2015年10月27日(火)

名作『ワンダと巨像』10周年。今なお色あせない“巨像と戯(たわむ)れる”濃密な時間【周年連載】

文:ヒビキタケル

 あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。

 第28回は2005年10月27日にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたPS2で発売され、2011年9月22日にはHDリマスター版としてPS3で発売された『ワンダと巨像』。発売10周年を記念する思い出コラムを、ヒビキタケルがお届けします。

『ワンダと巨像』
『ワンダと巨像』
▲個性豊かな巨像と1対1の戦いを繰り広げていく『ワンダと巨像』。個人的にも生涯プレイしたゲームの中でベスト3に入るタイトルです。なお、画面はPS3版のものです。

 『ワンダと巨像』は、命を失った少女をよみがえらせるために、主人公の青年・ワンダが広大な世界を冒険しながら見上げるほどの大きさを持つ巨像たちと戦っていく作品です。

 開発は、アクション・アドベンチャーの名作『ICO』の上田文人さんがディレクターとゲームデザインを手がけています。『ワンダと巨像』は『ICO』とはゲーム内容は別物ですが、世界観は『ICO』をほうふつとさせるものがあります。

 当時の私は、『電撃PlayStation』で仕事を始めて5年目くらいの時。『ICO』もプレイしていたので「ぜひ私に担当させてください!」と猛烈なアピールをした覚えがあります。

『ワンダと巨像』
▲当時の『電撃PlayStation』誌面。懐かしいです!

 誌面では、巨像のスケール感を表現するために、「これでもかっ!」というくらい大きく巨像のCGを見開きで載せたレイアウトにしました。当時の『電撃PS』では主人公やヒロインのイラストならともかく、敵対する存在をそういう扱いにしたことがなかったので、個人的にはかなりの挑戦をした記事だった思い出があります。

 また、『電撃マ王』では最初の巨像を倒すところまでを小説として書かせてもらいました。あとにも先にも誌面に自分の小説が掲載されたのはこの時だけです。そういう意味で、『ワンダと巨像』は自分にとって、さまざまな新しいチャレンジをした、特別なタイトルなんですよね。

 そろそろ、この作品がいかに私を魅了したかを語っていきたいと思います。

幻想的な映像美とカメラワークで世界に引き込まれる!

 『ワンダと巨像』の舞台は外界から隔絶された“忘れられた地”とでも呼ぶべき世界。荒涼とした大地や石造りの遺跡などが並ぶ、幻想的な風景が広がっています。

『ワンダと巨像』

 しかし、そこに暮らす人は誰もいません。敵も巨像のみで、巨像を探す道中にザコ敵と戦うということもありません。そんな広大な世界を愛馬のアグロに乗って駆け巡りながら巨像を探すのは、それ自体がとても“冒険をしている”というドキドキ感に満ちていました。

 また、特筆すべきはカメラワーク。普通は画面中央に自分が操作するキャラがいて移動するのですが、本作では自動的にカメラが移動して、まるで映画や絵画のようなシーンが展開していきます。普通に馬に乗って走っているだけなのに、感動すら覚えてしまうほどです。

『ワンダと巨像』
▲ただ走っているだけで、そこが名場面になってしまうのが本作のスゴイところ。
『ワンダと巨像』
▲巨像との戦いでも注視ボタン(L1)で巨像中心の視点にすることができ、迫力あるシーンが楽しめます。

 巨像との戦いでは、握力ゲージや体力ゲージが表示されるのですが、移動中はそれすら表示されません。これが世界への没入感にひと役買っているところだと思います。

 巨像を探す方法が“剣をかざして光が集まる方向に行く”というのも好きです。コンパスを見るように方向だけを頼りに進んでいくのは、冒険をしている感じがとても出ますし、逆に太陽の光がないところでは光が出ないので、迷った時は日なたを探すといった、巨像を探す行程そのものが楽しかったです。

『ワンダと巨像』 『ワンダと巨像』
▲アグロに乗りながら、剣の光が集まるほうへ。広大な世界を旅する唯一の道しるべです。

巨像の弱点を探し出し、そこにいたる方法を探すおもしろさ

 巨像のいる場所までたどりついたら、いよいよ戦闘開始。といっても巨像は弱点以外の攻撃はほとんど通りません。弱点は、剣を光で反射させて探すか、巨像の体につかまって弱点の近くまで行くと出現させることができます。

 弱点のある場所がわかっても、そこに行くための方法は巨像ごとに違います。巨像の攻撃を回避しつつ、どうやってそこにいくのかを考えていろいろと試す。この巨像を使ったパズルを解くのが楽しいのです。

『ワンダと巨像』
▲巨像の動きをよく観察して、いかに態勢を崩すかがポイントに。剣だけでなく弓を使っての攻撃も謎を解くカギになります。

巨像につかまり、弱点を目指す場面も手に汗握る!

 首尾よく巨像につかまることができても、あっさり弱点まで到達できるわけではありません。つかまられた巨像は体をゆさぶったりしてワンダを振り落とそうとします。それをR1ボタンでこらえることに。

『ワンダと巨像』

 ワンダには握力ゲージがあり、ゲージがなくなってしまうと地面に落とされてしまいます。そうはならないように手を離して休める場所を確保するのも大事です。

『ワンダと巨像』 『ワンダと巨像』
▲空を飛ぶ巨像をうまく誘導し、体毛があるところになんとかつかまることに成功! そのあと巨像が大暴れして、バタバタするところが好きです。
『ワンダと巨像』
▲巨像戦によっては、あきらかに休めそうな場所があります。とはいえ、のんきに構えていると揺さぶられて転倒し、落下してしまうことも……。

 このように“つかむ”という行動は本作ではとても重要で、しかも見ているだけでも力が入るシーンの連続。当時はR1ボタンを思いっきり押していて、巨像戦が終わった後に指が痛くなっていることもありました(笑)。それだけワンダの動きに感情移入していたってことですね。

弱点を剣を突き刺した時の快感! そして最後の一撃は……

 苦労して苦労して、ようやくたどりついた弱点に剣を突き刺すと大ダメージとともに、傷口から黒い霧が「ブシューッ!」と盛大に吹き出します。これがホントに気持ちいい。これまでの苦労が一気に報われる瞬間です。

 そして、態勢がワンダに有利になるとBGMが変化するのも、達成感を強く感じられるところですね。

『ワンダと巨像』 『ワンダと巨像』
▲弱点はワンダが近づくと紋章のように光る場所にあります。ここに剣を突き立てたときが、本作最大のカタルシスを感じる場面だと思います。

 そして最後の一撃を入れた瞬間、それまで流れていたBGMが止まり、世界がスローモーションのようにゆっくりと剣が弱点に入っていく演出がまた見事。戦いという名の戯(たわむ)れが、これで終わってしまうんだという寂しさにも似た感情を、このスローモーションの演出の最中に感じました。

 同時に「次の巨像はどんな相手なんだろう? どんな戦いになるんだろう?」と新たな期待に胸をふくらませるのです。

『ワンダと巨像』 『ワンダと巨像』
▲巨像を倒したワンダが目覚めると、次に倒すべき巨像のいる場所と特徴が謎の声により告げられます。これがまた想像力をかきたてるんですよ!

 実際にゲームをプレイした時、私はこの調子でずーーーっとプレイをし続けて、徹夜どころか翌日のお昼まで遊んでいました。それくらい集中して遊び続けた経験は、10年後の今でもほとんどないです。

 さらに、ゲームを進めていくとプレイヤーは主人公の“ある異変”に気づかされます。それは徐々に大きくなっていき、物語のクライマックスへとつながっていくところなのですが……これはぜひともプレイして確認してもらいたいところです。

 そして2周目以降になると、ハードモードやタイムアタックモードが解禁になったり、隠されたアイテムなどが使えるようになります。PS2版は私は3周ぶんくらいまで遊びましたね。握力ゲージがある一定以上まで上がると、最初の神殿の最上部まで上がることができる、というのも素敵すぎる隠し要素でした。

 この10年の間に、自分は結婚して息子もできましたが、息子がゲームができるくらい大きくなったら、ぜひ『ワンダと巨像』をもう1度一緒に遊びたいです。その時は、息子になるべくノーヒントでクリアさせたいなあと(笑)。

 もしこの記事をご覧になられてからプレイするのであれば、PS3で発売された『ワンダと巨像』がオススメです。ダウンロード版もあります。あとは、上田文人さんの最新作『人喰いの大鷲トリコ』も首を長ーーーくして待ってます!

【周年連載 バックナンバー】

→第28回:名作『ワンダと巨像』10周年。今なお色あせない“巨像と戯(たわむ)れる”濃密な時間【本記事】

→第27回:『クロックタワー』20周年。名作ホラーの思い出をややネタバレありで掲載

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データ

▼『ワンダと巨像』ダウンロード版
■メーカー:SCE
■対応機種:PS3
■ジャンル:A・AVG
■発売日:2012年1月31日
■希望小売価格:3,048円(税抜き)

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