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2018年2月22日(木)

『エウレカセブン ハイエボリューション1』佐藤大氏インタビュー。12年を経て新たな『エウレカ』を作った理由とは?

文:てけおん

 2月23日に発売予定のBD&DVD『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』。その脚本を手がけた佐藤大氏のインタビューをお届けします。

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』 『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』

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 『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』は、TVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』から12年を経て、新たにレントンとエウレカの物語を描いた劇場アニメ3部作の1作目です。すべてのセリフが再構築され、新作映像と再撮影された映像で構成されています。

 佐藤氏には、本作が作られた経緯やこだわったポイントなどについて話していただきました。かつて日曜の朝に目を輝かせてレントンとエウレカの物語を追いかけていたファンは、どんな想いが『ハイエボリューション1』に込められているのかインタビューで確かめてみてください。

僕の中で『エウレカセブン』は、いったんピリオドを打った作品でした

――佐藤さんは今回の『ハイエボリューション』の制作において、どのような形で関わっているのでしょうか?

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』
▲佐藤大氏。

佐藤氏:基本的には脚本という形で、13年前の『交響詩篇エウレカセブン』を活かしつつ、新しいものを作る上でのお話の部分、言葉の部分を作る感じで関わっています。

――佐藤さんは『エウレカセブン』という作品に、かなり深く関わられているイメージがあるのですが?

佐藤氏:自分にとってはシリーズ構成としてのデビュー作でしたし、総監督の京田知己さんと私、それからキャラクターデザインの吉田健一さんの3人は、『交響詩篇エウレカセブン』を作った時のコアメンバーというイメージです。

 今回、もう一度『エウレカセブン』をやるにあたっても、いちばん最初にその3人で話すところから始まりました。そういう意味では総監督として指揮を執る京田さん、ビジュアル面の吉田さん、それから物語や音楽面でのアイデア出しは僕、みたいな感じなのかもしれないですね。

――今回の『ハイエボレーション』で、13年前の『エウレカセブン』を再構築することになった経緯は、どのようなものだったのでしょうか?

佐藤氏:僕の中では、『エウレカセブン』という作品は、いったんピリオドを打ったというか、終わっているつもりでした。なので、その後の映画版や続編には、僕自身は関わっていません。

 でも今回は、最初のTVシリーズである『交響詩篇エウレカセブン』を再構築するとプロデューサーからお話をいただいたので、じゃあもう一度『エウレカセブン』に向き合ってみようと思いました。ただ、いったいどういうふうにやれば今の時代にあった再構築ができるのかということで、京田さんと吉田さんと僕の3人で、3年前に合宿をしたんです。

 実は『エウレカセブン』が終わって以来、この3人でしゃべったことはなかったんです。もちろん、いろんなイベント会場とかですれ違ったり話したりすることはあったんですけど、物を作るというスタンスで集まったのは、本当に13年ぶりぐらいで。

 そうやって話してみていちばん大きかったのは、『エウレカセブン』という作品がみなさんにすごく愛されていて、今回このような形になるのは嬉しいけれど、当時の自分たちにとってこのお仕事は、いわゆる成功体験ではなかったと、3人とも思っていたということなんです。

――外で見ている側からすると、成功体験ではないとおっしゃるのは意外な気がします。

佐藤氏:いろんな意味で自分を成長させてくれた作品ですし、客観的に見て代表作と言われるのはその通りだとも思います。だからファンの皆様が今なお見てくださることはとてもありがたいことです。でも自分たちにとっては、やはり成功した作品とは感じられていませんでした。

 「こうしたかった、ああしたかった」などの反省点はたくさんあるし、自分たちが届けたかったところにちゃんと届いたかどうかも自信がありませんでした。そういう話を合宿で京田さんや吉田さんにしたら、2人とも同じようにそう思っていたんです。

 そのことについて話をしたことがないのに、僕と同じように感じてくれていたので、それならもう一度やる意味があるなと考えました。それを踏まえて、「どういうふうにリブートしようか?」と考える姿勢になれたので、実際に出来るかどうかは別にして、その合宿の瞬間に「これはやれるかも」と思ったんです。

レントンが一歩を踏み出すために、父親と養父母をちゃんと描きたかった

――『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』は全3部作ですが、その第1弾である『ハイエボリューション1』で、特に描きたかったところは?

佐藤氏:『エウレカセブン』がレントンとエウレカの物語であるというのは、前もそうですし、今回も変わらないんですけど、この3部作ではレントン、アネモネ、エウレカという形でお話を作っていくのが筋だろう、と考えたんです。

 1作目はまずレントンの物語。14歳の男の子が世界に向かいあっていく、エウレカという少女と出会う、というのをちゃんと描く。そのために何が必要かという時に、父親という存在であったり、育ての親である存在だったり、ちゃんとした大人を今回は描こうと考えました。

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』
▲レントンの父親であるアドロック。『ハイエボ1』の前半は、このアドロックの物語となります。

 ちゃんとした大人を描きたいって気持ちは、たぶん年齢的なこともあると思うんです。京田さんも私も吉田さんも同い年で、TVシリーズの時は35歳でした。それが今、全員40代の後半になった時にどう作るかというと、たぶんそこに向きあうべきかな、と思ったんですね。

――そのお話に関連すると思うのですが、チャールズとレイがTVシリーズとは設定がかなり変わって、今作ではレントンの養父母になっていますよね。この狙いはどのようなものでしょうか?

佐藤氏:レントンの物語にする以上、レントンがちゃんと大人になるために必要な大人が、チャールズとレイだったんです。

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』 『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』
▲『ハイエボ1』では、“サマー・オブ・ラブ”の後、チャールズ(左)とレイ(右)は養父母としてレントンを10年間育てました。
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』

 TVシリーズにおけるチャールズたちは、レントンが偶然出会った、本当に偶然かどうかはさておき、レントンにとっては偶然出会ったしっかりした大人たちといった感覚ですけど、今回は、レントンの育ての親として描いています。

 この2人はもともとホランドたちと同じ作戦に関わっていたり、レントンのお父さんであるアドロックとつながりがあったり、そういう設定が元のTVシリーズでもありました。

 それならば、アドロックの言葉や想いみたいなものをレントンに伝える存在としては、ホランドではなくチャールズとレイこそが適任ではないか、と思ったんです。

 この2人の存在はTVシリーズでも、レントンにとっては1つの大きな成長となるきっかけでした。エウレカと向きあうためにレントンが成長……というか、一歩を踏み出すためには、チャールズとレイの存在をもう少しクローズアップするのがいちばん正しく、そして最短で行けるのかなと考えたんですね。

――物語を映画3本にまとめる上でも、必要だったわけですか?

佐藤氏:『ハイエボ1』は90分弱しか時間がないので……。その中でTVの26話分ぐらいは描かなきゃいけませんから、何を取って何を取らないかを考えるということは必要な作業でした。

――チャールズとレイをレントンの養父母にするという設定はどのように決まったのでしょうか?

佐藤氏:京田さんから提示されたのが、TVの“ディファレンシア(第23話)”とか、チャールズとレイを中心にまとまったものが出てきて、「これならたしかにできるかも」となったんです。

TVシリーズから13年が経って、アニメーションはサブカルチャーではなくなっていた

――チャールズとレイがレントンの養父母になることに伴って、ホランドたちの立ち位置もTVシリーズとは変わっていますよね?

佐藤氏:今回の『ハイエボリューション』では、ゲッコーステイトをオミットしているんです。

 ゲッコーステイトという存在が、TVシリーズの『エウレカセブン』ではすごく大きなものになっていたんですけど、あれが象徴していたものは、いわゆる『サブカルチャー』でした。けれどもその『サブカルチャー』という文化が、あれから13~4年経った今、完全に失効しているなと感じています。

 当時はアニメーション自体も『サブカルチャー』でしたし、僕らがエウレカで元ネタにしていたダンスミュージックや文化的なことも『サブカルチャー』に属しているものだったので、じゃあその『サブカルチャー』という存在自体を描くアニメーションを作ろうと考えて『エウレカセブン』を作りました。ところが13年経ったら、当たり前のものになっていたんです、アニメーションが。

――サブカルチャーではなくなっていた?

佐藤氏:もうサブじゃないですね。マイノリティではなくマジョリティなものだし、自分たちがカッコイイと思っていたダンスミュージック自体も、もう今のアニメの中では当たり前に使われている。というか、むしろそれがベーシックになっているんじゃないでしょうか。

 言ってしまえば、その『サブカルチャー』だったものが、今や当たり前になってしまった今の世界で、改めて『エウレカセブン』がなにを描くか、という問題にぶつかってしまったんです。だったら、その『サブカルチャー』だったものを掘り下げることよりは、『ハイエボ1』は、レントンのパーソナルな部分をもっと掘り下げていこうと。そのためにはホランドたちではなく、チャールズとレイという存在が必要だったという感じですね。

 だから、ホランドたちを出したくないわけじゃなくて、今の時代に合わせて、必然的にそうなったんです。

父親のアドロックがセリフを話すところを見てもらいたい

――『ハイエボリューション1』の大きな見どころとして、物語の原点となる“サマー・オブ・ラブ”が初めて映像で描かれたという点がありますが、これはどのように決まったのですか?

佐藤氏:サマー・オブ・ラブを絶対にやるべきというのは、かなり最初に決まっていました。本編中で語られてはいても、絵として表現されたことは一度もないシーンですし。

 それに、レントンの物語にする以上、アドロックという存在が間接的にレントンに与えた影響だけでは、描ききれないだろうと。アドロック・サーストンをちゃんと描くという命題のためには、やはりこのエピソードを描くべきだと思いました。

 なのでこのシーンの脚本はいちばん最初に書きました。書いたものをいったん、総監督の京田さんや特技監督の村木靖さんたちに揉んでもらって。さらにセリフとかを設定考証の森田繁さんや、いろんな方にビルドアップしてもらい、あの素敵な場面にしていただいたという感じです。

――“サマー・オブ・ラブ”の場面で、特に力が入った点は?

佐藤氏:スタッフとしてもすごく力が入っていて、全体を通してスゴい映像になっていたと思います。

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 お話のほうでは、「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん」というキーとなる言葉を、これまでは師匠から聞いたという形でホランドから聞いていたんですが、それをアドロック本人が実際にセリフとして言うシーンを、お客さんに見てもらいたいというのが大きかったです。

――サマー・オブ・ラブで登場する決戦弾頭シルバーボックスは、音楽が兵器になっているという非常に“『エウレカセブン』らしさ”があふれているものですが、これはどなたのアイデアですか?

佐藤氏:あれは京田さんですね。TVシリーズでサブタイトルのネタとして4回も使わせてもらっている、『Acperience(アクペリエンス)』という楽曲があるんです。もともと僕がこのプロジェクトを引き受ける理由のひとつとして、そのアーティストであるHardfloorに楽曲を提供してもらいたいと、最初に言ったんですよ。

 『Acperience』という楽曲はシリーズ物で1から5まであって、6はないんですけど「7を作ってください」と、Hardfloorにお願いして作ってもらったんです。その曲をかけるとしたら、それはサマー・オブ・ラブのシーンにするべきだろうと考えました。

 それも、単なるBGMとしてかかっているんじゃなくて、あの世界の中で本当にかかっている音として、この曲が鳴っている形にしたいです、というのを京田さんから聞いて。それで音楽兵器ということになりました。

――それでは脚本を書かれる前から、『Acperience 7』という楽曲があったわけですか?

佐藤氏:脚本の前にはなかったですけど、アシッドサウンドがコーラリアンに対する有用な攻撃方法であるというのは、脚本の段階からありましたね。

 もともと“オレンジ”という名前の爆弾というか攻撃方法が、『交響詩篇エウレカセブン』にもあるんですけど、これも音楽の機材(ギターアンプ)の名前なんです。言ってしまうと『エウレカセブン』に出てくる固有名詞のほとんどが、音楽機材の名前なんです。なので、音楽兵器というものにも、もともと親和性は高かったのかなと思います。

『ハイエボ1』は、14歳の少年の頭の中を一緒に旅するお話なんです

――『ハイエボリューション1』では、レントンが歩きながら“PLAY BACK”、“PLAY FORWARD”という形で、過去の出来事を時系列ではない形で思い返す構成になっています。このような構成を採用されたのはなぜですか?

佐藤氏:本編中の時間で言うと、たった12分ぐらいの(レントンの)頭の中で展開した話が『ハイエボ1』です。14歳の少年の頭の中を一緒に旅して、レントン自身が立ち上がって一歩を踏み出す。タイトルが最後に出るのも含めて「ここから『エウレカセブン』始まりますよ」というような、壮大なアバンタイトルみたいな構成になっています。

 さまざまな経緯があって今の形になりましたが、こうなって結果的にすごくよかったと思っています。人間が頭の中で思っていることって、時系列では浮かばないじゃないですか。思い出したくないことは思い出さないし、でも思い出したくないと思っていても思い出しちゃうし。その時に時系列というのは頭の中ではリニアにつながらない。

 頭の中でインパクトのあることや、思い出しがちなことだったり、思い出したくないことだったりが、あえて出てくるみたいな。そんな14歳の頭の中を、みんなと一緒に見てもらおうという感じの、恥ずかしさ満載みたいなものになったのはよかったですよね。

――その構成を考えたのは、どなたですか?

佐藤氏:それも京田さんです。京田さんが構成を考えて、僕がモノローグで言葉を埋めていくという感じでした。

 TVでは(レントンの)お姉さんであるダイアンに語りかける形だったものを、今回は“キミ”という存在―ーもしかしたらエウレカに言っているのかもしれないし、メタ的な目線では見ているお客さんに向けて言っているのかもしれない。そういう形の語りかけにしたんです。

 TVシリーズをまとめていく時に、過去映像だけでは情報量が圧倒的に少ないので、レントンの頭の中とすることで情報量をどんどん多くしていくというのが、『ハイエボ1』での京田さんの演出プランでした。

 それはテロップもそうですし、モノローグのセリフ量も「これ、絶対に尺に収まらない」って、音響監督の若林和弘さんに怒られるくらいの量でしたが、だったら入らないところは別の場所に組み込もう、みたいなライブ感のある感じでアフレコしていきました。

 過去映像のパートに関しては、もともと絵としてあるものに言葉を載せていったので、曲が先行している作詞作業みたいな感じでした。すでにあるメロディーラインに合わせて言葉を埋めて、それをレントン役の三瓶由布子さんがいい感じで歌ってくれるというイメージですね。

――そのあたりは普通のアニメとは……

佐藤氏:ぜんぜん違いますね。『エウレカセブン』が音楽をテーマにした作品だったということにおいて、サンプリングだとか、歌うような言葉の選び方だとかは正しい選択でしたが。

――その作業をやってみていかがでしたか?

佐藤氏:楽しかったですよ。大変なのは大変でしたけど。言わなきゃいけないことがこの尺には入らないとか、表情が違うとか、そういうことはありましたが。たとえばレントンとチャールズが初対面で会う人の顔をしているところを、10年以上一緒にいた家族として描かなきゃいけないとかですね。

 でも、倉島亜由美さんをはじめとした作画陣にあとで作画の修正していただいたり、かなり手直ししてもらったので、そこは逆に言うとすごくしっくりいきました。スタッフの中で行ったり来たりして、こんなにライブ感のある作り方をできた作品は、他にないと思います。

会うことのできない父親と向きあうには、自問自答しかない

――TVシリーズでは、レントンが周りの人たちと触れあうことで、世界のことやエウレカへの想いを確かめるという感じだったと思うんです。今回の『ハイエボリューション1』で、レントンの自問自答の中でそれを見出すという形になったのは、どういった狙いがあったのですか?

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』

佐藤氏:TVシリーズのレントンは、シリーズとして毎週ホランドみたいなヒドい大人や、ウィルたちにも出会ったりすることで、じわじわと成長し、自分が最終的に向かい合わなきゃいけないものとして、エウレカに向き合うことになります。

 今回は時間の関係で、そんなにゆっくりと描けない以上、レントンがいちばん向かい合わなきゃいけないのはお父さんだろうとなりました。TVでは向かい合わなかった存在ですし、声優もいませんでした。なので今回、古谷徹さんにアドロックを演じてもらったことは、とても大きかったですね。

 でもお父さんは会えない存在なので、そうなるとああいう構成になるしかないのかなと思うんです。「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん」という言葉が、チャールズを通してレントンに伝わるからには、その言葉に行き着くのは自問自答でしかないだろうと。

――より父親とのつながりを大事にしたから、ああいった構成になっているわけですか?

佐藤氏:そうですね。でもそれは、ニワトリとタマゴの関係みたいなものなので。

 ああいう編集の形になったからこそ、モノローグがそこにたどり着いたのかもしれないし、レントンとお父さんの話を描こうと決めていたから、ああいう構成になったのかもしれない。今となってはどっちも融合しているのかもしれない、という気はします。

 そこまで理知的に作っていないんですよ(笑)。外側から見ると、色々考えて構築されているイメージがあるのかもしれませんが、意外とライブ感で作られているんです、今回は特に。

『ハイエボリューション2』は、アネモネのお話になります

――『エウレカセブン』はボーイ・ミーツ・ガールの物語だと思うんですけど、『ハイエボリューション1』って、その直前で終わってるじゃないですか。映画館で最初に見た時に、「ここから『ハイエボ2』まで待たなきゃいけないの!?」っていう気持ちになったんです。

佐藤氏:ありがたい! そのために作ったので。

――それで自宅に帰ったあとにすぐ、TVの第26話を見直したんですけど。

佐藤氏:そういう気持ちになってもらいたかったんです、家に帰って改めて『交響詩篇エウレカセブン』を見てほしいなと。今ならネット配信で気軽に見られますし、もちろんDVDやBlu-rayでも見られますから。

――『ハイエボ1』があそこで終わるというのは、最初から決まっていたんですか?

佐藤氏:それは決まっていなかったですけど、『ハイエボ1』で第26話ぐらいまで進めておかないと、3部作で入りきらないよね、というのはありました。

 そうしないと、『ハイエボリューション』という新しい物語を語る時間がなくなるという、枠を与えられた宿命みたいなものがあるわけです。そこでじゃあ、今回はどこで終わるのかというのは……監督しだいですね。

――それで自宅に戻ってTVシリーズを見返していたら、先ほどお話にもありましたけど、レントンとチャールズが再会するシーンをはじめとして、過去の映像素材を使っているように見えても、実はTVとはかなり変わっていることに気がついて、驚いたんです。

佐藤氏:そうなんです、そこをぜひ大きく書いてください(笑)。先ほどもいいましたが、表情や目線がまったく違っていたり、後ろに張ってあるポスターも細かく変わっていたりしているんですよ。

 1カットずつ、1フレームずつ見返していただけると、「こんなところにアネモネが!」とか、いろんな楽しみがありますから。そのためにみなさんもぜひ、DVDやBlu-rayを買っていただけると有り難いです(笑)。

 レントンとチャールズが再会するシーンはすごく示唆的だったと、終わったあとに思っていて。TVでは初めて会うシーンで、今回の『ハイエボ1』では再会ですから、真逆の演技ですよね。

 あの再会は、作り手の僕ら自身が『エウレカセブン』という作品に再会することでもあるし、お客さんたちで新しく出会う人もいれば、再会する人もいるということでもあるし。あのシーンをこういうふうにリビルドできて、よかったと思っています。

――先ほどアネモネの話が出ましたけど、『ハイエボ1』ではアネモネがラッピングバスやポスターなどが作られるアイドルみたいになっていて、「あれっ!?」と思ったのですが?

佐藤氏:2作目をアネモネの話にしようというのは、最初にこの企画が立ち上がった時からの気持ちでもありました。メタ的な感じで言うと、「この世界にはアネモネもいるよ、探してね」という意味合いなんです。

 ただそれが、単にアイドルかと言われると……どうなんでしょうね。なぜあんなふうになっているのかは、今はまだみなさんで想像をふくらませてもらうのがいいかなと。

――『ハイエボ1』の最後に流れる『ハイエボ2』の予告を見て、動揺しているファンの人もいると思うんです。アイドルとか、サッカーとか(笑)。

佐藤氏:ああいう物語をやるとは言ってるけど、あれをやるとは言ってないし……。いや、これも言いすぎかな。やるかもしれない(笑)。

――あまり予告を真に受けるな、ということですか?

佐藤氏:いやいや(笑)。やるかもしれない。かもしれない運転です、危ないからね(笑)。でもあの予告を見た人が「えっ、どうなるんだ?」っていう気持ちになったり、ワクワクしたりしてもらいたいというのが、監督の京田さんや、あのパートを担当したコヤマシゲトさんの想いだと思うので。

――わかりました(笑)。楽しみにしています。

『エウレカセブン』は毎回、自分が試される作品なんです

――『ハイエボリューション1』で、佐藤さんのお気に入りのキャラは誰でしょうか?

佐藤氏:レントンですけど……彼は難しい、というか毎回向き合うのに時間がかかるので、気に入ってるのかどうかはよくわからないですね。かわいい瞬間もあるんですけど、めんどくせぇなって瞬間もあるし、複雑です。

――14歳という年齢からいって、面倒くさくてもしょうがないかなと思うんですけど。

佐藤氏:TVでは自分が35歳の時に、14歳のあの気持ちになって書きましたが、今回は40歳も後半になってから、もう一度あの気持ちと向かい合ってみました。でもやっぱり捕まえるのは難しいなって思いますね。

 レントンのモノローグを書くにあたっても、収録ギリギリまで粘らせてもらって、大変ご迷惑をおかけしたんです。でも収録が終わってフィルムを見た時に、みんなのおかげでいいところにいけたなと思いました。またレントンがお気に入りになるのかな、みたいな。そういう複雑な感じですね。

――では、今回の脚本作りで辛かったことは?

佐藤氏:辛いのはもう、『エウレカセブン』自体がつらいですよね。なんていうか、試されるんですよ、毎回。13年前もそうでしたし。

 手癖だとか、ある種のセオリーだとか、方法論とかってあるじゃないですか。物語を作ることもそうだし、世の中で生きていくことにしても。そういうのを一回ぶっ壊すというか、一回じゃなくて全部ぶっ壊すという意味で、試されるんです。

 それはたぶん、総監督の京田さんも同じだし、吉田さんもきっとそういう気持ちがあるのかなと。それは『エウレカセブン』という作品が持っている磁場みたいなものなのかも、と思います。

――その大変さというのは、心理的な部分なのでしょうか?

佐藤氏:それもあります。前のTVシリーズの時は、お客さんに向かって「これをぶつけてやる!」みたいな気持ちだったんです、3人とも若かったし。

 今回はそれを踏まえて、自分たちも成長……なのか後退なのか分からないですけど、いろんなものが起こった状態でもう一回、14歳の少年が女の子に恋をして、世界と向かい合うために一歩を踏み出す話を作る。それはもちろん楽しいですけど、その一方で難しいなと思いましたね。

――それでは最後に、ファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

佐藤氏:これから公開される『ハイエボ2』、そして『ハイエボ3』にむけての復習というか、気分を盛り上げてもらうという意味でも、『ハイエボ1』を楽しんでほしいと思います。

 Blu-rayの特装限定版にはサウンドトラックCDも付いていますので、ここでしか聞けない佐藤直紀さんの素晴らしいスコアや、HardfloorやHIROSHI WATANABE君が今回のために書き下ろした曲も、ぜひ聞いてみてください。

 それから、尾崎裕哉さんには『Glory Days』という、すごくいい曲を作っていただけました。サウンドトラックにはMovie Editionという、映画でしか使われていないロングミックスバージョンが入っているので、そちらも楽しんでもらえればと思います。

――ありがとうございました。

レビューやBD特装限定版の開封記事などもお届け!

 記事冒頭でもお伝えした通り、本作のBD&DVDは2月23日に発売予定です。電撃オンラインでは、脚本を手掛けた佐藤大氏のインタビューだけでなく本作のレビューを掲載しています。また、さまざまな特典が盛りだくさんとなっているBlu-ray特装限定版の開封記事などもお届け予定となっています。本作に興味がある人は、こちらもぜひご覧ください。

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