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2015年8月7日(金)

【電撃PS】『トリリオン』山本雅弘ディレクター×電撃PS編集長対談! 山本氏のストイックな作品愛とは!?

文:電撃PlayStation

 7月23日の発売から育成RPG好きの間で盛り上がりを見せているPS Vita『魔壊神トリリオン』。本作のディレクター・山本雅博氏に電撃PlayStation編集長がお話をうかがった。ここでは、電撃PS Vol.595に掲載されたその対談インタビューの内容をお届けする。

『魔壊神トリリオン』

『魔壊神トリリオン』は失う痛みを味わうゲーム

西岡:まずは、今回『魔壊神トリリオン』をオリジナルタイトルとして作った理由について教えてください。

山本:自分は、これまで長い時間をかけて1つのキャラクターを育て、ずっとやり込んでいくタイプのゲームを10年以上作ってきました。そのなかで、別のタイプのやり込みゲームを作りたくなったことが理由の1つですね。同じ内容だけど何度もサイクルを繰り返して、試行錯誤を重ねるタイプのゲームがありますが、そういうゲームも作ってみたいと思ったのがきっかけです。

西岡:確かに、本作は魔王が死んで継承して……という感じで、繰り返すタイプのゲームになってますね。

山本:ええ、ただ、同じことを繰り返すスタイルのゲームは、次にもう1回チャレンジするためのモチベーションやキッカケが必要だと考えました。そこから、同じ敵に何回も挑み、かなわないから育て直すという方向にしよう、と。そのサイクルを盛り上げるためのテイストを考えた結果、このようなコンセプトになりました。

西岡:何回もプレイすれば効率よく遊べるのでしょうが、普通に遊ぶと何人くらい死んじゃいますか?

山本:想定としては、6人の魔王をフル活用することで、ギリギリクリアできるバランスを目指しています。

西岡:なるほど。ということは、がんばっても最初の魔王だけでクリアするのは難しい、と。

山本:自分で挑戦してみたのですが、3人目が限界でした。ただ、クリアするかゲームオーバーになると、経験点の一部とアイテムが次の周に引き継がれます。だから、引き継ぎなしの状態では無理ですが、周回すれば1人目でもクリアできると思いますよ。

西岡:普通は、一番最初の魔王に好みのタイプの子を選びますよね。かなり、ワナだと思いますが……。

山本:ワナですね(笑)。一番好みじゃない子を選んだほうがいいかも。ただ、それが実際に遊んでみないとわからないようにしたのは、失ってしまうせつなさを味わってほしかったからですね。そういう意味では、一番好きな子を最初に選んでもらうのも1つの正解だと思っています。失うツラさはありますが、親密度がMAXになっていれば、一回だけ好きな魔王を生き返らせられるので、救いはあるのではないかと。

西岡:そこらへんも悩ましいところですよね。親密度を上げておくべきか、育成を優先すべきか。

山本:そこは、悩んでもらいたいところですね。

『魔壊神トリリオン』

西岡:ゲームはシステマティックですが、キャラの思い入れには力が入ってますね。テキストも長い。

山本:当初想定していたより長くなりました。ボイス数もトータルで2万語を越えています。普通のアドベンチャーゲームより、長いかもしれません。自分はシステムから考えてしまうタイプなので、最初はすごくドライだったんですよ。ただ、ゲームとして思い入れを持ってほしいと思ったので、設定が決まった段階で掛け合いも厚くなりました。プレイヤーには、死地に特攻する相手を見送る側のせつなさを味わってほしいと思いまして、物語はできるだけ厚くしてあります。

西岡:設定といえば、なぜ魔界が舞台なのですか?

山本:そこはコンパイルハートさんとのご相談のなかで、ユーザーさんが求められているであろうということから、この設定となりました。慣れ親しんでいるので魔界であることに違和感はありませんけどね。当初は、じつは魔王ではなくて勇者一家のようなイメージを想定していたんですよ。出撃する人たちも全員家族で、だんだん出撃するキャラクターが幼くなって、最後は赤ちゃんが出撃して……という形を考えていました。幼い子どもが戦場に行くのを防ぐためにがんばってください、というノリでしたね。魔王に変わった本作でも、血縁や幼なじみの関係者という部分は引き継がれています。

西岡:死亡するときの演出も、なかなかキツイです。

山本:どこまでやるか悩みましたが、失う痛みを味わう形にしたい、とシナリオの方にお願いしました。

西岡:ゲーム的にものすごく濃密ですよね。山本さんは、どのように攻略したのか教えていただけますか?

山本:自分はどんなゲームでも肉弾戦を好むので、通常攻撃を中心に使いました。長丁場になるので、ターンが経過するほど強くなる“ラストスパート”や、敵を倒すほど強くなる“撃墜王”をつけますね。ちなみに、真逆の戦法として“不動の覚悟”をつけ、技のみで戦う方法もあります。移動しなければ攻撃力が上がるスキルなのですが、じつは、スキルを使った移動は移動扱いにならないので、それを利用する戦法です。スキルは組み合わせで思いもしない効果を発揮しますので、ぜひいろいろ試してみてください。パラメータはじつはSPDが重要です。SPDを上げると、トリリオンがスキルを発動するまでの残りターン数が伸びるんですよ。だから、どんなプレイでもSPDだけは絶対に上げています。

『魔壊神トリリオン』

山本さんは受けも攻めもOK

西岡:『魔壊神トリリオン』って、かなりドM向けのゲーム性ですが、山本さんはSなんですか?

山本:大変な仕事に自ら取り組むという点で、ゲーム開発者は全員Mだと思っていますが、そのMを基準にした場合のSでしょうか? 受けも攻めもできるみたいな……って、どういう質問ですか(笑)。自分は歴史ものが大好きで、歴史系シミュレーションをよく遊ぶのですが、一番好きなのが周囲に強大な勢力ばかりいて、自分がいじめられてるときなんですよ。苦しんでいるときが楽しくて、最大勢力になるとやる気がなくなってしまう。やられている瞬間とか、やられているのを回避するためにがんばるのが好きなんですね。そういう意味でMですね。でも、ゲームを開発するときはスタッフに対してSなんですよ(笑)。開発終盤で「どれだけ作品に愛を注ぎ込めるか」が勝負の分かれ目だと思っているので、どうしても、スタッフに対しては厳しく指示を出しちゃいますね(笑)。

西岡:最後の10%が勝負だって、よくいいますよね。

山本:最後の1カ月を、どこまでフル回転できるかが分岐路だと思います。開発の“想いポイント”をためて作りましたが、この対談の時点では発売後の評価がまだわからないので、ドキドキしています。

西岡:楽しみですね。では、最後にユーザーや読者の方に向けて、ひとことメッセージをいただけますか?

山本:死ぬことを前提としたゲームシステムやシナリオは、ほかの作品にはない特徴的なものになっていると思います。ぜひ、楽しんでいただきたいです。

『魔壊神トリリオン』

(C)2015 COMPILE HEART/PREAPP PARTNERS

データ

▼『電撃PlayStation Vol.595』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年7月23日
■定価:657円+税
 
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