News

2018年6月13日(水)

『ロックマン11』最新作にかける意気込みとは!? 開発スタッフがゲームデザインや表現について語る【E3 2018】

文:る~ぱ

 10月4日にカプコンから発売されるPS4/Nintendo Switch/Xbox One/PC用ソフト『ロックマン11 運命の歯車!!』。本作の開発者インタビューをお届けします。

『ロックマン11 運命の歯車!!』

 本作は、誕生から30周年を迎えた『ロックマン』シリーズの最新作。2017年12月にタイトルがアナウンスされるや、世界中から大きな反響が上がりました。

 8年ぶりの最新作であり、シリーズ30周年の記念作品として、並々ならぬ意気込みで開発されている本作。今回は開発のキーマンである土屋和弘プロデューサーと小田晃嗣ディレクターに、本作へかけるアツい想いを語ってもらった。

 なお、インタビュー中は敬称略。

ファンの応援とディレクターの提案が会社を動かした!?

――まず小田さんにお聞きします。これまでにどのようなタイトルに携わってきたのでしょうか?

小田:最初はスーパーファミコンの『超魔界村』のプランナーでした。第1作『バイオハザード』ではプランナーをしています。対戦格闘ゲーム全盛期にはアーケードタイトルをコンシューマに移植したり、海外のディベロッパーと組んで逆輸入したり、手広く行ってきました。

 いろいろなタイトルにかかわっているのですが、歴史のある『ロックマン』シリーズにかかわるのは本作が初めてになります。

『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲ディレクターの小田さん。これまでにさまざまなタイトルにかかわっていたが、『ロックマン』とは縁がなかったという。

――本作の企画がスタートしたキッカケは?

土屋:小田が手掛けていた『バイオハザード0 HD REMASTER』の製作が終盤に差し掛かり、次を考えていた時に小田から「『ロックマン』を作りたい」という声が出ました。シリーズ30周年が近づいてきていたうえに、ファンからの要望が多い人気シリーズ。「カプコンとしてはそれらの期待に応える義務があるのではないか! 作る責任があるのではないか!」とプレゼンを受けましたね。

 『ロックマン クラシックス コレクション』を作っている時から30周年は意識していましたし、願わくは新作を作りたい気持ちはずっとあったのですが、それを小田から提案されたのは正直意外でした。

『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲小田さんからの提案に驚いたという、プロデューサーの土屋さん。

――プロデューサーからディレクターに、というのが普通の流れだと思いますが、今回は逆だったんですね。

土屋:まさか『ロックマン』と言うとは……。ただ、ディレクションの経験値的には十分だと感じていましたし、これで企画として動き出せると確信しました。

 『ロックマン』という看板が大きすぎるため、頼まれ仕事では難しい部分があります。今回のようにディレクタークラスの人間が自ら「やりたい」と言ってくれないと進めにくい、そのぐらいのブランドがあるシリーズです。小田からの提案を受けて、大きなギアがハマったのを感じました。

――小田さんの中に、これまで秘めていた思いがあったのでしょうか?

小田:当然ですが、カプコンに入社する前は1人のゲームファンでした。弊社のタイトルでは『ロックマン』や『ヒットラーの復活 トップシークレット』などにハマりました。玉石混交、多数のゲームがリリースされていた時代において、現代のゲームにも影響を与えるアイディアが詰められたタイトルです。

 当時プレイしていた時に感動し、「こんなタイトルを作りたい」というのが入社動機の1つにあったので、チャレンジしてみたいという気持ちはずっとありました。なかなかチャンスがなかったのですが、今回ようやくタイミングが合いましたね。

――プレッシャーはなかったのですか?

小田:当然、かなりあります(笑)。ただ自分から言い出した以上、期待にこたえないといけない。当然ですが、ある程度勝算や筋道はあったのですが、それでも不安はありました。

――どんなところに勝算を感じていたのでしょうか?

『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:『ロックマン』が求められているという現状ですね。インターネットやSNSを通じてファンからの声は我々に届いています。シリーズで新作の開発は止まっていましたが、盛り込んでみたいアイディアもずっとありました。そして、我々が考えていることは、“作りたいから作る”といった独りよがりのものにならないという実感があった。これらを集約すればいいものができるという確信がありました。

――最近はインディーズゲームとして高品質なアクションゲームが多く出回っていて、人気があると感じてします。

小田:『ロックマン』シリーズを当時遊んでいた人がいるだけでなく、2Dアクションゲームを“逆に”新しいと感じる若いプレイヤーもいます。本質的なシリーズへの期待は変質しているわけではないので、その人たちの期待に応えられれば、まだまだ『ロックマン』は受け入れられると考えています。

土屋:おっしゃられたように、現在はインディーズゲームで良質な2Dアクションが多く発売されています。カプコンの海外スタッフから、これまでの2Dゲームは“懐かしい”や“昔ながら”というイメージがあったが、今はノスタルジックではない新作2Dゲームを求める若いユーザーが多いという意見を聞きました。

 これが5年前だと難しかったかもしれませんが、現在はこういった市場背景があります。ノスタルジーの一点突破で作るのはリスキーですが、新世代のユーザーに受け入れられる可能性が高いというのが理由の1つにあります。海外では「インディーズではない2Dアクションを遊んでみたい」という声も多く、広がった市場をさらに広げる必要も感じています。

 他には『ロックマン クラシックス コレクション』が100万本を突破したということもあります。それだけ支持してくれるユーザーがいる現実が、社内を納得させるリアリティになりました。そういう意味では今回はいいタイミングだったと思っています。

――ただ、横スクロールのアクションゲームを新作として現代で作るのは、難しかったのでは?

小田:苦労だらけです(苦笑)。まず、シリーズを遊んでくれているコアユーザーしか遊べないというモノにしたくなかった。ベテランの人はもちろん、新しい人にも『ロックマン』を知ってほしい。『ロックマン』の醍醐味であるプレイヤーのテクニック上達を楽しんでほしいというのがあるので、そこを損なわないようにチューニングすることに苦労しました。

――難易度を変えることで、どのような変化があるのでしょうか?

『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:こと細かにあげるとかなり違いがあります。ここですべて解説するわけにはいきませんが、大まかなところだとリトライ数やボスの行動ルーチン、ギアゲージの回復速度、その他にも細かいところで段階をつけています。また、リトライ時のチェックポイントも違っています。

土屋:一番難易度の低い“NEWCOMER”だと、画面が切り替わるたびにチェックポイントになります。また、同じところで何度もミスをしなくても先に進めるよう、徹底して調整しました。単純に攻撃力を上げる、敵の耐久力を下げるという差ではなく、ギミックに対してどうフォローすれば先に進めるか、というポイントで調整しています。

 難易度選択の際には、どのような人に最適かをきちんと画面上で説明していますので、自分に合った難易度を選んでいただければと思います。

小田:とは言え、ただただカンタンにはしていません。初めてさわった人には、その人なりの上達を感じられるようにすることに気を使いました。

――難易度のチューニングはどのように行っているのでしょうか?

小田:こればっかりは、何度も人間に遊んでもらうしかありません。可能な限りサンプルをとり、チューニングチームからの意見を反映させました。意見の中にはまったく予想していない反応もあって、作り直すことも多かったです。『ロックマン』は認知度が高いぶん、単純な難しさでは満足してもらえません。どの要素も「これが『ロックマン』として許されるのか」と自問自答しながら作り直していました。

間口を広げつつ、力量にあわせた使い方ができる“ギア”

――本作の特徴である“ギア”システムはどのような経緯から採用されたのでしょうか?

『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:『ロックマン』はシリーズを重ねてきてプレイスタイルが固まってきたと感じています。プレイ動画にはまったくスキのない、研ぎ澄まされたプレイが多いですよね。それも1つの遊び方ですが、自分のプレイスタイルとは違う、と感じる人も多いのでないでしょうか。

 自分がおもしろいと感じるプレイスタイルで遊べるのが『ロックマン』の魅力であるとも思っています。その間口を広げようと思ったのですが、単純にカンタンしてしまうとコアユーザーの楽しみを奪ってしまう。間口を広げながらもそれぞれの力量に合わせたスタイルを模索できる、かつ、初心者の人には助けになる。これらを踏まえて生み出されたのがギアシステムです。

『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲画面左上の体力ゲージの下にあるのがギアゲージ。発動すると一時的にロックマンのスピードや攻撃力が上昇する。

――周囲の移動速度が遅くなるスピードギアがすごく便利に感じましたが、これを使うことが前提のバランスになっているのでしょうか?

小田:使用を前提にはしていません。まったく使わないでクリアすることも可能です。スピードギアは使いどころが分かりやすいので最初は多用すると思いますが、慣れてくるとパワーギアが使える場面が見つかってくるハズです。

『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲スピードギアが発動すると、周囲の速度が遅くなるため、敵の攻撃やギミックに対処しやすくなる。

――パワーギアは威力が高くなる半面、反動があるなど、使いどころが難しいような気がしました。

小田:最初は威力にしか目がいきにくいので、そう感じると思います。ただ、慣れてくるとギミックや敵の攻撃を自力で対処できるようになり、スピードギアの使用頻度が下がってきます。そうするとパワーギアをどこで使えるかを意識するようになる。こちらはチューニング中、スタッフや自分のプレイから判明したことです。

 自分の中で使いどころを設定するのですが、うまくなると使いどころが増えていきます。さらに、先にパワーギアを使い、そのスキをスピードギアでフォローするといった複合的な使い方へと発展していく。その究極形としてギアを封印して遊ぶ縛りプレイなどもスタイルとしてあると思います。いろいろな遊び方を楽しんでもらえるシステムになっています。

『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲パワーギアを発動するとバスターや特殊武器の威力上昇、チャージショットが二連射になるなど、攻撃力が増加する。

――ステージのボスもギアを使うことで、これまでにはない二面性が生まれていると感じました。

『ロックマン11 運命の歯車!!』 『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:ボスの動きを読んで戦うのは『ロックマン』の基本ですが、少し味気なくも感じていました。前半と後半で動きが大きく変わることで、メリハリがつくようになりました。また、ギアという同じ能力を使ってぶつかりあうというドラマ性も演出できたと思います。

――今回体験したボスはどちらかのギアを使ってきましたが、併用するボスもいるのでしょうか?

小田:それはプレイしてのお楽しみということで(笑)。

グラフィックチームのこだわりからボスの攻撃が変化!

――グラフィックが3Dポリゴンで描写され、最近のモデルになっていますが、これは開発初期から決まっていたのでしょうか?

『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:これは私見になりますが、『ロックマン9 野望の復活!!』、『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』はファンサービスの色が強いタイトルだと思っています。そう考えると『ロックマン8 メタルヒーローズ』から20年以上が経過していますし、30周年という節目での再出発ですから、ここは現行機ならではのグラフィックに一新すべきだろうと。

 情報量を増すことで表現の幅を広げられますし、前述したインディーズタイトルのグラフィックレベルは高くなっています。このようなことを考えた結果、もう1度8bitテイストで出そうという考えには至りませんでした。

――すべてが3Dで描写されていると、少しの修正でもフィールドのいろいろなところを作り直す必要がありそうで、大変では?

小田:これならいけるかなというテストフィールドなどを作って、アーティストやプログラマに発注するのですが、そううまくはいきませんね(苦笑)。

――3Dグラフィックにすると、遊ぶ感覚が変わると思うのですが、そこについてはいかがでしょう。

『ロックマン11 運命の歯車!!』

土屋:これまでに3D表現の『ロックマン』シリーズがなかったわけではありませんが、遊びやすさという課題がありました。具体的には、昔はドットで描かれていたので距離感をつかみやすかったですし、すり足でブロックから半身乗り出すということも容易でした。

 まずは、こういった操作ができなかったことが過去の3D『ロックマン』の課題だという、仮説をたてました。そこから3Dで描かれていてもブロック単位の距離感が認識しやすいグラフィックにすることで、距離感を自然につかめるように組み立てていきました。

 また、アニメーションの考え方も『ロックマン8』のなめらかさより、『2』のきびきびとした絵を意識しています。ゲームとしてのレスポンスを重視して、いまロックマンがどういう状態なのか、記号的な意味が目に焼き付くよう、本作ならではの調整をしています。

――アートチームとのすり合わせは大変では?

小田:アートチームにも、ドット時代にできなかった表現を見せたいという思いがあります。とは言え、プレイヤーは作り手の考えとは関係なしに、直感的に指が勝手に動くような操作性を期待しています。豪華な見た目にしたことで遊びにくくなっては意味がないので、最終的に何が優先されるべきかをチームで共有し、どこを際立たせてどこを省くかを調整しました。

『ロックマン11 運命の歯車!!』 『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲グラフィック表現についてはいろいろなタイプを検討し、研究したという。

――本作で特殊武器を選ぶとロックマンの外見が変化していることに驚きました。

小田:グラフィックを刷新するにあたり、新しいデザインを見てみたい人は多いと考えました。ただ、言うは易く、行うは難しで……昔は容量の問題から色を変えて表現していましたが、本作ではそれ以外の部分も手を加えられます。ただ、特殊武器にはバスターから発射する射撃以外の動きもあるので、モーションをさらに別につける必要が出てきます。

土屋:ブロックを上から降らせる武器なら、腕を振り下ろすアクションを付けたくなるというのは、必然的な発想です。ただ、射撃のモーションを特殊武器ごとに作るのは膨大な作業量になるため、チーム内でもすったもんだがありました。あの会議はいまだに印象に残っています。

『ロックマン11 運命の歯車!!』 『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲ブロックマンの特殊武器でロックマンの腕の形状が変化。攻撃モーションも変わっている。

――グラフィックがリアルなだけに、ノーモーションで岩を降らせるのは違和感がありますよね。

小田:そのすったもんだの末にモーションができ上がったところ、「すいません、ボスの攻撃モーションが変わりました」と言われたこともありました。ボスのモーションを前提にロックマンのモーションがあるので、作り直さないといけません。もちろん、理由もなく変えるのではなく、1つ1つに理由付けをして必要だと判断した場合には工程に組み込んで進めました。

――ボスや特殊武器でお気に入りはありますか?

土屋:ノーマルショットですね。個人的な遊び方として、特殊武器を含めた攻略後にはノーマルショット縛りでプレイすることもあり、ロックマンは青い色が落ち着きます。公表していないボスや特殊武器を含めてすべて好きですが、シンプルなデザインの完成度に戻ってくる……家に帰るとホッとするような安心感があります。

『ロックマン11 運命の歯車!!』
▲ロックマンのデザイン画。

小田:同じになってしまうのですが、特定のお気に入りはなく、すべて気に入っています。過去作では使いどころが少ない特殊武器があることが気になっていました。本作の特殊武器は開発スタッフの努力の甲斐もあり、まんべんなく使えるモノになっています。

土屋:普通に遊んでいると気づかない使い方も随所に用意されているので、探し出す遊びもあると思います。

――遊ばせていただいたステージには、倒しても進めるが、あえて倒さずにザコ敵を踏み台にするギミックがありました。

『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:スタートがあってゴールがあるのは同じですが、“ゴールまでの過程”に幅を持たせています。そこに両ギアをおりまぜることで取れる攻略ルートは多岐に渡るため、プレイヤーによってどう攻略するかを考えるのもおもしろいと思います。

――さらに難易度の違いによって細分化されるわけですね。

小田:その通りです。チューニング結果には予想できたものがあれば、予想できなかったものもありました。今回はダイレクトに特殊武器を変えられるので、組み合わせによる予想外な攻略法も出てきました。バランス的に問題が出ていれば修正していますが、問題がなくて使い方がおもしろかった場合はあえて残しています。

『ロックマン』ファンと開発が納得できる作品に!

――『9』や『10』にあった“タイムアタック”や“チャレンジ”などの要素はあるのでしょうか?

『ロックマン11 運命の歯車!!』

土屋:まだ発表はしていませんが、クリアしたあとのお楽しみも用意しています。長く遊べるものに作りこんでいるので、これから順次発表させていただきます。ぜひ期待してください。

小田:ギアをはじめ、これまでにない要素を入れた結果として、使いこなすことで当初の予想を超えたテクニックが見つかりました。タイミング的に本編に組みこむことが難しかったものを、クリア後のお楽しみに採用しています。

――ということはギアが関係しているのでしょうか?

小田:詳しくは言えませんが、ギアをギアとして使わないなど、意外な方法での攻略がポイントになります。

――ダウンロードコンテンツは予定していますか?

土屋:これについてはいろいろな考え方があります。現時点で我々は、シリーズファンを待たせていたことや、30年の節目タイトルということに実直でいたいと考えています。そのためパッケージ版を買っていただければ、今我々が用意できるものはすべて楽しめるようになっています。

――最後にシリーズファンに一言お願いします。

『ロックマン11 運命の歯車!!』

小田:本当に長らく待たせてしまい、申し訳ありません。これまでいただいたファンの声をもとに、何が大事なのかをつねに考えながら開発してきました。結果、自分を含めた『ロックマン』ファンが納得できる作品ができたという自負があります。ぜひ楽しんでもらえればと思います。

土屋:完成像が見えてきている段階ですが、シリーズを待ってくれた人にとって楽しい『ロックマン』ができあがっています。2Dアクションゲームが好きな人にはすごくオススメできる内容になっているうえで、シリーズ未経験の人でも楽しいアクション体験を味わえます。発売までしばらくありますが、期待して待っていてください。よろしくお願いいたします。

(C)CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.

データ

▼『ロックマン11 運命の歯車!!』
■メーカー:カプコン
■対応機種:PC
■ジャンル:アクション
■発売日:2018年10月4日
■希望小売価格:4,620円+税

関連サイト