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2017年5月30日(火)

【電撃PS】『FF14 光のお父さん』原作者と監督に聞く、ドラマならではの挑戦とクライマックスを迎えての想い

文:電撃PlayStation

 プレイヤーブログ“一撃確殺SS日記”の記事を映像化したTVドラマ『光のお父さん』。『ファイナルファンタジーXIV』を介して親子のかかわりあいを描く本作は、実写パート以外にも、ゲーム内キャラクターのエモート機能を用いて演技をするパートが導入されたことで話題となり、『FFXIV』プレイヤーだけでなく多くの人々の注目を集めました。

『ファイナルファンタジーXIV』

 今回はそんなTVドラマを制作するにあたってキーとなった3名の人物、原作者のマイディーさん、実写パート監督の野口さん、エオルゼアパート(ゲームパート)監督の山本さんに、TVドラマならではの作り方やチャレンジしたことなどのお話をうかがいました。

 ※本鼎談記事は、5/25(木)発売の電撃Playstation639号に掲載された記事の、全文掲載バージョンです

『ファイナルファンタジーXIV』
▲左から、野口監督、マイディー氏、山本監督。

鼎談参加者

【監督】野口照夫氏
映像制作会社・主力会の代表。本作では、主に実写パートの監督としてメガホンを取る。今回は光のお父さん(インディー)のキャラクターで取材に対応。

【原作】マイディー氏
人気ブログ“一撃確殺SS日記”の管理人で、ドラマの原作である企画“光のお父さん”の仕掛け人。

【監督(エオルゼアユニット)】山本清史氏
C.A.S.E株式会社・代表。エオルゼアパートの監督として、フリーカンパニー・じょびネッツアのメンバーを指揮。

原作者が密にかかわるからこそできたドラマ

――今回のドラマでは、原作のマイディーさんはどのような形でタッチされているのでしょうか。

山本清史氏(以下、敬称略):原作であり、主演であり、演出であり、カメラマンでもあり……。

野口照夫氏(以下、敬称略):そして広報でもありますよね(笑)。

――そのあり方は、今までにケースないですよね。

山本:ここまで原作者が制作にかかわることは、初めてかもしれません。

――そもそも、ゲームを題材にしたブログをドラマ化すること自体が初めての試みですよね。

山本:原作者が脚本を書いたり、監督を担うことはそれなりに耳にしますが、原作者の立場のまま自分のキャラを操作して宣伝までやってしまうというのは、非常にレアなケースです。その宣伝も自分から発信していくタイプなので、やっていることはプロデューサーに近いですね。

――マイディーさん的には、自分のブログから発信したものをプロデュースしたいという気持ちは強かったのですか?

マイディー氏(以下、敬称略):僕はプロではなく、一般のブロガーという立場ですから、“作っていただいている感”が強かったんです。なので、どっしりと構えているよりも“僕にできることをなんでもする”という心持ちで行動していました。

山本:マイディーさんご自身が、もともとサービス精神が旺盛なんでしょうね(笑)。

――ブログを拝見していても、スクリーンショットの撮り方など“読者にどうやったらおもしろく伝えられるか”という部分がすごく考えられている印象を受けます。

マイディー:せっかく見にきていただいているので、楽しんでもらいたいですから(笑)。

山本:その気持ちが一番大きいんですよ。普通ならこのかかわり方はありえないですから。

――そのあたりの実制作で、一番密にかかわったのが山本さんという感じですか?

山本:そうですね。マイディーさんとフリーカンパニー“じょびネッツア(以下、じょび)”のメンバーには、僕とプロデューサー、アシスタントの3人が主にかかわっていました。エオルゼアパートの監督とは言いますが、カメラや制作もやる自主映画的な感じになっていましたね。

――エオルゼアパートは、ある意味、インディー的な作り方をされているんですね。

山本:仲間を集めて“おもしろいことやろうよ!”みたいな……学生時代を思い出しました(笑)。

――野口さんは実写パートの監督をなされていますが、エオルゼアパートとの演出のすり合わせではどのようなことを行ったのでしょうか?

野口:あまりそういうことはしませんでしたが、見ている人が混乱しないようにゲームと実写の“つなぎ”は、けっこうすり合わせました。

山本:実写パートのシーン終わりのカットが“左向きのアップになります”と聞いて、ゲームパートの最初のカットを左向きで撮ってクロスフェードしたらいいよね、という“つなぎ”ですね。

野口:“つなぎ”がギクシャクしちゃうとドラマに入り込めないので、そこは密にやりました。

――一部ブログでもドラマ制作の過程を書かれていますが、ドラマ化に動き出したきっかけは、どなたからの発案だったのでしょうか?

マイディー:それはブログで語ったように、ぴぃさん(本作のプロデューサー)からになります。

――やはりそうなんですね。ぴぃさんから以前いただいたメールには、“この企画は野口監督がいなければ、私は着手しなかった作品です。そして、山本監督がいなければ完成しなかった”と書かれていました。ちなみに、マイディーさんにドラマ化の話がきた時点で、野口さんにもオファーは届いていたのでしょうか?

野口:マイディーさんに連絡を入れたのは一昨年の秋ぐらいでしたよね?

マイディー:一昨年の11月19日です。

山本:僕に連絡がきたのは少しあとの年末でした。

――かなり以前から話は進んでいたんですね。

野口:もともとぴぃさんとは顔見知りで、かなり長く付き合いがありました。ぴぃさんが映像業界を離れてからは少し疎遠になっていましたが、いきなり“おもしろいブログがあるから読んでみて”と、数年ぶりのメールがきたんですよ。それ以外、何も書かれていなくて(笑)。“なんだ、この謎メールは?”という感じでしたね。

――最初にブログを読まれた感想はいかがでしたか?

野口:さすがに“ただ、このブログを読んでもらいたい”だけの連絡ではなく、何か狙いがあるだろうと思って仕事の目線でブログを読みました。僕はオンラインゲームは遊んだことがなく“ブログを理解できるのか”という点は心配でしたが、想像以上に理解できたことを覚えています。やはり、光のお父さんに書かれていることは、普遍的なことだったのが大きいんでしょうね。

 例えば、子どものころに映画を見ていると親が横で「この映画面白いな」なんて言って、いっしょに熱狂できるとすごくうれしい……みたいな、そういう感覚って誰しも持っていると思うんです。自分の大切な遊び場を守りたい気持ちとか、親への思いとか、理解できることばかりでした。

 吉田(吉田直樹氏/『FF14』プロデューサー兼ディレクター)さんをまったく知らない状態でしたけど、ブログの第6話にある“吉田ァァァーーッ!”も最初から笑えたんですよ。読み終えたころには、“ぴぃさんはこれを映像化したいんだろうな”と感じていましたが、正直“余裕でイケるだろう”と思っていましたね。その年明けの1月6日にぴぃさんに会ったときに「じつは、これをドラマ化したいんですけど」と言われて、“やっぱりな”と(笑)。

――それがスタートの第一歩ですか?

野口:そのときはまだ、スクウェア・エニックスさんの許諾申請前の段階で、ぜんぜんどうなるかわからないタイミングでした。

マイディー:そうですね。

野口:「ウソだと思うかもしれないけど、このブログ読んで3回泣いたんだよね」って言われたのを覚えています。“ウソだと思うかも”とか言っておきながら、ちょっと涙目になってて“絶対ウソじゃないじゃん!”って(笑)。

マイディー:ありえそう(笑)。

山本:目に浮かぶ(笑)。

野口:それはもう、ものすごい熱量で。僕はそれこそが一番大事だと思っているので、“ぴぃさんが今のままスクウェア・エニックスさんに行ったら、OKもらえると思いますよ”と伝えました。

――そこから山本さんにお話が行ったのは、いつごろになるのですか?

山本:2016年の6月末ですね。もともとぴぃさんとは、ぜんぜん違うコンテンツでかかわっていまして、“なにか企画やりましょう”みたいな感じで何度かお会いはしていたんですよ。冬頃、ほかの知人を含めた3人で飲みに行った際に、「『FF』のドラマ作ろうと思ってるんですよ」って言ってたんですよね。“何言ってんだ(笑)”と思いつつ、その後、なぜか僕をその話題から遠ざけようとするので、“怪しいなぁ”なんて思ってたんです。当時は、そこまで『FFXIV』にハマっているとは思っていなかったですしね。

 状況が動いたのは、春を過ぎてまた別の企画の話をしていたときです。その頃は、ぴぃさんのなかでいろいろ煮詰まっていた頃だったと思うんですけど、“『FFXIV』を題材にしたブログをドラマにするんだけど、ゲームの映像を撮らないといけないんです。どうしたらいいと思いますか?”という相談があったんですよ。僕はそれを聴いた瞬間に画が見えて、“これは撮れるな”と確信しました。理屈は全部わかったんです。

 あとはお金の問題だけで、お金があればモーションキャプチャーができますし、もっとお金があれば全部CGでできます。で、その問題はどの段階なんだろうと聞いてみたら、「お金がないからゲーム内でやってみたい」と言われて。それを聞いて、すごくおもしろい試みだと驚きました。

 そして、それを実行できるのは……おこがましいかもしれませんが、“僕しかいないな”と思いまして。僕の背後にいるアヤシイナニカが“自分がやるって言え”ってささやいてましたね(笑)。普段はそういうこと言わないんですけど、このときだけは「それは、僕にしかできないと思います」と言いました。それを聞いたぴぃさんは“うぅ~ん”と悩んだふりをしつつ、ニヤニヤしていたのを覚えています。

『ファイナルファンタジーXIV』

マイディー:その様子も想像できますね(笑)。

山本:そのときはなぁなぁで終わってしまったのですが、後日に製作委員会のなかでゲームシーンの話題になった際に、別のプロデューサーも“ヤマキヨ(山本氏)はどうだ?”と推薦してくれたそうで。それを聞いたぴぃさんは、とてもテンションが上がったみたいで、すぐに僕に「どうですか?」と電話をかけてきました。

 もちろん、「やるって言ったじゃん」と返しましたよ(笑)。すぐに何をしたらいいかと聞くと、“実際に『FFXIV』をさわってもらう必要がある”と訴えられました。これが、2016年7月頭頃のことですね。それから、僕のエオルゼアでのレベル上げがはじまりました(笑)。

――そのころから、マイディーさんと山本さんはお会いしていたんですか?

山本:エオルゼアパートは、実写パートの撮影が終わったあとにクランクインしたんですよ。なので、じつはマイディーさんとの初顔合わせは実写パートの打ち上げのときなんですよね(笑)。

野口:実写パートの撮影が去年の10月に1カ月かけて行われました。その打ち上げの場で初めて顔合わせしたということですね。実写パートを撮り終わってからエオルゼアがインした形ですね。

マイディー:その打ち上げパーティも、僕らからしたら“これから始まるのに、打ち上げパーティ……”状態でしたね(笑)。何ひとつできてないという。

野口:俺だけ、やりきった顔してましたね。

マイディー:なんかいい感じになってて、ぴぃさんも泣いてて……。エンディングみたいになってましたけど、僕らはまだオープニングで“これからなのに……”とか思ってました(笑)。

山本:エオルゼア内では、ぴぃさんの紹介という形でマイディーさんと3人でお話していたんですけどね。そのときだったかな。どういう画になるか想像できないという話を聞いていたので、僕がじょびハウスで適当に撮影して見せて。それをちゃっちゃと編集して、製作委員会に見せたらびっくりするぐらい感動してくれて、“いいじゃん!”と。ぴぃさんもそこから“イケる!”」みたいな雰囲気になってましたね。

マイディー:僕らが作ったものとは違うものですが、パイロットムービーみたいなものですね。

山本:ストーリーがどうというものではなくて、“エモートしながら、カメラがこう動く”“天井付近をふわっと動いてみる”といった、実写っぽい動きをテストしてみたものです。

野口:それはインの前でしたね。イン中にあがってきたのは、マイディーさんたちが作ってくれたものですよね?

マイディー:そうですね。

野口:現場はかなり盛り上がりましたよ!

――実写パート撮影中にそれを見た形ですか?

野口:ぴぃさんがホクホクの顔で持ってきました。

マイディー:それ自体を作ったのはもっと前ですけどね。企画段階のころ、吉田さんに見せるために7月には作ってありました。

“未プレイでも理解できる”を目指したドラマ作り

――マイディーさんのブログは『FFXIV』のプレイヤーがメインの読者だと思いますが、ドラマ化するとなるとたまたまその時間にテレビをつけていた人だったり、そもそもゲームをプレイしたことがない人だったりと対象となる層が幅広くなりますよね。そのなかで、ゲームをどう描くかという部分でいろいろな選択肢があったと思いますが、いかかがですか?

山本:とくに野口さんは、ご自身がゲームに深い知識がないという立場なので、同じ目線の人がどう見えるのかを意識されていたのかなと思います。

野口:だいぶ考えましたが、逆に意識しすぎた感じがあります。最初に話したように、マイディーさんのブログを見たときから、スッと内容が頭に入ってきたので、“意識しすぎる必要はないんだろうな”と思いながらも、“どうしたらよりわかりやすくなるか”を考えちゃいました。

 ですが、脚本のリューハラ(吹原幸太氏)が『FFXIV』のユーザーなので、彼がチームに入ってきたことでバランスはかなりよくなりましたね。

山本:楽しそうにしてましたよね(笑)。

野口:ゲームユーザーにも、そうでない人にもバランスよく書いてあって、そこで安心しました。

――冒頭の『FFIII』のシーンや、コントローラーを隠されるシーンなど、ゲーマーの視聴者が見ていて共感する部分が多い印象ですね。“あるある”がしっかり描かれていて。逆に、自分の知人のゲームをまったく遊んだことがない人も見て“おもしろくて、なんか懐かしい感じがする”とも話していました。ゲームに一番近いドラマにかかわらず、ゲームから遠い人にも響くものがあるというのは、どのような仕掛けがあるのでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』

山本:それは、ゲームと考えるから難しくなるだけで、これがボクシングでも同じことなんですよ。ボクシングのルールがわからない人が『ロッキー』を見てもおもしろいわけです。エオルゼアを知らなくても、ストーリーとキャラクターの気持ちをちゃんと描けていれば、そういう世界として受け止められるのが、今の視聴者なんです。

 今の人たちは、突飛なことをしても、ある程度はついてきてくれるんですよ。例えば『スター・ウォーズ』はトンデモ科学があって、人間以外の種族もたくさん出てくるけどおもしろく見られます。それに近いところがあると思いますね。

――ゲームをプレイしている人からしたら“これに未プレイの人がついてこられるのか?”と考えてしまいますが、じつはそこまで気にする必要はなかったんですね。

マイディー:ドラマの感想を見ていても、『FFXIV』プレイヤーは“これ、わかってもらえるのか?”“この表現で伝わるか?”みたいな、身内感があるんですよね。そういうのは見ていて楽しいですし、心強いですよね(笑)。

野口:ドラマII話で“吉田ァァァーーッ!”を入れるときにテロップを入れるかどうかで話し合いがあったんです。最終的に入れないという結論になったのですが、それに対して僕も理解できたので反対はしませんでした。ブログを一読したところから、ぜんぜん引っかからずに読めましたから。

――そんななかでも、ゲーム未プレイの人もすんなり入り込めてますよね。

山本:不思議なもので、僕の妻はゲームまったく遊ばないですけど、II話を見てゲラゲラ笑ってましたよ。

――実写パートの撮影現場の雰囲気は、いかがでしたか?

野口:2つにパートを分けたことによる難しさはありましたが、みんな新しいことに挑戦しているという感覚でポジティブでしたね。終始いい雰囲気で、楽しんでやっていたと思います。

山本:実写パートの絡みで言うと、ぴぃさんからは“特撮を撮るつもりでやってくれ”と。

――なるほど!

山本:作り方は実際そうでしたね。

――マイディーさんの分身となる稲葉光生(アキオ)に関しては、演技的に共感できる部分も多かったです。

野口:千葉雄大さんの演技が見事だったなと。この作品は、みなさんが忙しくて台本の読み合わせ・リハーサルもできず、いきなり本番という形で動いていたんですよ。なので、ものすごく不安でしたね。1話の“いのうえ……”のところが、どういう空気感で入っていくのかが予想もできなくて、とくに不安が……。なんの打ち合わせもしないままの本番は、本当に恐怖でしたね。ただ、結果は見てのとおり、見事でした。

 とくに印象に残っているのは、僕が描いている稲葉家の雰囲気と、千葉さんや大杉漣さん、石野真子さんが準備してきたものには多少の違いがあったことです。最初はもう少し活気のある家族でスタートしたのですが、もっと目を合わせないんですとか、もっとゆっくりお父さんに対して話すとか、本番中に細かく指示を出していたので、役者のみなさんに嫌われてしまうのではとヒヤヒヤしていました。

 そんなとき、大杉さんが「監督は、こういう家族を求めていたんだね。いいね、こういう家族も」とボソッと話していたのを聞いて……。そのときは感動しました。

『ファイナルファンタジーXIV』

――ストーリー的にも、その手探りな感じが最初の家族のコミュニケーションの手探り感と、マッチしていたのかもしれないですね。

野口:結果オーライですね(笑)。千葉さんとクランクイン前に話していて覚えているのが、マイディーさんの話です。千葉さんもブログを全部読んできてくれていて、マイディーさんの想いである“オンラインゲームってすばらしいよね!”ということが、最終的に伝われば勝ちだよねという意識を共有していました。

――最終的には、『光のお父さん』というコンテンツ自体の目的が、“オンラインゲームの楽しさ・可能性”をみんなに知ってもらうということにあるので、そこの部分は実写パートでも意識されていたんですね。

野口:そこしか話さなかったかもしれませんね。あとは、現場で細かいところをすり合わせようと。

――マイディーさんが実写パートを初めて見たのは、いつごろでしたか?

マイディー:脚本は最初からかかわっていたのですが、実際に最初に映像を見たのはⅠ話の冒頭にあった子役のクルクル回っている映像でしたね……。ムービーだけぽんっと送られてきて、子どもがのたうち回っていて(汗)。

野口:“これで正しいのでしょうか?”と(笑)。

マイディー:“この……のたうち回っているこの子の生き方が正しいのかどうかと言われても……”と答えたら、“原作3話のあのシーンです”と言われまして。“あぁ! あのシーンでしたら、もうちょっと肩を軸にして足の力だけで回るんです”って答えました(笑)。

野口:たかが子どもが回るシーンでも、助監督たちは1時間ぐらい 真剣に会話してましたからね。“どうやるんだ?”って。

『ファイナルファンタジーXIV』

マイディー:でも、それが実写化するってことなんですよね。文章では“クルクル回ってた”と1行書くだけですが、映像では“それがどこで、どれぐらいのスピードか”とかが出てくるんですよ。無責任なこと書いたらダメだなと思いました。

山本:原作はいいんですよ(笑)。

――そういう“こう膨らませるのか”という驚きは、ほかにもありましたか?

マイディー:まさに、そのシーンから『FFIII』につながる部分は、見たときに震えましたね。

山本:そこは、ぴぃさんに“『FFIII』からはじまって『FFXIV』に~”という構想があると言われて採用した形になります。聞いたときは、すごくいいなと思いました。

――イフリート戦の表現などについてですが、実際にエオルゼアパートを撮影しようとした際に、“イフリートはどういう敵なのか”とかをうまく見せつつ状況を演出するのは想像以上に難しかったのでは?

山本:ちゃんと説明しようとすると難しくなりすぎてしまうと思いました。いろんな過去の作品で考えると、さきほどの『ロッキー』もそうですけど、物語はある種の専門性のある世界を描くことが多いじゃないですか。

 例えば、医療や政治といった、その世界のことをよく知らない人の方が多いドラマを作る際の手段は2つあります。1つは、“内閣総理大臣とは?”といった内容を全部説明することです。そして、もう1つは置いてけぼりにすることです。最近の作品だと『シン・ゴジラ』がそうですよね。官僚のセリフを誰も補完しない、アホが1人もいないって世界ですね。状況から見たら、官僚同士の会話なのでそれが自然なわけです。

 『光のお父さん』の場合はどちらがいいかと考えた場合、もともと30分のドラマだし説明過多にしたらゲームの説明書になってしまうのは目に見えているので、後者の手段を取りました。話を戻しますが、エオルゼアにお父さんがいて、マイディーさんとみんなでなんかすごいモンスターを倒すというシチュエーションがわかれば、あとは問題ないだろうとジャッジしました。

 こいつはイフリートって名前で、炎で焼き尽くすんだというのがわかればOKかなと。そこは、数多くの過去作品を見てきた経験から、説明しないほうがカッコイイ&受け入れやすいだろうという確信はありましたね。

――単純に見たときの映像の迫力も、かなり意識したのでしょうか?

山本:蛮神戦に入る前は、必ずムービーが入りますよね。そのムービーを、どこか使えるところはないかと何度も見返しました。やっぱりイフリートがいいんですよね。攻撃につなげやすいし、イフリートをあれだけアップで撮る機会もそうそうないですしちょうどいいかなと。

ゲームパートの撮影はリアルとの戦い

――電撃の旅団は、『FFXI』のころから攻略記事を作っていたのですが、普通のサーバーで撮影しているので“日が陰ったから朝まで30分待つ”“10人以上の集合写真を撮ろうとして誰かが寝落ち”というようなアクシデントに何度も見舞われてきました。

 そういう経験から、制作発表会で山本さんがテストサーバーではなく実際のサーバーで撮影していると言っていたのを聞いて、正直に言うと“正気か!?”と思いました(汗)。

山本:その苦労をわからない人のほうが多いなとは思っていますよ(笑)。

――実際のところ、すべて撮影するのにどれぐらいかかりましたか?

山本:めちゃくちゃ時間はかかりましたね。それこそ、きりんちゃんは普通に寝ちゃうので(笑)。

――やっぱり、僕らも基本は編集部にいる人間だけで撮影しているのですが、たまに旅団員の家族にも手伝ってもらうんですね。やっぱりかなり気を使うんですけど、じょびのメンバーに撮影をお願いする際はかなり気を使われたのでは?

マイディー:みんな仕事して帰ってきて遊んでいる時間なので、すごく気を使いましたね(汗)。山本さんが、最初に“撮影は21時~23時までの間だけにしよう”とルールを引いてくれましたが、天候待ちでズレたり、もう1カット撮り直したいとかもありました。

 ほかにも、自分は映らないけどほかのメンバーが撮影している間は、次のシーンまでずっと待っていなくちゃいけない、呼ばれたすぐ行く必要があるなど、苦労をかけました。

『電撃PlayStation』

山本:本当に現実の撮影と変わりませんでしたね。

マイディー:寝るなとは言えないですからね。その点では、山本さんは大変だったと思います。

山本:おもしろかったのが、きりんちゃんが渋滞で遅れるという話を聞いたときですね。なんか、キャラと合わなくて爆笑した覚えがあります(笑)。

――1日3時間ぐらいで、のべ何日ぐらいかかったのでしょうか?

山本:番外編まで入れると2カ月ぐらいですね。

マイディー:撮影自体は23時ぐらいに終わるのですが、そのあとロケハンなども行っていたので。

――そのあたりも現実の撮影みたいですね。

マイディー:エンディングの映像はチョコボでずっと走る必要があったので、走る距離がある場所を探しました。結局、“砂漠しかねえ!”という結論になりましたが(笑)。

山本:モンスターが映るのはイヤだから“フラッシュ”で引っ張ったりもしました。

――最後の目標であるツインタニア戦の撮影は大変だったと思いますが、いかがでしたか?

マイディー:僕らは撮影なので、プレイヤーとしては必ずしも倒す必要はなく制限解除して挑んでいたので、そのへんは楽でした。逆に、リミットブレイクを撃つとなると、制限解除なしで戦ったほうが早くたまるとかもありましたね。

――特定のフェーズを撮るのが大変そうです。

山本:一番大変だったのは、やはり“ツイスター”ですね。まず、誰が対象になるかわからないのがつらかった……。みんなは、フォーカスターゲットしているから、予兆は見えるんです。

 それに対して、僕はみんなの動きを見て“ツイスターだ!”と判別していましたが、その“ツイスター”が僕にくるかもしれないんですよね。撮影者ですし、主観でやっているので回避ができないんですよ。

マイディー:インディさんが飛ぶところを撮ろうと思っているのに自分が飛んで行くなんてことも。

山本:マイディーさんが飛ぶところを撮らないといけないのに、僕も吹き飛ばされているケースもありましたね(笑)。

マイディー:あれは調整できないですからね。

山本:撮影は成功しましたが、あれは奇跡のカットですね。キレイに撮れました。

マイディーさんの熱意がキャスティングに反映!?

――エオルゼアパートで声を当てるというのは、すごく新しい試みだと感じました。実際に声が付いたときはいかがでしたか?

マイディー:やっぱり感動しましたよね。オファーの時点で“南條愛乃さんしかいない!”と、そこだけは通させていただきました。

山本:じつは、南條さんはサンプルであるちゃんの声もやっていたんですよ。マイディーさんがいいだろうということになりましたけど、あるちゃんも悪くなかったんですよ。ただ、まぁ……ね?

マイディー:南條さんのサンプルは、マイディーとあるちゃんの2つが上がってきまして。たしかに、あるちゃんはかわいかったです。だから、僕は南條さんをあるちゃんに取られてしまうのではないかと危機感を覚えたんですね。それは、個人的に困るぞと。なので、サンプルボイスをもらってすぐ、それに合わせたリップシンクのムービーを勝手に作ったんですよ。

 そして、ムービーにサンプルボイスをしゃべっているように当てたものを、ぴぃさんに送りました。そのスピードは自分でも信じられないぐらい速くて、サンプルボイスをもらってから30分でムービーが出来上がって、1時間後には送っていました(笑)。

 それを見たときに、ぴぃさんはデキがどうこうではなくて、“あ、マイディーさんは南條さんじゃないとイヤって言ってるんだな”と察してくれたようです。

山本:僕にも「これって、無言の圧力だよね」って言ってましたもん(笑)。「絶対そうだと思いますよ」と。MBSの丸山(博雄)プロデューサーも、“原作者がそこまでやってくれたんだったら、南條さんで行きましょう”と、最終的に推してくれたんです。あのムービーは効きましたよ。

マイディー:よくできてたでしょ、アレ(笑)。

山本:あれがなかったら、本当にあるちゃんになってた可能性はありましたね。ご本人は知らないでしょうけど(笑)。

――あるちゃんやきりんちゃんの反応はいかがでしたか?

マイディー:本人が一番喜んでますよね。けっこう希望を聞いたりしましたし。

――インディさんの声が大杉さんというのも、すごくハマってました。

マイディー:かわいいですよね(笑)。

――実写とのギャップと、不慣れなオンライゲーマーの初々しさがいいですよね(笑)。ちなみに、野口さんは、エオルゼアパートの声まで入ったものをご覧になっていかがでしたか?

『ファイナルファンタジーXIV』

野口:山本さんから送られてくるんですけど、もうイチ視聴者みたいな気持ちで見てましたよ。僕は実写の仕事しかしないので、声優さんと仕事することがまずないんです。ですが、今回は声優さんの収録にも立ち会っているので、そこですでに1度“声優さんってスゴイ”と感動しているんですけどね(笑)。

 まず、声撮りの段階で感動して、山本さんが編集してきたものを改めて見てまた感動するみたいな感じでしたね。見事だな~と。

風景にもこだわったエオルゼアの映像

――エオルゼアパートを撮るときに気を付けたことはありますか?

山本:野口さんからエオルゼアの実景を多めにしてくれと言われましたね。実写パートは、家と会社の往復なので風景が少ないんですよ。

野口:脚本があがってきたところで、普段から実写のものを作っていると、“すごく狭い世界観で、映像的なカタルシスがないな”と悩んだ時期がありまして。

――実写の場合は、舞台がある程度限られている物語を撮ることもあると思いますが、その場合は風景を長回しで撮るのでしょうか?

野口:まさにそれですね。最初のころは、スタッフに直線のいい坂があるところを探してくれと話をしていたんです。しかし、『FFXIV』内の映像を見るうちに、だんだんと考え方を変えたほうがいいなと感じはじめて。

 実写はトコトン狭いスモールな世界にして、エオルゼアに入ったときに必ずひらけた世界があることで、ゲームに入った瞬間のカタルシスみたいなものが一気に出るんじゃないかと思って、山本さんに依頼したんです。そこからは、実写パートでは“実景なんていらない”と割り切って、むしろ狭ければ狭いほどいいなと思うようになりました。

――それは、たしかに見た方の印象としてもありました。普段なら逆で、ゲームやったことがない人の考えだとゲームでは視野がグッと狭くなるイメージなんですけど、実際にドラマでゲームパートが始まるとパッと世界が広がりますよね。

野口:それは完全に狙っていきました。千葉さんが、ゲームパートに入ることで生き生きとしていく感じになったらいいなと思って作りましたね。実際に山本さんが撮ってきてくれるエオルゼアの風景は素晴らしかったですし、編集していて手ごたえを感じました。

山本:そうなると、いろいろな場所を紹介したくなりますよね(笑)。ありとあらゆる場所を撮ったんですけど、物語のなかでじょびハウスからいきなりクルザスに行くわけにもいかないのでお蔵入りになった映像も多いです。実景にもいろいろ種類があるから、そこが残念でした。本当にめちゃくちゃたくさん撮ったんですよ!

野口:多くの予算をかけず、短い日数で撮って。実写パートで実景を撮るといっても、できることは限られているんですよ。そういう意味で、ゲームとの組み合わせだからこそできた開放感みたいな。やはり可能性を感じました。

――今までは、ゲームを映像化したり別メディアで描いたりすると、ゲームで語られる物語を単純に映像化するように置き換えるだけでした。ですが、今回はゲームと映像メディアが本当の意味で融合・リンクしていると感じますね。

山本:普通は、プロデューサーがゲームに対してそこまで信頼を置いていないので、やりたがらないんです。テレビの画質に耐えうるものなのか、コンテンツとして視聴者が見て楽しいものなのか、そういうところを信じきれてない人が多いのが現状です。

 “それをドラマとして見せておもしろいの?”ということを思っているはずなんですよ。それを押し切れたのが、今回のドラマ化の成功の大きな要因でしょうね。

――『FFXIV』だからこそ、それにいたるまでのクオリティになったんですね。

山本:『FFXIV』だからできたという部分も大いにあると思います。“実際にどういう画になるのか”という疑問はクランクインするまでずっと言われ続けました。

――みすぼらしい作品になるんじゃないか、ということですよね?

山本:歯に衣着せぬ言い方をすればそうです。やはり実写ドラマのカメラはとんでもない性能なので、それに対して見劣りしないかなと。僕やぴぃさんは“絶対いけます”とは言いますが、前例がない以上証拠はないので、やるしかなかったんです。完成したものを見せることで、やっと信じてもらえました。

――出来上がって、ドラマが放映されての反響はいかがですか?

山本:映像業界からはあまり声はききませんが、それ以外のところからはかなりの反響がありますね。具体的に言うと、親族から聞きますね(笑)。びっくりするぐらい聞きますよ。今まで、僕のドラマは見たことなかったくせに、急に反応がありました。やっぱり『FF』というネームバリューはスゴイなと実感しました。

――ドラマにかかわる人の熱量というものが、作品に与える影響は想像以上にものすごいものなんだなとあらためて感じました。そういう意味では、マイディーさんのブログの力も本当にスゴイ熱量ですよね。マイディーさんは、『FFXIV』を取り上げるようになる前からオンラインゲームの魅力をブログで伝える活動をしていましたが、そもそもこのブログをはじめたきっかけは何なのでしょうか?

マイディー:十数年前なので、具体的なことはさすがに覚えてないですね(笑)。僕は、昔漫画家になりたかったんですが、絵は描けなかったんですよ。ある日、スクリーンショットという、ゲーム画面を簡単に撮れてそれなりに見られる画像を手に入れる手段を見つけました。

 そこにお話を付けることで、擬似的な漫画みたいなものにできることに気づいたんです。なので、僕は絵が描けないですが、その方法で漫画を描こうと考えました。スクリーンショットと文章、スクリーンショットと文章……という流れのブログを始めたというのが“はじまり”でしょうか。

――発想の起点は漫画だったんですね。

マイディー:ゲームといえば、レベルを上げて、強い敵を倒して、よりいい装備を手に入れて、より強くなっていくものでした。ですが、そうじゃない遊び方、表現のツールとして可能性があるんじゃないかなと思ったんですね。

 とくにオンラインゲームは、自分だけでなく周りにも人がいる。その人が現実でどういう人かわからない。それを知ろうと思わないし、そこに興味を向けることはあまりないんだけども、オンラインゲーム特有の絆が結ばれる。そういう人間関係のなかで、ふと何かをしようとなったときに“じつはこれをやったことがあるんです”という意外な人脈ができていたりします。

 今回のドラマの話だと、じょびメンバーのせとちなみちゃんという人が“パイロットムービーを作ったらどうでしょう? 私がコンテを描きます”と言ったと思ったら、プロ並みのコンテをバーンと出してきたりするわけです。そういう、仮面をはずすときのおもしろみですね。

 今回、僕はそこに可能性を感じました。その人はその人の人生があって、いろんな経験をしてそこにいるわけですから、その人が持っているものを持ち寄っていろんなものを作っていけるような世界というのも、1つの可能性だと思います。

――それが、オンラインゲームをブログで紹介している原動力なんですね。

マイディー:そういう魅力的な人が周りにいたので。家の中で、オフラインのゲームをしていてもドラマ化したりしませんから(笑)。僕がゲームばっかりしていたら、気づけばドラマになっていたというのも、またオンラインゲームだからこそですよね。

――そういう意味では、“光のお父さん”計画は発想としては逆ですよね。ブログでは“光のぴぃさん”“光のでぃさん”も非常に興味深く拝見させていただいてますが、ドラマの裏話も紹介していこうと思ったのはどのような意図があったのでしょうか?

マイディー:単純に、今まで“このオンラインゲームは楽しいよ”ということを書いてきました。今回、その話が実ってドラマになるという経験をするわけですけど、それは『FFXIV』のすべてのプレイヤーができるものではないじゃないですか。

 でも、僕はこの経験がとても楽しかったので、この経験をできるだけ細かくみなさんに伝えていく義務があると思いました。

――少なくとも、こういう形でオンラインゲームを題材にしたブログがドラマ化するというのは前代未聞ですよね。

マイディー:それを“うれしい”とか“楽しい”とか“スゴイだろう”だけで終わらせるのではなく、例えば“スクウェア・エニックスさんに許可をもらいにいく”という場面で、答えを待つ間のドキドキ感、OKが出たときの感動や驚きを、僕らのなかでしまっておかずに、実際にそういうことが起こったわけですから、より多くの方に共感してほしかった。

 できるだけ、僕らの感動の水準まで上げていきたいと思いながら“光のぴぃさん”は書いていました。

――ちなみに、スクウェア・エニックスさんからのオーダーは何かありましたか?

マイディー:そうですね。初めて吉田さんとお会いしたときに、ぴぃさんが「物語のネタバレになってしまいますが、大丈夫ですか?」という話をしたのですが、“全部出しても構いませんよ”というレベルのゆるい回答をいただきました。

 ブログに書いているときも、できるだけネタバレは避けていたのですが、ぜんぜんOKというスタンスだったので、脚本も自由に書けたのかなと思います。

山本:ネタバレって難しい考え方ですよね。ネタバレがあったほうがおもしろくなるものもありますし。

――逆に、“◯◯が出るならやってみよう”という人もいますしね。

マイディー:ネタバレというより、予告編だったらいいんですよね。だから、あまり詳しく語らないことで気持ちをあおる形でまとめています。

――ちなみに、お父さん・お母さんのドラマ化に対する反応はいかがですか?

マイディー:素直な気持ちを言うと、もうちょっとほめてくれてもいいんじゃないかと思いますね(笑)。

――わりと淡々としてるんですか?

マイディー:父は喜んでいるんですけど、母はあまりドラマ化前後で変わらないですね。余談になってしまいますが、ウチは夕食を食べながらドラマをみんなで見る習慣があるのです。この前IV話が放送されまして、そのなかで大杉さんと石野さんのキスシーンがあるじゃないですか……。めちゃくちゃ気まずかったですよね(笑)。

 それまで笑っていたのに、全員がシーンってなりました。まるで僕がそうしてほしいみたいな空気になっちゃって。

山本:その気まずさは、マイディーさんしか経験できないことですからね(笑)。

――それを体感できる人は、世界で唯一かもしれませんね(笑)。

新たな光の戦士たちが次々とエオルゼアへ

――ドラマの効果か、マイディーさんがいるサーバーには新規のユーザーが集まっているようですね。

山本:若葉マークの人がいっぱいいますね。

――同様に、ドラマのスタッフのなかで、これをきっかけに『FFXIV』を始めた方はいらっしゃいますか?

山本:何人かいますよ。言ってないだけで、じつはやってた人もいましたし(笑)。スタッフロールに名前を出している人もいますよ。

野口:助監督の場合、実際に経験してみないと……という部分もあります。そういえば、照明部の人間が“光のでぃさん”に登場しましたよね。

マイディー:くまちゃんですね。彼女の話はすごくおもしろかったです。みんなが『FFXIV』を始めて、いろいろと仕事に役立ててくれたというか。

山本:自分の知らないことがドラマの大前提の場合は、実際にやってみるというのが撮影クルーの鉄則としてあります。ゲームの話だったら、ゲームにさわっておかないと役者に演技の指導もできないですし。

 以前、ゲーム会社が舞台のドラマにかかわることがあったのですが、そのときはUnityを使っていたんです。Unityなんて僕らはわからないですけど、当然それをスタッフが扱えないと毎回ゲーム会社からUnityを使う人を招く必要が出てしまうので、助監督が何日も勉強して“ひとまず画面に何か物を出す”ぐらいまでは覚えてもらいました。

 僕らの感覚で言えば当然で、このドラマの場合だと“エオルゼアってなんのこと?”と言われても困るわけです。

――どういう世界なのかを体験しておくというのは、重要なんですね。

山本:重要ですね。“なんでこのゲームにみんながのめり込んでいるのか”ということを体験しておかないと、作品に向き合えないんです。ある種、不器用な連中なんですけど、それが映画やドラマのスタッフに残された最後の良心なんです。殺人犯の物語だったら、殺人犯に取材して気持ちを読み解かないといい作品は作れないんです。

野口:作品に向き合った結果か、撮影の後半のオフィスシーンで助監督が「よーい、にゃんにゃんぷ~♪」って言ってましたよ。エキストラの人たちは、ぽかーんとしていましたけどね(笑)。

マイディー:でも、そういうの聞くと原作者としてはうれしいですよ(笑)。

――“光のお父さん”のように、ブログがこういう展開になったり映像のなかに別のメディアが取り入れられたりするケースは、今後も出てくると思いますか?

山本:AIやアンドロイド、ボーカロイドといったロボットに関しては、100%誰かがやると確信しています。ロボットにはとんでもない金額が投じられていますが、そこにかかわっている人たちはプロモーションのやり方は知らないですから、“ドラマをやりましょう”と言えば絶対に食いついてきます。

 ですが、それに詳しい……ロボットのプログラムを組める監督や制御できる監督がいないんですよ。そこに詳しい監督がいないので、現時点では企画にならないだけなんです。それができる人が出てくれば、その人の天下になると思います。

 手が出せないんですよね、専門性が強すぎて。医療ドラマだったらこの人、政治だったらこの人と、監督のカラーが決まっていて、独壇場になりがちなんです。撮れる人はほかにもたくさんいますが、知っている人なら安心しますから。それを含めての市場だと思うんです。

 逆に、僕はゲームに関しては日本中の監督のなかでも5本の指に入るぐらいにゲームをやり込んで、“ゲーマーです”“僕にまかせろ!”と言える自信があります。ゲームは今、僕らの世代はネイティブで遊んでいたからとても扱いやすいジャンルですよね。ゲーム業界も大きな企業になって、テレビと対等にやれる世界になってきました。

 今後も同じようなドラマがあるかどうかわからないですけど、可能性があると思います。ですが、そこにコミットできるスタッフは、そんなに多くはないと思います。

――そこは、ハマるかどうかが1つのカギになるということですよね。

山本:ただ、このドラマを見て、自分もやりたいと思ってる監督は少なくないと思いますよ。ゲーム好きな人はけっこういるので。

――単にゲームの情報を伝えるだけでなく、こういう形でゲームの魅力が伝わることは大きいんだなと感じましたね。そういう意味では野口さんがおっしゃった、当初の目的は達成されていると感じました。

野口:最終回までいけば、さらに盛り上がりますよ(笑)。

あらためて振り返る“光のお父さん”

――現時点でVI話までの放映が終了していますが、振り返ってみていかがですか?

マイディー:僕的にはVI話のラストも大好きで、ラストシーンは“光のお父さん”でしか成し得ない、“父と子とオンラインゲーム”という3つが重なることで初めて生まれる感動がありました。あそこは、何度見ても泣いてしまいますね。

野口:VI話は特別な回ですよね。スタッフとVI話が最終回だという思いで作ろうと言っていました。

山本:今まで積み重ねてきたものが集約される回なので。VII話は、エピローグ的な感じですよ。

マイディー:VI話のラストシーンが、僕がブログで言いたかったオンラインゲームだからこそという想いが入ったシーンなんですよ。あのシーンを伝えるために、それまでの回も丁寧に作っているんだろうというのもわかります。

野口:ちょっと話がズレますけど、VI話では会社で初めて光生がゲームをやるじゃないですか。あのとき、メガネを置くシーンはずいぶんこだわって撮ったんですけど、かなりカッコよくないですか?

マイディー:“メガネを取ったらマイディーです”というのは伝わりましたよ。あれは、いわゆる変身ですよね。そのシーンがVII話でもあるじゃないですか。変身はカッコイイに決まってますよ!

 光生は会社ではメガネかけているけど、家でゲームするときは取っているんですよ。それと同じぐらい、VI話のエオルゼアパートに千葉さんのモノローグが入ってくるのが同じぐらい好きですね。

『ファイナルファンタジーXIV』

――チャットで素になった感じですよね。

マイディー:VI話で神懸かっているシーンがあるんですよ。

山本:台本にはないシーンなんですが、編集をしていたらパァッと神が降りてきて(笑)。

マイディー:あれはカッコよかったです。

――では最後に、いよいよ最終回を迎える“光のお父さん”ですが、クライマックスを迎えての感想、そして放映を楽しみにしている視聴者に向けてメッセージをお願いします。

マイディー:最終的に、原作どおりお父さんと仲よくなるためにがんばっていた結果が出るんですけど、そのなかで『FFXIV』のパッチ2.0のエンディングとダブったシーンがあります。

 僕が最終回で思ったのは、リアルパートのほうが『FF』しているなということですね。『FF』は、冒険があったり別れがあったりといろいろな物語があるんですけど、実際に現実社会で同じような経験をする想像なんてできないじゃないですか。ですが、見方を変えれば実際の生活でも『FF』っぽいことがあるのかな……ということを、ラストシーンを見て感じました。野口さんが意図されているかはわからないですが(笑)。

野口:じつは、そのシーンは収録当日に台本を渡したんですよ。最初の脚本とはかなり大きく変更しました。

山本:Ⅰ話の冒頭で、“旅立つのだ、光の戦士よ!”“光の戦士か……まかせとけ!”というセリフがあるんですけど、それが成就するのがVII話なんです。

 “『FFIII』の世界のときから、この人はずっと光の戦士だったな”というのがVII話で納得できるんですよ。そういう意味で言うと、お父さんはゲームから離れていたけれど、心根はあのときから変わらないと。結局、あのころに戻るみたいなカットになるんですけど、構造としてはまるっとキレイに収まります。

マイディー:着地がすごくキレイですので、ぜひ楽しみにしていてください。いろんなものが感じ取れるラストだったかなと。僕は好きですね。

野口:最終回は、原作とはまた違う終わらせ方をしたので、そこをどう受け取ってもらえるか心配です。

マイディー:僕は、あれはあれですごく好きですけどね。VII話まで行ったら、原作のことは忘れてほしいんですよね。

――VII話が終わった時点で、“ドラマの光のお父さん”という独自のものになっているということですね。

マイディー:そうですね。「“ドラマの”光のお父さんがおもしろかったよね」と言われるようになってほしいです。僕はドラマになるにあたって、根底にあるテーマさえブレなければ、どれだけ改変してもらっても構わないというスタンスでした。

 それでも、最終回はけっこうブログ側に寄せてもらってて。それもうれしかったですね。最終的に稲葉家や会社の人たちをもっと見ていたいと思ってもらえたらうれしいですね。原作どおりじゃなくても、それがおもしろければいいと思います。

――リアルからファンタジーの逆で、ファンタジーからリアルの魅力を感じるというか、リアルのなかにもファンタジー的な要素がいっぱいあるんだということを気付かされるドラマですよね。

マイディー:よくアニメで見るシーンなんですけどね。

山本:“いい最終回だった”って感じですよね、まさしく。

マイディー:だから、光の戦士なんですよね。原作者としても大満足でした。全6話でも困ったし、全8話でも違って、全7話だからちょうどよかったと思いますよ。

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