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2017-07-08 17:15

津田健次郎さんが“落語”をテーマに若手噺家・柳亭市弥さんと対談! 知られざる世界が明らかに!?

文:嵯峨山

 声優・津田健次郎さんが教授となり、毎号気になるカルチャーを研究するコラム“津田健次郎の文化ゼミナール”。連載8回目となる今回はガルスタ7月号(6月9日発売)で研究した“落語”についてお届けします。

『津田健次郎の文化ゼミナール』

 近年ジワジワと増えてきている若手イケメン落語家や、アニメの影響で若い女性たちに注目を集めている伝統芸能“落語”ですが、どのような世界なのでしょうか? 誌面に載せきれなかった津田教授と柳亭市弥さんとの対談をお届けしていきます。

『津田健次郎の文化ゼミナール』
▲今回お話をうかがった柳亭市弥さんと教授のベストショット。

津田健次郎さん&柳亭市弥さんが“落語”をテーマに対談

――噺家になられたきっかけを教えてください。

柳亭市弥(以下、市弥):僕がまだ大阪でサラリーマンをしているときに、師匠(柳亭市馬)の独演会があったんですよ。それを観て弟子入りしたいと思って、これはまず楽屋にあいさつをしなきゃないけないなって思いました。

津田教授(以下、津田):若干行動がななめ上なところに(笑)。

市弥:それで楽屋に会いに行って、素敵なお話たくさん聞かせていただきましたとか、いろいろ話していたんですけど、僕が弟子入り志願者だと知ると最初は大阪で言われても困る! って言われてしまって(笑)。でも第1段階はクリアしたぞと思ったので、仕事を辞めて今度は新宿の末廣亭に会いに行って改めて弟子入り志願させていただきました。

津田:もう辞めてきたあとだったんですね(笑)。

『津田健次郎の文化ゼミナール』

――真打まではどういった流れになるのでしょうか?

市弥:最初は見習いから入って前座、次に二ッ目、最後に真打といった流れになります。

津田:真打からが一人前なんですか?

市弥:そうですね。厳密にいうと、二ッ目から紋付や袴をつけられるようになって一人前の噺家として認められます。前座は着ることができないんですよ。そして真打になると弟子もとれますし、寄席でトリを務められるようになります。二ッ目は真打になるための準備段階なイメージですね。

津田:なるほど。見習いの段階では、どういった生活を送っているのでしょうか?

市弥:毎日師匠の家に行って、掃除・洗濯・料理をして留守番をします。大変と思われるかもしれないですが、僕の場合もともとサラリーマンをしていて、その時代のほうがキツかったので、見習い期間がとても楽しく感じました。

1日中働いて1,000円の世界です!

――どのくらいで次の段階に進めるのでしょうか?

市弥:だいたい見習いが1年、前座が4~5年、二ッ目が10年、そして真打……というのが通例ですね。

津田:そうなんですか! すごい世界ですね。階級が上がっていくのは師匠から言われてなるものなのでしょうか?

市弥:じつは落語協会というところで毎月理事会が開かれていて、二ッ目まではそこで決まります。ただ真打だけは、寄席の社長から了承を得ないとなれません。寄席は上野、浅草、池袋、新宿と4カ所あるんですけど、真打になったらトリを取るので、やっぱりお客さんを呼べる人でないと認められないんです。

津田:なるほど。商売の話にもなってくるわけですね。

『津田健次郎の文化ゼミナール』

市弥:まあだいたいは年齢で上がっていって、真打になるまで約16年くらいかかります。真打になれば4、50年は現役ですから、寿命も延びているので今や落語会は逆ピラミッドですよ(笑)。90才でも噺家をしている師匠もいらっしゃるので。真打だけでおそらく全国で500人くらいいるんじゃないでしょうか。

両親の理解がないと成り立ちません

――給料制なのでしょうか?

市弥:歩合ですね。寄席だったら10日間興行なんですけど、一番下の前座さんだと1日中働いて1,000円の世界です。

津田:なかなかのブラック(笑)。

市弥:そうですね(笑)。でも一番下ですと食費がかからないんですよ。みなさんが御馳走してくれるので。師匠のカバン持ちで地方とか都内の落語会に行ったら、ちょっと多めに交通費をくれたりするので、そういうので食いつないでいました。僕の場合は、実家ということもあったので。

津田:なるほど。

市弥:あとは寄席ではなく、独演会の高座返しや楽屋仕事などで行くと、1日で1万円もらえるんです! ですから前座仕事ができる、また上手い人は寄席以外の仕事が増えたりするのでそういった仕事が20日くらいあると……いい金額になるんです(笑)

津田:それは夢のような(笑)。

市弥:ほんとに夢のような(笑)。ただバイトはできませんし、バイトするくらいなら稽古をしろと言われます。この世界に飛び込んで初めのうちは、やはり実家からの仕送りは必要な世界ですね。両親の理解がないと成り立ちません。

上げの稽古とは?

――稽古というのは、完全に自主練なのですか?

市弥:昔は、三編稽古といって師匠が3回落語を見せてくれる間に覚えなさいよ、という稽古方法だったんですが、今は違います。ICレコーダーで録音させていただきます(笑)。

津田:録音しちゃうんですね(笑)。

市弥:音源を聞いたり文字に起こしたりして、覚えたらまた稽古をお願いします。ここがいけないとか、この言葉が間違っているとか、いろいろアドバイスをしてもらうんです。稽古を見てもらい、師匠に「高座でかけてもいいよ」と言われて初めてお客さんの前でできるという感じです。

『津田健次郎の文化ゼミナール』

若い方でも楽しめるようになっていると思います

――演目はどのように決めるのでしょうか?

市弥:自分で決めているんですけど、寄席で3、4人いるとかぶったネタはできないので、決めていても出ていないネタをその場で決めます。あとはお客さんを見て、子どもがいたら子どもの話にしようか、とか女性が多いなと思ったら若旦那の話だったり。なのでネタをいくつかストックを持っておかないとできません。

津田:すごいですね。おもしろいの基準も違うと思うんですけど。

市弥:今は新作落語というのがあって、今どきの古典落語にはない言葉の使い方とか昔とは違ってきましたね。若い方でも楽しめるようになっていると思います。

――新作は自由に作れるのでしょうか?

市弥:そうですね。二ッ目になったら自由に作れます。うちの師匠は古典落語ができないうちはやるなと言われましたけど、私の一門は新作をやるなら二ッ目になってから。師匠からは前座のうちは古典落語をしっかり覚えて、二ッ目になったら自由にやれと。

津田:そのうちアニメとかゲームの落語みたいなものも。

市弥:もうやっている人もいるんですよ。アニメが大好きで落語と掛け合わせてる方が。かなりがっつりと(笑)。

津田:なかなかの異端ですね(笑)。話を聞いていくととても大変な世界だと思うのですけれど、心の支えになった師匠の言葉というのはあるのでしょうか?

『津田健次郎の文化ゼミナール』

市弥:二ッ目に上がったときのお披露目興行で、すごく緊張してしまったんです。今まで前座で上がってたところから、ちょっと深い時間帯に変わるんですね。真打の師匠が間に入って、お披露目ですよという感じで。それがめちゃくちゃ緊張して、どうしていいのかわからなくなってしまって、客席がシーンとなる瞬間が何度もありました。

市弥:落ち込んで師匠と話したときに、「誰もお前なんか見てないんだから、楽にやれ。もっと。」と言われたんです。本来は自分が楽しまなきゃいけない落語を、なんでこんなピリピリ緊張しなきゃいけないんだろうって気づきまして。師匠のポロッと言った言葉で、だいぶ楽になったことがありましたね。

津田:師匠は見抜いていたんですね。

知識がなくても、好奇心だけで楽しめます!

――最近はアニメの影響もあって若い女性にも注目されていると思いますが、落語の楽しみ方を教えていただけますか?

市弥:今は若い噺家が寄席に出演していたり、落語界で活躍しているので、おじいちゃんが難しいことを語っている時代ではないんですよ。敷居が高いと思われるかもしれないんですけど、1回中に入ってしまえば本当にくだらないことしかやっていません(笑)。

『津田健次郎の文化ゼミナール』

市弥:登場人物がマヌケだったりとか、そそっかしかったりとかそういう庶民的な話なので、かなりハードルが低いと思います。落語はなんともない話で笑ったりできる芸だと思うので、恐れることなく足を一歩前に進めてほしいですね。知識がなくても、好奇心だけで楽しめるので、ぜひ一度聞いていただけるとうれしいです。

津田:観てもらわないことには、落語のよさはわからないですよね。やはりライブで観ていただきたいですね。では最後に、市弥さんの今後の目標を教えていただけますか?

市弥:そうですね。とりあえず今、70~80くらい噺を持っているので、100以上にしてゆくゆくは寄席でトリをとりたいと思います。前座から二ッ目、今でも修行をしている最中ですが、寄席に恩返しをするのが目標です。

津田:貴重なお話を聞かせていただいてありがとうございました!

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