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2018年8月12日(日)

【電撃PS】“ゲームを遊ぶこと”が持ち始めた別種の価値。 山本正美氏コラム全文掲載

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.666(2018年7月27日発売号)のコラムを全文掲載!

第135回:ターニングポイント

 さて、西野監督率いる日本チームの快進撃が世間を賑わせた2018FIFAワールドカップも、これを書いている時点でベスト4まで絞り込まれてきました。個人的には日本を破ったベルギーに優勝して欲しい気もしますが、さてどうなっているでしょうか。

 そういえば、世界には名だたるサッカー選手がいますが、彼らのサッカーを始めたきっかけが、かの有名なサッカー漫画「キャプテン翼」の影響だ、という話をよく聞きます。例えばアルゼンチン代表リオネル・メッシ選手の、「学校の授業をサボって翼くんのアニメを観ていた」という話や、原作で翼くんがFCバルセロナに入団した際には、ライバルチームのレアル・マドリードの幹部が、「なぜウチに入団させてくれないんだ……」と嘆いた、といった面白いエピソードなども聞こえてきます。

 一説によると、「キャプテン翼」が始まる前と始まったあとでは、日本での小学生のサッカー人口が倍に跳ね上がった、というデータもあるそうで、与えた影響は凄まじかったのだなあと、今更ながらに感じてしまいますね。

 他にも、「はじめの一歩」を読んでボクシングを始めたり、「ヒカルの碁」の影響で囲碁教室がかつてない人気、というニュースを読んだ憶えもあります。つまり、ヒット漫画で描かれているテーマに影響を受け、「自分のリアル世界に反映させる」ことってまま起こるわけですね。

 これをゲームに置き換えた場合、「RPGに影響を受けて勇者を目指す」とか、「アドベンチャーゲームに影響を受けて探偵を目指す」ということになるのですが、それはあまり聞いたことがない。なので、コンテンツテーマそのものを自分の人生にトレースするようなことは、漫画に比べてゲームでは起こりにくいのかな? ということをツイートしたところ、数名の方から、「格闘ゲームを遊んで格闘家になった友人がいる」「音ゲーを遊んで本格的に音楽を始めた知り合いがいる」といったリプライをチラホラといただき、そうか、ゲームも十分にその可能性があるのだなと教えてもらったのでした。

 ここで思うのは、最近のゲームは、先の例とは違い「遊ぶこと」そのものが別種の価値を持ち始めている、ということです。たとえばゲーム実況。ゲームを解説付きで遊び、それをネットで配信することが、コンテンツとして大きな魅力を持ち始めていることは皆さんご承知の通り。また、プロゲーマーという存在の誕生も、大きな出来事です。

 ゲームを上手く操作すること、その勝利の段階を積み上げていくことが、職業として成り立つ時代になってきたわけですね。これらは逆に、ゲームというインタラクティブなメディアだからこそ持ち得る、とてつもなくユニークな領域なのだと思うのです。

 話は変わりますが、今は休刊になっているのですが、かつて、広告という切り口からサブカルチャーまでを掘り下げる、「広告批評」という面白い月刊誌がありました。その「広告批評」で20数年前、「27歳」という特集が組まれたことがありました。要は、当時27歳近辺のクリエイターや活躍しているタレントさんのインタビュー特集で、確か表紙が永瀬正敏さん、巻頭インタビューが本木雅弘さん、他には作家の柳美里さんやミュージシャンの石野卓球さんなど、その世代を象徴する方々が颯爽と吐き出す、色んな言葉に触れることができた特集だったのです。

 その中にひとり、忘れもしないのですが『ポケットモンスター』の生みの親、田尻智さんが、“ゲームクリエイター”として登場されていました。田尻さんは、「ゲームといっしょに大人になった」という表題でゲームの魅力について語られていて、そのとき25歳だった僕は、その内容以前に、「チクショウ、俺もあと2年後には田尻さんのようにゲーム枠でこの場に立ってやる!」と強く思ったことを思い出します。それほど、ゲームクリエイターが文化人という領域でスポットが当たることが、珍しくもカッコいいことだったのです。

 そういえば、この号から電撃PlayStationが月刊誌になるというではありませんか! どういう方向で進化していくのか一読者として個人的にも楽しみですが、ここまで書いてきてひとつ思うことがあります。「キャプテン翼」を読んでサッカーを始める、ゲームを遊んでゲーム実況を始めるなど、生み出されたコンテンツの影響によって「誰かが自分の人生を変えていく」ことは、よく起こること。しかし細分化しないとすれば、一番多いのは「ゲームを遊んでゲーム制作者になる」ということだと思います。

 僕自身、『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』を遊んで、絶対にゲーム制作者になろうと思いました。そして、遊んだコンテンツを通してそう思った瞬間、次に知りたくなるのは、「作った人の思い」なんですよね。

 新たな電撃PlayStationが、ゲームメディアの果たす役割として、次代のゲーム制作者を生み出すきっかけになるとしたら、ベテラン制作者としてこんな嬉しいことはありません。期待しております!

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月28日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.666』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年7月27日
■定価:879円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.666』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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最新号紹介

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