2018年8月2日(木)
『神獄塔 メアリスケルター2』の物語は前作と似ていながら致命的に歪んでいる!?【電撃PS】
コンパイルハートより好評発売中の『神獄塔 メアリスケルター2(メアリ2)』。本作では、前作『神獄塔 メアリスケルター(メアリ1)』と似て非なる物語が展開されます。
新たに加わった主人公・つうに、『メアリ1』では死んでいたはずの人魚姫の存在など、さまざまな点が異なっているのは既に判明しているとおり。ですが、2人の血式少女の登場が物語にどう影響しているのかは、前日譚やストーリーなどに分けて少しずつ語られているのみです。
そこで本記事では電撃PlayStation編集部が、『メアリ1』と『メアリ2』のストーリーの共通点および相違点を、両者の前日譚に焦点をあててお届けしていきます。
『神獄塔 メアリスケルター2』発売直前連載企画 バックナンバー
血式少女たちに用意された舞台は、すべて同じ!?
『メアリ1』『メアリ2』は、どちらも名前さえ忘れられた元大都市が舞台。両舞台ともに地面が陥没して周囲から隔絶されています。そして、陥没した都市の中央にある監獄塔には“独房エリア”という人間を捕らえる施設があり、そのなかでは捕らわれた人々が日夜拷問を受けています。
一方でメルヒェンの脅威から残された人々の一部は、“黎明”という組織を結成。監獄塔に住まう怪物・メルヒェンから人間を守るため活動を行っています。黎明の対メルヒェンの主戦力となっているのは、“血式少女”という不思議な力を持つ少女たち。彼女たちはメルヒェンの血を浴びると、その能力を飛躍的に高めることができます。
このように、『メアリ1』『メアリ2』で共通している点を挙げればキリがありません。両者の世界観は同じと言っていいでしょう。また、血式少女の年齢や、どちらもアリスとジャックが血式少女によって助けられるところから物語が始まる点を考えると『メアリ1』と『メアリ2』は同じ時間軸を描いている話のようです。
最初のずれは、人魚姫の運命
さて、同じ舞台で同じ時間軸を描いていると思われる2つの世界。ですが、もちろん描かれる物語は大きく異なります。そのすべてのきっかけとなるのは、公式サイトで公開中の前日譚。ここで『メアリ2』にのみ、つうという少女が現れたことがその後の物語を変えていきます。
まず最初の変化となるのは、赤ずきんを中心とした黎明のメンバーが人魚姫(『メアリ2』ではつうと人魚姫)を発見するシーン。与えられた血式武器の性能に喜びながら10体のメルヒェンを倒していることから、『メアリ1』『メアリ2』のどちらも同じ時期と言ってよいでしょう。
このとき『メアリ1』ではメルヒェンを倒したあと人間と思しき声を聞いた赤ずきんが単独で行動している最中人魚姫を発見しますが、『メアリ2』では赤ずきんが10体のメルヒェンを倒した直後、声を聞くまでもなく赤ずきんを中心とした黎明メンバーがつうと人魚姫を見つけています。ほんのわずかな発見タイミングのずれが人魚姫の命運を分けてしまったのは、前日譚にあるとおり。ですが、どうしてつうと人魚姫は『メアリ1』より一足早く赤ずきんたちに見つかることとなったのでしょうか?
これはおそらく、つうがいたことで人魚姫の行動が変化したからです。詳細な描写は前日譚に譲りますが『メアリ2』の前日譚では、つうの提案がきっかけでつうと人魚姫は物音(上記赤ずきんとメルヒェンの戦闘音)の正体を探るべく、赤ずきんたちのもとにこっそり近づきました。
同じシーンで『メアリ1』の人魚姫がどうしていたかは描写がありませんが、独りぼっちで聞いたこともない物音を聞いた人魚姫が得体のしれない物音に近づいていったとは思えません。もしかすると、逃げるように音の聞こえる場所から離れていったのかもしれません。つうの提案による人魚姫の行動の変化。これが結果として人魚姫の命を救うこととなりました。
そろってしまった7人の血式少女
さて、早々に『メアリ1』から2人も登場人物が増えた『メアリ2』の前日譚。『メアリ1』にはいないつう視点のお話が描かれるなどの差異はありますが、大筋には変化がありません。黎明は着々と新しい血式少女を見つけ、親指姫たちが遊びに行っていた孤児院は“タイヨウ教団”と名乗って宗教活動を始めるというのは、両者の前日譚にあるとおりです。
2つの物語に大きな変化が生じたのは、赤ずきん・シンデレラ・親指姫・白雪姫・眠り姫・かぐや姫、それに『メアリ2』に限り、つう・人魚姫と、6人ないしは8人の血式少女がそろってからになります。
黎明のトップである十島博士には、不死の存在であるナイトメアであっても血式少女と差し違える形であれば倒せるのでは? という考えがありました。ジェイルにある独房エリアは全部で7つ。つまり、7人の血式少女がいれば脱獄は達成できるかもしれないというのが、このプランのポイントになります。
ジェイル脱獄には血式少女が7人必要――。博士はこの考えを、血式少女以外の黎明メンバーに対して口にするようになります。憶測だけで血式少女を危険にさらすようなこの計画、もちろん賛同者はありませんが、不幸なことに血式少女の1人・シンデレラの耳に偶然届いてしまいます。シンデレラは8人いる血式少女のなかでも実験の成果が芳しくなかったこともあり、血式少女は7人しか必要ないならきっと自分は不要なんだと思い悩むように。その結果、黎明を離れて行方不明になってしまいます。
さて、だいぶ『メアリ2』の話ばかりを書いてしまいましたが“7人の血式少女が必要”という博士の考えは、『メアリ1』の前日譚でも登場しています。時期はおそらく、『メアリ2』の前日譚で“7人の血式少女が必要”という話をシンデレラが聞いたときと同じころ。十島博士は口にこそ出さないものの、“今いる血式少女は6人。独房エリアが7つあるので、本格的に動き出すにはあと1人の血式少女が必要”と考えていました。
ただ、ここで博士が“7人の血式少女が必要”と独り言をつぶやき、それをシンデレラが聞いたとしましょう。その場合、シンデレラは『メアリ2』のときと同じように黎明から失踪していたでしょうか?
仮定に仮定が重なる形になりますが、おそらくシンデレラは失踪していません。なにせ『メアリ1』の前日譚では、血式少女は7人に達していないのですから。むしろ、博士が欲している血式少女の1人であると自信を持つきっかけになった可能性もあります。本来なら喜ばしいはずの血式少女の増員。これがシンデレラの失踪を招いてしまった形になります。
連鎖する血式少女の決別
8人いたとは言え、まだまだ数の少ない血式少女。その1人が失踪したというのは大きな痛手。さらにシンデレラの失踪から約1カ月後、タイヨウ教団の陽司である千昭が何者かに殺されてしまいます。その犯人は黎明の制服を着た青い髪の少女だとか……。
失踪しているシンデレラと同じ特徴の少女による殺人事件により、黎明への信頼をなくした親指姫は、妹の白雪姫と眠り姫を連れて黎明を離脱。立て続けに黎明は4人の血式少女を失うこととなりました。
そして物語は少年ジャックのいない世界へ
所属する血式少女が4人となった『メアリ2』の黎明。それでもさぼり癖のあるかぐや姫を除いた、赤ずきん、つう、人魚姫の3人が主体となって、独房エリアに捕らわれた人々の救出活動は続いていきます。そんなある日見つけたのがアリスという血式少女と、その幼なじみである少年ジャックです。
新しい血式少女の発見に心躍るつうたちでしたが、その帰路にアリスは“ブラッドスケルター”化。つうと人魚姫をかばったジャックがナイトメアになってしまう……というのが、『メアリ2』のプロローグです。
このアリスのブラッドスケルター化自体は『メアリ1』でも起きたこと。ですが、このときはジャックの血を浴びたことで正気を取り戻しています。
さて、ここまですべての『メアリ1』との違いに、直接的もしくは間接的にかかわっている血式少女がいますよね。そして、公式サイトなどで「本作に収録されている2つの物語は『メアリ2』を遊んでから『メアリ1』をプレイするのが最も楽しめる形」という文言がありました(※通常は『メアリ2』クリア後に『メアリ1』をプレイできるようになりますが、発売同日に配信される無料DLCをダウンロードすれば、どちらか好きな方からプレイ可能です)。
“彼女”がいる世界から、いない世界へつながっていく――。これはなにを意味しているのでしょうか? そんな点に注意を向けつつ、前日譚を読んだり『メアリ2』のプレイを進めれば、本作の世界をより深く楽しめると思います。
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