2016年11月26日(土)
スクウェア・エニックスが12月15日に発売するPS Vita用RPG『SaGa SCARLET GRACE(サガ スカーレット グレイス)』の複数人レビュー企画後編をお届けします。
前編同様、レギュレーションは“主人公の選択は自由”、“プレイ時間は2時間。もっとやりたければご自由にどうぞ”の2点だけです。
シリーズ経験者が多かった前編に比べて、後編は4人中3人が未経験者で、そのうちの1人はJRPGが苦手というおもしろい属性持ち。『サガ スカーレット グレイス』の購入を検討しているシリーズ未経験者には、後編のほうが参考になるかもしれません。
ライター名 | ライターM |
好きなゲームジャンル | レトロゲームから最新タイトル(3D酔いはNG)までジャンル問わずの雑食性 |
『サガ』歴 | まさかのド素人(お仕事柄、シリーズはそれなりに手を出すものの、いずれも序盤で中断してそのまま……)。最後に手を出してこれまた投げ出したのは、山崎まさよし氏のテーマ曲に惹かれた『ミンストレルソング』。 |
『サガ スカーレット』のプレイ時間 | 2時間30分 |
ある晩届いたメールにて。
RPGは好きですか?→Yes! 『サガ』シリーズに興味は?→Yes! プレイ歴は?→ほとんどゼロと言っても過言では……。
「OKです、ちょうどそんな緩いプレイヤーを探していました」という流れでレビューを受けさせていただきましたライターMです。
ディープな視点は他のレビュアーさんに全力で丸投げして、RPGが好きないちゲーマーとしてのインプレッションをお届けします。
▲ゲーム開始時にいくつかの質問に答えることでオススメの主人公が決まります。 |
▲結果をキャンセルして任意に選ぶこともできますが、質問で決まった主人公に与えられるステータスボーナスは見逃せません。 |
まずはグラフィックについて。キャラクターは濃い目のデザインで好みがわかれるところでしょう。
フィールドも特徴的で、歩いていると書き割りのような板状の街や塔などのシンボルがポップアップします。さながら飛び出す絵本のようで、個人的なハマリどころの1つでした。
▲キャラクターの表情がリアル寄りに描かれ、塗りもやや濃いめです。 |
ストーリーはかなり淡泊な印象で、行き倒れた見知らぬお姉さんの望みを叶えるべく、絵本で語り継がれている伝説の町を目指すというもの。血筋や宿命、運命といった暑苦しいお約束とは無縁で、ふわっとカジュアルな展開です。
それこそ、ノリと勢いで余計なことをしてとんでもない化け物を呼び起こした挙句、知らんぷりを決め込むなどという展開もアリ。さすがにもう少し緊張感を持てと頭を抱えてしまいます(笑)。
自由度が高いのはいいのですが、もう少し物語を読ませてほしかったという欲求もあり、ストーリー部分は筆者の好みとはややかけ離れていました。
※担当編集さんによれば、筆者が選んだ主人公・レオナルドは特にフリーシナリオ色が強く、ウルピナなどはもう少し王道展開が用意されているとのこと。
▲建物だけでなく、突然巨大な怪物が湧き出ることもあり、油断していると驚かされます。 |
戦闘はシンボルエンカウント方式で、接触後に戦闘するか否かを選べます。1回の戦闘時間はそれなりに長いものの、むやみに強制エンカウントしない点は好感触。
もっとも、個人的には奥深い戦闘こそ本作の魅力だと感じたので、片っ端から戦闘を吹っかけていきます(そして、かなりの回数返り討ちに!)。
システムは奥深く設計されていて、五行や陣形効果、連撃など、ひと通り遊べる程度に把握するためにプレイ時間の大半を費やしてしまいました。
▲追加効果で“怒り”状態を誘発して、ターゲットを選べなくなることもしばしば。大技を連発するだけの力押しでは勝てないところもマル。 |
▲戦闘不能者が出た際、行動順のタイムラインがつながると連撃が発生。プレイヤーだけでなく、敵にも適用されるところがポイントです。 |
ターン経過に応じて行動ポイント(BP)のゲージ上限が増えていくため、序盤を耐えれば大技の撃ち合いも可能です。敵の行動を見極めて、いかに効率よく行動して流れをつかむかが勝利のカギ。
1回の戦闘にじっくりと時間をかけて楽しみたいとか、シリーズ独自のシステムが好きというゲーマーならぜひ一度手に取ってみてください。
ライター名 | マスクド・イマイチ |
好きなゲームジャンル | アクションRPG、ADV |
『サガ』歴 | 26年。なぜか各ハード3作目には手を出していない謎サガラー。一番好きな作品はGBの『サ・ガ2 秘宝伝説』。『ロマサガ』シリーズなどでの好きな武器種は槍。槍さえあれば、やり直せる! |
『サガ スカーレット』のプレイ時間 | 2時間 |
「さがすかーれっとをよこせ! おれはかみに なるんだ!」。というわけでレビューに入るのですが、皆さんの原稿を読んだ感じ(つまり私の原稿はギリギリ)ウルピナ主人公多いですね。かく言う私も、冒頭の質問攻めに答えていたらウルピナが選ばれたので彼女でスタートしました。
▲最初の質問攻めコーナー。レビュアーの皆さん、ウルピナでのプレイが多いのですがなんででしょう? |
じつを言うと私の『サガ スカーレット グレイス』への印象は、そんなによくはなかったのです。「主人公が4人って少なくない?」と思ったり、「『アンリミテッド:サガ』のリールっぽくない?」と思ったりしていました。
しかし、2時間ほどのプレイでしたが、「あ、これはこれで『サガ』なんじゃない?」とやっぱり思わせてくれたので、それが伝わればと。
▲主人公は選び直せますが、最初のプレイは折角なので質問コーナーで選ばれた主人公がオススメ。ちなみにウルピナはバランスのよい長剣使いのようです。 |
私が最初に「あ、これ『サガ』やん」と思ったのは、ウルピナの“失礼剣”という技名でした。しかも、育ちのよいウルピナが寝っ転がって敵をザシュゥと斬るさまは、まさに失礼!
これは“失礼剣”としか呼べない! でもこのネーミングセンスこそ『サガ』らしいな、と。(書いた後に他の方のレビューでも同じことが書いてあると気付きましたが、それぐらい“失礼”だと思ってもらえれば)
▲ちょっと見づらいですが、お姫様寝っ転がってます。これは敵さんに失礼ですネ! |
戦闘は、敵の行動が事前にわかるので、それにどう対応するかが重要ですね。また、ターンが進むごとに使えるBPが増えていくので、「この技だけ連発していけばOK」ということもなく、ザコ戦でも1ターンごとに頭を使わせてくれるのが楽しかったです。
そこにシリーズおなじみの連携に似た連撃や、閃きといった“狙うことはできるけど確証は得られない偶然の喜び”がよい味付けになっているかと。
▲連撃の発動は行動順がカギになります。うまく相手が自分たちの行動順の間に挟まるようにしましょう。おなじみの閃き電球も、なんかグラフィックが気合入っているように感じました(笑)。 |
フィールドマップを歩いていると、飛び出す絵本のように街や砦といったシンボルが登場するのもよい演出ですね。全体的な色使いといい、本の中を冒険している気分が味わえます。
▲ネエちゃんって(笑)。このぶっきらぼうな感じ、イイですよね。 |
仲間になるキャラクターが、どれぐらいいるのかも気になります(※)。個人的には、4人の主人公の誰を選んでも好きなパーティで進められるのが理想なのですが、4人のストーリーが濃く描かれるとなると、それは難しいかもしれませんね……。
※編注:仲間キャラクターは70人以上登場します。
わざと苦手な武器種を持たせて育てたくなったりもしますし、その辺りの“パーティ育成の自由度”がどこまで高いのか、そこに期待しています。
▲ウルピナに槍を持たせたいんですよねー。無双三段に下り飛竜……に次ぐ、槍の代表技が増えるとイイな! |
“自由”、これこそが唯一の『サガ』らしさなのかなと改めて最新作をプレイして思いました。できることなら、私のプレイレポートなども読まずに(今さら感)前情報を入れずに遊ぶというのが、『サガ スカーレット グレイス』を楽しむための一番の調味料なのかもしれません。
ライター名 | 長雨 |
好きなゲームジャンル | RPG、SRPG、ADV。キャラへの愛があれば、どんな試練も乗り越えられるタイプです。 |
『サガ』歴 | なし。ご高名はかねがねうかがっておりました。 |
『サガ スカーレット』のプレイ時間 | 3時間半 |
フリーシナリオ作品は大好物なのに、タイミングを逃して遊んでいなかった『サガ』シリーズ。シリーズものを途中からプレイするのは、個人的に邪道な気がして……。でも今回プレイして、どの作品から遊んでも、おもしろいものはおもしろいんだなと思い知らされました。
冒頭に発生する質問に本能のまま答えていたら、主人公に選ばれたのはレオナルド。ほかの主人公もみんな魅力的なので誰がいいか悩みましたが、これも運命ということで彼のままゲームをスタートします。
▲質問の結果、パラメータボーナスをいろいろゲット。HP信仰があるので、10増えるのがうれしかったです。 |
不思議な女性と出会って、大まかな目的が定まったところですぐにフィールドに放り出されました。とりあえず周囲の街に寄ってみたり、気になる場所を調べてみたり、のんびり観光しつつ物語を進めることに。
目的地はわかっているものの、世界の予備知識がまったくない状態なので未知の場所を冒険している感じが楽しかったです。
▲土地によって風景が違うので、寄り道のしがいがありますよ。フィールドをはじめ、BGMもすごくいいです。 |
好奇心のおもむくままに行動していたら、いきなり羊と戦闘になったこともありました! フィールドで拾ったあるアイテムを食べさせたら魔物になったという、自業自得な展開だったんですけど。自分の行動が物語の展開に影響を与えるのが、フリーシナリオの醍醐味ですよね。
▲羊のことで、羊飼いのお兄さんにすごく怒られました。自由に行動できるぶん、ちゃんと責任も課せられているのです。 |
羊の件はすごく些細な事件でしたけど、物語の途中で町などに影響を与えそうな選択肢も登場。それを選んだら……という展開が多く、私の場合はメインストーリーをさくさく進められないという問題が発生しました。いろいろやりたい人にはピッタリですが、かなり時間泥棒なのでご覚悟を!!
▲不死鳥と戦うかどうか選んだり、遺物の片割れを入手したり……。世界は不思議に満ちています。 |
戦闘は最初は戸惑う場面もありましたが、ちゃんと説明もありますし、次第に慣れます。ただ戦闘があまり得意なほうではないので、回復手段が限られるのがキツイです。仲間が1人、また1人と倒れていくのを見ると切ない。
物語の展開によって選ばなかった主人公が仲間になるようで、パーティや戦術の幅も広がっていくのもいいですね。仲間としてそのキャラの魅力を再確認できるので、違う主人公でもプレイしてみたくなりました。
▲物語の序盤に、バルマンテさんが仲間に! 頼もしい戦力が増えるのはうれしいですね。 |
ライター | イトヤン |
好きなゲームジャンル | 洋ゲー |
『サガ』歴 | 0年。『アンリミテッド:サガ』を2時間ぐらい遊んで、操作方法を理解できなくて挫折しました(汗)。 |
『サガ スカーレット』のプレイ時間 | 5時間 |
じつは個人的に、JRPGと呼ばれるジャンルが苦手でして。海外産のオープンワールドRPGでは100時間以上やり込んだものもあるし、以前はテーブルトークRPGもプレイしていたので、RPG自体が嫌いなわけじゃないはずですが。
ただ、『ファイナルファンタジーXII』はかなり熱中した経験があるので、どうも自分はJRPGというより、自由に探索したいのにランダムエンカウントの敵に足止めされるという、あのプレイ感覚が苦手なんだろうと思うのです。
▲冒頭の質問を自分の心のままに答えたら、陶芸家のタリアさんでプレイすることに。 |
本題の前に個人の嗜好をゴチャゴチャと語ったのは、この『サガ スカーレット グレイス』のバトルが、自分の苦手なランダムエンカウントとは真逆の方向性になっているからで。
イベントの発生位置=モンスターの出現位置があらかじめ見えていて、敵の種類やバトルの難易度も事前に確認できます。そういった点を把握した上で、どのタイミングで戦うのかを、あくまでプレイヤー自身の判断で決められるのです。
そのぶん1回のバトルはガッツリ重めで、ときには2~3回の連戦が必要となることも。それだけに、パーティ編成や陣形などの事前準備が重要です。
自分の好きなタイミングで、じっくり準備した上でバトルに挑めるこのシステムは、個人的には非常にしっくりとくるものでした。
▲フィールド上のシンボルに近づくと、バトルの場合はその難易度や、勝利で得られる報酬が確認できます。会話イベントの場合でも、そこからバトルに移行することも。 |
バトル自体も戦略性が高く、思考をフル回転させる必要があります。
強力な技を繰り出そうとしている敵を相手が行動する前に倒したり、連撃を発動させるために特定の敵を狙い撃ちにしたりと、味方の行動を選ぶ際に考えなきゃいけないことが本当にたくさんあるのです。
しかし、そのターンに必ずしも味方全員が行動できるわけではなく、パーティ全員で共有しているBPの範囲内で、各自の行動を選択しなければなりません。
▲そのターンに使用できるBPは、星の数で表示されます。技の中には、使用するキャラの行動順が変わるものも多いので、これもまた悩みどころです。 |
BPの高い強力な技を誰か1人に使わせるのか、BPの低い技を複数の味方に割り振って手数を増やすのか。それとも敵のリザーブ技を警戒して、あえて攻撃せずに防御するのか。
相手の出方を読んで、手持ちの限られたリソースを割り振るというこの感覚は、トレーディングカードゲームなどのアナログゲームに近いものがあります。あれこれ悩んで選んだ行動が、見事にハマって敵に大ダメージを与えることができた時は、ホントに気持ちいいですよ!
▲バトルでは読みと戦略が非常に重要ですが、ときたまランダムに発生する“閃き”や“恩寵”が、じつにいいアクセントになっています。「恩寵キター!」と思ったら敵側の恩寵で、相手が回復したことがあったのには、ビックリしましたが。 |
バトル以外では、ストーリーの語り口も非常におもしろかったです。
「焼き物が歪んでしまうから、原因を探る旅に出る」と言い出すタリアさんをはじめ、キャラが交わす会話の端々で、“この人はなんでこんなことを言うんだろう?”っていう謎が残るんですよ。
キャラクターが自分のことを、いい意味で“語りすぎていない”ので、プレイヤー自身で“この人はホントはこう思っているのでは”と想像できる余地があるんですね。
そうした会話による印象と、バトルの際の活躍ぶり(あるいは活躍しないぶり)が組み合わさって、自分の中でだんだんとそのキャラのイメージが作り上げられていく過程が、なんとも言えず楽しいです。
▲今回プレイした主人公が、オトナの女性でどこかつかみどころのない雰囲気のタリアさんだったので、なおさら想像力をかき立てられたのかもしれません。 |
戦略性の高いバトルと想像力をかき立てられるストーリーのおかげで、噛めば噛むほどに味わいの出てくる、スルメのようなゲームだという印象でした。そういう意味では自分にとっては苦手どころか、むしろ好きなタイプの作品ですね。
ぜひ機会を改めて、今度はじっくり味わってみたいと思います!
後編の4人にも、前編に続いて本音でアンケートに答えてもらいました。その結果を紹介します。
長い | 0票(前編0票) |
長くない | 4票(前編4票) |
短い | 0票(前編0票) |
やっぱりロード時間が気になる | 1票(前編0票) |
ロード時間が気にならなくなった | 3票(前編4票) |
気になる | 2票(前編2票) |
気にならない | 2票(前編0票) |
どちらとも言えない | 0票(前編2票) |
難しい | 0票(前編0票) |
少し難しい | 2票(前編1票) |
ちょうどいい | 2票(前編3票) |
少し簡単 | 0票(前編0票) |
簡単 | 0票(前編0票) |
ダンジョンマップがほしい | 0票(前編0票) |
ダンジョンマップがなくても気にならない | 3票(前編1票) |
なんとも思わない | 0票(前編2票) |
むしろダンジョンマップがないほうがいい | 1票(前編1票) |
もっとプレイしたい | 3票(前編1票) |
もうプレイしたくない | 0票(前編0票) |
むしろ購入したい | 1票(前編3票) |
すごくおもしろかった | 0票(前編2票) |
おもしろかった | 3票(前編2票) |
普通 | 1票(前編0票) |
つまらない | 0票(前編0票) |
ものすごくつまらなかった | 0票(前編0票) |
結果を総合すると「ロード時間の長さとダンジョンマップがないところは特に気にならないけど、“Ready Go”は気になるかも……。でも戦闘バランスはちょうどよくて、おもしろいからもっとプレイしたい!」といったような評価になるでしょうか。
意外と……と言っては失礼ですが、いろいろな属性のプレイヤーが楽しめる作品になっているのかもしれません。
ちなみに、巷では『アンサガ』に似ているという声もちらほら聞こえてきますが、『サガ』経験者の全員が『アンサガ』をまったく思い出さないプレイ感だったことをお伝えしておきます!
※画面写真はすべて開発中のもの。
(C) 2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI
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