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2015年12月19日(土)

『DDON』楽曲を手がけた牧野忠義さんへインタビュー! オリジナルサントラCDの読者プレゼントも

文:kbj

 カプコンが基本プレイ無料でサービス中のPS4/PS3/PC用ソフト『ドラゴンズドグマ オンライン(DDON)』。本作のサウンドトラックがミュージックレインから発売中。それを記念して、楽曲を手がけるコンポーザー・牧野忠義さんへのインタビューを掲載する。

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』

 『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』は、ゲームの世界を彩る66曲を、DISC2枚に収録。初回限定盤には、ハンター用オリジナル武器“オーフリングボウ【天】”&“覚者への支給品【薬】”のイベントコード、32ページの特製フォトブックが付属している。

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』
▲“オーフリングボウ【天】”
『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』 『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』
▲フォトブック表紙▲フォトブック中身

 牧野さんは、『モンスターハンター』シリーズや『ドラゴンズドグマ』シリーズの楽曲を手掛ける作曲家兼ギタリスト。『モンスターハンター』オフィシャルギターユニット・Black Luteのメンバーで、“狩猟音楽祭”に定期出演している。

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』

 また、“Video Game Orchestra2014”にゲストギタリストとして参加し、『ドラゴンズドグマ』の楽曲を演奏した。作曲・演奏活動のみならず、サラウンドミックスやオーガニックサウンドレコーディングにおいても独自の方法論を模索し続けている。

 発売されたサントラCDについて、牧野さんにコメントしていただいた。記事の最後にはサイン付きのサントラCD読者プレゼントもあるので、見逃さないように!

――『ドラゴンズドグマ』シリーズの作曲は4作目になりますが、今回の曲を作るうえで何を意識されましたか? また、変えている部分、また、変えていない部分はどこでしょう?

 シリーズタイトルの作曲はつねに過去作からの影響が色濃く出ますが、シリーズを重ねるごとに、被りを意識することになるので今作の音楽を作るにあたり、改めて過去作を見直しました。

 『ドラゴンズドグマ』は生楽器主体のダークファンタジー色に統一し、『Eternal Return』という抒情的なメインテーマが軸にありました。次回作となる『ダークアリズン』は黒呪島のイメージを出す為にシンセを加える反面、ストーリーを深く語るテーマ曲『Coils of Light』が存在感を放っています。

 『クエスト』はゲームアプリとして、『DD』らしさを残したままJRPG的な戦闘曲を目指したことで、パズル&ドラゴンとのコラボにも繋がり、ポップな映像と壮大な音楽のギャップが評判にもなりました。

 変える部分・残す部分は手法こそ試行錯誤しましたがポリシーは実は明確で、僕はやはり過去曲の雰囲気に軸足を置いています。多くの『DD』シリーズファンの皆さんはそれを音楽に望んでいると思ったからです。

 今作は絵的にも色彩鮮やかになってきていたし、F2P(Free-to-Play)の今作で初めて『ドラゴンズドグマ』に触れる人も多くいると思ったので、曲調を暗くし過ぎないようには意識しました。単純にポップにしようということではなく、シリーズ音楽のコンセプトでもある“風や波に混ざる音楽”を、より突き詰めていった形になります。

 『ドラゴンズドグマ』では鳴っているか分からない位の存在感のない音楽と、ド派手な戦闘曲のギャップがとても重要なカギになっていますので、優勢状態になった時に流れる『死闘の果てに』などはアイデンティティーとしてしっかり残そうという考えは貫いています。

――牧野さんご自身、これまでの『ドラゴンズドグマ』に対してどのような印象を抱いていますか?

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』
▲画像は『ドラゴンズドグマ』のもの。

 ストーリーの展開や分岐は、いろいろな意味ですごく尖っているのに加えて、ポーンシステムという独創的なアイデアと、海外を意識したフォトリアルな描写がありました。『ドラゴンズドグマ』の伊津野ディレクター(※伊津野英昭さん)が「ポーンって言うのはな……」と、当時うれしそうに話されていたのがとても印象に残っています。

 このシリーズの原点であり、普遍性を持ったタイトルだと僕は思います。もちろん音楽においてもです。

――前作の印象がある中で、本作『ドラゴンズドグマ オンライン』の作曲を行うにあたって一番苦労した点、注意した点はどこでしょうか?

 『DDON』には似て非なるオリジナルの世界観がありました。過去曲の色味だけでは表現できないということも理解していました。僕にとってもっとも難しい決断だったのは、『Eternal Return』という代名詞的になじんだ曲を断ち切ることだったと思います。

 そこに価値を見いだせなければ、僕は『DDON』の音楽は作れなかったかなと思っています。

――曲を作るうえで開発メンバーから依頼されたことはありましたか?

 基本的には今まで通り、まずは僕の思う音楽性で作ってみて、違和感があったらすり合わせる、というスタンスです。今までの積み重ねがあったからこそできるフローですね。

 ただ、非常に重要なシーンの曲などはプロデューサー、ディレクターと何度もやりとりをしました。オーダーが来るということは必ずそこに理由がありますし、同じひとつのカットシーンでも、人によって実はすごく拘りのあるパートだったりもするので、しっかりと目線を合わせて、最高の結果を出そうと取り組んできました。

――作曲に際してゲーム画像をご覧になって、どのようなことを感じましたか?

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』
▲画像は『ドラゴンズドグマ オンライン』のもの。

 一言でいうと、垢抜けたねって(笑)。初めてマルチプレイができた時は、とにかく走っているだけで楽しかったです。「ボルド鉱山、遠ぉ!」とか言いながら。

 初めて見るステージや戦闘曲を作る時は、実際にプレイしながら構想を練ることもありました。映像と音楽の親和性は高いので、言葉や一枚絵より断然イメージが湧きますね。

――どのような経緯や発想を経て本作のメインテーマ『Arisen“s”』が完成したのでしょうか?

 オンラインタイトルとして実際にどういうゲームになっていくのか、僕を含む過去作を担当してきたクリエイターたちですらも、見えない状況がありました。さらに先述の通り、『Eternal Return』を意識的に断ち切ったことで瞬発的な良し悪しの判断が誰にもできなかったんですね。

 僕の正攻法は、メインテーマを作ってから他曲へ散りばめるフローですが、今回は長期戦に持ち込んだというか……ちょうど並行して他のコンセプトとなる、Main Titleや白竜神殿、黄金郷などの原曲を作っていたので、それらを“断片”として逆にメインテーマに取り込んでいくという……普段と真逆のやり方をしてみたことで突破口が見えました。

 メインテーマができてから、さらに他の楽曲に落とし込んでいった時も、しっかりと存在感を放ってくれる楽曲に仕上げることができました。『死闘の果てに』もよりヒロイックになりましたね。

 メインテーマに関しては関係者の熱量も当然高く、当時いろんな意見をいただいたので僕のHDDには“シリアス系歌ものARISEN“S””、“スピード感のあるオーケストラロック系歌ものARISEN“S””など、いろんなバージョンのデータが残ってはいます。『Coils of Light』同様、仮ボーカルは僕ですが公開の予定はありません(笑)。

――作曲する際には何を使われるのでしょう? また、本作から新たに導入した楽器はありますでしょうか?

 作曲は専らピアノとPCです……というか一般のDTMユーザーと変わらない環境ですよね。最近は音源もソフトウェアも高性能なので、作曲の環境においてはプロとアマチュアの境界がほとんどありません。

 『DDON』を象徴する楽器が何か欲しいなと考えていたのですが、絵がビビッドになったことで、音に透明感のある楽器が合いそうだなと。かつ自分が演奏できるものに絞り込んでいった結果、“ギリシャブズーキ”を仕入れることにしました。

 コレは復弦楽器と言って、1コースに2本の弦が張ってあるのですが、日本でメジャーなのは“アイリッシュブズーキ”です。

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』
▲ギリシャブズーキ

 微妙にチューニングをずらすことで音が広がり、大陸的な響き方をします。これを『DDON』の象徴的な楽器として、『ARISEN“S”』や『白竜神殿レーゼ』、『ハイデル平原』などで演奏しています。

 あと小ネタですが、この楽器を持った演奏NPCが酒場にいますので彼らが弾いている曲にも耳を傾けていただければと思います。

――今回のサントラに収録されている中で、お気に入りの曲はどれですか? またその曲ではどこが気に入っていますか?

 挙げたらキリがないですが、『ARISEN“S”』、『死闘の果てにDragon’s Dogma Online ver.』、『双牙の地竜~ベヘモット戦~』、『光の大地~ハイデル平原~』、『異界の狭間』、『大地の息吹~ミスリウ森林~』、『レスタニアの魂に歌う』などでしょうか。

 『死闘の果てに』はもともとブルガリアでオーケストラ収録したものでしたが、今作ではアーティキュレーションをすべて見直し、最高に盛り上がる部分では『ARISEN“S”』がしっかりと聴こえる構成にしました。

 ベヘモット戦はリンドブルム戦と同じ楽曲ですが、スピード感あるオーケストラロックとして、戦闘のテンポ感やストーリーに感情移入できる王道の作りにしています。この曲が流れてくると「あ、やばいヤツだ」と直感出来ますよね(笑)。

――シーズン1.2の曲として新たに追加されるものについて、各曲の特徴を教えていただけますか? また、その中で、聞いてほしい曲は?

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』

 OSTリリース時には『Extra Track』01~09として曲名を伏せている状態ですがすべての曲名を公開できることになりました!

●Extra Track曲名
『Extra Track-01』 ⇒ 『混沌と破滅の使者~ズール~』
『Extra Track-02』 ⇒ 『ザンドラ禁域戦闘』
『Extra Track-03』 ⇒ 『メルゴダ護政区』
『Extra Track-04』 ⇒ 『託された未来』
『Extra Track-05』 ⇒ 『忘失の天都~亡都メルゴダ~』
『Extra Track-06』 ⇒ 『黄金郷の住人』
『Extra Track-07』 ⇒ 『栄華の残影~亡都メルゴダ 王宮層~』
『Extra Track-08』 ⇒ 『この上なく単純で美しい世界』
『Extra Track-09』 ⇒ 『竜を護る者』

 これらはすべて物語において重要な楽曲です。冒頭からずっと絡み続けてきた『混沌と破壊の使者~ズール~』、ある人物の行動をきっかけに発生する『託された未来』、そしてたどり着いた人だけが体感できる『竜を護る者』などがあります。

 実際にどんなシーンでどの曲が流れるのか、OSTを聴いてくれた皆さんもぜひプレイして、手に汗握ってほしいと思います。これらの曲名は公式サイトでも掲出されますので、覗きに来てくださいね。

――ゲームをプレイしながら耳にするのがBGM。そのような曲を作るうえで、どのようなことを意識されていますか?

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』

 今作では“ミュージックディレクター”という肩書きをいただきました。これは曲を作るだけではなく、全体の演出やシステムの部分もしっかり考える必要があるということです。

 僕はオンラインという形態に対して造詣が深くなかったのでサウンドメンバーで代表的なオンラインゲームを実際にプレイして研究しました。オンラインならではのおもしろさ、モチベーションになる目標意識、クエストの進み方……音楽性はもちろんですが、ゲームのレベルデザインなども半年くらいかけて勉強しました。

 そこで気付いたのは、従来の汎用曲・専用曲という棲み分け以外に、レベルデザインによる“頻度”と“心地よさ”がより重要、ということでした。

 一度しか聴かない曲、一度しか見ないシーンにコストをかけるより、サイクルとしての基本の遊びを理解したうえで、聴く頻度が高い楽曲に対してより手間をかけてあげた方が結果的に全体クオリティーを高く保てます。

 また、戦闘エリアでも静かで印象的な楽曲を仕込んでおくことでユーザーがそこにわざわざ向かうモチベーションを維持しようという考えもあります。緊張感のあるダンジョン曲ばかりだと、プレイしていてしんどいじゃないですか。それを押し付けるのは僕は違うと思ったんですね。

 例えば、メインポーンを救いにいく『異界の狭間』では、黄泉の世界をイメージした神聖な雰囲気の楽曲を書き、戦闘が起きても戦闘曲に切り替えていません。『契の神殿』は重要な戦闘がいくつも起こる場所ですが、ダンジョン攻略に時間がかかるので、物悲しい雰囲気の曲にしています。

 絵やストーリーだけに引っ張られて、音楽も押し付けにするのではなく、プレイする側になって演出を考えていくことが、僕のミュージックディレクターとしての仕事でもありました。

――牧野さんご自身、本作をプレイされていますか?

『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』

 リリース後も忙しい時期が続いているのであまりインできていませんが、もちろんプレイしていますよ! まったく知らない人とプレイするのはちょっと緊張しますが(笑)、チャットしながらレスタニアを探索するのは楽しいものです。

 実時間をかけて進めると新たな発見がありますし、サウンド設定は初期値・TVスピーカーというユーザーさんと同じ環境でプレイすることで、音楽に関しても今後に生かしていくヒントを得られるかなと思っています。

――ファンタジー作品でありながら、アクションゲームである本作。他のタイトルとの作曲と作り方の違いはあるのでしょうか?

 先述のとおり、『DDON』では心地よさも重視しているので、ある意味ヒーリングミュージックに近しいものもあります。寝落ちするレベルの(笑)。

 ただ、非戦闘→ザコ戦闘→ボス戦闘→『死闘の果てに』という基本設計において音楽の密度や温度感を調整しているのでそれぞれのディップで流れに緩急を付けています。それが、ファンタジーとレベルの高いアクション性を兼ね備えた『ドラゴンズドグマ』の音楽の特徴だと思います。シネマティックであるとか、オーガニックであるとかはその手段に過ぎないかなと。

――リリースされるやユーザーからの反響が大きいタイトルですが、その中で作曲していることについて、いかがお考えですか?

 シリーズを重ねるごとにハードルは上がりますが、自分で作ってきたものですし、僕の中に完全に根付いているので、基本自然体ですよ。

 『ARISEN“S”』や『死闘の果てに』など、最重要曲には全身全霊で取り組みますが、そればかりだと息切れしてしまう。他の曲を作りながら、またメインテーマを聴いてみて、手を入れて、みたいな事を自然体でやっていくことで最終的に『ドラゴンズドグマ』シリーズの世界観を音楽で彩ってきました。

 オンラインという形態になったことでいろいろなとらえ方をされると思いますが、僕が今作も音楽を任せてもらえたことで、微力ながらシリーズファンの皆さんの安心感になれたかな、と。いま少しだけ感じています。

 今作で参加した加藤あずさには過去作を聴きこんで消化はしてもらいましたが、彼女のオリジナリティーを生かしつつシリーズに溶け込ませていくことに僕は注力しました。そのふたつが合わさって、今作の色味となっていると思います。

――最後にCDの聴きどころとユーザーへの一言をお願いできますか?

 シリーズ最新作として、ファンの皆さんの期待に応えるのはもちろん、オンラインタイトルに一石を投じる楽曲クオリティーだと自負しています。ぜひ、聴いてみてくださいね!


 今回紹介したサウンドトラックに牧野さんのサインを入れていただいたものを電撃オンライン読者にプレゼントする。こちらが欲しいという人は下記フォームに必要事項を記載して応募してほしい。締切は2016年1月3日

【プレゼントに応募する】

(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM CO., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

データ

▼『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』
■発売元:ミュージックレイン
■品番:SMCL 413-414
■発売日:2015年12月9日
■価格:3,800円(税抜)
 
■『ドラゴンズドグマ オンライン オリジナルサウンドトラック』の購入はこちら
Amazon.co.jp
▼『ドラゴンズドグマ オンライン』サービス概要
■メーカー:カプコン
■対応機種:PS4/PS3/PC
■ジャンル:アクション(オンライン専用)
■正式サービス開始日:2015年8月31日
■プレイ料金:基本無料/アイテム課金

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