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2018年11月6日(火)

『触手を売る店』『まつろぱれっと』『びはんとマルの森』世界観・雰囲気がいいゲームを紹介【デジゲー博2018】

文:キャナ☆メン

 11月4日に、東京・秋葉原UDXで行われた同人&インディーゲームイベント“デジゲー博2018”に出展されていたタイトルから、筆者が試遊した作品を数回に分けて紹介していきます。

デジゲー博2018

 本記事では、世界観や雰囲気がよかった、あるいはそこに作り手の個性を強く感じたゲームをピックアップ!

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『触手を売る店 -for mobile-』 Achamoth(B-10a)

 『触手を売る店 -for mobile-』は、タイトルと触手育成シミュレーションというジャンル名が、既にその刺激的な作品性を物語っているゲームです。チラシに書かれた紹介文は、“スマートフォンで体験する香港ゴシックな残酷童話”。

デジゲー博2018

 RPGアツマール(※)の企画向けに制作された『触手を売る店』と世界観を共有しているため、そちらを5分遊ぶだけでも、妖しくも美しい世界観と、うっすらとにじむ狂気の中に魅力を感じる独創的なビジュアル、キャラクター、ストーリーに心を引き寄せられるでしょう。

※……『RPGツクールMV』で作ったゲームを投稿できるniconicoのサービス

デジゲー博2018
▲上の画像はツクール版『触手を売る店』のゲーム画面です。

 なお、本作『触手を売る店 -for mobile-』は、ツクール版の移植ではなく、メインキャラクターである“店主”の若かりし頃を舞台にした完全新作になるそうです。登場する触手は3倍になる予定で、ストーリーのボリュームも増えるとのこと。

デジゲー博2018

 また、ゲームデザインもスマホ向けに設計し直されていて、ゲームシステム全般に手が入っています。

 おもしろいのは、ツクール版でスマホゲームのスタミナに似た要素だった“霊酒”が、まったく別の役割でゲームサイクルに組み込まれていることです。

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 スマホ向けにゲームデザインが変わると書くと悪いイメージを持たれるかもしれませんが、今作の場合はどちらかというと、純粋にツクール版からの改善に、スマホに合わせた遊びやすさを取り入れたという印象を持ちました。

 制作はUnityで行っているそうですが、作者がUnityに触り始めたのはなんと半年前。現在は悪戦苦闘しながらも努力を続け、鋭意製作中であるようです。

デジゲー博2018

 そのため、まずはiOS版を完成させることを目標に、2019年のリリースを予定しているとのこと。iOS版が完成したら、Android版も考えたいと話していました。

 アクの強さとでも言うような、ゲーム全体から匂い立つ蠱惑的な感覚が、プレイヤーの心を刺激して引きつける本作。そうした部分は「どんどん出していきたい」と力強いコメントを作者から聞けたので、作家性の強いタイトルを好む人はぜひリリースを心待ちにしてほしいゲームです。

『まつろぱれっと』 SleepingMuseum(C-07b)

 『まつろぱれっと』は、画家の主人公になって、呪われた少女の絵を完成させるため、絵の中の彼女とコミュニケーションをとっていくアドベンチャー風のスマホゲームです。

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 少女とのコミュニケーションでは、単純に会話を選ぶのではなく、そこは画家らしく絵を描くことで、少女の要求に応えていきます。しかし、少女の機嫌を損ねるとデッドエンドに……。正式版では、さまざな死因が用意されるようです。

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 そんな気難しい(?)彼女と接していくには、彼女の好みを探ることが肝要。過去の犠牲者たちが書き込みを遺した謎のネット掲示板が、唯一の手がかりとなります。そこに書かれた、絵を完成させるためのルールは3つ。

・彼女を直接描いてはいけない。

・彼女の気に入るモチーフを描き入れろ。

・絵の具を切らしてはいけない。

 少女を描かずに、彼女の絵を完成させるとはどういうことなのか? 体験版では、その謎や呪いの真相まではうかがい知ることができなかったものの、絵画の少女とのかかわり方とゲームプレイの一端を体験できました。

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▲彼女の機嫌を損なうな! 大事なことです。

 掲示板を調べると、上記のルールの他に、彼女が好きなモチーフの1つが“りんご”であることも書かれています。

 ということで、スワイプで絵の中にりんごを描き込み、「りんごだから赤いよね」と赤い絵の具を使ったところ……赤いりんごは少女のお気に召さず、惨殺されてしまいます。

デジゲー博2018
▲骨になるまで剥かれるって……なるほど、これが呪いか!

 実はこれ、謎のネット掲示板をよく調べると、りんごの皮を剥かないと少女の機嫌を損ねてしまうことが書いてあったのです。

 そのため、りんごだからと安直に赤く塗ってしまうと呪われてゲームオーバー。絵の具は、赤、黄、青と3色あるので、黄色に塗って“皮の剥いてあるりんご”の絵を描かないといけません。

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 黄色いりんごを描くと少女は機嫌をよくして、ストーリーは先に進みます。1度惨殺されてから彼女のゴキゲンな様子を見ると……すごくギャップがあって、奇妙な魅力を覚えます。このギャップが、本作の“味”の1つだなと思いました。

 体験版は、この後に絵の具を補充するタップアクションを遊んで終了。正式版では、ゲーム内の7日間で少女の絵を完成させることを目標に、(何度も呪い殺されながら)プレイしていくそうです。

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 気分次第で人間を生かしも殺しもする少女の無邪気さは、かわいくもあり、恐くもあり。そんな彼女との物語を、独特の“ゆるさ”がオブラートのように包み、ホラーとユーモアが絶妙なバランスで入り混じった独特の世界観。何か“作り手の世界”のようなものを感じるゲームになっています。

 本作のリリース時期は、「雪が溶ける頃までには」ということで今冬の予定。iOS/Androidで配信されるとのことです。ユニークなゲームシステムと独特の世界観を楽しみたい人はぜひ。

『びはんとマルの森』 RirCreate(B-01b)

 『びはんとマルの森』は、ほのぼのとした世界観やストーリー、自分好みのレイアウトで集落を築けるゲーム性が特徴の森開拓シミュレーションゲーム。見ているだけで心がほんのり温かくなるような、イラストとドット絵の表現が特に印象的です。

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 会場では、体験版専用に作られた会話劇と、集落用のアイテムを自由に配置できるゲーム部分を楽しめ、遊びや雰囲気の一端を味わえました。

 試遊で使えたアイテムは限られていたものの、ツリーハウスや花壇、切り株やテーブルなど、森の生活を感じるものばかり。そこにキャラクターを置くと、主人公であるびはんとマルの日常の一面を見たような気がして、何だかとても和みます。

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 この体験版はunityroomで公開されているので、レイアウトを楽しみながら、本作のほのぼのとした世界観や雰囲気を感じてみてはいかがでしょうか。

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▲写真だとわかりにくいですが、テーブルの上にはさらにクロスや小物を置くことができました。
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▲置いたものは向きを変えて配置することもできます。

 ちなみに、デジゲー博2018で来場者が作ったさまざまな集落をゲーム公式Twitterから見ることもできます。集落の画像を見るだけでも、ゲームの雰囲気を何となく感じることができるはずなので、時間のある時にぜひ。

 なお体験版はアイテムの配置に材料を消費しませんでしたが、正式版では、森から材料を集め、その材料を使って集落を築き上げていくゲームシステムになるとのこと。

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 また、ストーリーの進行と合わせて課題のようなものが提示され、それをクリアすると集落のレベルが上がり、さらにストーリーが進む……というゲームサイクルを予定しているそうです。

 リリース時期については、2019年にiOS/Androidで配信予定。温かみのある世界観を持ったゲームが好きな人は、注目してほしい1作です。

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