2018年5月22日(火)
【電撃PS】『モンハンワールド』ネタバレ注意!? ストーリークリア後まで語るキーマンインタビュー
電撃PlayStationで連載されているPS4用ソフト『モンスターハンター:ワールド』の開発者インタビュー企画。ここでは、電撃PS Vol.659(2018年3月29日発売号)に掲載された“第6回:ストーリークリア後まで語るキーマンインタビュー”を全文掲載する。
【電撃PS】『モンハンワールド』インタビュー連載 バックナンバー
今回の開発スタッフインタビューでは、プロデューサーの辻本良三氏、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏、ディレクターの徳田優也氏の3名に、電撃PS編集長・西岡美道がお話をうかがった。バゼルギウスがハンターのもとにやって来る理由、各地の絵に隠された意味など、『MHW』についての深い話を見逃さないでほしい。
全世界で出荷本数500万、750万本と広がり続ける『モンハンワールド』
西岡:発売3日で500万本、1カ月とちょっとで750万本の出荷というのはものすごい勢いの売れ方ですよね。そのへんの率直な感想を聞かせてください。
辻本良三氏(以下、敬称略):『モンハン』シリーズでは、これまで500万本を超えたタイトルってなかったんですよ。シリーズとして大きな壁でもあった数字であって、それを発売3日で超えることができました。ワールドワイドで盛り上がり、現在は750万本いけてよかったと思いますし、いけそうという感覚もありましたね。
西岡:“盛り上がっている感”ってプロデューサーの辻本さんを中心に作っていったものだと思うんですが、そのスタートはE3 2017からですよね。
辻本:E3のときは『モンスターハンター』が久しぶりに据え置き機で出るぞ! っていう驚きを感じてもらいたかったので、あえてタイトルロゴも映像の途中から出すようにしました。そこから、発売時期を2018年初頭と発表したので、そこまでのペースを考えていったん情報を出すのはお休みさせてもらって、gamescomから東京ゲームショウ、12月のベータテスト、そのあたりまではイメージしていました。
ただ、その間も自分と藤岡、徳田の3人で手分けして、その他の海外のイベントや、ユーザーイベントにも参加していたんですよ。そこからの広がりも強くて、ヨーロッパだと有名な動画配信者の人が『モンハンワールド』の情報を出してくれました。
西岡:そういった活動は北米とヨーロッパで?
辻本:そういう人たちが自分たちで動画を作ってアップしてくれたのは大きかったです。
藤岡要氏(以下、敬称略):そういう人たちとコミュニケーションを取るというのは当初から意識していました。ちゃんと『モンハンワールド』のことを見てくれようとしてたので、自分たちもコミュニケーションを取りやすかったです。「任せてくれ」みたいに言ってくれました。
徳田優也氏(以下、敬称略):あるときは夜中の3時まで語り合いましたよ。海外の動画配信者と。
西岡:それは飲みながらですか?(笑)
藤岡:ですね。メディアツアーを日本で行うときに海外の方も来てもらって、海外のメディア、動画配信者と話をさせてもらいました。そういうことをやるのは初めてだったんですが、彼らがプレイしながら疑問に思っていることを僕たちも知ることができました。僕たちの思いも直接伝えられて、彼らもそれを持って帰ってくれて。よくわからない距離感で書かれるよりも、ちゃんと理解して書いてもらえたのが力強かったです。
日本だと、普段から話をさせてもらう機会があったりして「今どうなってるの?」とか雑談の延長戦で話をさせてもらえるんですが、海外ではなかなかそういう機会がないので。
西岡:もともと『モンスターハンター』を知らない人もいたと思いますが、そのあたりはどうでした?
辻本:コミュニティの人たちは、すごく昔から『モンハン』を応援してくれている方々です。そのなかに、先ほど言った動画配信者の人とかがいたりするんです。メディアの人で特徴的だったのが、今まで『モンスターハンター』に触れたことがない人が数多く来てくれて、その感覚で『モンハンワールド』を触ったらどう感じるのかということを、レビューなどで記事にしてくれました。
藤岡:『モンハン』シリーズ初期のころに少しやって挫折した人もいるし、名前は知っているけどやったことがないという人、ずっと遊んでくれている人、いろんな人たちがいます。でもだいたい、みんなよいところも悪いところも同じような感じなんです。
徳田:みんながよいなと思う部分により到達できるように、ゲームプレイや操作などを見直したつもりです。実際にそう感じてもらえたなら、自分たちとしては壁を1つ越えられたのかなという印象です。750万本という数はうれしいですし、同時にファンもファンじゃない人も、世界中の人に同じように楽しんでもらえたのもうれしかったですね。
藤岡:出荷本数で言うと、じつは個人的に500万本という数字を辻本と約束していたんです。
辻本:ええ。500万本を超えたので、自分は藤岡にイラストを描いてもらえます(笑)。
西岡:藤岡さん直筆のイラストですか? そういったことってけっこうあるんでしょうか?
辻本:たまに社員とかのお祝いで絵を描くんですよ、藤岡が。それいいなあとずっと思っていて。
藤岡:じゃあ、500万本超したらやるわって言ったんです。そしたら絶対だぞって念押されまして(笑)。まあ、『モンハンワールド』のような大きな展開をするときって、何か意義があってやらないと意味がない。これで今までのトータルの本数を越せないと、カプコンが総力をあげてやる意味ってどこにあるんだろうか? そうなったらイヤなので、500万本という数字を1つの目標にしたんです。
こんなに早く超せるとは思っていなかったんですけど、これぐらいじゃないと、僕たちの考えているもっと多くの人に遊んでもらうっていうところには到達できないんだろうなって思います。
辻本:徳田とも数字の達成を約束しているんですよ。
徳田:もっと大きな数字ですね。僕は人が一度出した数字を忘れないんですよ。
藤岡:徳田がいろんなところの責任者に話を聞いて、数字を約束するんですよ。「ゲームに不満はないといっていたけれど、じゃあ何本売れると思ってるんや」って(笑)。それで、小さい数字だと「そんななん?」と返しています(笑)。それ全部足すとすごい数字ですよ。
西岡:世界規模ですごく売れていますが、日本だけでも売れ行きがたいへんなことになっていますよね。
藤岡:ほかのゲームと比べるわけではないですけど、いろいろ見てきて、日本だけで考えると一定のピークがあるように思っていたんです。そのへんの数字を参考にベースを試算して、海外も合算してというイメージでいたんですけど、そういう意味では日本が予想外でしたね。
辻本:あとはアジアでもよく売れています。アジアでの売上本数を聞くとみなさんびっくりすると思いますよ。
西岡:マルチプレイでも漢字の名前の人とかハングルの名前の人とかよく見かけます。
徳田:タイムゾーンが合ってるのもあるでしょうね。欧米の方とかは時差で時間が合わないところもあるので。辻本:最近の日本だと、据え置きのゲーム機でプレイする機会がある人は少なかったと思うので、この機会にどっしり腰を据えてプレイする人が増えてうれしいです。
西岡:予想以上に盛り上がった要因、みなさんの肌感覚ではどういったところにあると感じていますか?
辻本:ゲーム内にある要素をポイントポイントとして、生態系とかモンスターの縄張り争いとか気になるところに興味を持ってもらえたのが大きいと思っています。
今回、日本で思うのは街中で『モンハンワールド』の話をしている人が増えたことです。昨日もバーにいったら、お店の人がお客さんとずっと『モンハンワールド』の話をしているんですよ。サークルがどうとか。これがやっぱり『モンハン』だなと、あらためて思いましたね。
徳田:僕も、ベータテストの頃に大学生ぐらいの子が「今度新しい『モンハン』出るらしいよ」「エリア間のロードがなくなってるらしいぜ」「モンスター同士がやりあうらしい」と聞きかじりの情報で話をしていて、そのあと「そういえば俺『MHP 3rd』やってた」とか「俺は『MH4』」とか話していました。その共通体験とした昔遊んでいて楽しかった部分と、今回変わった部分への期待感が盛り上がりにつながったんだと思いますね。
藤岡:そういう意味で言うと日本での盛り上がりを感じ始めたのはベータテストが始まる頃かな。バズが上がったというか、動画もすごく出たし。
西岡:徳田さんとはもっと大きな数字を約束しているというお話でしたが、最終的な目標はどのぐらいですか?
辻本:徳田と約束した数字はたぶんいけますね。プロジェクトの規模も大きく、そこにいろんな人の思いも入っているので、いけるところまでいきたいです。
藤岡:カプコンで500万本を超えたタイトルってそんなにないんですよ。そこをさらに超えて750万本も突破。これからどこまで伸びるのかって話はしています。
西岡:今、海外に行くとみなさん注目されるのでは?
藤岡:すごかったですよ。北米のGamestopで発売日に買いに来た人にサインをするイベントをやったんですが、今までにないくらいの行列で、「これ、ほんとに『モンハンワールド』の行列ですか?」って聞きました。200人ぐらいが並んでいて、サインするのに2時間くらいかかりましたね。
印象的だったのは、女性が結構多くてカップルじゃなくて1人だったこと。明らかにゲームを遊ぼうとする層が増えているのを感じました。
徳田:台北もすごかったですね。メディアのインタビューでまず言われたのが「なんで発売直後にこんなイベントをやるんだ。遊べないじゃないか」と。
辻本:僕たちも同じです(笑)。
西岡:なんなら僕、インタビューしてる今も『モンハンワールド』を遊びたいです(笑)。
プレイヤーごとに異なる体験が動画によって拡散される
西岡:ここまで売れるといろんな人の意見を目にすると思いますが、「なるほどな」と思ったものは?
徳田:ざっと見ていると、狩りに集中できるとか『モンハン』のおもしろい核の部分にたどり着きやすくなっているとか、準備の部分が楽になっているというか、あれをしなきゃいけないこれをしなきゃいけないという部分が現地でできるようになっているというのが、海外を中心に評価されていると思います。
辻本:今までよりも動画をあげやすいので、ユーザーのそういった動きも多いですね。キャラクリとか。
西岡:今回、とてもキャラクリの自由度が高いですよね。ユーザーさんが盛り上がるのは想定内ですか?
藤岡:ある程度自由にできるようにしているので、いろいろ出てくるだろうなとは思ってました。顔の色を全部変えられる丸い化粧は用意しておいてよかったなと。ちなみにYouTubeとか見てると、女性の方がけっこうプレイ動画をあげていますね。
西岡:女性は上手じゃないとアドバイスしたくなるし、うまければカッコいいんですよ。
藤岡:自分なりのうんちくを語れる人がフォロワーに付いたり、初心者さんは温かい目で見守られたり、という感じでした。
西岡:男性からすると「女の子が俺たちの世界に入ってきた!」って感覚もあると思いますよ(笑)。
藤岡:ほんとですか?(笑)。ゆっくりやっている人とガンガン進めている人の差もあって、いろんなプレイスタイルの人がいていいですね。
西岡:『モンハンワールド』は動画映えするところも多いですよね。リオレウスが自分で堰に突っ込んで行って、そのまま水に流されて崖から落ちて力尽きるっていうのがおもしろかったです。
藤岡:たぶん狙ってやっているのではなくて、偶然起きたことを動画に収めていると思うんですよ。そのたまたま起きるっていうのが、今までのゲームデザインとは違うんです。
経験上、過去作では大きく暴れる(想定外になりうる部分)というのを抑えるってことをしていたんですけど、今回は自由にさせているほうが強いなあと。いつもより解放感を出して、その結果想定外のことが起きるけれど、それでも自由なほうがいいし楽しいってのがあって、動画を見ている側としては、そういうところにバズが上がっているのかなと思います。
徳田:繰り返し遊ぶゲームなので、毎回違うことが1つあるだけで新鮮な体験になります。そう思って入れた部分が結果として「俺だけが見つけたことだからシェアしたい」欲求につながっていると思いますね。レアな環境生物見つけた! だけで動画をあげたり。
辻本:僕は捕獲用ネットを持っているときに偶然レアな環境生物が目の前を通ったんですよ。「あ、これ、徳田が言ってたやつだ」ってすぐ捕まえましたね。
徳田:フワフワクイナですね。あれすごくレアですよ。自分はエメラルドカブトガニを見つけたけれど蹴っちゃったんですよね。こういうふうに運を持っている人いるんですよー(笑)。くやしいわあ。
電撃PS編集長のプレイにいろいろとダメ出し!?
西岡:プレイ時間は人によってまちまちですが、どのぐらいでスタッフロールまでたどりつく想定でしたか?
辻本:平均だと45~60時間くらいでエンディングかな?
藤岡:今のプレイヤーを見ていても、そんな感じかなと思いますね。急ぐ人はもっと頑張りますけど、ちょっと便利にしようとか寄り道しているとそんなもんかなと。
徳田:救難信号を便利に使ってくださっているのが嬉しいですね。今までよりも4人マルチプレイがやりやすくなっていて、そのぶん多少進行が早くなっている部分もあるかと思います。でも、装備を作ったりしていくと時間がどんどんふくらむ設計は変えていないので、存分に楽しんでいくと時間もかかります。
辻本:救難信号は必要以上に仲よくする必要がないっていうと変ですけど、そういう感じも新しいかなと。
西岡:わかります。あの気楽さは最高ですよね。クエスト成功率が低いのが悩みですが……。
徳田:え、本当ですか? 自分は100%成功しています。
辻本:それってもしかして、西岡さんが下手なんじゃないですか(笑)?
西岡:いやいや僕は力尽きてないんですよ(笑)! でも入って30秒でみんな力尽きたとかありましたよ。
徳田:そのとき西岡さん、何をされてたんですか?
西岡:僕は……見てました(笑)。
辻本:スリンガー閃光弾を使ったりしないと(笑)。
藤岡:でも救難信号を見ていると、みんながどこで詰まっているとか、どのあたりまで進んでいるのかわかりますね。
徳田:最初の頃はゾラ・マグダラオスとアンジャナフが多かったですね。あと素材集めにトビカガチ。そこからリオレイア亜種が増えて、ネルギガンテの救難信号が多かった時期もありました。
辻本:上位に行って作りたくなる装備ですからね、ネルギガンテ装備は。
西岡:土日だとまたクエスト傾向が変わりますよね。
徳田:週末だと、いろいろな人がプレイしているので、さまざまなクエストが貼られています。
藤岡:僕も週末に友人とゾラ・マグダラオスをやっていたとき、フレンドが初見だったんですけど、クエスト中に知らない人が入ってきて、全部の採掘位置をサインで教えてくれたんですよ。もう、そのプレイヤーを捜すゲームになっていましたね(笑)。
徳田:自分もリオレウスの火竜の紅玉が欲しくて救難信号を出すんですけど、人気ですからけっこう人が来るんですよ。そのなかで海外の、たぶん香港かな、その人がめちゃくちゃうまかったんです。落石とか全部使うんですよ。僕も狙っているんですけど、それよりもさらに早くて。最後にギルドカードを送っておきました(笑)。
西岡:そういえば、クエストが貼られてなくても、自分で貼ると集会エリアにいる人が入ってきますよね。
辻本:来ますね。
藤岡:待っているんでしょうね。誰か貼らないかなあって。
西岡:ちなみに僕、アンジャナフの蛮顎竜の宝玉がまだ出たことないです。全然出ない、クエストを何十回もしてるのに。だから早食いの護石の強化ができないんです。ちゃんとレイギエナの「幸運」装備なのに。
徳田:それで力尽きていたらまずいですよ(笑)。
西岡:電撃PSの記事で行った検証で、「幸運」が発動していると、平均で2~3枠多く素材が出ると書いてあって即作りましたね。ネルギガンテ装備の、胴と腰装備がちょっといい感じじゃないですか。それと組み合わせてます。そして特殊装具は追い剥ぎの装衣です。
辻本:!?
徳田:幸運装備で追い剥ぎって結構やばいですよ(笑)。
西岡:力尽きてないから大丈夫です! それに片方はあれですよ、癒しの煙筒にしていますよ!
辻本:むしろそっちは当たり前ですよ(笑)。
藤岡:なんでそれをあとに言っちゃったんですか(笑)。
徳田:癒しの煙筒はマルチで人気ですね。ちょっと離れたところに置いてくれたりとか、想定していたとおりの遊び方をみなさんがしてくれています。
西岡:追い剥ぎの装衣は金欠のために仕方なくなんです。お金、けっこう足りなくなりますよね?
徳田:上位でいろんな武器防具を作ったりすると、お金のサイクルを考えないといけないバランスにしています。でも序盤は以前よりもお金には困らないようにしました。
西岡:オトモ装備と特殊装具の組み合わせを考えると幅が出て楽しいですよね。
徳田:いろんな装備で幅ができるようにしたかったので、そのあたりは横の遊びの広がりの1つですね。
西岡:挑発の装衣を着てモンスターを引き付けたりとか。
徳田:ターゲットとなるモンスターと別のモンスターを連れてきて、縄張り争いを起こさせたりとかですね。
辻本:それうまくいくとカッコいいなあ。
徳田:マルチでは環境利用するため、モンスターを特定のエリアに移動させるのにも挑発の装衣が便利ですね。
徳田:ちゃんと画面右のメッセージに、環境を利用すると“縄張り争い”とか“落石”とか表示されますよね。あれで自分がやったった感が増していると思います。
西岡:回復ミツムシが便利過ぎて、最初はオトモ道具を替えないんですけど、リオレウスとかに足止めが便利だったりと、やはりいろいろな活用法があります。
徳田:あとはぶんどり刀ですね。
西岡:あ、だいたいいつもそれです!。
辻本:幸運装備に追い剥ぎの装衣にぶんどり刀って、もう恐ろしいですね(笑)。
西岡:シングルプレイならいいじゃないですか!
辻本:絶対マルチでもそうでしょ(笑)。
西岡:でも、マルチでも追い剥ぎを使う人いますよね?
徳田:うまい人が使うぶんにはいいんですよ。換金アイテムがぽろぽろ落ちて、みんな恩恵に預かれますから。
西岡:あれ、追い剥ぎって周りにも効果あるんですか?
徳田:今まで知らずに使ってたんですか(笑)? 幸運は周りのプレイヤーに効果がないですけれど、追い剥ぎで落ちる換金アイテムはみんな拾えますよ。
西岡:それは素晴らしいじゃないですか!
辻本:じゃあ今まで自分のためだけに追い剥ぎの装衣を使ってたんですか?
西岡:はい(笑)。結果的にいいことしてた!
藤岡:この人、恐ろしいわ(笑)。
日本と海外のプレイヤーで異なる人気武器種とは?
西岡:3月22日のアップデートでは、イビルジョー以外に、武器種ごとの調整などのリファインが実施されました。
辻本:アップデートでは、いろいろ遊んできた人もさらに遊べるようにというのを重視しました。
藤岡:ユーザー不利益になる部分については、メンテナンスしないとユーザーさんに申し訳ないので即対応します。ただ、ユーザーさんの反応を見て武器の優劣をいじるというようなことはしていないですね。
徳田:計算ミスなどが発生している部分があったので、そういうのは本来の意図通りに調整しています。調整はアップデートのタイミングでやることもありますし、もっと早く対応するものもありますよ。
藤岡:強いという評判を聞いて防具とかそろえた人もいるので、どこまで丸めるかとか逆にどこを伸ばすかは慎重に検討します。ゲームデザインが想定していないほうに向かっている部分は調整していく方針です。たくさん遊んでいる人に不利益にならないようにはしています。
▲3月22日に実施された無料大型アップデート第1弾ではイビルジョーの追加のほか、各種武器種が調整された。 |
西岡:武器種では、チャージアックスとか人気ですよね。
徳田:とくに海外プレイヤーの人気が高いですね。欧米の人は一発が大きくて派手なものを好む傾向にあります。日本は太刀や双剣など、手数が豊富な武器が人気です。
辻本:日本だと太刀ですかね、一番人気は。
西岡:海外だといちからのスタートの人も多いですからね。日本だとチャージアックスは操作が複雑なので、一度も使ってないという人もいます。
辻本:初めてプレイする人はそういう考えがないですね。むしろチャージアックスを一番使いこなせたりしてます。
徳田:わざわざ初期武器から変えてチャージアックスを選んでいますね。見た目で強そうというのが大きいのかもしれません。海外の動画配信者とか、けっこうチャージアックスを使いこなしていますね。
藤岡:今回はダメージの数値も出るので狙いどころがわかりますよね。これ当てればダメージがでかいって。
辻本:日本では若い人とか女性の方はガードがないスタイリッシュなものを好みますね。太刀とか双剣とか。とくに今回、双剣が増えています。
西岡:『モンハンワールド』の武器種の調整は、全体的にアッパーな調整ですよね?
徳田:そうですね。ゲーム自体がシームレスになっているので、アクションもその武器らしさを損なわないようにかつシームレスにつながるのを突き詰めました。
西岡:印象としてはどれかが強いって感じではなく、どの武器種も強いって感じがしますね。
徳田:いくつか想定していない数値が入っているものがあるので、そのへんは修正したりしますが、結果的にならされていると思います。
西岡:『モンハンワールド』で特徴的なのが環境利用ですが、マルチでも活用するケースが多い印象です。
徳田:みなさんやってくれていますね。ある程度ゲームの進行度が進んでいる方だと使いこなせるようになっていて、それを見た人がまた覚えていくという感じで。スリンガーとかもかなりの人が利用しているので、狩りの仕方がだいぶ変わったかなと思います。
藤岡:日本ではスリンガーを使うことが広まるのはもう少しゆっくりと思っていましたが、意外と早かったですね。
徳田:ベータテストで慣れてくれたからかもしれないですね。楔虫での移動とかもちゃんと使ってくれています。
藤岡:スリンガ―の使い方はいろいろあります。リオレウスとかもスリンガーで攻撃すると高度を下げるなどあるので、いろいろと試してみるといいと思います。
徳田:リオレウスは、翼を部位破壊すると飛びにくくなったりもするので、まずは役割分担をしながら翼を壊すのが大事ですね。ダウンしたときなど、みんな頭に行きがちですが、そこを我慢して翼を破壊しておくと、その後が立ち回りやすくなります。
西岡:ヒカリゴケとかも拾っておくと役に立ちますしね。
藤岡:飛行しているリオレウスの頭にヒカリゴケを2発当てると地上に落ちますからね。ちょっとした知識が、けっこう狩りに影響してきます。リオレウスに会う前にヒカリゴケを採取しておくとか、出会う前のルートとかも工夫しがいがありますよ。
徳田:その場にあるものを利用してほしいというコンセプトをうまくやってくれればと思います。
辻本:そういう現地調達をみんな見てマネしていくとだんだん広がっていきますよね。
バゼルギウスは争う音を聞いて野次馬のように襲来!?
西岡:『モンハンワールド』をクリアして、今まで下位と上位のクエストが明確に分かれていたのが、物語を通して自然に移行していくのが画期的だなと思いました。
徳田:ストーリーの評価でも、今までモンスターを狩る理由が明確ではなかったけど、今回はわかりやすく入りやすくなったと言ってくれる人が増えましたね。
藤岡:今までの設計だと上位は自分との闘いだったんですが、今回はストーリーラインを引きつつ展開を作っていきました。そういうのが今までよりもすごく思い切ってデザインできたのがよかったですね。
西岡:今回、下位、上位ってあまり意識しないですよね。
徳田:同じことをもう1回繰り返しという感じはだいぶ薄れたかと思います。
藤岡:設計上、繰り返しという面はあるんですけど、それ以上に上位にしかいないモンスターもいるし、そう感じさせない作りにはできたかなと思います。
西岡:そうですね。ところで上位のバゼルギウスが……もう(笑)。どこにでも出てきますよね?
徳田:あいつは争っている音を感知する特性を持っているモンスターなので、どこにでもやって来ます(笑)。
西岡:野次馬じゃないですかそれ(笑)。
藤岡:なんやなんや、俺も混ぜろって来ます(笑)。
西岡:歴戦個体バゼルギウス2頭のクエスト“爆ぜる鱗を超えた道”では、すごい勢いでお互い傷つけあってますよね。放置してみたらどっちかが足を引きずり始めました。マルチだとクエスト失敗することが多いのに。
徳田:バゼルギウスは爆発を見定めて近づかないと危険な存在で、上位全体のプレイ感覚を変える存在です。『MH3(tri-)』のイビルジョーと同じですね。どこにでも出てくるから空を飛ぶというところまで決めていて、爆破属性にしました。そのため、上位ではスリンガーこやし弾が必須になってきますよね。
西岡:バゼルギウスはBGMも特徴的ですよね。
藤岡:作曲者が、飛来してくる感じとか、唐突に来る感じがイメージにあったようで、それを曲にまとめてくれました。曲の入りがすごい特徴的でみんな曲が聞こえるとハッとなるようなものに仕上がっています。「あいつや! 来た!」って(笑)。
歴代のシリーズで作曲された方とかに話を聞いてみたら、ルールというかコード進行とかでこれまであまりやらなかったことを取り入れたらしいんですよ。バゼルギウスの曲は、そのタブーに踏み込んだ作りになっていて「よく許したね」って言われました。個人的には個性的だし、いいかなって思っています。目立ちますよね。
西岡:冒頭の部分がとても印象的ですよ。だから曲が変わるとすぐ気づきます。
藤岡:テストプレイしてもらった人たちも言っていました。あの曲が耳について離れないって。
西岡:上位に入ってすぐの痕跡集めは、チェンジオブペースじゃないですが、遊ぶリズムが変わりますよね。
徳田:上位に入ってからの痕跡集めは、ちょっと賛否両論だと認識しています。そこまでと同じように任務でクエストに行くという形は作れたんですけど、『モンハンワールド』だと探索にも面白みがあるので、探索をしてもクエストに行っても何かすれば痕跡値が集まって、それを繰り返して次の任務に行けるという形にしました。そういう自由度の高さを入れてみたかったんですけど、放り出された感を覚えた人もいたようです。
藤岡:ただ、そこで初めて探索に行ってテトルーの存在に気づく人や、環境生物探しにハマる人がいたりもするようなので、いい感じに呼び水になってくれていたらいいなと思いますね。
西岡:あそこって真っ正直に痕跡を集めないといけないと思っている人もいるような気がします。クエストクリアでもゲージはたまっていきますよね。痕跡集めをやらされていると感じた人もいたのかもしれませんね。
辻本:開拓していく感じのほうが「探索」の意味合いとしては強いんですけどね。
藤岡:自由度の高い設計思想ですからね。下位は1本の道筋に沿って進めていますが、上位に入ったらちょっと選択させる遊びを入れていこうと考えていました。
古龍、亜種そして歴戦個体制作の秘密
西岡:上位終盤で3種の古龍を討伐しますが、ヴァルハザクは瘴気の谷の特徴を生かしたモンスターという印象が強いです。デザイン上も意識したのでしょうか?
徳田:瘴気の谷の主というか「瘴気と共生関係にある存在で力強いモンスターは?」と考えたときに、あそこまで環境に影響を与えるなら古龍しかいないだろうと。そしてネルギガンテも含めて4種の古龍を任務で討伐していく形に。最後を古龍で〆ようというのは開発当初から決めていたことで、ストーリー上も古龍を追う物語なので、調査を進めていって古龍に出会う形にしました。
辻本:急に来るよね、古龍ラッシュ。
藤岡:クシャルダオラとテオ・テスカトルはシリーズを通して人気のモンスターなので出そうと考えていて、そこにもう1種くらい土地に特化した古龍がほしいなと考えました。瘴気の谷が個性的だったので、瘴気をガンガン使うモンスターにしようと。ああいった生態のモンスターって瘴気の谷みたいなフィールドじゃないと存在感がないので、瘴気の谷の主を古龍にしようとしました。
西岡:編集部ではクシャルダオラを苦手としているメンバーが多いんですよね。
徳田:人によって苦手な古龍が変わるんですよ。クシャルダオラは風圧で動けなくするので、龍封力で風を弱めたりスリンガー閃光弾や乗りをうまく使う人はそんなに苦労しないようです。逆にヴァルハザクやテオが苦手って人もいますね。
西岡:テオは怖いですね。辻本さんが「テオに会ったらよく見てください!」と言っていたのがわかりました。
辻本:だって無茶苦茶するもん、あいつ(笑)。
藤岡:めちゃくちゃしてる感じはありますね。マグマが出ている場所だとどれがテオの攻撃かわからないくらい。
徳田:あの古龍たちは本当にグラフィックとして表現が進んでいるからハンターが弱く見えるんです。こんなやつに挑むなんて、ハンターってなんなんだって思うくらい。あそこまでできると、ゲームとしてもチャレンジャブルなものにしたいと切磋琢磨できた感覚はありました。
▲モンスターの屍が集まる瘴気の谷で、主として君臨するヴァルハザク。瘴気と共生関係にあり、ボロボロの布切れのような不気味なフォルムから屍套龍とも呼ばれる。 |
西岡:今までに出てきたモンスターも本当に生まれ変わってますよね、キリンとかも。
藤岡:キリンはデザイン面でも神秘的な感じを今の表現で出してみたいなと思って、毛並みとかバッサーって増やして揺れたりするんですけど、実はデザイナーが開発中に数値を間違えて毛並みが立っていたんですよ。それが意外とカッコいいなと思って、帯電したときに毛を立たせようってことになりました。
西岡:自分はキリン苦手です(笑)。とくに剣士で挑んだときはキツイですよね。
徳田:下位のキリンを討伐して耐雷の装衣を手に入れて、それを着て挑めば剣士はぐっと狩りやすくなりますね。藤岡:表現的にも遊び的にもワンランク上げたいモンスターがいて、キリンはその1頭でした。
西岡:ワンランク上げるという意味では亜種も?
藤岡:とりあえず亜種を全部出そうって思ったわけではなく、遊びの展開として亜種という存在が出てきたりとか、調査団ですらあまり見たことがないものが出てくるっていうのはストーリー的にも作りやすかったです。
藤岡:亜種は、通常種の持つ特徴的な部分や肉質とかをピーキーにして、しっかり弱点を狙うとか行動を見定めていかないと難しい、けれど見極めると攻略がはまりやすい。例えばリオレウスだったら亜種は通常種よりも飛ぶようになっていたりとか、つなげてアクションを繰り出してくる部分だったりをフォーカスしています。
徳田:リオレウスで最初にスリンガーを交えた攻略をどうするのかというのを、ゲームデザイナーが作っていました。あまり要求しすぎるとマスト化しすぎてしまう。下位にも出てくるリオレウスの段階で、スリンガーを使った攻略を要求しすぎるのはどうかということで、通常種はある程度こちらに寄ってくるようにしました。そういうピーキーなネタは、プレイヤーが攻略を考えられる段階になっているだろう亜種の方に持っていっています。
藤岡:モンスターはモンスターで自分の展開を押し付けてくるので、そこに対応して自分の展開にもっていかないと厳しいというのが亜種全般の設計ですね。
西岡:歴戦個体はどんな位置づけなのでしょうか?
徳田:モンスターって1つ数値を変えるだけで急に遊びごたえが変わってくるんですよ。その部分をちょっといじってエンドコンテンツとしての意味合いを持たせています。
あと、生態系をしっかり作っているので、新大陸という古龍のエネルギーが満ちているなか、長く生きてきた個体は当然強い個体だろうと。古龍のエネルギーを浴び続けていますし。そういう個体がいてもおかしくないし、出会ってみたいよねというのもあります。
藤岡:終盤に古龍がわんさか出てきたときに、なんでこんな個体がごろごろいるのかという話になってきて、古龍がわんさかいる環境なら強力な飛竜とかもいるだろうと。1個ボトルキャップがはずれたときに、そういう強力な個体が出てくると謎も深まるだろうと用意しました。
ストーリーとNPCで語られる『モンハンワールド』の物語
西岡:ストーリーもかなり反響があったのでは?
藤岡:モンスターをただの敵ではなく、生態系に自分たちがどうかかわっていくかと調査団員の口から出てくるのが『モンハンワールド』の世界観を感じられていいって声がありました。
徳田:発売の2日後に台湾でイベントをやったとき、すでにクリアしている人がいたんですよ。その人がこっちに来てみんなに聞こえないように「後半の古龍の物語がすばらしくて、俺、初めて『モンハン』で泣いてました」って言われて、その人と抱き合いましたね(笑)。
西岡:演出、グラフィック、ぐっと来ますよね。
藤岡:キャラクターが感情表現できるっていうのが大きかったです。今まではどうしても言葉で伝えることを極力抑えた映像にしていたんですよ。動きだったり、動作で表現して。ただ、今回は表現で語ることができたので、そこにあわせて映像を作れたのが大きかったです。
西岡:受付嬢と一緒に物語を進めていく感が強いですね。
徳田:自分で探索して見つけていく感じを出したかったんですけど、それだけではストーリーを語るものがなかったんです。そこに受付嬢がいることで、彼女の目線からストーリーや感情を語れるのが大きかったですね。じつはアクティブ受付嬢というのが、本作の受付嬢の開発でのキャッチコピーみたいなものになっていました。
西岡:NPCと言えばソードマスターが好きです。
藤岡:けっこういろんな人に言われます。『MHP2ndG』のオープニングの人じゃないかって考察も上がってたりして。ユーザーのみなさんがそういう想像をしてくれるのはうれしいですよね。
辻本:あとは『MH4』の筆頭ルーキーが、陽気な推薦組と同一人物とかね。
藤岡:個人的にも、ああいう世界観のつながりを感じられる要素は好きですね。
西岡:時間軸として『モンハンワールド』は、今までの『モンハン』よりもあとの話になるのでしょうか?
藤岡:これまで世界の時間軸を深くは設定していないんですけど、ああいう見たことのあるキャラが出てくるなら同じ時間軸のちょっと先の話ではないでしょうか。ただ、あまり時間軸の設定は感じさせたくありません。
徳田:時間軸を意識させてしまうと、過去作をプレイしていないと楽しめないのかと誤解されてしまいますから。あとは共通の時間軸として設定すると、登場するものだけでなく新作に登場しないものも含めて細かく設定しなければいけないので、自由度が狭まってしまいますし。
西岡:みなさん、好きなNPCとかはいるんですか?
藤岡:僕はフィールドマスターとか3期団の団長です。
辻本:僕もフィールドマスターが好きです。マスクをつけてるときにすごいイケメンが出てきたと思ったら、おばあちゃんだったときのギャップ。
藤岡:辻本は、ほかにも竜人族のハンターがカッコいいって言ってます。
辻本:カッコいいのは竜人族のハンター。でも好きなのはフィールドマスターです(笑)。
藤岡:あとイベントには出てこないけれど、調査資源管理所の3人組。なかでも物資班リーダーに話しかけるのがお気に入りです。「あらぁ」とかカラっとした感じが好きなんですよ。
西岡:僕は調査班の前でなにか物色している女の人の後ろ姿が好きですね(笑)。しゃがんだり中腰になったりしているのをよく見てます。
藤岡:ストーカーじゃないですか(笑)。
辻本:そういえば受付嬢をストーキングしてみたなんて動画をあげるプレイヤーもいました。
藤岡:受付嬢はいろいろしています。支給品ボックスガサガサしてたりリンゴを食べていたり。それでこっちが帰ったのに気づくとハッてこっちを向く。いろんな細かいことをさせてます。フィールドにもついてくるのに立っているだけだと人間味がありません。それがイヤだったので、ベースキャンプでいろいろ動くようにしています。見ているとおもしろいですよ。
西岡:拠点でもよく見ると、いろいろ食べてますよね。
藤岡:あの子は大食漢なので(笑)。最初から最後まで本当によく食べています。
西岡:それだけ栄養取っていたらモンスターが狩れそう。
藤岡:座右の銘が「迷ったら喰ってみろ」ですからね。最強の胃袋をしていると思います(笑)。
西岡:徳田さんの好きなキャラは?
徳田:自分もフィールドマスターですね。
藤岡:みんなかぶってる(笑)。
徳田:『モンハンワールド』で一番大切だと思うセリフを彼女が言ってくれているのでお気に入りです。
西岡:好きなシーンとセットということでしょうか?
徳田:そうですね。瘴気の谷自体が今までずっと作りたかった“竜の墓場”なんです。『MH4』とかでも企画はしましたけれど、ゲーム性とあわなくてボツになったりしています。
もっと言うと子どものころに見た“象の墓場”だとか、クジラが死んだら鯨骨生物群集ですか、10年くらいそこを中心に新しい生態系が生まれる現象があって。クジラでそうだったら古龍の場合、そこはどういった場所になるだろうというのが、今回の瘴気の谷とか新大陸全体を描く原点になります。
フィールドマスターは瘴気の谷を含めた新大陸がどういった場所であるかを語ってもらうためのキャラクターなんです。だから、自分の作りたかったものを代弁してくれる存在としてフィールドマスターは気に入っています。
西岡:辻本さんと藤岡さんの好きなシーンは?
辻本:僕は竜人族のハンターが歩いてきて、痕跡を追っている話をしてくれるシーンですね。
藤岡:僕はイベントカットを作っていた側だからすべてに思い出があります。苦労したなあって。こういうゲームの作り方をしたのが初めてだったので。
どれも思い入れが強いけれど、ゾラ・マグダラオスの捕獲作戦かな。ああいった大人数が動くシーンを作るのって本当に大変だったんです。しっかりとしたライティングで絵づくりをするのも初めてに近かったですし。そのぶん、さっき話に出たフィールドマスターが生態系を語っている部分とか、物語の大事な部分をNPCが語っているシーンは全部好きですし、3期団のリーダーのちょっとふわっとしたこと言っているのも心に残りますね。
西岡:3期団のリーダーは、なんかわかっている感が強いキャラですよね。
藤岡:個性的です。まあ、個性的といえば最後に出てくる1期団のアイツも強烈です(笑)。一番強そうなのが最後に出てくる。
西岡:大団長ですね。もうプレイヤーの代わりに古龍でも狩ってしまいそうなインパクトです。
辻本:カプコンらしいキャラだよね(笑)。
藤岡:そうですね。最後の最後にあんなカプコンキャラが(笑)。デザインがあがってくるのも早かったですね。あいつ、じつはスリンガーを使わないんですよ。腕にロープをまいているだけで。
▲1期団のメンバーでハンター兼編纂者のフィールドマスター。彼女が出した答えは、新大陸は瘴気の谷を墓場とし、生命のサイクルを生み出す生態系を形成していることだった。 |
西岡:なんかかっこよくないですか?
藤岡:ロープまいてクナイみたいなのを投げるんですよ。
西岡:個性的すぎる(笑)。
藤岡:スリンガーを使わずに腕力でなんとかしています。
徳田:ソードマスターもスリンガーを使わないですね。導蟲も持っていません。装備も昔のもので、剣士しか装備できないものなんですよ。
西岡:じゃあガンナーできないですね。
藤岡:ソードマスターですから(笑)。
西岡:ゾラ・マグダラオス捕獲作戦でネルギガンテに向かっていったときはシビレましたね。
藤岡:最大の見せ場です。あそこしかほぼ出番ないけど。
西岡:加工屋に話しかけると、ソードマスターが旧式の装備を使っているとか話してくれますよね。あと、なんで剣士とガンナーの装備が一緒になっているかとか。
藤岡:そうですね。そういう設定を、セリフを書いている人がいろんなところに散らしてくれました。1人にまとめてしゃべらせてしまうと押し付けになってしまいますが、散らしてあることであの人そんな人なんだ、と自然と感じ取れるようになっています。よく話しかけるプレイヤーは細かな設定を知ることができると。
徳田:加工屋以外に、ほかの人もいろいろと設定を語ってくれています。
西岡:それはイチからやり直さないといけませんねぇ。特定のタイミング限定のセリフもありそうだし。
藤岡:受付嬢も、なぜ新大陸に来たのかを語るとことがありますからね。
西岡:ちゃんとやろう。やりなおそう。駆け足でプレイしてきちゃいました。
藤岡:キャラクリからやり直してください(笑)
徳田:見逃しがちなキャラといえば、5期団の仲間。最初の二等マイハウスにいるので、マイハウスを引っ越しちゃうと行かなくなっちゃうんですよ。彼らもそれなりに語っているけれど、見逃しやすいですね。
西岡:あの2人、仲がよさそうで最初疎外感あるんですよ。シェアハウスで仲いいカップルと同居してるみたいで。こっちのこと邪魔なんだろうなあって思ってました。
徳田:有無を言わさずフンコロガシとか置いちゃえばいいんですよ(笑)。
西岡:だから早く一等マイハウスに行こうって思ってました。でも、彼らも大事な会話をしてるんですね。
古龍と生態系というテーマで描かれた新大陸のフィールド
西岡:龍結晶の地はほかのフィールドと比べてかなり特殊ですが、どういった意図で作られたのでしょう?
藤岡:古龍をテーマにストーリーを描きたかったというのが理由の1つです。だいたい今までの展開だと最後は火山だったり雪山だったりするんですけど「見たことがない場所ってなんだろう?」「古龍ばかりがいる場所ってどんなところだろう?」ということを想像してみました。
ただ「できあがったフィールドにどんな意味があるのか?」と考えたときにもっと説得力が必要で「古龍が死んだときに生まれるエネルギーが結晶化するという理屈があれば、あんなフィールドがあってもおかしくないな」と。古龍が集まる場所なら生命エネルギーもすごいので、モンスターが強いというのも納得できますよね。
徳田:瘴気の谷で死んだモンスターが堆積した場所ってどうなんだろうという想像しました。そういった場所は、現実世界では砕けたサンゴ礁で砂浜ができたりしているわけです。それを古龍に置き換えて死体とかエネルギーが詰まった場所としてイメージをふくらませました。
藤岡:行けない場所を1つ通り抜けた先に、見たことのない空間が広がっていたら想像力がふくらむと思うんです。
陸珊瑚の台地にたどりついたときもそうだったと思います。「なんやここ」ってなりますよね。そこまで、結構現実にあるもので構成されていたフィールドが急に不思議な空間になって、でもそこにもちゃんと説得力があって独自の生態系がある。それを実感しながら瘴気の谷まで降りていくと、さらにその先には見たことない場所がある。
1つ知らない世界に入っていくというのを陸珊瑚の台地だけでなくもう1回やりたかったので、結晶がそこらじゅうにあるインパクトのある場所で、古龍ばっかりいるのは謎めいていますよね。
西岡:ちなみに古龍まで含めた生態系のなかで、ネルギガンテは異端の存在なんでしょうか?
藤岡:今回、古龍渡りがあったからネルギガンテも古龍を追ってきた。広い意味でいうと、みんなストーリーの最後に登場するモンスターに引き寄せられているんですけれど、ネルギガンテは古龍を追いかけた結果、龍結晶の地に住み着いてしまった。
徳田:ネルギガンテは強いエネルギーを持つものを追いかける性質があり、それで古龍を狙っています。今回ターゲットになったのがゾラ・マグダラオスですね。ただ、ゾラ・マグダラオスがいなくなり、新たな問題が出てきたというのがストーリーのラストの展開です。
藤岡:ネルギガンテは龍結晶の地に住み着いてガジャブーを追い出します。だからネルギガンテが住み着いているところは、もともとガジャブーの巣だったんですよ。
西岡:あ、そうだったんですね。
藤岡:追い出されちゃったから、ガジャブーはいろんなフィールドに出てきちゃったんです。ガジャブーは本来龍結晶の地に住んでいる獣人で、あいつらなりのルートを持っています。だから仲よくなるといろいろ裏ルートとか教えてもらえるようになりますよ。
西岡:知らないことが多いなぁ。
藤岡:ほかにはフィールドのいろんなところに壁画がありますよね。あれは古代竜人が描いたものです。古代竜人って独自のネットワークを持っているんですよ。いろんな情報伝達の手段を持っていて、その1つが壁画ですね。未開の地だから人の手が入っていない場所でも幾何学模様があるとおもしろいですよね。
あの壁画は、じつはプレイヤーたちのことを描いているんですよ。ハンターが来たとか、ゾラ・マグダラオスが来たとか。記号になっているのでどこまでわかるかはわかりませんが、古代竜人が、今起こっていることを描いています。
▲“古代樹の森”の絵 |
▲“瘴気の谷”の絵 |
『モンハンワールド』がこれから先目指すもの
西岡:最後になりますが『モンハンワールド』は新しいシリーズのスタンダードとしてつながっていくと思うのですが、単体のタイトルではなく、これからつながるシリーズに触れたという感覚はあると思いますか?
藤岡:どうなっていくかはわからないですが、『モンハン』を知っているけれど触っていなかった人は『モンハンワールド』で『モンハン』に触れたという感覚はあると思います。そうすると中毒性が出てくるゲームだと思うので、楽しさに気づいてもらえる可能性は高いと思いますね。
逆に何も知らずに『モンハンワールド』に触れた人でオンラインゲームも初という人にとっても大事なタイトルになると思います。初めてハマったオンラインゲームって、自分のなかで大事なゲームになりますから。人とコミュニケーションを取りながら遊び続けるゲームって心に残るゲームになると思うので、そうなってくれれば日本のように根強いファンも増えると思います。
今回、プレイヤーの数が大きく増えたので、そういったファンが生まれる可能性は高く、そうすると今後グローバルで展開しやすくなっていくんじゃないかなと思います。
辻本:海外だとマルチでアクションに触れたことがない人は多いと思うので、そこに刺さると思いますね。
藤岡:たまに海外メディアであがっているインプレッションを見ると「なんで今までやったことなかったんだろう」という感想とかありますね。結局そういう人が言っている『モンハンワールド』の魅力って、中毒性だったりレベルデザインだったり、今までのシリーズタイトルにもあった部分が多いんですよ。自分が目的を持って進めるとか、レベルに縛られないとか。
今回の主軸はそういった『モンハン』の魅力にいかに多くの人を到達させるかにあったので、そういう意味では『モンハンワールド』を多くの人が触れてくれて『モンハン』のおもしろさがわかってもらえたんじゃないかなと考えています。そうすると中毒性が出てくるので、過去作もやってみようかなと思ってもらえるとうれしいし、評判いいからやってみようと思ってもらってもいいですし、次回作を待ってもらってもうれしいです。
そういう人がほめているのって、絵がどうこうとか生態系がどうこうとかあるにせよ、それはこれまでの『モンハン』でも描いてきたことでした。それを『モンハンワールド』でよりディープに描けているから伝わりやすかったのかなと思います。
辻本:あとワールドワイドで同時発売できたというのも大きいかなと思います。同じペースで海外の人たちも遊ぶことができましたからね。
徳田:日本の人の遊び方としてはコンテンツの消費が激しいほうですけど、海外の方はこれからよりじっくり遊んで行ってくれると思うので、まだまだイベントクエストも含めて、話題にあがっていくと思います。
西岡:狩王決定戦を日本以外で実施する予定は?
藤岡:海外でも大会をやって世界一を決定とかやりたいとは思っているんですよね。『ワールド』って名前ですし。ただ現段階では決まっていません。
西岡:これだけのものが出てきて、次はどんなテンポで新しい『モンハン』が遊べるか気になります。
辻本:西岡さん気が早い(笑)。
西岡:今まで1年に1本くらい出てきましたからね。
藤岡:準備を含めて開発に3~4年かけてますからね、今回。でもどうなんでしょう。実際作り出してからは無茶苦茶長い期間をかけたわけではないんです。『MH4』とかでも似たような開発スケジュールでした。ただ、4月にもアップデートを予定しているように、『モンハンワールド』自体の展開もまだまだ用意しています。
辻本:最後に個人的なコメントをいいですか? 4月8日に『モンハン』シリーズがとてもお世話になったお店「ゲームズマーヤ」さんが閉店されます。自分のかかわったタイトルの発売日には毎回お伺いさせていただき、お客さまと秋谷店長のやりとりを見るのが楽しみだったのですが、それができなくなるのが寂しいです。『モンハン』初代からこのタイトルを応援してくださった秋谷店長には本当に感謝の気持ちしかありません。「秋谷さん、今まで本当にありがとうございました!!!」
西岡:いやもう本当にありがとうございます。僕たちがこんなに楽しく『モンハンワールド』を遊べるのはみなさんのおかげです(笑)。
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