2016年12月31日(土)
2017年2月23日にスクウェア・エニックスから発売されるアクションRPG『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。先日体験版も配信され、ますます期待が高まる本作について、発売が待ちきれないファンは数多いことでしょう。
もちろん、我々電撃オンラインの『NieR』記事担当者たちも、発売を首を長くして待っているところです。今回は年末年始の特別企画として、そんな『NieR』好きな面々が集まっての座談会トーク、前編をお届け。『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』を懐かしく振り返ります。
【座談会参加メンバー】
タダツグ:『NieR』シリーズ、『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズという、いわゆる“ヨコオタロウ作品”に魅入られている担当ライター。先日はヨコオさんが原作を手がけた舞台『君死ニタマフ事ナカレ 零』を見て感涙したばかり。
サガコ:ヨコオ作品のなかでも、とくに『ニーア レプリカント』に激しく心を動かされた担当ライター。2016年に実現したコンサートで号泣したり、夜中にニーアのことを思って突然泣き出したり、常人には理解しがたい暴走をまれに起こす。
喜一:『ニーア』の呪いにかかった担当ライター2名が暴走しないように監視しつつ、仕事をお願いする『NieR:Automata』担当編集。『レプリカント/ゲシュタルト』発売当時はまだイチゲームプレイヤーだった。
喜一:今回は『NieR』シリーズについての座談会ということで、編集部内でも生粋の『NieR』好きをお呼びしました。よろしくお願いします。
タダツグ:ぶっちゃけ『レプリカント』の発売がもう6年も前だということに驚きを隠しきれないんだよなー。その時生まれたお子さんは、もう小学生……。
サガコ:つい先日コンサートも開催されたりしたから、私はそんなに昔のことのような気がしないんだけどね。『オートマタ』の体験版を遊んで、やっと「ああ、こんなに進化してるんだから『レプリカント』ってかなり以前のことなんだな」と認識を改めることができたけれど。
喜一:僕は当時、普通にユーザーとして『レプリカント』を買って遊んで、最後のDエンドにビックリしたわけなんですけど、お二人の『レプリカント』との出会いっていうのは?
タダツグ・サガコ:メーカーから資料が来た(笑)。
喜一:でーすーよーねー。
タダツグ:俺はヨコオタロウさんの『ドラッグ オン ドラグーン(DOD)』シリーズからの大ファンで担当ライターだったから、そのヨコオさんの新しいタイトルが出るよっていう話にワクワクした。
サガコ:私も『DOD』はユーザーとして遊んで好きだったので、ヨコオさんの新作と聞いてぜひライターをやらせてください、と。当時はね、『電撃ゲームス』という総合ゲーム誌が創刊されたばっかりだったんだよね。
喜一:デンゲキゲームズ?
タダツグ:違う。プラチナゲーム“ズ”、電撃ゲーム“ス”。
サガコ:ややこしい……。
タダツグ:雑誌自体が分厚くて、ひとつのタイトルをわりとページを割いて、ガッツリ扱わせてもらえたんだ。今思えば、それが『レプリカント』にとってはいい方向に働いたんだと思う。当時はまだ今ほどには動画で共有する文化が一般的ではなかったから、雑誌の訴求力はそれなりに大きかった。
サガコ:当時の編集長から「うちでこの『ニーア レプリカント』っていうの、推していくから」って言われて、最初は「私はいいけど、大丈夫か……?」と思った記憶。「大丈夫? ヨコオタロウのゲームだよ?」って。
喜一:でもスクウェア・エニックスの新規IPだったわけでしょう。それは推していきましょうってことになるのは自然な流れでは?
タダツグ:当時は、ビッグすぎる『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズほどの規模で、ドカーンと作られているようなタイトルじゃなかったし、そもそもヨコオさんってディレクターとしては個性的すぎて、飛び道具とか遊撃隊の位置づけだったと思うんだよね。だからニッチなコアファンが多くて、市場の期待値はそこまでではなかったんじゃないかな。
サガコ:それを全力で推していった電撃の、電撃らしさというのは少なからずあったと思うなー。先見の明があったといえばあったのかもしれない。まあ、結果論だけど。
タダツグ:俺、サガコが暴走気味に「『ニーア(レプリカント)』はすごい! 『ニーア(レプリカント)』はきっとイケる!!」って確信して、激推ししはじめた時期があったように記憶してるんだけど、アレっていったいキミの中で何が起こってたの? サンプルROMとか来た時だっけ?
サガコ:違うよ、もっと前。カイネの設定が発表されたタイミングと、ゲームの公式サイトがオープンして曲が聞けるようになった時だよ。
喜一:それ、ゲームの内容がほとんど判明してない時期じゃないですか……。
サガコ:まずはカイネさんの“半陰陽のヒロイン”というワケのわからなさが、私の中で究極にストライクだったのね。その設定だけで吸引力バツグンだったし、無限の可能性を感じたわけ!
タダツグ:掃除機かよ!! それになんだよ、無限の可能性って!(笑)
サガコ:……ふっ、言わせんなよ。
タダツグ:言えよ! むしろ説明してくれよっ。
サガコ:CER○に抵触するから慎むぜ。(笑)
タダツグ:俺は未だに、カイネさんに両性具有設定が必要だったのかってところは疑問視してるんだけど。
サガコ:必要だったに決まってるじゃないかっ!!
タダツグ:机を叩くほどにか!!(笑)
サガコ:カイネさんの設定は、彼女の背負った業苦の一部として物語上も重要だったと思うし、なによりもその設定のインパクトは『レプリカント』のスタートダッシュに貢献したと思う。
とにかく“あ、このRPGはイカレテるんだな”って一目瞭然な気がしたんだよね。D.Kさんのイラストレーションも存在感があって、なんというか、発表されたニーアやカイネのイラストそのものから漂ってくる“切なさ”、“はかなさ”、“ガラスのような透明感”で、デザインからもらえるイメージがまず心地よかった。
それまでのヨコオさんの血まみれで、狂っているイメージとは一線を画すような、別の一面を見たような気がしたの。
タダツグ:それはわかる。他のタイトルでは見たことがないような新鮮さがあった。
サガコ:そして決め手だったのが、とにもかくにも音楽!! 公式サイトから音楽が流れる仕様になっていたんだけど、情報よりもなによりも、とにかくもう音楽が単体で文句なしだったの。それだけをずっと聞いていられる心地よさだった。
タダツグ:いかん、これまたヨコオさんが嫉妬するヤツだぜ……。でも、それもわかるよ。
喜一:たしか『レプリカント』って、ゲームよりサントラのほうが先に発売されるっていう、異例のパターンだったんですよね? 今でもサントラは売れ続けていますし、ゲームを知らないのにサントラを買ってる人もいるくらいで。
サガコ:そう、とにかく名曲すぎた。こんなに、壊れそうにきれいな音楽を聞きながら遊べるRPGってどういうものなんだろう? ワクワクする気持ちが止まらなくてね。ゲーム音楽が印象に残るゲームにハズレはないと個人的には思ってるから。
タダツグ:そのあたりから、電撃の『NieR』チーム全体の暴走という名の全力投球が始まったよな(笑)。そして開発の皆さんも、メーカーの宣伝さんもものすごくいろんな企画に協力していただいて、それが何よりも大きかった。
サガコ:とくにゲームの世界観を補完する小説を掲載したのは大きかったと思うなあ。映島巡さんや名取佐和子さん、菊池はなさんには相当お世話になりました。
タダツグ:一般売りのゲーム誌に、とんでもない内容の小説が大量ページぶち抜きで載っちゃってて、話題になったっけな。
サガコ:私、今でも忘れないよ。映島さんから、発注した文字量をはるかにオーバーした原稿が届いて「マジかー! でもすごくおもしろい、これ!!」って絶賛する我々に、電撃ゲームスの上の方が鶴の一声で「よし、ページ増やそう!」って言ってくれたの(笑)。あれは男前だったわあ。
タダツグ:キミ、ずっと編集部のライタースペースで、エミール人形を自作するのに紙粘土をこねくり回してたりしたもんな……どうかしてたよな、全体的に。
サガコ:あれは、そういうムーヴメントだったんだよ。設定資料集の制作まで続いた、一種のお祭り状態だった。
喜一:未だに売れ続けて、15版を越えてる設定資料集なんて早々ありませんよ。
サガコ:設定資料集は、全体の編集担当のこだわりとセンスも尋常じゃなかったからこそ美しい仕上がりになったと思ってる。あまりに情報量が多すぎて文字が小さくなってしまったけど、それも開発の皆さんやヨコオさんが持っている情報を余すところなく提供してくださったからで、こんなことはなかなかあるものじゃない。
タダツグ:開発の星尾さんがわざわざイラストを描き下ろしてくださるっていうから、デボルとポポルで!! って全力でお願いしたのを覚えてる。ポポルの叫ぶ表情の修正とか、終盤までお付き合いしていただいて、こだわりにこだわったもんなあ。
喜一:つまるところ、『レプリカント』はどうしてここまで愛され続けて、どうしてここまでヒットしてるんだと思います?
サガコ:……わからん!! そもそも『レプリカント』はヒットしたのか? というところから分解していかなきゃならない(笑)。
タダツグ:うむ。まあ普通にヒットしてたんだったら、続編作るまでに6年もかかってないんじゃないか説がある。コンサートの実現だって6年越しなわけで。
喜一:でも、『レプリカント』は、確実に“愛されている”コンテンツですよね。
サガコ:なんだろうなあ……当時は『ニーア レプリカント』という名の生まれたての赤ん坊をお預かりして、みんなで一緒に子守してたイメージなんだよね。電撃というメディアと、ファンの皆さんとで、一体感があった気がしてる。
タダツグ:それだよなぁ。よちよち歩きの、まだ不安定な子を一生懸命に守るみたいな。『ゲシュタルト』は、がっしりしたお父さんだったから、安心して海外のみなさんにおまかせしてたっぽいところもありつつな。『レプリカント』は守りたくなる、推したくなる何かが満ちていた。仕事としても本当に楽しかったし。
喜一:『オートマタ』の今とは、またぜんぜん違う不思議な流れみたいなものがあったんですねぇ。
サガコ:その点ではね、逆に『オートマタ』はなんの心配もいらないと思うんだ。体験版ですでに多くの人の心をつかんで、ニッチではなくメジャータイトルの風格がある。骨格も筋肉も一流で、成長済みって感じがする。
それに情報も物語も、ゲームの中にしっかり詰め込まれているし、上演済みのヨルハの舞台などにも要素は散りばめられている。だからね、今のうちにハッキリ言っておくよ? 「今回は『グリモアニーア』みたいな伝説級の設定資料集には作れねぇからな!!」(笑)。
喜一:そんなことない!(小声)
タダツグ:断言したーー(笑)。でも、ヨナもそう思う。同意する。ゲームとして物語を描ききらず、かなり不完全な仕上がりであったからこそ『レプリカント』と、それを補う『グリモアニーア』の相性はすばらしくよかったんだよな。欠けているところを補完する快感が得られる、まさに“白の書”とも言うべき書物になれた。
サガコ:そう、だけど『オートマタ』はしっかりと作り込まれて、欠けてる気配が微塵もしないもの。完成度の高いゲームは、それ単体ですばらしい体験を与えてくれるはずで、そこでひとつの世界として完結するチカラも持つ。
『レプリカント』の話をする時は、どうしても世界観と物語に寄っちゃうけど、『オートマタ』はゲームとして高く評価されるだろうし、女性よりも男性にめちゃくちゃ受ける気がしてる。
タダツグ:もちろん俺たちは全力で『オートマタ』の資料集を作る、それは間違いない。『オートマタ』にはたくさんの謎も隠されているだろうから、それも興味深いし、掘り下げたい。
けれど体験の熱量としては、今回は『オートマタ』というゲームそのものが素晴らしいから、そこに多くが集約されると思う。それは逆説的に言えば、『レプリカント』の時には残念ながらゲームに盛り込めなくて実現できなかったことが、今ならあれもできる、これもできるっていうゲームとしての“進化”の証拠でもあると思うんだよね。
喜一:きれいにまとまったところで、ぼくからもひと言だけ。2017年3月下旬発売予定の『NieR:Automata』の設定資料集&完全攻略本も気合い入れて作っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!
サガコ:『レプリカント』はゲーム単体としては厳しいことを言われる部分も大きかった。アクションとしてはわりと単純で槍さえ使えばゴリゴリ進めるのに武器を全部集めさせられるのはウザいだの、行ける場所は少ないのに無駄に広くて飽きるし、移動呪文がないのは不便だとか、上げたらキリがない。
私も当時のレビューでは満点つけたりしなかったはず。でもやっぱりあちこち楽しかったんだよね。横向きのアクションになったり、シューティングになったり、サウンドノベルになったり、イノシシかっ飛ばしたり、釣りをして、花を育てて……。完璧ではなかったけれど、でも、楽しかった。
喜一:ぼく、今でもハッキリ覚えてるのが、回復薬が店で買えるってのを終盤まで知らなかったんですよね。店がどこにあるのか気がつかないままに進めてしまって、結果的にものすごい縛りプレイしてました(笑)。
タダツグ:それ、めちゃくちゃ大変じゃね?
サガコ:確かにショップなのか、ただの町の人なのかとか、わりと分かりづらかったよね(笑)。
タダツグ:でもなー、その数ある欠点のすべてを音楽と、目に見えないなにがしかの美しさが塗り替えてしまう不思議なタイトルなんだよなあ、『レプリカント』って。そこに強みがあった。
喜一:うーん、『レプリカント』が愛されるのは、キャラクターや物語、世界観とかがそれだけ魅力的だったってことなんですかね?
タダツグ:デボルポポルは好きだったなぁ……。噴水で立ち止まり、酒場に行けばデュエットが聞けたりして……それが最後にあの場所でまさかのってヤツでさ……2人と対峙して『イニシエノウタ』が流れ出した時の、あの鳥肌よ……!!
▲タダツグが夢中になった美人姉妹。 |
サガコ:わかる!! あんなに安らぎをくれたはずの『イニシエノウタ』が、一気に不穏な曲として「ここでかよ!!」っていう急転直下の演出がめちゃくちゃ切なくて!! ただでさえ名曲なのに、そこへ新たな物語と意味が生まれるんだ。
タダツグ:俺は、あの演出を考えたヨコオさんがやっぱりすごいと思うんだ。曲がいい、曲がいいって言われる『レプリカント』だけど、そのよさを引き出してるのは、やっぱりゲームの中で曲をいかに使うかを演出として組み上げた、ヨコオさんのディレクションのすごさだよ。
サガコ:各キャラやシーンと音楽が直結して記憶されてるんだよなあ。『レプリカント』が記憶に残るゲームになれたのは、そのあたりも大きい気がする。
喜一:ちなみに大ファンのサガコさんは、どの曲とどのキャラが一番好きなんですか?
サガコ:うう……決められない、全部好きすぎて、決められないけど……強いて言うなら、やっぱりニーア。青年の頃のニーアかな。曲は『カイネ/逃避』かな。もうね、全部好きで選ぶの無理、全部名曲すぎて無理。
タダツグ:究極の愛され主人公ニーアくんな。ヨナに愛され、デボルポポルに大事にされ、エミールに愛され、仮面の王に信頼され、カイネに腹を蹴られ……。
サガコ:カイネさんの恋心キック……行動理由が理解しきれなくて、そこが逆に素晴らしいシーンに昇華してるアレですよ。それでいて、そんなみなさんからの愛情を一心に受けながら、最後の最後までニーアは妹のヨナにしかほとんど興味が向かってないところが、ものすごくピュアクズで大好き。
タダツグ:ピュアクズ言うなよ!(笑) 主人公やぞ!
▲サガコが愛してやまないピュアクズイケメンのニーア。 |
▲恋心キック。 |
サガコ:ちょっと『ドラゴン○ール』の主人公にも通じるところがあると思ってるんだよね。ピュアすぎて、戦闘に一生懸命すぎて、周りがまったく見えてなくていつのまにか世界崩壊の危機を招いてる、みたいな。
タダツグ:そういう意味では、少年マンガの王道とも言えるのか……言えるのか? 確かにヨコオさんが『レプリカント』で目指したのは少年マンガの王道だったわけだが。
喜一:限りなく間違っているような、限りなく正解に近いような……うん。
サガコ:純粋さは、時に他人を傷つけるんだよ……ヨナが天然でそうであったように。
タダツグ:あ、これ妹のいいとこ出てこなくなりそうだからやめとこう(笑)。ちなみに喜一くんはイチオシキャラといえば?
喜一:僕は印象に残ってるのはフィーアですね。仮面の街で結構お世話になるじゃないですか、健気でかわいいし。
サガコ:うんうん。
喜一:なのに、中盤越えたところで結婚式に呼ばれたら、衝撃シーンが発生するでしょ。あれが未だに納得いってないというか、「ええっ、こんなにあっさり!?」っていう衝撃度が高すぎて忘れられないんですよね。
タダツグ:そうな……あっさり度数は相当高めだったな。切なかったな。
喜一:そういう意味では、Dエンドで●●●●●●が●●するのだって「ええっ、マジで!?」という衝撃で覚えてるって感じですよね。積み上げてきたものが、ものの見事にさくっと失われる驚きだらけだったというか。
サガコ:すべて、作り手の計算でそうなっていたのだろうか?
タダツグ:わからない……今となっては何も。
サガコ:私はヨコオ作品のなかでは『レプリカント』が突出して大好きなんだけど、ヨコオさんが言ってた「少年マンガの王道を目指した」っていうこの作品のコンセプトは、ある意味ヨコオタロウ的には“邪道”だったんじゃないかなと最近思うようになった。
ヨコオさんの“王道”は、それこそ『オートマタ』のような世界のほうなんじゃないだろうか。ということは、『レプリカント』のような“邪道”は、今後なかなか出てこないのではなかろうかと。これこそレアケースだったのではなかろうかと。
タダツグ:なるほど。興味深い。そして『オートマタ』はそんな『レプリカント』をどんな風に越えていくのか、ってところが気になるわけで。
喜一:そのへんは、では次回にゆっくり話しましょうか。
年明け掲載の後編に続きます! お楽しみに!!
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ディレクター・ヨコオタロウさんによる短篇小説、小説家・映島巡さんによる書き下ろし小説2篇も読める『NieR:Automata』ファン必携の1冊です。
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