2017年9月22日(金)
『project OCTOPATH TRAVELER』体験版レビュー。後期スクウェアの雰囲気漂う力作!
スクウェア・エニックスが2018年に発売予定のNintendo Switch用ソフト『project OCTOPATH TRAVELER』。現在配信されている先行体験版のプレイレポートを、ライターのまさんがお届けします。
本作は、完全新規のRPGプロジェクトとして発売される最新作。8人の主人公たちから好きな人物を選び、自由な冒険が楽しめます。往年のスクウェア製RPGを思わせる緻密な2Dドットによるキャラクターやロールプレイングを重視したシステムが用意されており、RPGファンの期待が高まっています。
“RPG”ファンが遊びたかった作品を実現した体験版
どうも、こんにちは! ライターのまさんです。みなさん『project OCTOPATH TRAVELER』の体験版は、もうプレイされたでしょうか? 情報を仕入れている人はご存知だと思いますが、体験版をプレイした人たちが大絶賛していますよね。
遊んだ人なら納得できる話なのですが、Nintendo Switch本体が大人気で品薄のため、気になるけど本体を入手できずに遊べない人もいるはず。そこで今回は、いったいなぜ、この作品がRPGファンの琴線に触れるのかを語っていきたいと思います。
ていねいなテキストで、導入から“RPGらしさ”を楽しめる細やかなシナリオ
遊び始めてすぐに思ったのが、テキストの素晴らしさ。物語はネタバレになるので詳しく語りませんが、体験版の序盤部分だけでもグッと引き込まれます。
今回の体験版では、父親のカタキを打つために踊り子として生きるプリムロゼ。すべてを失って村で静かに生きる剣士のオルベリクの序盤が遊べるのですが、どちらも渋くてカッコいいんですよ。
▲気取ったセリフや派手な決めゼリフがあるわけではないのですが、キャラクターのセリフ1つ1つが染みわたります。 |
体験版をクリアするとわかるのですが、シナリオはTRPG関連の出版をまとめているF.E.A.R.など、コンピューターRPGというよりも、TPRG関連の人たちがかかわっています。
そのためか、ナレーションもキャラクターのセリフもすごくTRPGっぽい。いい意味でファミコンからスーパーファミコンのころのRPGを遊んでいるような感覚になれます。
▲プリムロゼ編では、スーパーファミコン時代のようなテキストでありつつ、なかなか踏み込んだシナリオも。導入からけっこう暗い話なので苦手な人はご注意を。 |
▲オルベリク編は、すべてを失った男が再び立ち上がる王道のファンタジーです。彼の生きざまにシビれますよ。十文字斬り! |
今のRPGは、どうしても装飾過多というかセリフを語りすぎてしまう傾向が多いのですが、本作はそういう意味でも最小限に留めてあります。ボイスによる演技もいやらしさやくどさを感じず、2Dドットを彩る程度に感じられてグッド。身も蓋もないことを言えば“センス”がいいのです。
▲ネット用語や今風の表現を使わず、RPGらしさあふれるテキスト。TRPGのプロ集団が関わっているだけあって細部まで“TRPGらしい”です。 |
ナイスセンスを感じさせるシステムの1つが“フィールドコマンド”。本作では、Yボタンを押すことで“誘惑”や“試合”といった、キャラクターごとに異なるフィールドコマンドを使用できます。
今回の体験版で使えるプリムロゼなら、“誘惑”することで村人を連れ出して戦闘中に加勢させたり、通れない場所を通過したりといった効果が発生。オルベリクなら、“試合”をすることで相手を打ち負かして気絶させたり、言葉で通じない相手を殴ってわからせたりできるのです。強引!
▲どうでもいい村人から兵士まで、誘惑で連れまわせるプリムロゼ。普通のおじいちゃんっぽい人が戦闘に出すと意外に強かったりして楽しいです。 |
でも、このコマンドによるフラグの立て方が、すごくTPRGっぽいんですよ。基本的には本編と無関係のサブストーリーを進めるために使うことになるのですが、どうでもいい村人に試合を挑んでボコボコにできますし、体験版の範囲でも自由度の片鱗が見えていい感じ。他のキャラクターのフィールドコマンドも見たくなります。
▲子持ちの奥さんに試合を挑むこともできます。そんなことやってる場合じゃないでしょ! やらせたのは自分だけど!! |
HD-2Dによる美麗なグラフィックは、懐かしくも新しい現代のオーパーツ
遊んでいない人でも、見た瞬間に驚くのが、グラフィック。公式いわく、“HD-2D”と名付けられたこのグラフィックは、高精細なキャラクターの2Dドット絵と、ポリゴンで作られた背景が合間って、昔遊んでいたSFCのRPGをそのまま進化させたようなイメージを抱かせます。
▲霧がかかったようなボヤっとした演出やライティングも最高なんですよ。動いているところを見ると、本当に感動できます。 |
というか、本当に20年前のドット職人たちが現代にそのままタイムスリップしてきて作ったんじゃないかと思えるほどスゴイ! とくに、敵キャラクターのドット絵!
戦闘中に味方と違うサイズの人間が出てきて、ボス敵は異常に大きい。これ、もう、そのまんまスクウェア・エニックスじゃなくてスクウェア時代のドットですよ。
技術のオーパーツを見ている気分。90年代に異世界へと魔王討伐に旅立ったドット絵職人が、次々と現代に転生してきたとしか思えないです。現代でもこういう絵が描ける技術が残っていたのか……。
▲これこれ! こういうの!! 人間なのに画面半分くらいをしめる巨大ボス。これは、わかってますね~。 |
もちろん、ただ懐かしいだけではレトロな懐古になりがちなのですが、背景の3Dとうまく合わせてあって、現代の技術で作られていることがわかります。新しいのに、さりげなく懐かしくて当時の思い出補正に負けていないのです。
『ブレイブリーデフォルト』を進化させたバトルシステムなど、遊びやすさもバッチリ!
RPGと言えばバトルという人も多いでしょう。本作は、ランダムエンカウントのターン制コマンドバトル。基本的にはわかりやすい古きよきコマンドバトルになっています。
普通のRPGと違う特徴的な点としては、相手の弱点を突いてシールドを破壊することで“ブレイク状態”にすることで、敵を1ターン行動不能にできるシステム。それと、BPを消費することで技の威力や1回の攻撃回数を増やせる“ブースト”システムでしょう。
▲単純なシステムのようで、じつは「ブレイク」と「ブースト」の使い方が非常に重要。ボスでは、とくに必須となります。 |
どちらかを使っていくのではなく、両方のシステムを使いこなすことで、戦闘を有利に運べるのが本作の戦略面になっています。敵には1や4といったシールドの数値が設定されており、弱点をつくたびに1ずつ減っていきます。
ブーストで攻撃回数を増やし、1ターンで弱点を突き続けてシールドを破壊すれば、相手が気絶してターンが消滅。そのまま自分のターンに持ち込めるので、再度弱点をついて……と一方的に攻撃することも可能なのです。
▲ブーストすることで通常攻撃の回数が増加。スキルの威力もアップします。威力アップは恩恵が大きいので、いかにブーストするかが本作のキモです。 |
ブーストに必要なBPは1ターンごとに増えるので、タメてから一気に使ってブレイクを狙うのもよし、ブレイク中は与ダメージが増えるので、ブレイクさせてからブーストで攻撃力を上げて畳みかけるのもよし。戦略次第で戦闘の難易度がガラっと変わるのがたまりません。
▲ブーストとブレイクの仕様を理解していないと、敵が固く感じるかもしれません。最初は強いと思ったボス戦でも、うまくブーストして弱点のスキルを当てていくと、数ターンで一気に倒せますよ! |
ブーストは、同じスクウェア・エニックスのRPG『ブレイブリーデフォルト』にも似たようなシステムがあったのですが、本作は自動でBPがたまっていくので、非常にわかりやすくなっています。最低でも1ターンに1回はブーストができますし、工夫のし甲斐がある戦闘ですね。
体験版でも遊びごたえアリ! 続きも、他のキャラクターも早く遊びたい!!
体験版は序盤のボスを倒した段階でクリアとなりますが、その後はいくつかのサブストーリーや行く必要のない洞窟などをめぐって、一部のエリアを探索できます。本当にワクワクするシナリオとプレイ感覚で、他のキャラクターのシナリオも見たくなってくるのですが、まずは体験版で我慢です。
▲サブストーリーを進めたり、フィールドコマンドを試したり、体験版だけでいろいろできます。この世界をじっくり堪能してから発売日まで待ちましょう。 |
個人的に気になったのは、Bボタンを押すたびに歩行とダッシュが切り替わるのが分かりづらい点と、ダッシュでも移動が少々遅く感じたくらいでした。
民家の中まで作り込んであるのですが、店や宿屋は中に入れず、入口で買い物が済む点も賛否があると思います。自分はテンポがいいので今のままでもOKですが。
本当にそれくらいで、遊んでいて期待が持てる体験版なんですよ。すでに体験版を遊んだ人たちから、往年のスクウェアのRPGっぽいという話をよく聞くのですが納得です。
かくいう自分も真っ先にそう思ったんですよね。ドット絵ということもあるのですが、テキストを含めた全体の雰囲気が円熟したスーパーファミコン後期のスクウェアだと。『クロノ・トリガー』や『ロマンシング サ・ガ3』のような有名な作品から、知る人ぞ知る名作『バハムートラグーン』や『ルドラの秘宝』を出していた、あのころの雰囲気を感じます。
それから、驚いたのが開発のアクワイアであること。『ブレイブリーデフォルト』の系譜を継いでいるところばかり注目されますが、開発スタッフに、ソーシャルゲームでは異例なまでのサービスと高評価で終了が惜しまれた『ロード・トゥ・ドラゴン』の宮内継介ディレクターがいる点にも注目してほしいと思います。
シナリオもそうなのですが、堅実なスタッフが集まっているので、それだけで期待できるというものです。Nintendo Switchをこれから買う予定の人も、ぜひ体験版を遊んでみてください。子どものころに遊んだ人たちはもちろん、昨今のRPGに飽き気味な人にも驚きが待ってますよ!
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