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2018年10月26日(金)

東工大×『ソードアート・オンライン』。最新の科学技術で出現したユイが奇跡を起こす?

文:スズタク

 10月6日、東京工業大学にて開催された“~東工大×ソードアート・オンライン~ 科学技術の最前線”。そのイベントレポートを掲載します。

『ソードアート・オンライン』

 『ソードアート・オンライン』は、第15回電撃小説大賞《大賞》を受賞した川原礫先生が執筆する電撃文庫作品。現在、TVアニメ最新作となる『ソードアート・オンライン アリシゼーション』が放送されており、多くのアニメファンから注目を集めています。

 今回のイベントは、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』に登場した“東都工業大学”のモデルとなった東京工業大学で開催されたもの。会場にはゲストとしてキリト役の松岡禎丞さん、シリカ役の日高里菜さん、アニメシリーズ第1、2期と劇場版の監督を務めた伊藤智彦さん、原作者の川原礫先生が登壇。司会の吉田尚記アナウンサー(ニッポン放送)、東工大の教授2名を交えて科学技術の分野から『SAO』の世界が語られました。

デモンストレーションで、ユイが壇上に?

 イベントはまず、舞台に上がった出演者たちのトークからスタート。東工大といえば劇場版に登場したことで話題を呼びましたが、これに関連して川原先生は「(劇中で)大岡山を世田谷区と描いてしまって申し訳ありませんでした!」と勢いよく謝罪し、観客に笑いをもたらしました。TVアニメ1・2期、劇場版で監督を務めた伊藤さんは、3年前に劇場版のロケハンで東工大を訪れ、資料のために写真をたくさん撮ったと話しました。

 高校を卒業してすぐに声優の道に進んだという松岡さんは、東工大の学生の雰囲気や非常に活気にあふれている学内を目の当たりにして、学生たちがうらやましいとコメント。日高さんは、自身が通っていた大学と東工大を比較して、キャンパスの広さや学生の雰囲気の違いなどを口にしました。

 ひとしきりトークが弾んだところで、東工大の科学技術創成研究院准教授・長谷川晶一さんが登場。ここでは『SAO』絡みのVR(仮想現実)やAR(拡張現実)に関して、出演者からの質問に長谷川さんが答えるコーナーが行われました。

『ソードアート・オンライン』

 最初の質問は川原先生からのもの。「フルダイブって実際に出来るの?」というストレートな問いをぶつけます。『SAO』において大きな要素であるフルダイブについて長谷川さんは、機械と身体を繋げればできるはずですが、極小サイズの脳細胞や視神経を傷つけずに機械と繋げるのは現時点では難しいと語ります。

 お次は、日高さんからの「《オーグマー》のような機械は実現できる?」という質問。《オーグマー》とは劇場版に出てきたAR型情報端末ですが、これについて長谷川さんは「フルダイブができるほど技術が発達すれば実現できるはず」とはっきりした口調で回答しました。

『ソードアート・オンライン』
▲キリトとアスナが左耳に装着しているものが《オーグマー》です。

 松岡さんからの質問は、「オーディナル・スケールのようなARの表示はできるのか?」というもの。劇場版で、現実世界のオブジェクトをゲーム世界のものに置き換えたり、キリトやアスナの頭上にアイコンが表示されたりするといった形でARを表現していました。これについてはなんとすでに実現済みとのこと。もちろん『SAO』と完全に同じものではありませんが、技術的には可能なようです。

『ソードアート・オンライン』
『ソードアート・オンライン』
▲現実世界がAR世界へと転じていくシーンは、劇場版の中でも印象的なシーンのひとつです。

 最後は伊藤監督から、「AR戦闘にはどんな戦い方のバリエーションが考えられるか?」という質問が出ました。例として剣によるつばぜり合いが挙げられ、ARやVRで再現する際のポイントが解説されました。モーターによる反動を利用し、つばぜり合いの衝撃を疑似的に再現するような研究が2002年に行われていたと明かされると会場からは驚きの声が上がっていました。

『ソードアート・オンライン』

 ゲストからの質疑応答コーナーが終わると、今度は長谷川さんの研究デモンストレーションへ。壇上に姿見のような大きな鏡が置かれ、鏡にかけられていた幕が外されると、そこにはなんと等身大のユイが映し出されていました。

 このデモンストレーションは、鏡に映した3Dモデルのユイとコミュニケーションを取ってみるというものです。

 鏡のそばにはカメラがあり、目の前の人物の動きを認識してユイがさまざまな反応をしていました。手を振ると振り返してくれたり、鏡に手の平を近づけると手を合わせるような動きをしたりと、可愛らしい挙動を見せてくれました。公式から提供された3Dモデルとボイスを使っているのもあり、本物のユイがそこにいるかのように感じられるデモとなっていました。

『ソードアート・オンライン』

連想ゲームで川原先生と伊藤監督の脳がシンクロ!

 続いて、東工大の情報理工学院教授・三宅美博先生が登壇。『SAO』――特に、放送中のTVアニメ『アリシゼーション』では非常に重要なキーワードである“AI(人工知能)”について語られました。

『ソードアート・オンライン』

 三宅先生は、「現代においてAIは身近な存在です」と前置きしたうえで、『SAO』の代表的なAIであるユイの特徴をおさらい。人工知能の歴史についても触れ、ユイが“トップダウン型”のAIだと解説しました。

 トップダウン型とは、膨大な知識と迅速な処理能力で、人間の問いに瞬時に答えられるAIのこと。1950年代にその概念が生まれた人工知能は、現在に至るまでトップダウン型として進化を続けており、「まるでユイのためにAIの進化があったかのようです」と三宅先生は口にしました。

 また三宅先生は、次の時代は人間と“共感”できる“ボトムアップ型”のAIに注目が集まるとも説明。「そんなボトムアップ型AIが、放送中のTVアニメに深くかかわっているので要注目です」と三宅先生が言うと、吉田アナから「まさかの教授によるアニメ宣伝!」とツッコミが入り、会場は笑いに包まれました。

『ソードアート・オンライン』

 AI講義が終わると、続いて研究デモンストレーションへ。三宅先生のデモンストレーションでは、連想ゲームを通じて川原先生と伊藤監督の脳の動きをシンクロさせるという実験が行われました。

 川原先生と伊藤監督に、身体運動と脳活動の共感を計測するデバイスを取り付け、出演者4人で連想ゲームを開始。普通の連想ゲームと違い、参加者同士で身体を同じように動かしながらゲームを行い、脳波の動きを比較してみました。

 約1分半の連想ゲーム後、川原先生と伊藤監督の脳波をグラフのような形で確認してみると、ゲーム前と比べてお互いの脳波が明らかに似た形に! 三宅先生いわく、「身体の動きが一緒になると脳の動きも一緒になる。この“共感”が新たなAI(ボトムアップ型)への研究に繋がる」とのことです。

『ソードアート・オンライン』

 ここでイベント終了の時間となり、ゲストたちがひとことずつあいさつをしていくことに。川原先生は、このイベントで聞いたことでいいインスピレーションを受けたとのことで、「今後の作品にフィードバックしていこうと思います!」とコメントしていました。

 松岡さんもこれからとある勉強に励んでいくとのことで、「お互いに道は違えど頑張っていきましょう!」と述べていました。

 その後もゲストの皆さんによるあいさつは続いたのですが、その際、会場の拍手に合わせて壇上のユイも拍手をするという、最後の最後で予期せぬサプライズが。最新の科学技術がもたらした素敵な瞬間に包まれながら、イベントは幕を下ろしました。

■TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
【放送情報】
TOKYO MX……毎週土曜24:00
とちぎテレビ……毎週土曜24:00
群馬テレビ……毎週土曜24:00
BS11……毎週土曜24:00
MBS……毎週土曜27:08
テレビ愛知……毎週月曜26:05
AT-X……毎週月曜22:30(※リピート放送あり)

【配信情報】
<地上波同時(毎週土曜24:00)配信>
AbemaTV

<10月13日以降、順次配信開始>
Amazonプライム・ビデオ、dアニメストア、DMM.com、GYAO!、HAPPY!動画、Hulu、J:COMオンデマンド、NETFLIX、niconico、PlayStationVideo、Rakuten TV、U-NEXT、あにてれ、アニメ放題、バンダイチャンネル、ひかりTV、ビデオパス、ビデオマーケット、フジテレビオンデマンド、ムービーフルplus

【スタッフ】(※敬称略)
原作:川原礫(電撃文庫刊)
原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec
監督:小野学
キャラクターデザイン:足立慎吾、鈴木豪、西口智也
助監督:佐久間貴史
総作画監督:鈴木豪、西口智也
プロップデザイン:早川麻美、伊藤公規
モンスターデザイン:河野敏弥
アクション作画監督:菅野芳弘、竹内哲也
美術監督:小川友佳子、渡辺佳人
美術設定:森岡賢一、谷内優穂
色彩設計:中野尚美
撮影監督:脇顯太朗、林賢太
モーショングラフィックス:大城丈宗
CG監督:雲藤隆太
編集:近藤勇二
音響監督:岩浪美和
効果:小山恭正
音響制作:ソニルード
音楽:梶浦由記
プロデュース:EGG FIRM、ストレートエッジ
制作:A-1 Pictures
製作:SAO-A Project

【出演声優】(※敬称略)
キリト(桐ヶ谷和人):松岡禎丞
アスナ(結城明日奈):戸松遥
アリス:茅野愛衣
ユージオ:島﨑信長

(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

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