2016年6月23日(木)
E3 2016でも新情報が公開され、世界中で話題を呼んでいるPS4用ソフト『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。今回は、そんな本作の開発を手掛けるプラチナゲームズの開発現場にお邪魔する、スタジオツアー企画を2本立てでお届けいたします!
1本目となる今回の記事では、日々着々と進化を続ける『ニーア オートマタ』の生みの親たちにお会いして、作品に懸ける意気込みや想いについてをおうかがいします。ここでしか読めないマニアックトークもありますのでご期待ください。
なお、E3 2016で発表された情報、開発スタッフによる座談会企画もまとめておりますので、ぜひご覧ください!
今回、大阪にあるプラチナゲームズの開発スタジオにお邪魔してきた我々。おもにお話を聞かせてくれたのは、プラチナゲームズ所属の9人のクリエイターたちです。
ゲームデザイナーの田浦貴久さんをはじめ、いずれも才能にあふれるスタッフたちが、いかにして『ニーア オートマタ』に取り組んでいるのか? 各々にお話を聞かせてもらいました。
──田浦さんは、本作のメインプランナー/ゲームデザイナーであり、ヨコオさんのお守り役というイメージがありますが、実際はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
田浦貴久さん(以下、田浦):お守り役ってことはないです! どちらかというと、僕がいじられることのほうが多いですからね(苦笑)。仕事としては、おもにバトル関連のデザインなどを担当しています。
──なるほど。E3のトレーラーで公開された歌うボスとの戦いなども、田浦さんがデザインされているんですか?
田浦:そうですね。このボスは、直接攻撃ではなく、VFXで表現された衝撃波などの間接的な攻撃をメインに繰り出すのが特徴となっています。
VFX関連のお話は、別のスタッフが詳細を解説してくれると思うんですけど、“位置取りが重要となるバトルをゲーム全体のコンセプトにしたい”とヨコオさんからオーダーがあったので、それを意識しながら煮詰めていくのが僕の仕事になります。
──敵の行動パターンとか、演出に関していろいろと決めていくお仕事?
田浦:そうですね。たとえば、敵が遠距離攻撃を連続して繰り出してくる行動パターンを考える場合、あきらかに誰にでもわかるスキマを作って“あ、ここめがけてジャンプして回避すればいいのか”といった調整をしたりしています。ただ面と向かって直線的に戦うだけではなく、少しずつ状況を理解しながら動き回って戦う楽しさを意識して作っています。
──ボス戦などは、やはりヨコオさんの中で明確なイメージがあったりするんですよね?
田浦:大筋というか、ストーリーのどこらへんで、どんな相手と戦うのかってアイデアに関しては、ヨコオさんからほぼすべてオーダーをもらっています。
僕としては、そのオーダーを見たうえで、“この敵であればこういった攻撃モーションを盛り込もう”、“ゲームの流れ的に、この敵の難易度バランスはこれくらいの按配で調整しよう”といったアイデアを出させてもらう感じですね。(開発画面を見せてもらいながら)じつは、こんな感じでバトルの途中でいきなりトップビューに変わる敵もいたりするのですが、こういったアイデアはヨコオさんから指示が飛んできます。
──うおお! 前作でもそうでしたが、いきなりトップビューになると味わいが変わって新鮮ですね! でも、弾幕も多いしなんだか難しそう……。
田浦:いえ、見た目ほど難しくはないと思いますよ。いわゆる“イクラ”というか、弾幕も前作同様2種類しかありませんし、当たり判定もそこまでシビアにはしていませんので。
──弾幕が2種類なのは、どんな意味があるんですか?
田浦:種類も内容も前作を踏襲しており、破壊手段が異なります。色の薄い弾幕はどの攻撃でも破壊できるので比較的安全なのですが、色の濃いほうは近接攻撃でしか破壊できません。
ある程度リスクを負ってでも弾を消して敵に反撃を仕掛けるか、それとも安全に回避に徹するのか……など、状況に応じて立ち回ってもらうための要素になっているかと。
──なるほど。バランス調整がたいへんそうですね。
田浦:見栄えも重要視して弾幕を放っていますが、それによってアクションの気持ちよさが削がれるのは避けたいので、油断さえしなければ当たらない、くらいの調整にしていきたいですね。ここらへんは、これからもっともっと練り込んでいって、ユーザーさんに満足してもらえるところまで落とし込んでいければと考えています。
──では、田浦さんが戦闘面でこだわっている部分について教えてください。
田浦:バランス調整などいろいろあるんですけど、出ている情報に限っていえば、歌うボス戦で“敵がBGMに合わせて攻撃を仕掛けてくる”というアイデアを形にするところですかね。
──それは素敵な趣向ですね! 具体的には、コンポーザーの岡部啓一さんにそのようなオーダーを出されたってことですよね?
田浦:これもヨコオさんこだわりの部分で、ヨコオさんからオーダーが出されていると思います。そうして岡部さんに作っていただいた曲に合わせて、我々がアニメーション速度や攻撃のタイミングを調整したりしていきます。
──ロボットアニメや映画などには、そういった趣向の戦闘シーンも見受けられますが……。
田浦:ええ、これまで僕がかかわってきたゲームでは、展開に合わせて曲を変化させる手法を取っていたので、曲が主導になってバトルが展開するパターンは初めてでした。この演出については、トレーラー映像はもちろん、実際にゲームをプレイする際にもじっくり見ていただきたい部分ですね。
──楽しみにしております。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
田浦:ヨコオさんの生み出す素晴らしくも歪んだ世界の邪魔にならぬよう、かつ、より盛り上げられるよう頑張っています! ヨコオさんへ、ウマい肉が食いたいです。
──どうもありがとうございました!
──まずは、ご自身のお仕事について教えてください。
根岸功さん(以下、根岸):ヨコオさんからいただいたシナリオを、実際にゲームに落とし込んでいく作業がメインですね。ストーリーの流れから、キャラ同士の会話を構成したり、イベントに演出をつけたりしています。
最近はサブクエストの構成を任せてもらっていますので、こちらをブワッと増やして膨らませ、ゲームのボリュームを大きくしたりもしています。
──シナリオ全体のプランはすでにヨコオさんの頭の中にあったものかと思うのですが、それをより具体的にしていく……ということでしょうか。
根岸:そこは二人三脚というか、かなりディスカッションを重ねて進めたりはしていますね。ヨコオさんのなかで具体的にイメージがあるシーンもあれば、バトルに関してキーワードだけが決まっているものなどもあって、そういったフワッとしたものをどう膨らませて、ゲームとしておもしろい形に落とし込むにはどうすればばいいのか、といったところを考えるのが僕の仕事です。
任せていただけている部分も多いのですが、アイデアが浮かんだらそれをヨコオさんのところにお持ちして、協議を重ねながら形にしています。
──単刀直入にいれば、ヨコオさんのワガママを実現する役割ってところでしょうか?
根岸:そういう側面もありつつ(笑)。ただ、こちらからまったく別のことを提案したり、アイデアを付け足したりすることも結構あって、それを許容していただけたりもしますので、持ちつ持たれつという感じです。開発として、とてもやりがいのある仕事ですよ。
──ゲームデザイナーさんやゲームプランナーさんって、なんでもこなすってイメージも強いんですけど、実際のところはいかがですか?
根岸:そうですね。とくにこのプロジェクトでは、全体的な部分から細かいところまで、任せてもらっている部分は多いかもしれません。たとえば、この砂漠でのシーンなんですけど(開発画面を見せてもらいながら)2Bたちは砂漠の斜面をスーッと滑り降りることができるんです。
──おお! なんかスケボーとか、サーフィンで波乗りしているような感じですね。
根岸:こういったアイデアを形にするとき、プログラムで斜面を滑れるように組み込むわけですが、実際の細かい動きですとか、気持ちよく操作するための演出ってどうすればいいのか……なんてことまで考えていたりはします。
──たしかに、斜面って走り下りるのではなく、シャーッと滑り降りたほうが気持ちいいですもんね。とはいえ、そういった細かい調整までゲームデザインの一部なんですね。
根岸:まぁ、ヨコオさんとのやり取りで上がってきたアイデアを形にするために、色々な雑務全般を引き受けているって感じですかね(笑)。
シナリオに関しては、ヨコオさんがかなりの部分を受け持ってくれているので、たとえば「こういった敵を出してほしい」とお願いして、あらたにシナリオを追加してもらったり、シナリオをゲームとしてよりわかりやすくするために、流れを微調整してもらったりすることもあります。どちらかが一方的にワガママを言っているわけではないですね。
──なるほど! まさに二人三脚なんですね。では、そんな根岸さんにとって、本作で一番こだわっている部分はどこですか?
根岸:もちろん幾つもありますけど、現在の仕事でいえば、サブクエストにはかなりの時間を割いています。
──ほほう。相当ボリュームがあるってことでしょうか?
根岸:前作を体験した方にもしっかり満足していただけるよう、まさに今がんばっているところですね。まだ詳細はお話できないのですが、今後の続報を楽しみにしていてほしいと思います。
──これまでのプラチナゲームズ開発のゲームと比較して、違いを感じる部分はどこですか?
根岸:これまでの弊社の作品では、アリーナのような決められたシチュエーションでガッツリ戦闘して、勝ったら次のシチュエーションに進む……という形が多かったのですが、『ニーア オートマタ』はオープンフィールドでのバトルが展開しますので、世界観を重視した戦いが展開するのがおもしろいですね。
これまでのプラチナゲームズファンの方には、かなり新鮮に映るのではないでしょうか。ぜひご期待いただければと思います。
──では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
根岸:今回はゆっくりまったりできる部分が多く、プラチナタイトルとしてはかなり新鮮なテンポのゲームになっていると思いますので期待してください! シナリオ以外にも、ヨコオさんの変態的な仕様もたっぷり入っていますので、RPGとしてもかなり変化球な仕上がりになっていますよ! お楽しみに。
──どうもありがとうございました!
──まずは、ご自身が携わられているお仕事について教えてもらいたいのですが……ロボットのフィギュアだらけの席を拝見して、ある程度理解できました(笑)。
木嶋久善さん(以下、木嶋):いやいや、このへんのフィギュアは仕事の参考用ですよ。……ある程度、プライベートの趣味も交じっていますけど(笑)。
──なるほど。つまるところ、ロボットが大好きということですね?
木嶋:おっしゃる通り(笑)。そこを評価していただいて、『ニーア オートマタ』では登場するロボットのデザインを担当させてもらっています。
──今回、敵は機械生命体ということで、小さなものから大きなものまでロボットだらけだと思うのですが、それらをすべて担当されていると?
木嶋:UIデザインとの平行作業ですので一部は分業していますが、9割近くは自分が担当しています。
──『ニーア』には前作にもP-33……いわゆるPちゃんなどのロボットが登場しているわけですが、デザインにあたっては、それらを踏襲しているのでしょうか?
木嶋:いえ。『ニーア オートマタ』は、前作とのつながりはありますが、登場するロボットに関しては、あえて前作を無視したデザインにしています。そこはヨコオさんからも、「前作のことはできるだけ考慮せず、自由にデザインしてほしい」とのオーダーが来ていますので。
──たしかに、『ニーア オートマタ』に登場する機械生命体は地球に攻め込んできた宇宙人の手によるものなわけで、前作に登場したPちゃんのような、人間が作ったものと一緒であるはずないですよね。
木嶋:その通りです。もちろん『ニーア』という世界を形作るうえで最低限必要な軸になる部分といいますか、手触り感や肌触り感レベルでのデザインコンセプトは前作を踏襲しようと考えていますが、それ以外の部分に関しては、ほぼほぼ自由にやらせてもらっています。
──ちなみに、現在のところはどれくらいのロボットをデザインされているんでしょう?
木嶋:えっと……じつは自分自身で正確な数を把握しきれていないのですが、ベースとなるものでいえばおよそ25体くらいではないでしょうか。
──ほほう、25体ですか。つまりは、ゲーム内に登場する敵のパターンは25体くらいになると?
木嶋:いえ。ゲーム内ではデザイン違いのものなど、もろもろのパターンが存在しますので、もっともっとバリエーションは増えますよ。あくまでベースとなるものが25体くらいという意味です。
──なるほど。ちなみに木嶋さんはイラストレーションでエネミーをデザインされていますが、実際にそれをモデリングされるのはまた別の方ということですよね? その方とは、どのようにして意思の疎通をとっているのでしょう?
木嶋:形やギミックなどに関しては、ある程度自分で仮のモデリングを作って渡したりして、それをベースにブラッシュアップしてもらっていますね。色味に関しては、どちらかというとヨコオさんの要望が強いので、ずいぶん試行錯誤しています。
──パッと拝見した感じ、あまり色数が多くないのも、そういった理由があるからなのでしょうか?
木嶋:その通りですね。たとえば、E3のトレーラーで発表された歌うボスのデザインはこちらなんですけど、このスカートというか、まとっている布の赤味に関しても、現在のものに決まるまでにずいぶん時間がかかりました。
──じつは、最初はもっと派手だったりしたんですか?
木嶋:あまり派手な色は使わないというのが『ニーア オートマタ』のコンセプトとしてあるんですけど、画面の見栄えなども考慮する必要があるので、派手になり過ぎず、かといって暗くて地味にはなり過ぎず……というラインを模索してデザインしています。
──そこらへんのやり取りって、ほかの作品に比べていかがですか?
木嶋:当然、どの作品でもそういった模索は行うのですが、『ニーア オートマタ』に関しては、より微調整が求められる部分はありますね。あまり多くの色を使いすぎないとか……ヨコオさんの中にかなり明確なこだわりがありますので、その都度、すり合わせさせてもらっています。
──ちなみに、デザイン画を拝見すると、ザコロボットが錆びているものと錆びていないものがあるのが気になるのですが……。
木嶋:これは単純に、モデリングするにあたって錆の効果がないほうがわかりやすいだろうということで、2パターン用意している形です。
実際にゲーム内に登場する際は、こういった錆や汚れなどの効果を足してほしいんだけど、デザイン自体はこうなっていますよ、とわかりやすく説明するためのものです。全体の細かい形を錆なしのバージョンで、ゲームに登場する際の雰囲気を錆びつきのバージョンで説明するって具合ですね。
──なるほど。仕事が細かいというか、配慮が行き届いていますね!
木嶋:実際は、デスクに置かれているフィギュアを持って行って、「関節はこんな風なイメージで考えていて、こういったアクションで武器を使います!」と説明することも多いんですけどね(笑)。
──たしかに、それは便利そうです。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
木嶋:メカデザイン・UIデザインともに渾身の思いを込めて制作しております! 思いが強すぎて方々に迷惑をかけまくっていますが(汗)、その分自信を持った出来に仕上がっています。
ヨコオさんには迷惑をかけたりかけられたりしていますので、諸々大変助かりましたという気持ちとアレ早く出してくださいという気持ちでいっぱいです!
──どうもありがとうございました!
──プログラマーさんといえば、皆さんからのムチャブリをなんとか形にする仕事……なんてイメージがあるのですが。
大西 亮さん(以下、大西):ムチャブリといいますか、今回はヨコオさんが明確にやりたいことがいくつもあるとのことでしたので、できる範囲で対応させてもらっています。
ただ、結果的にそれがユーザーさんにとっておもしろいものになるであろうという確信はありますので、苦になるといったことはまったくないですね。むしろ、いつも高いモチベーションで仕事をさせてもらっています。
──ヨコオさんの存在が、いい刺激になっているってことですかね?
大西:プラチナゲームズのプログラマーは、プログラムだけを行うわけではなく、企画に口を出す人間が多いんですよ。「ここはこうしたほうがおもしろい!」といった意見が、チームの中でどんどん出てくる。そこらへんをヨコオさんに提案させてもらっているので、与えられた仕事を黙々とこなしているだけって意識はないですね。
──以前、ヨコオさんにインタビューをさせてもらったとき、プラチナゲームズさんのスタッフは、“アイデアが浮かんだ場合は実際にプログラムなどを組んで見せにくる”というお話をお聞きしたのですが……。
大西:新規にプログラムを書いてお見せするというのはなかなかありませんが、プログラムを書いている途中で、“ここはこうしてみたほうがよさそうだ”というアイデアが浮かんだら、その状態でお見せすることはありますね。
または、言われた通りに作り上げたものの、いざ提出前に自分たちで見てみたときに、「あ、ヨコオさんが実現させたいことってコレじゃないよね」って気づくこともありまして……。
そういった場合に、「どうしましょうか?」と指示を仰ぎにいくのではなく、「こうしたらどうですか?」というアイデアを乗せて聞きに行くように心がけています。それで、ヨコオさんにちょっと違うと言われれば、もとに戻せばいいだけですから。
──なるほど。密なコミュニケーションがとれているってことなんですかね。
大西:そうですね。そこはかなり密接に、膝を突き合わせてやらせてもらっていると思います。おしゃべりが達者な方ですし、お話していて楽しいですよ(笑)。
──『ニーア オートマタ』の仕事をしていて、他のタイトルと違うなと感じた部分はどこでしょうか?
大西:ヨコオさんは欲張りというか、入れられるものは全部入れてみようという貪欲な方なのが印象的ですね。これまでのプラチナゲームズの作品には、“入れたところで意味がないものは入れない”という判断基準があったというか、一般的なゲームで言えばそれが当たり前だと思うのですが、ヨコオさんの場合はそうじゃない。
もちろん、コストの計算はしてくれるのですが、そこまで労力がかからなそうな案件は、とりあえずなんでも実現させてみようって考え方なのが新鮮です。場合によっては、“その仕様を入れるのであればこういった設定を追加しよう”ってことまでやってくださることもあるので、おもしろいですね。
──ヨコオさん、なんでも拾ってくれる懐の深さが持ち味っていうか、おもしろければなんでもいいって思ってらっしゃるところはありそうですよね。
大西:おかげさまで、プログラムの副産物で生まれたものから、みんなで笑い話のようにして話していたことが本当に実現したものまで、いろいろありますよ。普通だったら日の目を見なかったような仕様とかですね。
──本編にまったく絡まず、サブストーリーにもまるで関係ない……そういった要素が思わせぶりに入っているのも、“ヨコオワールド”を構成するのに必要なことなのかもしれませんね。
大西:そうですね。ユーザーさんにとって、そういうところが魅力として映っているんじゃないですかね。むしろ、ユーザーさんに拾ってもらって、世界観を広げていくという側面もある気がします。
──想像の余地がある、ってことは大事なことなのかもしれませんね。
大西:はい。ですから、これまでのプラチナゲームズのタイトルとはひと味もふた味も違ったテイストの作品になるかと思いますので、ぜひご注目いただければと思います。
──楽しみにしています。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
大西:今回『ニーア』という作品にかかわれて大変うれしく思います。本作は、『ニーア』好きな人も“アクションゲーム”好きな人も、どちらも楽しめる濃厚な1本に仕上っています。ヨコオワールド+プラチナアクションの融合がどんな化学反応を起こしたのか、ぜひその目でお確かめください!!
──どうもありがとうございました!
──田崎さんが今回担当されているお仕事は、キャラクターのモデリングとのことですが、具体的にはどのようなことをされてるんでしょうか?
田崎一軌さん(以下、田崎):アートチームから来たデザイン画をベースに、実際にゲーム内に登場させるキャラクターモデルを作成しています。3DCGソフト上で骨を仕込んで、でき上がったモデルを実際に動かすことができるようにするところまでが仕事ですね。
──なるほど。ちなみに、これらのキャラクターは一括で全身を作成するんですか?
田崎:基本的にはいくつかのパーツに分けて作成していき、折を見てそれらを合体させていく形ですね。たとえば、E3で登場した歌うボスでいえば、ロボット自体の骨格とは別に、身にまとわせる布なども制作しました。布の素材感などにもこだわっているため、あえて既存のものを使用したりはせず、イチから制作したりしています。
──ちなみに、これらのCGを完成までこぎつけるのには、どれくらいの日数がかかるのでしょうか?
田崎:キャラクターにもよりますね。たとえば歌うボスでいえば、だいたい3カ月くらいでしょうか。平均すると、それくらいになると思います。
──3カ月! 正直、それが長いのか短いのかわかりませんが、そんなモデリングを10体以上とか作るとなると、相当たいへんですよね……。
田崎:自分が担当するぶんで言えば、歌うボスクラスのCGは3~4体でしょうかね。自分だけで作っているわけではなく、チームを組んで制作にあたっています。
──しかし、制作にあたってそんなに手間と時間がかかるのであれば、リテイクなどが入ると、とんでもないことになるのでは……。
田崎:ええ。なので、ここまで仕上がったものにリテイクが入ることはほとんどありません。というより、リテイクが入らない状況になったから、ここまで仕上げられているともいえますね。
歌うボスは、この段階で布の色味などを調整したり、ボディの光の反射数値(スペキュラー)を調整したりしましたけど、修正点といえばそれくらいです。
──それらの修正には、どのような狙いがあったんですか?
田崎:ヨコオさんからの指示ですね。色彩に関しては、かなり入念に打ち合わせをしましたが、それでも微調整がかかることはあります。
じつは、今回はヨコオさんから“スペキュラー禁止令”が出まして。ギラギラとした光沢は本作のシックな雰囲気に合わないので、多少凹凸が出なくなってでも、色彩を抑えようということになりました。
一度このような明確な指示がもらえれば、以降はそちらに合わせてモデルを作っていけばいいので、精度は上がっていくと思います。ただ、背景などとの兼ね合いもあったりするので、自分だけが修正すれば終わりというわけではないのも、いろいろな意味でたいへんなところかもしれませんね。
──ちなみに、歌うボスは下半身から光の刃のようなものを出して、それを回転させながら攻撃してくることもあるようですが、その設定も田崎さんが?
田崎:いえ。私はあくまでもモデリングまでですので、アニメーションはまた別のスタッフになります。とはいえ、そのアニメモーションを行うための仕込みはしておかなければなりません。今回、このモデルに200以上の骨を仕込んでいるのは、あの攻撃を実現させるためというのも大きいですね。
──なるほど。それは一朝一夕では終わらないわけだ……。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
田崎:これぞプラチナクオリティと自信を持ってお送りできるように、開発陣は鋭意制作中です。期待してお待ちください。
ヨコオさんは不思議な魅力のある方です。インタビューなどではかなり毒づいたコメントも多く、ハラハラする事もあるのですが、それでも皆さんに愛されているのは、すごいなーといつも思っています。
──どうもありがとうございました!
──まずは、ご自身のお仕事について具体的に教えてください。
村中高幸さん(以下、村中):アニメーターという名前の通り、キャラクターの動きのアニメーションを設定しています。具体的には、このキャラクターは立っているときはどんなポーズをとって、走るときはどんな動きになるのか……といったアニメーションをつけていく感じですね。
──これ、すべてのアニメーションを村中さんお1人で担当されているんですか?
村中:僕がやっているのはキャラクター全般ですね。敵のロボットのアニメーションに関しては、また別のスタッフにやってもらっていたりします。メインで動いているのは、僕も含めて3人ですね。
──制作にあたって最もこだわっている部分はどこでしょうか?
村中:プレイヤーキャラは手触りよく気持のいい操作ができるように、特に攻撃なんかはフレーム単位で調整を繰り返しています。
移動周りは動作間の繋ぎを多く用意し、なるべく人の動きとして自然な流れになるようにしつつ、移動してストレスを感じることがないように調整しています。後は、敵に関して言えばロボットの動きはしっかりとロボットらしく見えるように色々と工夫しているところでしょうか。
──ロボットらしく、ですか。たしかに、まったく違和感なく動いていますけど……。
村中:ロボットって当然のことながら、人間によるモーションキャプチャーが使えないんですよ。使ったとたん、あまりにも生々しくなり過ぎてしまいますからね。だから敵にかんしてはほとんどが手でアニメーションを付けていますので、なかなか時間がかかります。
──たしかに、ロボットならではの工夫とか苦労点とかありそうです。
村中:ロボットだけに、人間には絶対に不可能な動きをしたりもするんですよ。関節を軸にグルグルと腕を回したりとか。そういった動きを手付けで違和感なくやるというのは、なかなか調整が難しいですね。そのぶん、やりがいもあります。
──ちなみに、これまでの映像を拝見した限りでは『ニーア オートマタ』に出てくるロボットって、いわゆる“ロボットダンス”のような硬い動きではなさそうですよね?
村中:そうですね。動き出し方、止まり方ひとつとっても人間とは異なるわけで、滑らかさと硬質感については気を配っている部分です。ロボットダンスほどオーバーにはしませんが、要所でああいったカクカクとした動きも取り入れたりはしています。いいバランスになるよう、演出にはこだわっているつもりです。
──現実にはない動きを作ったりするのって、センスが問われそうなお仕事なのではと。
村中:そうですね。関節を入れる位置が少しずれるだけで、腕を振り上げた際のモーションやバランスが大きく変わっちゃうことってよくあるんですよ。そういった細かい部分を調整していくのも、地味ながら大切な仕事だと思っています。
──ちなみにヨコオさんからアニメーションに関して、なんらかの発注がきたりはするのでしょうか?
村中:基本的には信用していただけているというか、“絶対にこうしてほしい!”といった決め打ちのオーダーはあまりないですね。“こいつはこういう動きで攻撃します”といった説明はしっかりやり取りをさせてもらうんですが、具体的な作業に入ったら、動きのデザインに関してはこちらから提案させてもらうことがほとんどです。
──ちなみに、2Bや9Sといったヨルハ部隊のキャラたちは、全員アンドロイドだと思うのですが、モーションはロボット寄りになるのでしょうか? それとも、人間寄りになるのでしょうか?
村中:2Bたちに関していえば、完全に人間としての動かし方をしています。たしかに彼女たちはアンドロイドではありますが、関節などの設定は人間と同一のものになっていますから。
──なるほど。映像を見た限りでは、ほとんど人間といっても過言ではないのかなと。
村中:2Bに関しては、よりエレガントな立ち振る舞いになるよう日々務めています。主人公として、魅力的に見えるキャラクターにしてあげたいですね。
──ちなみに、今見せていただけるアニメーションってどんなものがありますか?
村中:そうですね。前作の主人公にはなかったようなギミックもあったりします。(開発画面を見ながら)たとえば、こんなものもあったり……。
──うおおおおおおおお! めっちゃカッコイイ!! って、これきっと掲載できないヤツですよね?
村中:そうですね……この場でお見せするだけってことで(苦笑)。
──いや、せめて“前作にはなかった趣向のギミックも盛り込まれている”くらいは書かせてもらえれば(笑)。これ、この先どこかで公開されることになるんでしょうけど、かなり話題を呼びそうな気がします。いろいろな意味でテンション上がります!!
村中:我々としてもものすごくこだわって作っているアニメーションなので、みなさんにお披露目できる日が楽しみです。
──本当に、なんでもアリなんですね『ニーア』ってタイトルは……。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
村中:戦闘や移動中に目にするアニメーションはもちろんですが、普通にプレイしているとキャンセルされてしまう部分や些細な動きにも気を配っていますので、敵も含め、時には一服がてら、のんびりと動きを観察していただけるとよりキャラクターを感じていただけると思います。
ヨコオさんが持つ世界観と、プラチナゲームズが得意とするアクションが融合して深く楽しんでいただけるパッケージになるよう鋭意制作中です。ご期待ください。
そういえば一年中短パンにサンダルで過ごされてて季節感無かったですけど、冬場寒くないんですか?
──どうもありがとうございました!
──“エンバイロメントアーティスト”というお仕事は、あまり耳慣れないものなのですが、具体的にはどのようなお仕事内容になるのでしょうか?
亀岡昇平さん(以下、亀岡):端的に言ってしまえばヨコオさんから出てきたコンセプトをもとに、各ステージごとのライティングを設定して、それぞれの特色を際立たせていくお仕事となります。
──なるほど。色の設定とか、そういったことをなさっているわけですかね。
亀岡:そうですね。ステージや背景といったものを含めて、画面構成をどのような形に仕上げるのかを担当させてもらっています。
──これまでのプラチナゲームズ作品と比較して、『ニーア オートマタ』の映像表現に違いはありますか?
亀岡:今までのプラチナゲームズのタイトルは、ハイスピードなアクションが多かったため、画面も派手で色数も多く、全体的に目立つビジュアルを作り上げることを前提にしていました。
対して、本作は各ステージごとの特色を明確にするというか、その場所ならではの雰囲気をしっかりと作り上げていきたいというオーダーをヨコオさんからいただいています。なので、全体的にはシックに収めつつ、ステージごとに色合いを変化させたりして、それぞれに特徴を出しています。
──たしかに、全体的にシックというか、オシャレですよね。
亀岡:ヨコオさんには、複数の色味をツールで出して、それを見てもらいながら色の方向性を決めていったのですが、全体的にシックな色合いをチョイスされていますね。演出が抑えめになっているというか、場所によっては、現実の世界に近づけるのではなく、あえて雰囲気重視で設定したところもあります。
たとえば、これまでであれば色を変更することで表現していたようなことを、影の濃淡だけで雰囲気を変えて表現するといった手法も取り入れています。砂漠のステージも、ギラギラとした暑さを表現するのではなく、白をベースにして乾燥したイメージを押し出しました。
ここに赤やオレンジを加えれば夕方に、ライトを暗くすれば夜になるわけですが、本作では“砂漠の色はこの白みがかったもの”という形で、幻想的な雰囲気を表現しました。
──ちなみに、同じ砂漠のフィールドでも、夕方になったり夜になったりといった時間の経過は存在するんですか?
亀岡:本作においては、基本的にはそういった演出はありませんね。ヨコオさんのほうで1つのフィールドごとに1つのコンセプトというか、カラーを設定してくださっています。
──(開発画面を見ながら)ちなみに、この砂漠のフィールドには何か金粉のようなものがそこかしこに浮いているように見えるのですが……これはいったいなんですか?
亀岡:それも、このフィールドを特徴づける雰囲気重視の効果の1つですね。実際の砂漠だとうすく光る金粉のようなものが宙を舞っているはずはないのですが、ゲーム内でこういった表現があると、どこかファンタジックでステキじゃないですか。
──なるほど。オシャレだ! あくまでゲームなわけですし、こういったファンタジックな演出が施されていてもいいわけですもんね。現に、実際キレイなフィールドだなぁと思います。
亀岡:ありがとうございます。こういった効果は、VFXの担当者とも相談しながら1つ1つ進めています。
──ある意味終わりのない作業のような気がしますね。こだわり始めたら止まらないというか。
亀岡:そうですね。どこまでもやれますし、こだわりがいがある部分です。そのぶん、すべてがしっかりとハマったシチュエーションを作り上げたときの快感はものすごいので、やりがいはありますよ。
──ちなみに、一貫してこのようなシックなシチュエーションばかりになるのでしょうか?
亀岡:もちろん、シチュエーション的に派手な演出の場所は存在します。そうであっても、色が散らかって見えるようなことはなく、『ニーア オートマタ』が持つシックで静謐な雰囲気というものは崩さないように心がけています。
──なるほど。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
亀岡:今作では主にライティングを担当させていただいています。前作の雰囲気を基調に、より豊かな背景になるように日々励んで制作しています! ファンに愛されるタイトルなのでプレッシャーを感じていますが、それに負けないように頑張っていますのでぜひご期待ください!
──どうもありがとうございました!
──まずは、ご自身が携わられているお仕事について教えてください。
中島史音さん(以下、中島):VFX(ゲームの画面効果、視覚効果の演出)を担当しております。具体的には、『ニーア オートマタ』のすべての敵のエフェクトを作成しています。
──本作ならではの演出効果など、こだわっている部分はどこですか?
中島:そうですね……。ヨコオさんからの指示もあるのですが、基本的には“あまり派手になり過ぎないエフェクト”を目指している、という部分でしょうか。
──そうなんですか? VFXというと“映像を派手にするため”の技術だと考えていたので、考え方が真逆のような……。
中島:たしかに、今までのプラチナゲームズのタイトルのVFXはかなり“モリモリ”で、華やかで目にとまり、かつ目に残るようなものを目指して作ってきました。
しかし、本作に関していえば、見た目としては控えめになってしまったとしてもより美しく見える効果だったり、気持ちよさを感じられる効果だったりを重視しています。一言でいえば、“オシャレ感”を重視していますね。
──オシャレ感……ですか。正直、その匂いは感じていました(笑)。
中島:今回、ヨコオさんとは色の使い方について入念にお話をしました。たとえば、赤系のエフェクトは敵からの危険な攻撃の際に使用する……といった具合です。このへんは、ヨコオさんの中でかなり明確なイメージがあったので、それに則した一定のルールの中で進めております。
──なるほど。普通に考えれば、敵の攻撃に色とりどりのエフェクトを入れたほうが派手になると思いますけど……。
中島:そういう意味では、今回は敵のエフェクトについてはオレンジ系と赤系しか使っていません。VFXに関して言えば、色味や効果にはある程度制限や統一感をもたせることが多いのですが、『ニーア オートマタ』は、ゲームの中でもその辺の意識がとくに徹底しているのが特徴であると言えますね。バッチリ住み分けがされています。
──これまで、中島さんが手がけてきたタイトルの中でも、かなり異色な感じでしょうか?
中島:そうですね。これまでに『スターフォックス ゼロ』や『トランスフォーマーズ:デバステーション』に携わってきたのですが、そのいずれともまったく違いますね。
──具体的には、どのような違いが?
中島:今あげた2つの作品では、VFXをいかに派手にするかを考えて作っていました。対して『ニーア オートマタ』は、いかにVFXを少なくしつつ、かつ印象に残って気持ちよくプレイできるか、ということを重点的に考えていますね。
──E3のトレーラーで公開された、歌うボスのとの戦いのエフェクトも、かなりオシャレで美しかったですよね。
中島:ありがとうございます。歌うボスは、もともとは●●●●●●だったのですが、●●●●を●●●するために、さまざまな●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という設定がありますので、エフェクトも美しく見えるように気を配りました。
──相手の攻撃は、おもに遠距離攻撃が多そうですね。
中島:そうですね。歌による音波で攻撃してきたり、刃物のようなもの出してそれを回転させつつ、プレイヤーに突進して来たりします。ミサイルなどもありますので、総じて遠距離攻撃が多めですかね。じつは、この敵の攻撃はすべてVFXで手がけたものになっています。
──具体的にはどういう意味ですか?
中島:(開発画面を見ながら)たとえばVFXをすべてOFFにしてしまうと……。
──あっ、体当たり攻撃の時の回転する刃物みたいなやつが消えましたね!
中島:そうですね。簡単にいえば、このボスの攻撃は全部VFXです。また、VFXによって“敵にここまで近づいてしまうと危険である”といった注意喚起もしています。
──なるほど。VFXのあるなしで、わかりやすさが全然違いますね……。
中島:そのへんのバランスも、ヨコオさんからの指示ですね。とにかく、シンプルでわかりやすさを重視して作っています。
──あって当たり前のものがないと、こんなにも見た目が変わるってことなんですね……。
中島:そうなんです。普段、VFXの細部までを気にしてゲームを遊ばれているプレイヤーさんは少ないと思うのですが、我々としてはとても大切な処理を任せてもらっているセクションだと自負していますね。
──たしかに、その通りだと思います。とてもおもしろいものを見せていただきました。では最後に、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
中島:前作の『ニーア』の切なく妖しい世界を踏襲しながら、それだけに留まらない新たな体験を盛り込んでいる最中です。僕たちの息吹が吹き込まれた新しい『ニーア』にご期待ください!
ヨコオさん! 僕がいない打ち合わせで話がこじれた時は「とりあえずVFXでいい感じにしましょう」と言って場をおさめてるという噂を聞きましたよ……!
──どうもありがとうございました!
──さっそくですが、上田さんがご担当されている“インプリメンテーション”とは、どのようなお仕事になるのでしょうか?
上田雅美さん(以下、上田):BGMをゲームに実装する仕事ですね。フィールドや戦闘中に流れるBGMはもちろんですが、『ニーア オートマタ』では風の吹く音なども、BGMが管理し実装しています。環境音とBGMのマッチングも重要視しています。
──これまでにご担当されてきたお仕事と比較して、『ニーア オートマタ』のお仕事はいかがですか? 何か変わったことをされたりはしているのでしょうか?
上田:今回のE3用のトレーラーに登場した、歌うボスとの戦いでは、BGMに合わせて敵が攻撃を繰り出してくるという、変わった趣向が取り入れられていてやりがいがありましたね。
今お見せできるものは、まだ未完成のものなんですが、楽曲に合わせて敵が出現したり、攻撃の手段が変化したりするようになっています。今後は、たとえば、敵の攻撃がBGMのテンポに同期するといった演出を盛り込んでいく予定です。
──それはおもしろそうですね! まさに、楽曲にプレイヤーが干渉するような感覚が味わえそうです。
上田:一般的なRPGやアクションゲームって、経過時間や敵の残り体力などによって攻撃パターンが変化したりするわけですが、それを音楽に合わせて行うというのはなかなかない演出だと思います。普通のゲームとは作り方からして違うといいますか……。
──やはり、かなり斬新なのでしょうか?
上田:普段は私も自分で楽曲を作って、それができ上がった段階でゲーム内に実装したりします。しかし、本作では楽曲を岡部さんたちMONACAのスタッフさんに作っていただけるので、私は楽曲の実装だけに時間を使えるんです。これはかなり大きな違いですね。割ける時間が増えるぶん、細かいところにまでこだわって作業ができますから。
──そんな上田さんが見て、『ニーア オートマタ』の楽曲はいかがですか?
上田:まだすべてが上がってきているわけではありませんが、素晴らしい仕上がりのものばかりですよ。『ニーア』シリーズの特徴として、1つの楽曲にいくつものアレンジを施して、シチュエーションに合わせて使い分けていくという手法があります。
同じ楽曲であっても、ゆったりとしたシーンで流れる曲はテンポがスローになっていたり、という手法ですね。物量で押すというよりは、演出や効果によってプレイヤーの印象に残るようにするといいますか。今回も、その手法を用いて物語を演出していく予定です。
──おお、それは楽しみです!
上田:ちなみに、本作ではずっと楽曲が流れているというシチュエーションはあまり多くないと思います。
──えっ!? それはどういう意味でしょう?
上田:(開発画面を見ながら)たとえば、フィールドで止まっていると楽曲が途中でフェードアウトして、環境音だけが聞こえるようになったりする演出を取り入れているんですよ。
──あっ、本当だ。BGMが消えても、結構音って聞こえるものなんですね。風が吹いて草木が揺れたり、砂漠の砂が高所から低所へとサラサラ流れ落ちたり……。
上田:ええ、そういうゆとりというか、しっとりとした雰囲気も重視したいというのは、ヨコオさんと協議を重ねたうえで決めた方向性になります。こういった環境音の制御には、ものすごく時間をかけていますね。
──なんだか、フィールドに何もせず立っているだけで心が癒される気がするというか、絵になるというか……なんだか不思議な雰囲気ですね。
上田:ちなみに、フィールド曲と戦闘曲がパッキリとわかれる形になっていないのも、独特な感じかもしれません。具体的には、フィールドで流れているゆったりとしたBGMが、敵と遭遇したことで同じ曲でもややテンションが高いバージョンへ自然に切り替わる。そういった音楽的演出を随所にちりばめています。
──これはすばらしい! 『ニーア』ってやっぱり、こういった音楽を演出に盛り込むことがすごく大切なシリーズだと思うので、上田さんの肩にかかるプレッシャーは大きいかもしれませんね。
上田:そうなんですよ。これまでのプラチナゲームズのタイトルは、先ほど申し上げたフィールドと戦闘のBGMがパッキリと切り替わるものばかりでしたので、自分としても未知の部分はあります。
音楽をすごく優しくあつかうことを意識して作る必要があるなって考えています。この辺りは、今後もMONACAさんとやり取りをしていきながら細部を詰めていく必要がありますね。まだ詳細は言えないのですが、音楽的な制御を絡めた演出の提案も採用していただけていたりしますので、ぜひご期待いただければと思います。
──音を用いた演出へのこだわりがものすごく感じられました。ではここで、本作への意気込みとヨコオさんに何か言うことがあれば、一言ずつお願いいたします。
上田:アクションRPGに携わるのは、10年ぶり位なのでものすごくうれしいです。『ニーア』の世界観……もう大好物です。毎日音楽に癒やされながら頑張っています。
ヨコオさんですか? いつも凄く褒めて下さるので、これは何か裏があるはず! もっと頑張れっていう作戦なのかなと思っています(笑)。
──どうもありがとうございました!
以上、9人のスタッフにお話をお聞きしたわけですが、いかがでしたか? 実際には、ここではまだ書けないような映像なども見せていただけたりもして、開発が順調に進んでいることが感じられました。
E3にて2017年初頭発売と発表された本作ですが、前作とのつながりはどうなのか? ゲームとしての難易度はどれくらいになるのか? などなど、気になるファンの方も多いことでしょう。そういったお話に関しては、開発陣による座談会にお邪魔してお聞きしてきておりますので、ぜひご覧ください!
本作の攻略情報と設定資料を収録した『NieR:Automata Strategy Guide ニーア オートマタ 攻略設定資料集 ≪第243次降下作戦指令書≫』を4月28日に発売します。価格は2,500円+税。仕様はB5判・304ページとなっています。
やり込みに役立つ攻略データに加え、ネタバレ注意のキャラクター&ストーリー解説も収録!
ディレクター・ヨコオタロウさんによる短篇小説、小説家・映島巡さんによる書き下ろし小説2篇も読める『NieR:Automata』ファン必携の1冊です。
【『NieR:Automata』注目記事】
→『NieR:Automata』は何をもって『NieR』なのか? プラチナゲームズ開発スタッフ座談会で聞く
→『ニーア オートマタ』もマルチエンディングに! 9Sの気になる秘密も飛び出した開発者インタビュー
→『NieR:Automata』新情報やボスバトルの映像が公開。2Bの立体化も進行中!?
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