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2016年12月6日(火)

SIE・吉田修平氏に聞く“PSX 2016”。新規タイトルやリマスター展開、インディーにPS VRの話題も!

文:電撃PlayStation

 アメリカ・アナハイムで開催されたPlayStationの大型イベント“PlayStation Experience 2016”。Naughty Dogの新作『アンチャーテッド: The Lost Legacy』『The Last of Us Part II』や、『パラッパラッパー』をはじめとするリマスタータイトルなど、さまざまな発表が行われた。

 本記事では、SIEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏に、イベント全体から発表タイトル、インディーゲームにPS VRまで、多くの話を聞いたインタビューをお届けする。

『PlayStation Experience 2016』
▲ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏。

──今回のカンファレンス、“E3 2016”と同じように新規の映像が非常に豊富でしたね。

 今年のE3が顕著ですが、プレゼンする人を減らしてとにかくゲーム映像を中心に見せようとしています。ユーザーのみなさんにも全体のテンポが良く好評でしたので、一つの形としてこの流れを続けていきたいですね。

──カンファレンスではこれまでのイベント同様に、新規タイトルが多数発表されました。とくに手ごたえを感じたタイトルなどありますでしょうか?

 予想どおり手ごたえがあったのが、Naughty Dogの『アンチャーテッド: The Lost Legacy』と『The Last of Us Part II』。これらに加えて『パラッパラッパー』に『Wipeout Omega Collection』『KNACK 2』など、新しいタイトルやリマスター作品にもよい反響がありました。

──個人的に気に入ったタイトルも教えてください。

 PS VRの『Starblood Arena』ですね。こちらは初代PSの『DESCENT』を開発したメンバーによるタイトルで、『DESCENT』と同じように主観視点で360°自由に動き回れるのです。以前にお話した際は『RIGS Machine Combat League』をオススメしましたが、また違った楽しさのあるタイトルですね。画面の動きも工夫されていて、比較的狭いアリーナをさまざまな方向に移動できながら、酔わない工夫がされているのもポイントです。

──タイトルも明らかになった『クラッシュバンディクー N. Sane Trilogy』に加え、『パラッパラッパー』『パタポン』『LocoRoco』のリマスター版がPS4でリリースされるとのことですがPS4に過去の名作が集まるのはそれだけ要望が多かったということでしょうか?

 多かったですね。これらのシリーズはユーザーさんからの要望があってもそれに応えられないという状況が長く続いていました。今回PS4でリマスター版を制作するにあたり、ゲーム性は当時のものをリスペクトしつつグラフィックは4K画質での出力にも対応する最新のクオリティで作っています。また、プレイを楽しみやすくなるように操作への工夫も盛り込んでいますよ。ただのエミュレーションとは違うこれらのリマスター作品、往年のファンだけでなく新しいPSユーザーにも遊んでほしいですね。

──リマスター版『LocoRoco』を会場の試遊台で見ましたがモーションコントローラーを用いた操作でモニタが動かないというのが新鮮でしたね。

 オリジナルは残しつつ今のハードだからできることも付け加えています。『LocoRoco』では、歌が流れるシーンでコントローラーのスピーカーとテレビのスピーカーで二重奏が楽しめます。こういった新しい要素を盛り込めるので、開発スタッフも楽しみながら完成に向けて取り組んでいます。

──今後もリマスタータイトルはリリースされていくのでしょうか?

 PS4の普及台数が増えているので、少しニッチなタイトルでもユーザー数が見込める状況に来ていると考えています。ですから一部の熱狂的なユーザーのためだけではなく、新しいユーザーを取り込めるチャンスと捉えています。

──SIEさんはもちろんですが、サードパーティもリマスタータイトルに興味を持っているのですか?

 持っていると思います。それも含めて今後もリマスタータイトルは増えていくでしょう。新作のAAAタイトルともなると、規模も大きく開発期間も長い。そういったタイトルばかりリリースされると、ユーザーさんにとってPS4はなかなか新しいゲームが遊べないハードになってしまいます。ですが、PS4には開発スパンの比較的短いインディーやリマスタータイトルもある。これにより、短いスパンで新作に触れられるようになるわけです。

──懐かしさがムードになり、リマスターを望む空気が生まれているようにも感じます。

 そうですね。昨年のE3で、『人喰いの大鷲トリコ』と同時に『ファイナルファンタジーVII リメイク』や『シェンムー3』を発表した時の反響がものすごくよかったです。そのあたりから昔のクラシックとか呼ばれるものが待たれているという実感がありました。

──今回も多彩なインディーゲームが発表されましたが、個人的に気になったものはありますか?

 私はインディーゲームを見て周るのが好きで、気になったタイトルは一緒に写真を撮ってツイートしています。そのなかで昨日は『Pyre』というスーパージャイアントゲームスの新作を遊ばせてもらいました。ゲーム自体のビジュアルは『Transistor』に近いものを感じましたがプレイ感覚は別物。アクションRPGでありながら、どのキャラクターをどの位置に移動させるかなどスポーツゲームのような印象を受けました。これが斬新で楽しかったですよ。

──ファンタジーの世界でゲーム性がスポーツという、独特なタイトルですね。

 あとは『RESOGUN』を手掛けたハウスマークの『ネックスマキナ』も気に入りました。こちらは『RESOGUN』で評判がよかったボクセル(敵機を倒した際にバラバラになるツブツブ)表現を使ったツインスティックシューター(キャラクターの移動を左アナログスティック、向きを右スティックで調整するシューティング)です。同じシューティングということもありプレイ感覚は『RESOGUN』に似て、そこにボクセルのなかをつっこんだりする気持ち良さが素晴らしかったですね。

 それから『ICO』を手掛けたスタッフが参加しているデベロッパー・Friend&Foeの『VANE』もすごかった。まったくユーザーインターフェースがないのですよ。ぜひ日本のユーザーにも見てほしいですね。

──UIがないタイトルというのは、PS4でゲームの表現力が上がったことで成り立つようになったものなのでしょうか?

 そうですね。クリエイターもゲームの世界に浸ってもらうためになるべく、説明チュートリアルなどがないことにこだわっている人もいます。

──今のお話も含めてPS4のタイトルにはグラフィック面にとくに注力しているものと遊び方のほうに注力しているもの、それぞれの方向が見えてきたような気がします。

 AAAタイトルのグラフィックとインディーのアイディア、両方があるのが今のPS4かと思います。

──『アンチャーテッド: The Lost Legacy』はスピンオフ作品ながらスタンドアローンだそうですが、今後彼女の物語が続いていくという可能性はあるのでしょうか?

 『アンチャーテッド』の今後については私もわかりません。ただ1つのタイトルを制作し終えたあと続編を作る場合、大きくなったチーム全体が次の作品を手掛けると効率が悪いことがあります。コアメンバーが少人数で最初のコンセプトなどを固めて、それから改めてもとのチームのメンバーを招集するという形のほうがスムーズに進みますね。こういった再編成の流れを取った場合、開発初期にかかわっていなかった多くのメンバーが今回の『アンチャーテッド: The Lost Legacy』のような本編よりも少し小さい規模のスピンオフを制作するというケースがあります。

 この開発の仕方は、新作の開発以外のスタッフを含めた人材の配置という意味で優れていると思います。さらにユーザーとしても比較的早いタイミングで新しい『アンチャーテッド』をプレイできる。どちらにとってもメリットが大きいと思います。

──開発の仕方と言えば、昨日のゲリラゲームズと小島監督のDECIMAエンジンの共有が興味深い内容でした。こういったデベロッパー同士の交流は支援していきたいという考えでしょうか?

 SIEワールドワイドスタジオのなかでは、スタジオ間交流が非常に活発です。私がプレジデントになった2008年から、社内でGDCのような技術セッションをしたり、キーメンバーが集まって今取り組んでいることを共有し合ったりしています。私はこれを文化の1つだと思っており、小島プロダクションが独立して仕事することになったときもマーク・サーニーがコンサルタントとしてかかわり、小島監督がSIEワールドワイドスタジオの世界中にあるスタジオを行脚しました。なかでもゲリラゲームズと意気投合したというのが今回のエンジン共有の発端になります。

 ゲリラゲームズの監督ハーマン・ハルスト氏は、小島プロダクションの自分たちとは異なるものの見方によって、ゲリラゲームズの仕事に新しい意見をもらえると話していました。今回のようなエンジンのソースコードを共有してお互いの情報を提供し合うという形は、双方の信頼関係ができたからこそです。私としてはデベロッパー同士の交流を支援こそしますが、強要はしません。あくまで出会う場を提供するだけで、交流はそこから自然発生的に生まれればよいという考え方です。

──プレスカンファレンスで新しい情報がなかった『Days Gone』や『God of War』については次の機会になるのでしょうか?

 まだ決めていませんが、徐々に情報を出していくと思います。

──PS4 Proに対応するかなど、期待が高まるところです。

 そういった意味ではまず新規映像が公開された『Horizon Zero Dawn』でしょう。きっと日本のユーザーも喜ぶものになっていると思います。

──会場で開催されたカプコンカップなど、ここ数年ゲームを競技として扱う動きが強くなっていると感じます。こちらについてSIEとしては魅かれるものはありますか?

 いわゆるe-sportsですね。適したタイトルがあれば力を入れていきたいとは思っていますが、いくら流行っているタイトルでもe-sportsとしての土壌はすぐに作れるものではありません。『ストリートファイター』や『Call Of Duty』 、『League of Legends』など、いずれのタイトルも時間をかけて競技としての形を作ってきました。ただ、今回のカンファレンスでも情報をお届けした『グランツーリスモSPORT』は、誰でも楽しめるというのがコンセプトではありますがオンラインで競技性の高いレースも行えます。そういった意味ではe-sportsに向いているかもしれません。まずは1年を通じて毎週のように大会を開いていこうという計画を準備しています。

──『MARVEL VS CAPCOM: INFINITE』はアメリカにも日本にもファンの多いタイトルかと思います。こういった世界の垣根を越えたタイトルについてどう考えていますか?

 ゲームの楽しみ方として魅力的だと思いますし、それがPSフォーマットで楽しめるのは重要です。SIEとしてもさまざまなサポートを今後も継続していきたいと考えています。

──『二ノ国II レヴァナントキングダム』の発表ですが、久しぶりの情報というのもあり、盛り上がっていました。『二ノ国』は海外の方が熱狂的なファンが多いのでしょうか?

 そうですね。実際、海外での売り上げも非常に高く、続編も待ち望まれていました。そうした経緯もあり新作の発表の場をアメリカとさせてもらいました。もちろん日本でもファンの人たちの注目を浴びており、とくにバトルが楽しそうとのことですね。

──VRなど、技術の発展にともない新しいエンタテインメントが次々と生まれ、各メーカーが力を入れている。その情報を共有できるというのは素晴らしいですね。

 実はPS VRのプロジェクトはSIEワールドワイドスタジオ間の交流がきっかけだったのです。当時VR技術でなにかをやりたいというスタッフがSIEワールドワイドスタジオ内で、互いに自分の成果を見せ合っていました。この見せ合い、言い換えれば技術の共有から実際にPSフォーマットでVRデバイスを作ろうとなったのがPS VR誕生の流れになります。

──現状、PS VRは日本では入手困難な状況が続いています。現在の状況についての感想をお聞かせください。

 元々特定の期間内にPS VRを生産できる台数はわかっており、どうしても生産数が足りないので発売を延期したという経緯があります。そして、発売からしばらくたった今でもまだ台数が足りない。早く手に入れたくて心待ちにしているユーザーの方々には申し訳ありません。ただ、これだけ需要が高いのも『Rez Infinite』や『サマーレッスン』など、よいタイトルをローンチ段階でリリースしてくださったからこそですね。

──届けたいけれども供給が足りてないというのが現状になるのでしょうか?

 VRは触らないとわからないものですからね。今年はVR元年と言われていますが、個人的には初代PSが発売された1994年を思い出します。コンシューマゲーム機で初めて3D映像を動かせるハードのリリースに、これからなにが起きるんだろうと思っていました。そして20年以上たった今でも3D映像はゲームの主流になり、斬新でクオリティの高いものがどんどん開発されています。同じようにVRデバイスもこれから20年続いていくものの第一歩かと思っています。初代PSの際の3D映像より、早く盛り上がり始めていると感じています。

──SIEワールドワイドスタジオは今後どのようにしてVRの発展にアプローチしていこうと考えていますか?

 PS VRに関してはデモを体験していただくというスタンスは、2014年のGDCから一貫して変化していません。『Ocean Descent』や『The London Heist』のような高い評価をいただいているデモもありますし、『THE PLAYROOM VR』では、VRデバイス1つで複数のユーザーがプレイ体験を共有できるといったPS VRならではの楽しさも実現しています。来年には『Farpoint(仮)』も登場します。今後もソフト主導でPS VRの魅力を伝えていきたいと考えています。

──Oculus RiftやHTC Viveでつかむことに注力したコントローラが発表されましたが、PlayStation Moveモーションコントローラーの次を目指すような拡張は予定されていますか?

 VRで手を使うことの楽しさは当初からわかっており、最初のデモから実現しています。また、PS Moveモーションコントローラーで手を使って物をつかんだり離したりという操作は問題ないと思います。むしろ重要なのは、HTC Viveにつかむ操作に力を入れたコントローラが登場したことですね。これまでデベロッパーはVR用のコンテンツを作る場合、一般的なコントローラでの操作をベースにするかPS Moveのようなつかむことに適したコントローラーでの操作をベースにするか悩む必要がありましたが、これからはどのハードでリリースしても専用のコントローラーでの操作を想定したゲーム作りができます。『エニグマ』やキューゲームスの『Dead Hungry』など、ほかのVRデバイス向けにリリースされたタイトルもPS VR向けに来年にリリースされないか、とも思っています。

──最後にPSフォーマットのこれからに向けて今後、とくに2017年の方針を聞かせてください。

 2016年にPS VRとPS4 Proというプレイ体験が大きく変わるハード2つと、よりお求め安くなった新型PS4をユーザーの皆さんにお届けすることができました。今年も非常に多くのタイトルが登場しましたが、来年にも多数のラインアップを予定しています。既に発表されているものも含めて、1本でも多くユーザーの皆さんに届けていきたいと考えています。

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