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2018年9月27日(木)

メキシコの文化や伝統が学べるアクションADV『MULAKA(ムラカ)』開発者インタビューをお届け【TGS2018】

文:sexy隊長

 2018年11月に日本語版が発売予定のPS4/Nintendo Switch用ソフト『MULAKA(ムラカ)』。開発元のLienzoでディレクター・デームデザイナーを務める、Edgar Serrano氏へのインタビューをお届けします。

『MULAKA(ムラカ)』

 本作は、実在するメキシコの先住民族である“タラフマラ族”の口伝神話を元に作られたアクションアドベンチャーゲーム。ゲームに込めた自国メキシコへの思いや、ゲームデザイナーとしてのこだわりなどを語ってもらいました。

Edgar Serrano氏インタビュー

――『MULAKA(ムラカ)』の開発期間はどのくらいでしたか?

 “タラフマラ族”の文化を研究するのに2年かけ、ゲームの制作期間は1年です。

――制作チームは何人でしょうか?

 幼なじみの8人で作ったスタジオで制作しました。最高のゲームを作りたいという気持ちが強く、もし3カ月かけて作ったものであっても、「おもしろくない!」と思ったら、すべて最初から作り直すようにしていました。

――制作するにあたって影響を受けたゲームはありますか?

 アクションアドベンチャーとして一番影響を受けたのは、『ダークソウル』です。『ダークソウル』のように何度も何度も挑戦し、進んでいってもらえるように制作しました。

 次に影響を受けたのは、『アサシン クリード 2』です。爽快感と歴史的な世界観に影響を受けました。でも、『アサシン クリード 2』は、文化を学べるような教育的要素が少なかったので、『MULAKA(ムラカ)』では文化を勉強できる要素を多く入れようと思いました。

――独特な色使いをされているゲームですが、ビジュアル面で影響を受けたアニメなどありますか?

 参考にしたアニメはありません。『MULAKA(ムラカ)』の色や見た目は、“タラフマラ族”の伝統や文化をそのままゲームに落とし込んだ、完全にオリジナルのビジュアルになっています。しかし、“タラフマラ族”は絵で伝統や文化を残したことがなく、すべて文献で残しているので、開発者が文献から想像してビジュアルを作成しました。

――開発中、苦労したことはありますか?

 一番苦労したのは、開発費用が足りなかったことです。しかし、私たちのスタジオ“Lienzo”は、メキシコで初めての家庭用ゲーム機向け開発会社ということもあり、政府が出資をしてくれました。

 次に苦労したのは、文献から“タラフマラ族”のオリジナルを大事にしつつ、誰もが共通認識を得られるビジュアルを作成することでした。大変ではありましたが、メキシコの文化を世界に伝えるために重要な部分だと思い作成しました。

――ゲーム内で文化を伝えるのは難しかったのでは?

 1つの文化をすべてゲームで表現することは難しかったので、いろいろと工夫をしました。例えば、ゲームのローディング画面に、歴史と文化を学べるテキストを表示させ、ゲーム内だけでは伝えきれなかった部分を補完しました。

 また、アイテムや敵、ボスの説明欄といった、ゲーム内に出てくる単語や意味は“タラフマラ族”の文化や伝統に基づいたものを使ったので、ゲームをしながらメキシコの文化が学べます。ちなみに、テキストはすべて学者に監修してもらっています。

――主にどんな文化や伝統が学べますか?

 主人公のHPは、3つの球体ゲージで表現されています。これは、“タラフマラ族”の男には“3つの魂がある”というのと、病気になると体から魂が離れていってしまう。という、言い伝えをゲームに取り入れました。

 この他にも、ボスとして神が登場します。“神はよいものでも、悪いものでもなく、神として存在し、自分の役割があるだけ”という、言い伝えが戦いを通して理解することができ、“タラフマラ族”が何を大事しているのかなどを学ぶことができると思います。

――『MULAKA(ムラカ)』でこだわっている部分は?

 タイトルやゲーム内に出てくるワードは、自国の言葉を使用するというところです。欧米で発売されたタイトルは“英語”を使用し、日本で発売されたタイトルは“日本語”を使用しているように、自分たちのゲームに自国の言葉を使用しました。

 日本には、みんながカッコいいと思う“侍”や“忍者”の文化が、ヨーロッパには“騎士”という文化があります。メキシコにもあるのですが、それを具象化するものがありませんでした。

 『MULAKA(ムラカ)』をプレイした人に、“タラフマラ族”のことを“カッコいい!”や“美しい!”と、感じて欲しいと思っています。そして、自国メキシコの今の子に、自分の国にもこんなカッコいいものがあるということを伝えたかったです。

――タイトルの『MULAKA(ムラカ)』はどういう意味なんでしょうか?

 トウモロコシの幹という意味です。いろいろなタイトル案が出たのですが、メキシコの言葉ということと、声に出して言いやすい単語ということで『ムラカ』にしました。

 『ムラカ』を発表した時に、見た人から「メキシコの言語で馴染みがあってよかった!」という感想をいただき、「このタイトルにしてよかった」と思いました。

 ちなみに、トウモロコシはメキシコ発祥で代表するもので、メキシコ人にはとても馴染みがあるものです。

――日本のユーザーにどんな遊び方を期待していますか?

 ジャンルがアクションアドベンチャーのゲームなので、まずは文化や伝統を勉強するといった目的でプレイするよりも、驚きを感じながらプレイしてもらいたいです。とは言っても、ゲームをするのはプレイヤーなので、自分好みのプレイをしてもらいたいです。

――次の作品の構想はあるのでしょうか?

 またメキシコの個性をそのままゲームにしたいです。ただ、次の新作は神話に基づいたものか、他の文化に基づいたものにするかは、まだ決まっていません。ただ、メキシコについてよく知らない人にも、ゲームを介して「もっとメキシコのモノを見たい!」と感じさせたり、ゲームに出てきたものをネットで検索して「あ! やっぱこれメキシコのものだ!」といった、メキシコを感じられたりできるゲームを作りたいと思っています。

――最後に日本ユーザーに向けて一言お願いいたします。

 メキシコの人々は、日本を文化を尊敬していてとてもあこがれています。『MULAKA(ムラカ)』をプレイして、同じように日本の方々にもメキシコの文化を感じ、感銘を受けてもらえたらうれしいです。

――今回はありがとうございました。

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