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2018年8月25日(土)

【おすすめDLゲーム】『This Is the Police 2』で大人向けのノワールドラマを堪能。ゲーム性も深い作品に

文:キャナ☆メン

 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。本記事では、7月31日から配信中であるPC用ソフト『This Is the Police 2』のプレイレポートをお届けします。

『This Is the Police 2』

 本作は、汚職に手を染める警察署長ジャック・ボイドを主人公に、フィルム・ノワール的なドラマと警察署のマネジメントを楽しめたアドベンチャー+シミュレーションゲーム『This Is the Police』の続編です。

 『This Is the Police 2』では、指名手配犯となったジャック・ボイドの逃亡先であるシャープウッドを舞台に、若き女性警察署長リリー・リードとの出会いと、ジャックをめぐる危険な人間関係を描くストーリーが展開します。

『This Is the Police 2』

 なお、本作は日本語に公式対応していて、ローカライズのクオリティは高めです。UIなどの部分に少しだけ怪しい訳が見られるものの、ストーリー部分は心理描写や雰囲気を含めて楽しめるテキストになっています。

登場人物の内面を踏み込んで描くノワールドラマ

 ストーリーテリングにおける『This Is the Police』の独特な手法は今作にも継承され、漫画のコマ割りのようなカット表現と味のある2Dアートによって、想像力をかき立てるシーンが描かれていきます。

『This Is the Police 2』
▲今作は陰影が細かく描き込まれるなどディテール表現のクオリティが上がり、場面に応じて“動き”が細かく描かれます。動と静の使い分けも効果的で、表現の幅が広がっています。

 物語のカギをにぎる人物は3人。汚職の罪で追われるジャック・ボイドと、彼と手を組む女性警察署長のリリー・リード、ジャックを執拗に追う女性検察官のラーナ・バーマンです。

 プレイして思ったのは、やはり人間の弱さを描写するのが巧みな作品だなと。3人の抱える葛藤、苦悩、怒り……さまざまな感情が実に生々しく描き出されます。

『This Is the Police 2』
▲左がジャック・ボイド。ウォーレン・ナッシュという偽名を名乗り、シャープウッドの外れにある小屋に潜伏していましたが、迂闊にも無関係の犯罪に巻き込まれて逮捕されます。
『This Is the Police 2』
▲経験も能力もないことから署員に存在を軽視され、部下をコントロールできないリリー・リード。ジャックとの出会いが、彼女の運命を大きく変えることに……。
『This Is the Police 2』
▲ラーナ・バーマンは、前作でジャックと惹かれ合いながらも、汚職の事実を裏切りと感じ、彼を憎むようになった人物です。まさに愛しさ余って憎さ百倍の心境を抱える人。

 ストーリーの軸になるのは、考え方、立場、能力、年齢、何もかも対照的なジャックとリリーの関係性です。奇妙な出会い方をした2人は、互いを利用し合い、犯罪者のジャックがお飾り署長の右腕になるという、いびつな協力関係を築き上げます。

『This Is the Police 2』

 それは現実から逃れるための同盟であり、ジャックは警官を指揮する立場に返り咲くことで己が犯罪者であることから目を背け、リリーは署長としての責任から目を背けます。そんな2人に迫る現実の足音でもあるように、ラーナがジャックを検挙しようと執念を燃やします。

 ジャックとリリーの歪んだ関係はどこへ向かうのか、ラーナはジャックを追いつめることができるのか、そして、もし3人が出会ってしまったらジャックの運命はどうなるのか――物語の先を考えてはハラハラする、火のついた導火線がじりじりと短くなっていくような展開を楽しめるストーリーです。

『This Is the Police 2』
▲ストーリーを進めると、地元の犯罪組織もジャックに接触してくるようになり、彼をめぐる人間関係はより複雑に……。

 前作は、弱さを抱えた普通の人間であるジャックのヒーローではない部分が魅力になっていました。ですが今作では、ジャックがあこがれを抱いた漫画のヒーロー“ボビー・フラッシュ”ではない自分と向き合います。

 前作と比べると前半は静かに物語が動きますが、後半になると堰を切ったようにすべての物事が動き出し、ラストまで衝撃的なシーンの連続となります。登場人物の内面を奥底まで踏み込んで描く、大人向けのノワールドラマを堪能できるでしょう。

『This Is the Police 2』

わがままな警官たちは育てる楽しみが増えて愛着が増す

 警官たちを派遣して、町で発生するさまざまな事件に対処するマネジメント要素は、本作でもゲームプレイの軸になっています。非合法な依頼を受けて見返りをもらう“汚職”の要素も健在です。

『This Is the Police 2』
▲殺人や爆破予告、窃盗、公然わいせつ、器物破損など、事件のシチュエーションはさまざま。事件は、発生日時が固定されたものと、ランダムで発生するものがあります。
『This Is the Police 2』
▲汚職に手を染めると、リリーから電話がかかって道徳を説かれます。ジャックよりもプレイヤーの心が痛む……。

 マネジメントパートのまずおもしろい点は、酒に酔ったり、くだらないウソをついてサボろうとしたり、人間味にあふれた態度を見せる警官たちでしょう(笑)。

 目的としては町の治安を守ることが第一なので、わがままな警官たちを御しながら、事件の解決に穴を空けないよう彼らを管理していく必要があります。また、きちんと働いてもらうためには、彼らの信頼を得ることも重要です。

『This Is the Police 2』
▲しょうもない理由で休もうとする警官には、流されずノーを突きつけるのも大事。
『This Is the Police 2』
▲警官の信頼を得ると、帽子をかぶってきちんとした身なりに。命令を聞いてくれやすくなります。

 さらに今作からは、熟練度の他に細かな能力値が設定され、パワーや頭脳など6種に分かれたパラメータを成長させられるようになりました。全能力を最大にすることも可能で、コツコツ育てた警官は否が応でも愛着がわいてきます。

 もちろん能力は事件の解決にも影響し、必要な能力を想定して適材適所に警官を送り込むゲーム性が加わっています。これによってマネジメントの遊びがより奥深くなり、能力面でも警官たちの個性を感じられるようになったと思います。

『This Is the Police 2』
▲事件の難易度は明確に数値化され、警官の熟練度が累計でその値を超えないと派遣できない仕様に。何人送り込めばよいか、わかりやすくなりました。
『This Is the Police 2』
▲熟練度が50の倍数に達するごとに、好きな能力を成長させられます。同時に能力と対応するスキルを獲得し、後述する戦略ミッションで役立てることが可能です。
『This Is the Police 2』
▲事件の通報は、時として誤報であることも。なかなか見抜くのは難しいですが……。

 また、細かな改善点として、捜査を必要とする事件で証拠写真が“何をしているところか”文章で説明されるようになり、写真の示す意味がわかりやすくなりました。

 前作は写真に説明がなく、開発者が正解を明かす事件もあったくらいに並び替えが難しかったので、その苦しみを味わった人にはうれしい変更点でしょう。

『This Is the Police 2』
▲捜査事件では、手がかりと証拠写真を見比べ、誰がどのようにして犯行に及んだか推理します。正しい犯人を選び、証拠写真を犯行の時系列順に並べると推理完了。
『This Is the Police 2』
▲“細かな”と書きつつ、証拠写真の状況が説明されるようになったのは、実際のプレイでは大きな変化です。事件の推理がかなりラクになりました。

1発の銃弾が恐い緊張感あるターン制SLGパート

 本作の大きな新要素として、戦略ミッションと呼ばれるターン制タクティカルバトルが導入されました。

『This Is the Police 2』
▲ユニットはクラスの概念がない代わりに、最大4つセットできるスキルの内容で役割が変わります。警官の能力をカンストさせれば、24種のスキルから選択可能!

 ミッション内容にはバリエーションがあり、どのマップも目標に至るルートが複数あるので、どのように作戦を遂行するか、戦術の自由を楽しめるのがおもしろいところです。

 カバーや索敵の概念があり、スキルの選択や使いどころも重要になってくるので、ユニットを動かすうえで考える要素は多く、本格的なシミュレーションと同等の遊びごたえを楽しめます。

『This Is the Police 2』
▲扉の脇から部屋の中をうかがうと、複数の敵が……しかし、窓を利用すれば奥の部屋もあわせて3方向からの侵入ができます。
『This Is the Police 2』
▲複数方向から同ターン内に襲撃し、敵を一網打尽に。目標達成の方法はプレイヤー次第で、奥の深い戦術を楽しめます。

 そして特徴的なのが、ユニットにHPが存在せず、攻撃が当たると“死ぬor怪我”しかないストイックさ。銃撃を受けるたびにドキドキします……!

 死ぬのはもちろん怪我でさえ相当な痛手で、戦力として期待できなくなるうえ、ターン経過で失血死するのでクリアまで時間もかけられません。しかもこちらは犯人を射殺すると、リソースの収入が減るというハンデ。

『This Is the Police 2』
▲敵を撃つときは、頭、胴、手、脚のどこを撃つか選択でき、頭に当たれば即死し、それ以外なら怪我をします。敵がどこを狙うかは、当然選べないわけで……。

 撃たれないためには見つからなければいい、ということで戦略ミッションはステルス重視のゲーム性でもあります。とはいえ、銃撃戦を避けられない状況もあるわけです。その場合は、一手一手の判断が重く、緊張感はかなりものに! 1発の銃弾でさえ脅威なので、最後まで気が抜けません。

『This Is the Police 2』
▲ほとんどのミッションは敵に発見されていない状況から始まるので、ステルスを3まで育てると修得できる“忍者”というスキルは使い勝手がいいです。

 このようなシステムである以上、難易度は高めですが、いつでもマップをやり直せる機能も用意されています。正直、勘どころをつかむまでは、何度もやり直しました(笑)。でも、緊張感があって夢中になれる!

『This Is the Police 2』
▲爆弾を止めたり、人質を解放したり、シチュエーションの違いを楽しめるので、ミッションごとの戦術を考えることが楽しいです。

ゲーム性が奥深くなってより尖った作品に

 今作はゲーム性が奥深くなって、ゲーム全体としてより尖った作品になったと思います。リリース直後は、日本語版と中国語版の進行不能バグやマネジメントの高すぎる難易度などの問題があったようですが、それらはパッチで迅速に対応されました。

 なお海外向けに、PS4/Xbox One/Nintendo Switch版が9月25日にリリースされることがパブリッシャーのTHQ Nordicから発表されています。

 シナリオに関しては、前作と同じくディレクターのイリヤ・ヤーノヴィチ氏が担当しているものの、作品のトーンには少し変化があり、今作では犯罪ドラマとしての暗いカラーがより強く出ています。作品のトーンを変えたというよりは、指名手配犯に落ちたジャックの心情を描くうえでの必然的な変化かもしれませんが。

『This Is the Police 2』
▲痩せたうえに髪もヒゲも伸び放題と容姿が激変し、性格にもどこか影が差したジャック。警察署長から犯罪者に落ちた彼の心情を考えれば、荒んで当然かもしれません。

 個人的には、ジャックのユーモアを感じる自嘲的な独白を聞けなくなったことが残念ですが、セリフやシーンの表現が巧みで、矛盾を抱える人間の心情を矛盾なく描き、リアリティのある人間ドラマを見せてくれる作品だと感じました。

 難点としては、前作の人物や小道具、音楽がジャックの心理描写に重要な役割を果たす場面が数多くあるので、今作から入ると読解しきれないシーンがあるだろうなということでしょうか。逆に前作をプレイしていると、いろいろな発見があるストーリーです。

『This Is the Police 2』
▲ジャックの精神的なターニングポイントで、一部の部下の名前と顔が前作キャラに入れ替わることで、彼の錯乱状態を表現する演出はすごい。ただ、前作未プレイの人には下手をするとバグに見えるかも……。

 大作映画のように万人受けする作品ではないですが、今作も映画的なストーリーで、ミニシアター系で上映される作家性に富んだ物語を鑑賞した時の心揺さぶられる感じを覚えます。そういった作品を好む人は、プレイしてみてはいかがでしょうか。

(C) 2018 THQ Nordic AB. Developed by Weappy Studio. Published & Distributed by THQ Nordic GmbH, Austria. All other brands, product names and logos are trademarks or registered trademarks of their respective owners. All rights reserved.

データ

▼『This Is the Police 2』
■メーカー:THQ Nordic
■対応機種:PC
■ジャンル:ADV+SLG
■配信日:2018年7月31日
■価格:1,520円(税込)
※開発:Weappy Studio
▼『This Is the Police』+『This Is the Police 2』
■メーカー:THQ Nordic
■対応機種:PC
■ジャンル:ADV+SLG
■配信日:2018年7月31日
■価格:2,700円(税込)
※開発:Weappy Studio
※バンドル版は10%オフ

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