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2017年5月20日(土)

【電撃PS】『グノーシア(仮)』インプレッション! プチデポット最新作はどこがおもしろいのか?

文:まさん

 『メゾン・ド・魔王』を手掛けた独立系ゲーム開発集団“プチデポット”が企画・開発し、メビウスから販売予定のPS Vita用アドベンチャー『GNOSIA(グノーシア)』(仮題)。本作はアナログゲームの『人狼ゲーム』をベースにした作品で、主人公のパラメータを強化していくRPG要素と、物語を進めて交流していくアドベンチャー要素などが融合したSF作品になっています。

『bitsummit』

 インディーゲームファンから注目を浴びている本作は、5月20日(土)、21日(日)の2日間、京都市勧業館“みやこめっせ”にて開催中の日本最大級のインディーゲームのイベント“A 5th Of BitSummit”にて試遊できます。本作にふれてみて、速攻その魅力にとりつかれた担当ライター・まさんが、遊んでみてわかったシステムや作品の魅力について語っていきます。

段階を追ってAIとの高度なダマしあいが楽しめるチュートリアル

 待ちに待ったプチデポットの新作『グノーシア(仮)』。前作の『メゾン・ド・魔王』はカワイイ絵柄とゲーム性が魅力的でしたが、それとは全然違う『人狼ゲーム』をベースにした作品とのことで、遊べる日を楽しみにしていました。

 さっそく遊んだ感想……と行きたいところですが、このゲームのベースとなっている『人狼ゲーム』自体を知らない人もいると思いますので、軽く説明したいと思います。

 『グノーシア(仮)』のベースとなっている『人狼ゲーム』は、人間のなかに混ざった人狼を見つけだすために議論を重ね、1日に1人“吊るす”人物を決めていくというアナログゲーム。

 人間側は1日に1人だけ投票で誰を吊るす(殺す)のか決めて、得票数が一番多かった人物をゲームから退場させられます。逆に、人狼側も1日の終わりに1人だけ人間を殺すことが可能。人と人狼で生き残りをかけながら騙し合い、人間側がすべての人狼を処刑すれば人間の勝ち。人狼が人間と同じ数だけ生き残れば人狼側の勝ちとなり、お互いに騙し合いながら推理を重ねてくのが楽しい、とても知的なゲームです。

 本作はそんな『人狼ゲーム』をベースにした作品になっており、CPUと戦うシングルプレイの作品になっています。『人狼ゲーム』をモチーフにした作品では、近年だとケムコの『レイジングループ』といった名作がありますが、実際にCPUと戦えるゲームはあまり多くありません。自分のように一緒にアナログゲームをする友だちがいなくても遊べるのは、まさに望むところ。いや、というわけで、早速内容を見ていきましょう!

『bitsummit』
『bitsummit』

 ゲームを始めると、最初に主人公の名前とパラメータの振り分けを行うことになります。そう、本作にはRPGのようにパラメータが設定されているんですよ。たとえば、カリスマの値が高ければ自分の意見を信じてもらいやすくなり、ステルスが高ければ仲間たちの意識が自分に向きにくいので、投票時に選ばれる可能性が低くなります。

 ゲームを進めていくと経験値がたまり、レベルが上がって新しく数値を割り振れるようになるので、最初に適当な降り方をしても大丈夫。自分の好きな方向に育成できます。

 自分は投票されるのが嫌なのと、現実でも存在感がないのでステルスに全パラメータをガン振りでプレイ。こういう偏ったプレイでも、全然問題なく遊べました。ベースこそ『人狼ゲーム』ですが、単純にそのままというわけではないのです。プチデポットさんならではのアクセントが加わっていて、ちゃんと、『人狼ゲーム』ではなく『グノーシア(仮)』になっているんですね。

 そんなわけで、いよいよ本格的にゲームがスタート。本作は宇宙船を舞台にした変わった設定になっており、『人狼ゲーム』における用語も独自の物に置き換わっています。

 わけもわからずに宇宙船で目覚めた主人公=プレイヤーは、そんな宇宙船を操舵するクルーの1人。この世界での“人狼”にあたる“グノーシア”を見つけるため、プレイヤーは命を懸けた議論に挑んでいくことになります。

『bitsummit』

 同じ宇宙船のクルーである“セツ”に起こされるところから始まる本作は、プチデポットさんいわく、物語で引っ張る作品ではないそうですが、チュートリアル部分の物語は非常に先が気になる展開でグイグイ引き込まれます。

 遊び方自体は非常にシンプル。1日に1回、グノーシアを決めるための議論(バトル)が発生し、バトル後に投票を行ってグノーシアだと思う人を決めていく。最終的に人類かグノーシアが勝利すれば、1ゲームが終了となります。

 1回のバトルは5ラウンド制で進行。ラウンドごとに“発言する”か“様子を見る”かを決め、発言する場合は、誰かを“疑う”か“かばう”かを選択。それによる仲間たちの反応から、推理を積み重ねてグノーシアを見つけ出すのが基本です。

 様子を見た場合は、自分以外の誰かが“疑う”発言をするので、それに対する周囲の反応を観察。みんなが誰を疑って同調しているのか、誰をかばおうとしているのか、よく考えて投票相手を決めていく流れとなっています。

『bitsummit』
▲疑うのかかばうのか、それとも様子を見るべきか。自分の発言1つで、逆に仲間から疑いの目を向けられてしまうことも……。

 5ラウンドが経過したら投票し、コールドスリープするキャラクターを決定。その後、グノーシア側が1人だけ誰かを宇宙から消滅させ、1日が終了します。これを繰り返し、最終的にグノーシアを全員コールドスリープできれば人類の勝ち。グノーシアの数が上回ればグノーシアの勝ちとなります。

 『人狼ゲーム』のように吊るして殺すのではなく、コールドスリープさせるという設定なので、罪悪感を抱かずに投票しやすいのも本作ならではと言えるでしょう。

『bitsummit』
『bitsummit』
▲投票でコールドスリープさせる人物を決定。議論の流れをうまく誘導してグノーシアを全員封じ込めましょう。

 1つのゲームで結果が出ると、次の“ループ”としてキャラクターや立場が入れ替わり、新たなゲームが始まります。そして、チュートリアルはループごとに少しずつルールやできることが増えていく仕組みなので、物語とゲームを楽しんでいるうちに、気がつくと自然にルールを覚えられると思います。

 これまで、こうしたタイプのゲームをやったことがない人は説明を聞いて複雑に感じているかもしれませんが、段階を追って説明してくれるのでとまどうことはないです。人数も段階を追って増えていくのですが、最初のゲームは主人公を含めて5人。キャラクターを把握しきれないということもないでしょう。

 『人狼ゲーム』では人間と人狼という区分け以外に、1日に1人だけ、指定した相手を人狼かどうか調べられる“占い師”や人間なのに人狼側に所属して裏切る“狂人”など、特別な役割を持った役職もありますが、こうした役職や議論する人数、追加ルールなども段階を追って少しずつ開放されるので安心。

 しかも、2ループ目辺りからプレイヤーごとにバトルの展開やゲームの勝敗も変化します。まだチュートリアルですが、同じ結果にはなりません! 遊ぶ人によってまったく違う展開になるので、チュートリアル部分もゲームとしてしっかり楽しめます。

 とくに、役職が解放されると一気におもしろさがアップ! たとえば、1日の終わりに誰か1人を調べ、グノーシアかどうかを見極める“エンジニア”。これが解放されると、バトルのセオリーが飲み込めてくるはずです。

『bitsummit』
▲グノーシアを見分けられるエンジニア。

 エンジニアは、当然グノーシア側からするとやっかいなので狙われやすく、名乗り出るタイミングを間違えると1日目に消えることもありえます。

 エンジニアはグノーシアを見分けられるので、生き残っていると人類側が有利に戦える役職。しかし、グノーシア側もただでは負けません。グノーシアがウソをつき、エンジニアを名乗り出てくるのです。同時に2人エンジニアが出てくる(片方は偽物)という状況になるため、どちらが本物なのかを議論を重ねて見分ける必要があります。この流れが、本当にアナログの人狼ゲームを遊んでいるような感覚!

 自分が遊んだときもCPUにダマされたり、本当にエンジニアなのに敵に結託されてワナにハメられるといったことが起きました。ループを進めて役職が増えれば、さらに考えることが増えて、バトルも奥深いものに……。まったくルールを知らないで遊んだ人は、最初にCPUが適当に操作していると思うかもしれません。ですが、ちゃんと人狼ゲームのセオリーに沿って動き、こちらをダマしてくるんですよ!

『bitsummit』

 上記の画像は、エンジニアを名乗ったジナのあとに、すかさず自分がエンジニアだと主張するセツの模様。間違いなくどちらかが偽物ですね。なお、自分がエンジニアであえて名乗りでないという選択も可能です。

 パラメータを上げると発動できる“スキル”なども存在し、スキルやパラメータ、性格などが絡まり合って、ゲームをよりおもしろく運んでくれます。

個性豊かなキャラクターたちとのひとときの交流

 チュートリアルで“ループ”を進めて行くと、役職だけではなくバトルに参加するキャラクターも増えていきます。このキャラクターが、かなりくせ者。個性豊かというか、非常にとがってます。

 表情で語る無口な少女や直感でウソを見抜こうとする女性などなど。最終的に主人公を含めた15人のキャラクターが登場するのですが、どのキャラクターも特徴的な性格をしていて、ひと筋縄ではいかない感じ。性格はバトルに大きく影響し、ダマしあいのセオリーだけではなく、性格に合った行動をとってくるので、それぞれの性格を見抜くことも勝つためのカギとなります。

 例えば、直感力に優れていてウソを見抜こうとする女性には、プレイヤーのウソが通じない可能性が高い。それを逆手に取って行動すれば……と、キャラクターごとの個性が本作のダマしあいをより深いものにするのです。

 個人的にお気に入りなのは、エキセントリックな夕里子さんですね。エキセントリックすぎて何を考えているのか読めず、敵に回しても味方に回してもやっかい。味方だと思えずにコールドスリープしちゃったり、敵なのに味方だと思ってしまったり、本当に読めない! でも、そこが好き!!

『bitsummit』
▲夕里子さん、とさん付けで呼びたくなるような神秘的な雰囲気をまとう夕里子。

 本作は役職だけではなくキャラクターの性格に沿った行動を読み取らないと、推理を誤る可能性が大! なお、登場するキャラクターとはダマしあうだけではなく、目に見えない“好感度”といった存在もあるようです。1日が終わるごとに船内を移動してキャラクターと交流できるので、そこで気になるキャラクターと交流するのも重要!?

『bitsummit』
▲それぞれのキャラクターがいる場所など、行きたい場所を決めて移動。彼らと交流して好感度を上げていきましょう。

 また、バトル中にキャラクターがどう考えていたのかがわかる“航海日誌”システムを利用すれば、誰が誰を疑っていたのか、誰を信じていたのか理解しやすくなり、次のバトルに勝つための手がかりを得られます。

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“何度も遊びたくなる”という説明に納得!

 プチデポットさんが本作を制作するキッカケとなったゲームを含め、CPUと『人狼ゲーム』を遊ぶゲームをいくつかプレイしてきましたが、正直なところ納得できる内容のものは少なく、試遊する前は半信半疑な部分がありました。

⇒制作のキッカケについてはこちらのインタビュー記事をチェック

 しかしプレイしてみると、プレイ時間を大幅に超えてしまうほど熱中! 1ゲームは長くても15分ほどで終わるのですが、“何度も遊びたくなる”というプチデポットさんの説明にも納得がいきました。

 チュートリアルが終わると役職や参加人数を自由に決めて“フリープレイ”ができるようになるのですが、まさにここからが本番! フリープレイで最大人数にすると、考えることも多くなり、本作の奥深さを実感。『メゾン・ド・魔王』とは一見すると全然違うゲームですが、遊ぶたびに展開や遊び方が変わるおもしろさは共通していると感じました。

 それから、Q flavorさんが手掛ける音楽も素晴らしく、一度聞くだけで耳に残ります。BitSummitの会場では音が聞こえにくいかもしれませんが、試遊される方はぜひ耳を傾けてみてください。個人的にはバトル中の曲が好きです!

 『グノーシア(仮)』の発売時期は2017年予定で、早ければ2017年秋口にはとのこと。本日から開催される“A 5th Of BitSummit”では、SIEブースとプチデポットブースで、本作の試遊版がプレイ可能となっています。会場では試遊時間の関係上、チュートリアルをプレイしきるのは難しいかもしれませんが、物語や雰囲気で本作のおもしろさは伝わるはず。試遊できなかった人は、今回の記事のほか、電撃PlayStationでの情報掲載にも注目してください。

『bitsummit』
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⇒“A 5th Of BitSummit”紹介記事はこちら

A 5th Of BitSummit 概要

・日程:2017年5月20日(土)、21日(日)

・時間:10:00~17:00

・会場:京都市勧業館“みやこめっせ”1階第2展示場

・入場料:一般 2,000円 / 中高大学生 1,000円 / 小学生以下 無料(2日間有効)

・主催:BitSummit実行委員会

※一般社団法人日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)(Q-Games Ltd. / PYGMY STUDIO CO., LTD. / VITEI BACKROOM Inc. / O-TWO inc. / 17-Bit / Digital Development Management, Inc. / Indie MEGABOOTH)、
株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス、株式会社 Skeleton Crew Studio、株式会社インピタス、京都コンピュータ学院、京都府

・制作:株式会社オリコム

(C)Petit Depotto

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.638』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年5月11日
■定価:638円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.638』の購入はこちら
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