2018年10月10日(水)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として“周年連載”を展開中です。
第82回でお祝いするのは1998年9月23日にセガ(現セガゲームス)から発売されたセガサターン用ソフト『機動戦艦ナデシコ The blank of 3years』です。
本作は、1997年3月に放映終了したTVアニメ『機動戦艦ナデシコ』と、1998年8月に公開された『劇場版 機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』をつなぐエピソードを描いた、ディスク2枚組フルボイス仕様のサウンドノベルです。
もはやお約束ですが、ゲーム起動画面であえてCDプレイヤーの再生を選ぶとディスク1と2で異なる“警告メッセージ”を楽しめました。あまりすすめられた行為ではないのですが、当時のユーザーなら一度は試したことがあるのでは?
せっかくなので『ナデシコ』自体の魅力を存分に語りたいところですが、あくまでもゲームソフトの記念記事ということで今回は自重しましょう。『ナデシコ』好き(主にルリ好き)の筆者の贔屓(ひいき)目を抜きにしても、当時は絶大な人気を誇った作品でした。
肝心のゲームについてはアニメ版スタッフが全面協力しただけあって、ファン納得のクオリティと魅力を備えています。
▲序章がTVアニメ最終回のシーンから始まるという演出が、ファンのハートをわしづかみ! |
物語の注目ポイントとしてはタイトルどおり、“空白の3年間”に起きたと思しきエピソードを楽しめる点です。
ヒロインの1人、ホシノ・ルリのナデシコB艦長就任や、ホウメイガールズのアイドル活動まで言及。また、TV版ではボソンジャンプに巻き込まれて行方不明となった女性パイロットのイツキ・カザマが、ほぼすべてのストーリーにキーパーソンとして登場します。
イツキの素性はストーリーごとに変化。このあたりはサウンドノベルならではというか、整合性云々ではなくif展開として楽しむのが正解でしょう。
システムはクリアデータを使用することでアルバムやフラグが解放されていく周回プレイ型で、序章のプレイ内容に応じて4編のメインシナリオへと分岐。4編すべてをクリアしたセーブデータを使うことで、序章に新たな選択肢が追加されて、その選択肢を選ぶことで5編目(隠しストーリー)が出現します。
会話選択や選択までの時間経過(いわゆる隠しパラメータ)によって“人格マトリクス”が変化。熱血、冷静、行動的、消極的の割合で分岐先が決まります。
▲ヒロインの好感度はいつでも確認可能です。 |
サウンドノベルでネタバレするほど無粋な話もないので、各ストーリーの見どころを簡単に紹介しておきましょう。ちなみに主人公(プレイヤーキャラ)は本作オリジナルで、ナデシコ艦内にボソンジャンプして現れた謎の人物。その素性はストーリーによって変化します。
“説明おばさん”ことイネス・フレサンジュが軸となる物語で、『機動戦艦ナデシコ』最大の秘密であるボソンジャンプについて、かなり合点のいく解答が得られます。
古代火星人の技術を巡る地球と木連の抗争では、本作オリジナルの“トレーラーバリス”まで登場。わりと無茶な変形シーンも必見です。
▲意図的な演出だと思いますが、イネスの説明セリフが本当に長くて、思わず辟易してしまうナデシコクルーの気分を味わえます。 |
ラーメン屋を営むアキト&ユリカをはじめ、ナデシコの退役(争いのもととなる遺跡のコアユニットを載せて太陽系外まで慣性航行中)によって居場所を失ったルリや主人公を軸にした物語が展開します。
▲ルリルリのさまざまな表情を拝める、筆者イチオシのストーリーです! |
いずれのストーリーにも、ボタン連打によって好感度アップを目指す“熱視線イベント”が用意されています。あらぬ場所を見たり、見つめ過ぎないように連打を加減するのが攻略のカギでした。
ナデシコの通信担当であるメグミ・レイナードを軸とした物語で、主人公がアイドルのマネージャーを務めるという異色のストーリー。アイドル同士の熾烈な人気競争や、芸能界ならではのドロドロとした展開も楽しめます。
注目ポイントとしては、このストーリーだけ主人公が女性ということでしょうか。途中の一場面だけ“彼”という誤表記が入り混じって混乱しますが、中盤から女性であることを伺わせるセリフがちらほらと出現。
極めつけは、下着姿のメグミと主人公が朝チュンするという魅惑の場面が(もちろん女性同士です)……。
▲メグミをアイドルとして成功させるべく奔走する主人公。ホームページを検索する際にダイヤルアップの効果音が流れる場面には、ソフト発売から20年前という時間を感じさせられます。 |
▲水着イベントやスキャンダルなど、ノリは完全に芸能界アイドルもの。 |
このストーリーでは居場所を失ったルリと主人公が新造戦艦ナデシコBで大活躍! 劇場版を彷彿させるクルー集めや、謎の無人兵器との激戦が描かれます。ちなみに、主人公やイツキの素性はわりと悲劇的な設定に……。
▲特にバトルの熱いストーリーで、攻略するヒロインによって結末もかなり変化します。 |
4編をクリアすることで選択可能となる隠しストーリーで、『機動戦艦ナデシコ』の劇中劇である『ゲキガンガー』をモチーフとしたストーリーが展開します。
▲新たに追加される選択肢“ナナコの写真”を選ぶと……。 |
AVGやサウンドノベルの紹介でどこまで触れていいものか迷いどころです。いつもであれば「あとはぜひ、自分の目で確かめて」と締めくくるところですが、本作に限ってはリメイク版や移植版が存在しないため、現在プレイするにはセガサターン本体を用意する必要があるなどハードルが高めです。
気軽にオススメし難いタイトルではありますが、『ナデシコ』ファンなら楽しめる、スタッフ陣の愛情がこもった1本です。
(C)ジーベック/ナデシコ製作委員会・テレビ東京
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