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2015年7月8日(水)

つなこさんの“ミリオンアーサーちゃん”制作秘話とは? 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』開発者対談

文:マスクド・イマイチ

 スクウェア・エニックスがさまざまなプラットフォームで展開している『拡散性ミリオンアーサー』の開発者と、多彩なコラボタイトルのクリエイターによる対談をお送りする本企画。普段は表に出ないような、クリエイターの本音などをお届けする。

『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』

 今回は、PS Vita版/3DS版『拡散性』とPS4用RPG『新次元ゲイム ネプテューヌVII(ビクトリィーツー)』のコラボレーションを記念して、クリエイター対談が実現。『ミリオンアーサー』シリーズ全般のプロデューサーを務めるスクウェア・エニックスの岩野弘明さん、PS Vita版/3DS版『拡散性』のプロデューサー・古川雄樹さん、そしてアイディアファクトリー/コンパイルハートのゲーム開発部長・東風輪敬久(こちわ のりひさ)さん、『ネプテューヌ』シリーズプロデューサーの水野尚子さん、同シリーズのキャラクターデザイナー・つなこさんの5名に、ゲームやコラボについて語っていただいた。(※インタビュー中は敬称略)


●ブリテンとゲイムギョウ界に平和を取り戻せ!

 PS Vita版/3DS版『拡散性ミリオンアーサー』において、PS4用RPG『新次元ゲイム ネプテューヌVII』のコラボイベントが本日よりスタート。期間中、ゲーム内に“新次元型ミリオンアーサーちゃん”や“新次元型チーカマ”をはじめ、『ネプテューヌ』の守護女神たちのカードが登場する。開催期間は以下の通り。

・PS Vita版
 【イベント期間】2015年7月8日22:00~18日21:59
 【ガチャ設置期間】2015年7月8日22:00~18日21:59

・3DS版
 【イベント期間】2015年7月10日16:00~20日21:59
 【ガチャ設置期間】2015年7月10日16:00~24日12:59

『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』 『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』

今回でコラボも3回目! 意外と長いお付き合い

――今回のコラボが実現した経緯を教えていただけますでしょうか。

古川:元々去年の6月に、PS Vita版『拡散性』とコンパイルハートさんの『限界凸記 モエロクロニクル』でコラボイベントを開催した経緯がありまして。その後に『超次元アクション ネプテューヌU』ともコラボさせていただいて。

東風輪:『超次元アクション ネプテューヌU』のコラボの後に、『新次元ゲイム ネプテューヌVII』のDLCに『ミリオンアーサー』を擬人化して登場させられないかという話をさせていただいたんです。

古川:はい。それで、“ミリオンアーサーちゃん”が誕生しました。そのタイミングで『新次元ゲイム ネプテューヌVII』ともコラボしたいとお話しいたしまして、『ネプテューヌVII』のダウンロードコンテンツ配信時期に『ミリオンアーサー』でもコラボイベントを開催しようとトントンと話が進んでいきましたね。

――ではお付き合いが始まってから1年ぐらいですか?

東風輪:そうですね、結構密度が濃い感じです。私と古川さんは世代的にも相性がいいみたいで(笑)。

――スクエニさんからコラボのお話があった時、どう思われましたか?

東風輪:アイディアファクトリー/コンパイルハートはゲーム業界の中でも地道に努力してきた会社ですので、憧れの会社さんとコラボできるのはとてもうれしくて。

 そもそも『ネプテューヌ』シリーズ自体がゲーム業界をネタにしたゲームでして、そのなかでも『新次元ゲイム ネプテューヌVII』では色々な企画をしかけたいと思っていたので、タイミングもバッチリでした。何より『ミリオンアーサー』のカード絵のクオリティ、特に女の子たちが魅力的で刺激を受けていたので、今回のコラボレーションの相性はいいと思いましたね。

――『ネプテューヌ』シリーズも長い展開になってきましたよね。

水野:かれこれ5年ぐらいになります。

東風輪:それで改めてタイトル数を数えてみたのですが、発売されているもので10タイトル。発表済みのものが2タイトルあるので、計12タイトルの『ネプテューヌ』が存在しています。

岩野:その辺はうちも見習いたいです(苦笑)。

――結構早いペースでリリースされているのには、何か理由がありますか?

東風輪:『ネプテューヌ』本編の開発チームは社内にあるのですが、『ネプテューヌ』が好きで、協力してくれる会社が外部に数多く存在していて、支えてくれています。それぞれの会社の長所を生かしたゲームを制作したことで、“アイドルもの”、“アクション”、“S・RPG”、“リメイクシリーズ”とバラエティ豊かなラインナップになりました。各タイトルしっかり準備をし、同時進行で開発を進めています。

――岩野さんや古川さんは『ネプテューヌ』シリーズにどのような印象を持たれていますか?

岩野:5年ほど前にゲーム雑誌で見たのが初めてで、ゲーム業界をネタにしたというのに強い印象がありましたね。当時擬人化とかも、わりと奥まったところではそういう文化があったかもしれませんが、ああいう感じでバーンと「擬人化だよ~!」という感じで出てきたのが新鮮でした。しかも我々がいるゲーム業界をネタにしていたという部分もありましたし、僕自身『ミリオンアーサー』でもそのケがあるんですけど、“ネタに走る”というかおもしろいことをやってユーザーさんに楽しんでもらいたいという姿勢に共感できました。あと、個人的につなこさんの絵がすごく好きで。

つなこ:ありがとうございます!

岩野:全体をひっくるめた雰囲気に魅力を感じました。さらにシリーズがどんどん出てくるので、そのスピード感も純粋にすごいなぁと。うらやましいなと思いつつ、情報を常に追っていましたね。

古川:やっぱりイラストがかわいいなというところが第一で。あとはパロディとかオマージュとか、攻める部分は攻めつつも、それだけで終わっていない。対象にリスペクト、愛があって深いところまでやっていて、その緩急がすばらしいな、と。あとは宣伝の取り上げられ方とかを見ても、すごいプロデュースワークだなぁって思っていました。

東風輪:いやぁ、苦労の連続でした……(苦笑)。

『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』

――逆に、コンパイルハートの皆さんは『ミリオンアーサー』にどのような印象を持たれていますか?

東風輪:オープニングムービーに主題歌がついて、スマホのゲームなのにここまでやるの!? と。プレイした時もビジュアル・演出がすごくて。ここまでコンシューマゲームと同じぐらいリッチな演出ができるんだ……と危機感を覚えるほどのクオリティでしたね。『ミリオンアーサー』が1つの節目となって、スマホのゲームの品質基準が上がったんじゃないかと思います。

水野:かわいいキャラクターに、すごい豪華なイラストレーターさんがたくさん参加されるということで、立ち上げの時から注目していました。

岩野:僕は、シリーズ立ち上げの頃からつなこさんのイラストに注目していて。『ネプテューヌ』とかラノベとかで活躍されていたので、「これは断られるだろうなぁ」と思ってオファーをさせていただいたんです。今だから言える話ですが。

つなこ:お話をいただいた時はどうしてもタイミングが合わず、お引き受けできなかったんです。でも、今回こういうコラボでカードのイラストも描けたので、本当によかったです。

水野:キャラクターの“かわいさ”などに重きを置かれていたり、世界観だったりで『ネプテューヌ』と共通している部分があるのかなと思っています。実写化なども含めて色々な展開をされていて、タイトルの魅せ方などを参考にさせていただいています。

つなこ:参加されているイラストレーターの皆さんのクオリティがとても高いので、今回担当させていただいた時も「私でいいのかな……」と心配で(苦笑)。私はスマホのゲームを最近遊ぶようになったもので、『拡散性』も『乖離性』もスタートから出遅れてしまって、ユーザーさんの話題にはなかなかついていけていないのですが、自分のペースでゆっくりちまちま遊んでいます。

岩野:でも、僕自身もユーザーさんの話題についていけていない部分はありますよ。消費スピードが早すぎるんです。『拡散性』をやっていた時も、「これぐらい(イベントやカードが)あれば大丈夫だろう」と思っていた物量がすぐに枯渇してしまって。「ヤバイヤバイ!」と言いながら運営をしていました。

 そのノウハウを生かして『乖離性』を出して「これだけあれば今度こそ大丈夫でしょ!」と思ったのが、まぁ……すぐに(苦笑)。こういうコンテンツって、いくら用意しても消費尽くされてしまうんですよね。これを解決するには“消費するという概念じゃないコンテンツ”で勝負しないといけないのですが、得てしてそういうコンテンツを作るのはとても難しいです。

つなこ:オンラインって展開が早いんだなって遊んでいて思いました。ログインしたら「あ、もうガチャが変わってる!」って(笑)。

岩野:『ミリオンアーサー』は色々な方に描いていただいているんですけど、驚くことに他のタイトルでたまにイラストレーターさんをほぼ固定してやられているものがあって。もちろんアニメ会社さんと組んだりとか、会社の中に専門の部署があってイラストレーターさんがそこにたくさんいらっしゃるとか、そういうケースは考えられますけど、とはいえそこだけで全部まかなうというのはとんでもなく大変だと思います。

東風輪:コンシューマのパッケージゲームは、ソフトが出れば一応はそこで完結するので。

つなこ:どんどん更新がかかっていくというのは……。

水野:大変ですよね。

岩野:でもコンシューマの更新も増えてきていますよね。

東風輪:そうですね、ダウンロードコンテンツで1本のソフトを長く遊んでもらうというのが主流になってきていますね。

つなこさんも“UTSUWA”ファン! 『実在性ミリアサ』の魅力とは?

つなこ:あっ、実は私、『実在性ミリオンアーサー』が大好きなんですよ!

――前回のこの企画でも、岸田メルさんが前のめりに推していました(笑)。

つなこ:衣装や小物のクオリティや、歌もすごいなって思ったんですけど、私は“ブリテン昔話”と“次回予告”もすごく好きで。最初に“ブリテン昔話”を見た時の衝撃が(笑)。

岩野:あれは……仕事で軽くお付き合いがあったランティスの『ラブライブ!』のご担当者さんに、ライブにお呼ばれして行ったことがありまして。その時に「『ラブライブ!』はヤバすぎる!」と思ったんです。コンテンツとしてもすごいんですけど“人々のリアルな熱気”がすごすぎて、「あ、コレは完全に負けております……」と。

 上司の安藤(安藤武博氏)に「安藤さん……『ラブライブ!』に完全に負けています……我々もアイドルとは言いませんが、リアルなものをやったほうがいいんじゃないでしょうか」という話をしたことがありまして。安藤は安藤で宝塚がものすごく好きなので、リアルなものをやりたかったというのがあったみたいです。

 それからちょっとして急に会議室に呼ばれまして、その時『実在性』を制作されたILCAさんもいらっしゃったんですが、安藤がいきなり「実写版を作りたい!」と言い出しまして(笑)。その場にいた全員の頭の上に「?」が浮かんでいましたね……。しかもその後、あとは任せた状態に(笑)。

 『実在性』が皆さんに愛されているのは、『戦国鍋TV』を作った方々に『ミリオンアーサー』というものを理解してもらった上で、『戦国鍋TV』のノウハウをつぎ込んでいただいたということがあると思うんです。僕は、最初の企画段階だけ入って「あとはお任せします!」という感じでした。だから僕も1話目は皆さんとほぼ同じタイミングで見て、ブリテン昔話とか「なんだコレ(笑)」って感じですごい笑ったのを覚えています。

古川:プロモーションの担当からも「大丈夫なの? 実写!」って言われましたね。でも、1話が届いて、みんなで試写をしたら意外とおもしろくて。

つなこ:私も含めてなんですが、1話で視聴者をガッツリつかんだ感じがしましたね。

岩野:言葉を選ばずに言うと、ニコニコ動画のコメントでも「学芸会か!(笑)」みたいなツッコミも入り、そこでいったん離脱した人も多かったと思うんですよ。でも最後まで見てくれた方が「これヤバイぞ!」って言って、それに周りも「え、そんなに!?」ってなって帰ってきてくれて、そこでハマってくれた人も多かったと思います。そういう意味でも、長い尺でなくてさっくり見られる短い尺なのがよかったなと。

――アニメ化よりも先に実写化するというのも思い切った舵取りでしたね。

岩野:あれはもう成り行きです。本当はアニメ化もしたかったです。でも色々と事情がありまして……(笑)。

古川:でも実写化でよかったとも思いますよ。ゲームのアニメ化ってあの時も多かったですし。逆に注目を浴びる結果になって。

岩野:運がよかったですね(笑)。そんななか、『ネプテューヌ』はアニメ化もされていて。同じくコンテンツを作っている身としては、アニメ化まで持っていく大変さもわかりますし、でもそれがうらやましくもあり……。

東風輪:アニメ化はシリーズを作り始めた頃からの夢でしたから。色々な関係者の皆さんが「いつかアニメに」って言ってくれていて。そうしたら、気持ちが色々なところに伝わって「本気でやろう!」と、ゲームの2作目ぐらいの時から動き出しました。

岩野:じゃあ、外から「やりませんか」っていう動きだったんですか?

東風輪:『ネプテューヌ』って色々な会社とタッグを組んで作っていて、音声収録で協力いただいているMAGES.さんが1作目からキャラを気に入ってくれて「やろうよ、やろうよ」って。結果、それが本当に実現しました。

岩野:『ミリオンアーサー』はどこからも声がかからないんですよ……(苦笑)

――ちょぼらうにょぽみ先生の『弱酸性ミリオンアーサー』がWebアニメ化するじゃないですか!

東風輪:あれもすごくぶっ飛んでますよね(笑)。

岩野:……あれはですね、本当は普通にアニメもやりたかったんですけど、さっきも言った色々な事情により難しいということで。でも悔しいから何かやってやろうと思いっていたところ、むしろ弱酸性を先にやるのはおもしろいのでは……しかもWebアニメで4クールとかさらにおもしろいのでは!?という感じでして(笑)。

水野:声優陣も豪華ですよね、中田譲治さん、小山力也さん、と。

岩野:際どいセリフも多くて、声優さんを集めてくれる音響さんも「これは難しいかもしれませんね……」って暗い雰囲気になっていたんですが、後日「わりと皆さんやってくれるそうです」って。その交渉の中で「オッペラスッチョンコーポレーションってなんですか?」って事務所の方に聞かれて、「いや、特に意味はないです」みたいなやりとりもあったとかなかったとか(笑)。

つなこ:『ネプテューヌ』のアニメでも、アドリブを多めに入れてくれる声優さんもいて、楽しい現場でした。

『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』

『ネプテューヌ』は開発開始から半年間、全然別のゲームだった!?

――この対談シリーズでは、タイトルの成り立ちなども伺っているのですが、『ネプテューヌ』シリーズが作られることになったきっかけなどがあれば教えてください。

東風輪:あー……(笑)。実は立ち上げ時は別のコンセプトでしたが、色々と事情があって『ネプテューヌ』になってしまいました……。

つなこ:『ネプテューヌ』がとつぜんあらわれた! という状態でしたね(笑)。最初は三女神しかいなくて、ノワールがヒロインだったり。

東風輪:本当に別ゲームでしたね。

岩野:じゃあ“ゲイムギョウ界”云々っていうのもなかったんですか?

東風輪:そうですね。“ネプテューヌ”というワードとともに“ゲーム業界”がモチーフとなり、後乗せではありますがガッとハマった、という感じでした。元々「おもしろいコラボをしたい」という話はあって、色々な会社に相談したのですが、結果ダメだったんですね。それで最後に残っていたのが“ゲームネタ”でした。

 あの当時、追い詰められてゲーム機を擬人化しようということになりまして……。それをチームメンバーに話をすると正直反対意見が多かったです。ところが“ネプテューヌ”のデザインが上がってきて、変身後の“パープルハート”のビジュアルがとにかくよくて、その時に初めて開発全員が手ごたえを感じました。そこから一気に半年ぐらいで作ってしまったという。だから開発スタートから数えると、半年ぐらいは『ネプテューヌ』じゃなくて、半年から『ネプテューヌ』になったという。

水野:半年後ぐらいからは、キャラクターもコンセプトに合わせて変えて。テーマにも“ハード戦争”といったものが加わっていって。ちょうど次世代機が出そろったぐらいで、話題になっていた時だったので。

岩野:そんな紆余曲折があって、1年ぐらいで作ってしまったのはすごいですね。

東風輪:準備期間を考えるともっとかかっているかもしれませんが、だいたい1年ぐらいですね。

岩野:我々からすると信じられないスピードで、すごいなと思うばかりです。

古川:スマートフォンのゲームを作るのにも、1年じゃ足りないぐらいですからね。

東風輪:でも、今はさすがに1年では無理ですね。

――シリーズを続けていくなかで、「ここは変えちゃいけない」と思っているところなどはありますか?

東風輪:“ゲーム業界”をモチーフにしていますので、そのネタのおもしろさを求めつつも、そこに対して悪意は入れたくないので、基本的にどのキャラクターに対しても“愛”を込めたいと思っています。敵キャラクターも、ビジュアルがゴツかったりしても、しゃべるとかわいらしいとか。

つなこ:中身はみんな“ダメなオタク”だったりとか(笑)。

東風輪:そういうおもしろいキャラばかりですね。あと、できるだけ画面の中に男の子を出さないようにしています。女の子以外はメカにしたり。ユーザーさんがプレイしていて、自分の大好きなキャラクターたちの世界にひたれるようにしています。

つなこ:初代『ネプテューヌ』で、絵はないんですけど「あ、あそこにイケメンがいる!」的なことをヒロインたちが言ったシーンがすごく不評だったことがありまして。そこから一貫している部分かもしれませんね。でも、ロボは許されるんです。この辺りのバランスは男性目線の意見を聞いていかないとと思っています。

古川:ロボには嫉妬しようがないですからね(笑)。

――やはり男性のユーザーさんのほうが圧倒的に多いですか?

東風輪:そうですね、でも女性ユーザーさんからの声も多いですよ。

つなこ:別の作品の収録の時なんですけど、女性の声優さんから「『ネプテューヌ』好きなんですよ」って言っていただくことが多くて。『ネプの会』へのお葉書も、もちろん女性ユーザーさんからもいただいています。

――逆に『ミリオンアーサー』シリーズでは、制作時にはずしたくないこだわりみたいのはありますか?

岩野:お話もキャラもそうですし、全体の雰囲気もそうなんですけど、“ギャップをつけよう”というのは心がけていますね。お話で言うと、メインのストーリーはわりと真面目なんです。でも、真面目すぎると気を張っちゃうところもあるので、たまにはドタバタパートみたいなのを入れ込んだり。すごく悪い奴として出てきた敵キャラが、倒した後にギャグキャラになっていたり。そういう“はずし”の部分があったほうが、ちょっと気が抜けて雰囲気もほんわかするので。

 特にスマートフォンのゲームはずっと運営していかなきゃいけないんですが、運営をする時のイベントにもよい影響があるんです。「7匹の竜を討伐せよ!」みたいなのばかりだと、ずーっと気が張ってしまいますよね。そこでたまにはなんか「女の子のパンツを集めろ!」みたいなイベントがあったり(笑)。そういうイベントを、いくつもいくつもバリエーション豊かに作れるのは、運営側としてもうれしい。当然、そのギャップがユーザーさんの喜んでくれるものになっていないといけないんですが。そういう幅の広いギャップというのは、ずっと持っていこうと思っています。

東風輪:だから色々なタイトルとのコラボも、相性がいいんですよね。

岩野:実は同じ社内のタイトルのほうがコラボするのが難しかったりします(苦笑)。

古川:世界観の受け皿がすごく広いですよね。

岩野:だから無茶苦茶ができるというか。今回もコラボさせていただいておりますが、そういったコラボのオファーにしても、なんでもできちゃうみたいな間口の広さは作品全体ににじみ出ているんじゃないかと思っています。運営ということを考えると、あの手この手を考えて続けていくことを念頭に置かないと厳しいですね。

『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』

コラボキャラ“ミリオンアーサーちゃん”誕生秘話

――『ネプテューヌ』側でのコラボとして生まれた“ミリオンアーサーちゃん”と“チーカマちゃん”についてお話を伺いたいのですが。

東風輪:ディレクターの小野寺(小野寺真吾氏)がこのキャラの設定を考えている時に、『拡散性』、『乖離性』、『弱酸性』、『実在性』全部の『ミリオンアーサー』のネタを突っ込みました! と言っていました。

つなこ:若干“UTSUWA”成分が多い気もしましたが(笑)。

東風輪:ただ『弱酸性』のネタは、入れたくても入れられず、泣く泣く削ったワードもあると言っていました(苦笑)。

――なんか想像できます(笑)。デザインの部分では、つなこさんはどんなところを気づかいましたか?

つなこ:まず、“剣サー(アーサー 剣術の城)”のイメージがとても強かったので、それをベースにとにかく“王様っぽくしよう”と思って描きました。配色も赤・金・白っていう王様カラーになっているのと、細かくゲームのネタも取り入れています。よく見るとどこかで見たような羽とか(笑)。王冠も『乖離性』のガチャの演出のものを取り入れたりしています。シナリオの中でも、この王冠の中にクリスタルを入れて騎士を作るっていう描写があったり。

岩野:ラフを3種類ぐらいいただいたんです。それで、1枚目に別のデザインを見た時に「これはさすがスゴイな」と思って。「他にもあるんですよ」って言われて、この子ともう1人、ショートカットの子を見た時に「どっちもいいなぁ」って悩み始めてしまって(苦笑)。そのまま10分ぐらい「うーん」って悩んで、結局「どちらでもOKです!」って戻してしまいました(笑)。

 結果的に、仮にミリオンアーサーちゃんが乖離性でも登場!なんてことになった際、深い理由はないですがやっぱり『ネプテューヌ』の“エスーシャ”も出させてもらいたいと思いまして。そういうことを想定するとショートカットだとエスーシャとかぶってしまうので、今のデザインにしていただきました。しかもこのデザイン、さすがだなと思ったのが色々なアーサーの要素が散りばめられていて。この絵が世に出た時に、色々とユーザーさんの反応を調べてみたんですが、みんな「ここはあのアーサー成分、ここは別のアーサー成分……」みたいに検証してくれていて。

つなこ:盗賊アーサーの頭のくるくるしている毛も、アクセサリ装備として使わせていただきました。

岩野:“チーカマちゃん”はそもそも出す予定がなかったんでしたっけ?

つなこ:私が勝手にラフを描いたら、採用していただけた感じです(笑)。“チーカマちゃん”という名前も決まっていなくて、普通にパートナー妖精として、かなり勝手にデザインさせてもらいました。

――どういう経緯で決まったかはわかりませんが、秀逸な名前ですよね……。

『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
▲貴重なラフ画を大公開!
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
▲こちらは最初のラフ案。
『ミリオンアーサー』×『ネプテューヌ』
▲もう1つのラフ案。採用されたのが右のデザイン。

多彩な活躍を見せるつなこさんとコンパイルハートの相思相愛

――『ネプテューヌ』シリーズより以前の話になるかもしれませんが、コンパイルハートさんで最初につなこさんを起用しようと思ったきっかけは?

東風輪:やはり入社当時から、すでに画力と言いますがキャラの魅力が高かったというところですね。加えて、成長速度がハンパなかったので。すぐに「将来こうなってくれ」とレールを敷いてしまって(笑)。でも、今はレールを飛び越して宇宙まで行ってしまったような感じです。

つなこ:とんでもないです(苦笑)。私も入社してすぐにキャラデザを任せていただけるとは思っていなかったので、「いいのかな?」って。『ネプテューヌ』の1つ前の別の作品から引き続きデザインを担当させていただいています。

東風輪:『クロスエッジ』からですので、入社してから密度の濃い仕事だったと思います。入社前にも『スペクトラルフォース ジェネシス』を手伝ってもらっていました。

つなこ:学生の頃からいくつか会社のお仕事をいただいていたんです。

岩野:学生の頃からなんですね。

東風輪:デザインの仕事をいくつか手伝ってもらっていました。ほぼ、コンパイルハートに来てもらう前提で仕事をお願いしていましたね。

つなこ:私がもともとアイディアファクトリーのゲームのファンで、「ここに行こう」と決めちゃっていたので。

古川:文字通り即戦力ですね。

――つなこさんはライトノベルの挿絵のお仕事などもされていますが、『ネプテューヌ』シリーズのお仕事だからこそ気を遣うところなどはありますか?

つなこ:やっぱり1つの作品内に女の子がいっぱいいるので、いかにして違うデザインにするのか、というところが最近は大きいですね。いろいろなコラボタイトルもあるんですが、コラボキャラは必然的に違うデザインになってくれるので、私のほうが助かっています。

 コラボ作品をプレイしたり拝見したりして、私も勉強になっている部分が大きいです。参考資料もいただいていますし、まじまじと絵を見させていただける機会なので!

水野:ネットとかを見ていると、私たち以上にコラボキャラを考察して、広げてくれて、ありがたいですね。

これからのコンパイルハートが目指すこと――

――現在はソーシャルゲームが全盛、と言いますか、ものすごい数のタイトルがリリースされていますが、そのなかでコンシューマゲームをメインに作られているコンパイルハートさんはどう見られていますか?

東風輪:弊社は、地道にコツコツやってきていますので、あまり器用なことができません……。コツコツとコンシューマゲームで積み上げてきたものを、今も積み上げ続けているという感じです。

 今後も自分たち独自のキャラクター、物語、世界観のゲームを制作していきます。そしてコラボをしながら関係者の方々にコンテンツに興味を持っていただいて、その皆さんを巻き込んでグッズやアニメといった二次展開を広げていきます。関係者、お客様が幸せになるサイクルを作っていきたいです。

――『ネプテューヌ』でやってみたいことってありますか?

東風輪:アニメ化も実現できましたし、色々やらせていただきましたからね……。

つなこ:ゲームの収録の時に、声優さんたちと「舞台やろう舞台!」って言っていたことはありますね(笑)。個人的には、『4女神オンライン』をいつか作りたいです!

東風輪:アニメ化の時にたくさんキャラソンを作っていただいて、それは本当にうれしかったですね。結構好きなことが『ネプテューヌ』ではできています。

――スクエニさんからコンパイルハートさんに聞きたいことなどはありますか?

岩野:今『ネプテューヌ』の公式サイトに、“ミリオンアーサーちゃん”、“ゴッドイーターちゃん”と並んでいますが、こういったコラボキャラは今後も増えていきますか?

東風輪:それは今後の展開次第ですね。キャラクターは1体ずつ想いを込めて作っているので……。サイトには3キャラの枠が並んでいますので、まずはそれをしっかり作ります!お客さんに「待った甲斐があったよね」って言ってもらえるよう愛を込めて手作りしていきたいです。それから、このコラボを切っ掛けに『ネプテューヌVII』を買っていなかった人が遊んでくれたら、本当にうれしいです。

岩野:その第1弾として選んでいただけて光栄です。

東風輪:今回みたいにメーカーではなく、ゲームタイトルの擬人化も増えていくかもしれませんね。こちらとしても今回のコラボ、実現できてよかったです。これからもよろしくお願いします!

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