連合・春の総会”
▲ヒロインポジションかと思いきや、ゲーム冒頭に死んでしまう衝撃のキャラ、舞園さやか。実は映画『サイコ』の、シャワールームで殺されるシーンを再現したかったという。舞園が大好きだというファンから『ダンガンロンパ舞園』発売の予定を聞かれ「今のところはないですねー(笑)」と答えた。
“関西ミステリ連合・春の総会”
▲小高さんが通った男子高に実際にいたというダイアモンド兄弟。これまでの作品の中には、自身の経歴から生まれたキャラクターも存在。
“関西ミステリ連合・春の総会”
▲キャラクターデザインを務めた小松崎類氏に「きゃりーぱみゅぱみゅさんっぽく」と伝えた結果生まれた澪田唯吹のビジュアル。依頼時はまだ大きな話題になっていなかったきゃりーぱみゅぱみゅさんが、その後大ブレイクしたので、我ながら目の付け所のよさを褒めたい、と語った。
“関西ミステリ連合・春の総会”
▲ゲーム中での罪木蜜柑のセクシーな役回りについて、ゲーム内イベントや設定資料集などから見て、「ギリギリな表現では?」と感じることがあるが、どれだけ規制を気にしているのか、という質問に対して、「エロとか暴力をギャグにするのは好きだが、直接的な表現にするのは好きではない」と回答。
“関西ミステリ連合・春の総会”
▲いわゆる中二病設定の田中眼蛇夢。小高さん自身、あまり持ち合わせていない感覚だったため、キャラクターを動かし始めてから「しまった……」と思ったという。

■ギリギリを狙った挑戦作『絶対絶望少女』

“関西ミステリ連合・春の総会”

 大胆にも「発禁ギリギリを攻めたい」と発言した小高さん。子どもを敵側にした設定を採用した理由には「他の作品がやらないようなことをやらないと」という思いがあったという。2006年発売のPS2タイトル『RULE of ROSE(ルール オブ ローズ)』を例に挙げ、子どもが敵というきわどい描写は、国内外ともに受け入れられるのが難しいと分かったうえでの挑戦だったことを語った。

 『ダンガンロンパ』のヒット以降、さまざまなことに挑戦し、成功も失敗も経験したという小高さん。「いろいろな仕事を通じて自分は一球入魂タイプということが分かった。作り終わった後に“あれは俺の代表作だ”と語れればいいと思うし、それでうまくいった後は天狗になったっていいじゃない」と語り、『ダンガンロンパ』を作った当初は「小松崎とも“売れないかもしれないけど、10年後に『ダンガンロンパ』ってカルトゲームだったよねって言われていればいいね”と話していた」という過去話を披露した。

 気になる今後の活動に関しては、「さっき、言っちゃダメって言われた」と、『ダンガンロンパ』シリーズ最新作への言及をにおわせる発言も飛び出し、会場を沸かせた。

 「驚かせたいという気持ちが一番。自分自身エンターテインメントに育てられた。作品に触れたユーザーさんの趣味嗜好が広がるようなものを届けたい。誤解を恐れずに言えば、作り手としては世の中を良くしたいとは思っていない。(もちろん、悪い方向よりいい方向に働けばいいけども)誰かの人生を変えられるような影響を与えられる作品を、と考えている。『ドラゴンボール』のスカウターでいう戦闘力って、今の時代でいうと〝人への影響力”なんじゃないかなと思う」と、自身の考えを語った。

 小高さんのものづくりへの姿勢や発想を知ることができた貴重な講演だった。余談だが小高さんへのプライベートな質問の1つに、年収がいくらになったか、というものがあった。スパイク入社時の●倍(?)とのこと……。

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