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2018年12月26日(水)

『漆黒』へと向かう大きな流れ――パッチ4.5“英雄への鎮魂歌”の見どころを吉田P/Dに尋ねる【電撃PS】

文:電撃PlayStation

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

 先日実施されたプロデューサーレターLIVEでパッチ4.5のトレーラームービーが公開され、新たな物語、新たなコンテンツへの期待が高まっている『ファイナルファンタジーXIV』。今回は、パッチ5.0へと続くメインストーリーはもちろん、リターン・トゥ・イヴァリース、青魔道士、ドマ式麻雀などなどコンテンツてんこ盛りなパッチ4.5の見どころを吉田P/Dにインタビュー。ぜひ最後までご覧いただきたい。

※本インタビューは2018年12月3日に実施されたものです

■パッチ4.5“英雄への鎮魂歌”は『漆黒のヴィランズ』へと続く一連の物語の先駆け

――パッチ4.5“英雄への鎮魂歌”というパッチタイトルには、どういった意味が込められているのでしょうか?

吉田直樹氏(以下、敬称略):『ファイナルファンタジーXIV』にはいろいろなタイプの英雄がいますが、それぞれが抱く想いを込めたタイトルに見えるかなと考えました。今回、光の戦士には大きな転機が訪れます。それがはたしてどういうシチュエーションでパッチ5.0につながるかを、まずはパッチ4.5 Part.1の物語から想像していただければと思います。また、狙っていたわけではなく偶然なのですが、パッチ4.1は“リターン・トゥ・イヴァリース”にかけて“英雄の帰還”というタイトルでした。それに対して、“リターン・トゥ・イヴァリース”の最終章が実装される今回が“英雄への鎮魂歌“となりました。なんとなく、うまく締まったなという感じがしますね(笑)。

――ちなみに、パッチ4.5はPart.1、Part.2に分かれると明言されています。ストーリーに関しても分割されるのでしょうか?

吉田:完全に2分割されます。Part.1はこれまで同様に「ここで終わりかああ!」という節目で終わり、すべての答えはPart.2へ……みたいな感じですね。北米ファンフェスティバル、パッチ4.5 Part.1、欧州ファンフェスティバル、日本ファンフェスティバル、その直後にパッチ4.5 Part.2という一連の流れを想定しており、僕のなかではこの5つが1つのストーリーというイメージです。既存プレイヤーのみなさんには、基調講演で発表される内容も含めてストーリーの一環となると考えています。

――パッチ4.5のストーリーのなかで新ダンジョン“境界戦線 ギムリトダーク”に挑むそうですが、これはどのようなダンジョンなのでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

吉田:“いよいよ帝国と事を構える”ということが具体化される場所です。アラミゴと帝国との境界線で、ついに戦端が開かれるというイメージを持ってもらえれば問題ないです。先日公開したパッチ5.0のティザートレーラーの一部シーンも、ギムリトダークをイメージしています。これまで、英雄・光の戦士はいろいろな人たちや国とかかわってきました。光の戦士の姿を見て奮い立った人たちも多数います。そんなキャラたちが入り乱れての戦闘になるので、それぞれのキャラクターファンの方々も楽しんでもらえると思います。

――これはお答えにくい質問かもしれませんが、吉田さんが考えられている『FFXIV』全体のストーリーのなかで、今回のパッチ4.Xのクライマックスはどのぐらいの位置づけになるのでしょうか?

吉田:別にそう呼んでいるわけではないですが、もし『旧FFXIV』の物語を収束させる今の流れを“ハイデリン・ゾディアーク編”と仮称するなら、全体の6割を越えたぐらいまできていると思います。

――つまり、パッチ5.Xシリーズが仮称“ハイデリン・ゾディアーク編”のクライマックスになる感じですか?

吉田:いいえ。クライマックスの序章になるかなと思います。もちろん、パッチ5.0単体で、RPG1本ぶんを遊んだぐらいの衝撃や経験を得られるようにはしてあるので、怒涛の展開を楽しんでもらえればと。

■光の戦士たちが大注目する新ジョブ・青魔道士について

――パッチ4.5の要素のなかでも、とくに多くのプレイヤーが注目しているのが青魔道士です。発表時の盛り上がりはかなりものでしたが、これはパッチ4.5のPart.1で実装されるのでしょうか?

吉田:青魔道士の公開はPart.1リリースから、1週間空ける予定です。最初はメインストーリーや“リターン・トゥ・イヴァリース”を楽しんでいただきたいなとの配慮からです。青魔道士には“マスクカーニバル”という専用コンテンツがありますが、これをいち早くクリアしようとする人たちにとっては、メインシナリオを進めないといけないという状況が足枷になってしまいます。

 また、一気にいろいろと実装すると、話題がゴチャついてしまうのも理由です。とくに、青魔道士の場合は「俺はコレをラーニングした」「私はアレを」という話題が出ているのにもかかわらず、自分はストーリーを進めていてラーニングできていない……といった、置いていかれた感が出てしまう可能性があるので、それを避けるためにあえて同時実装を避けています。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――青魔道士の最大の特徴である“リミテッドジョブ”であることについて、あらためて理由を教えてください。

吉田:これまで、世界中から青魔道士で遊びたいという声を数え切れないほどいただいていました。もちろん「次の新ジョブは何にしようか?」という会議では、何度も青魔道士の話が議題にあがります。ですが、青魔道士がはじめて登場した『FFV』のおもしろいところは、ラーニング自体のシステムと、覚えた青魔法がある種バランスブレイクしている部分でもあると思っています。開発チーム内で青魔道士の議題があがるたびに“普通のジョブと同じ仕組みでは一生実装できない”という結論に至っていました。

 これは北米ファンフェスでもお話しましたが、例えば強力なデバフをばら撒く“臭い息”という特殊技があります。これを青魔法として実装する際に、もし青魔道士が通常のジョブだった場合は、レイドのバランスを崩さない程度の効果にしなければなりません。もしくはレイドではまったく使えないか、です。ラーニングする手間はすごくかかるけど、効果が飛び抜けているわけでもなく、それを持っていないとレイドに参加はできない……。そんなアクションを多数持っている、ただ面倒くさいだけのジョブになってしまいますし、「こんなジョブを実装されても……」となるのは目に見えています。

 かといって、“青魔法を覚えていないとコンテンツに参加できない問題”を解決するために、青魔法をジョブクエストで、さもラーニングしたかのように見せかけて修得しても、それは青魔道士の本来のおもしろさから程遠いものになると考えました。万人が納得する満場一致の答えはないジョブだということです。だからこそ、これまで実装を断念してきました。

 今回実装に踏み切ったのは、一生実装できないよりは、全員ではないにせよ満足感のある新しいジョブとコンテンツを実装して、楽しんでもらおう、と決断したためです。ほかのジョブと横並び調整をしても、それは青魔道士を楽しむうえでの足かせにしかなりません。それは、みなさんのためにならないと考えたので、リミテッドジョブという形で実装することになりました。

 また、じつは1年前ぐらいから「『FFXIV』はMMORPGだけど、1人で遊べることを否定しないようにしよう」と考えるようになったのも理由の1つです。青魔道士だけでなく、『FFXI』にあるような獣使いやからくり士といったおもしろいジョブが一生実装できないよりは、思い切ってそういう舵取りをしてみようと考えました。コツコツ1人で青魔法を集めたり、人を集めないとラーニングできない技は、ときには青魔法を覚えるツアーにパーティ募集から参加したりといった、ソロ中心のジョブがあってもいいだろうと、綿密に設計から時間をかけてやってきたというのが今回の青魔道士です。

――ラーニングをしていくという、青魔道士らしさを重視した結果なんですね。

吉田:“ラーニングして青魔道書を埋めていくコレクション要素”と“バランスブレイクしている青魔法を使って専用コンテンツを遊ぶ”というほうが、結果的に従来シリーズの青魔道士らしいものになるだろうというのが、開発チームの答えです。リミテッドジョブだという発表をしたときに、「なぜ青魔道士だけ、そんなに『FF』らしさにこだわるのか」というお声があったことは把握しています。例えば、赤魔道士は、従来のジョブコンセプトを『FFXIV』流に消化して“らしさ”を実装できました。ですが、青魔道士に関しては、そもそも“ラーニングする”という楽しさを失ってしまっては実装する意味がないと思っているので、根本的なシステムが違うのだと分けて考えています。

――今後、パッチが進んでも、その独自性は維持されていくと考えてよいのでしょうか?

吉田:そうですね。マッチングでパーティコンテンツに行けるようにすると、全部の青魔法のバランスを普通のバトルジョブとしてのレベルに抑えなければなりません。そういったことができない前提で、思い切って作ろうという形になっています。

――実装時のレベルキャップをレベル50にしている理由を教えてください。

吉田:単純に、覚える青魔法がめちゃくちゃ多いからです(笑)。レベル50で49個、開発上では128個ぐらいは設定されていますから。いきなり全部実装するわけにもいかないので、順次追加していく予定です。

――レベルキャップ開放のスパンは、どのようにお考えですか?

吉田:パッチ5.0では、みなさんいろいろやることも多いので現状維持、その次のパッチで開放予定です。青魔道士のレベルキャップは、拡張ごとではなくパッチごとに適時開放していきます。

――いずれ、ほかのジョブにレベルキャップが追いつくことはあるのでしょうか。

吉田:いつかはあるかもしれませんが、あまりその点を重視してはいません。

――青魔道士だけのジョブHUDはありますか?

吉田:いえ、ありません。青魔法は詠唱するだけというシンプルなメカニクスだからです。

――セットする青魔法の組み合わせによって、ステータス的なボーナスが発生することはありますか?

吉田:ボーナスではないのですが、コンボのように“この青魔法でこのデバフを付与したあと、特定の技を使うと大ダメージ”のような、隠しの組み合わせは用意されています。こちらを探すのも楽しみのひとつです。

 

――青魔法のセットを組み替えていくということは、そのたびにホットバーのアクションをいじりつつプレイする印象でしょうか?

吉田:青魔道書にいくつかの青魔法セットを登録できるようになっていますので、登録したセットを切り替えれば簡単に入れ替え可能です。

――ちなみに、パーティを組んだ状態であればパーティコンテンツにもある程度参加可能ということですが、レイドにも挑戦できるのでしょうか?

吉田:パッチ4.5ではレベル50なので、レベル50のコンテンツには基本的に行けると思っていただいて大丈夫です。バランスチェックというか、遊びのチェックのために、青魔道士4人でシリウス大灯台のハードへ挑んできましたが、みんな個性が出てめちゃくちゃ楽しかったですよ(笑)。タンクスタンスのように防御バフを張ってタンク役を決め、全員範囲回復の青魔法をセットして、あとは思い思いの攻撃スタイルで。途中のボスに即死系デバフが効く場合もありますので、「あれ?いきなり即死したぞ?www」など、ワイワイ盛り上がってプレイしました。今までにないジョブの仕上がりになっていますので、きっとみなさんが想像しているよりも、使いこなしにやり込み要素があり、きっちり「あ、これ新ジョブだな」と感じていただけると思います。

――これまでのお話を総合すると、青魔法で使用できる敵の技の威力は、実際に敵が使用するものに忠実な性能になっているのでしょうか?

吉田:そうですね。あまりコンテンツに行ったときのバランスは気にしなくていいという感じで作っています。極端にメチャクチャにはならないようにとは考えていますが、先ほどもお話した通り、ID道中のボスは一発で倒せたりもしますね。

――では、北米ファンフェスで例にあげていた“レベル5デスでボスを即撃破”も実現可能にと……?

吉田:北米ファンフェスの際に、わかりやすい例として取り上げたのですが、すみません“レベル5デス”は次のレベルキャップの青魔法です。レベル60まで開放されたときにラーニング可能です。まぎらわしくてごめんなさい。

――ちなみに、ラーニングの確率は、どれぐらいを想定していますか?

吉田:モノによりけりです。難しいものもあればカンタンなものもあって、フィールドにいるレベルの低いモンスターからはサクサク行くと思いますが……。

――自分のレベルが上がればラーニング確率が上がるといった要素はありますか?

吉田:そういった要素はありません。

――基本的にソロで遊ぶことになると思いますが、そうするとラーニングにパーティが必要な青魔法は限定的なものになるのでしょうか?

吉田:上位のものが多いですが、ダンジョンの“カルン埋没寺院”が指定されているラーニング技もあるので……。

――『FFV』の青魔道士だと、ラーニングさえすれば攻撃も回復もできる万能なキャラに育てることができました。その点において、『FFXIV』の青魔道士の立ち位置はどのようになりますか?

吉田:あまりパーティを意識してはいませんが、3ロールどの役割もこなせるような青魔法は用意されています。あくまで“マスクカーニバル”をソロで攻略したり、ラーニングした青魔法で自分なりの青魔法セットを作ったりといった遊びを想定していますが、先ほどもお話した通り、青魔道士のみでの攻略もかなり楽しいです。獲得経験値もフィールドで敵を倒すことが一番おいしくなるように設定しているので、世界中をさまよってモンスターの特殊技をラーニングして、青魔道士でコンテンツに挑むと、今までと違ったおもしろさがあります。どっぷりテストプレイしていますが、時間泥棒なジョブだと思います(笑)

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――“マスクカーニバル”については北米ファンフェスでもある程度情報が出ていましたが、あらためてどういったものか教えてください。

吉田:イメージとしてはモンスター闘技場だと思ってください。3セット1ラウンドとして決まった順番に登場するモンスターを、いかに青魔法を駆使して倒していくかを考える遊びです。キーになる青魔法を持っていなければ、そもそもダメージを与えられないこともあります。自分で攻撃・回復を両立して3セットのモンスターを撃破していくという、青魔法を使ったパズル的なコンテンツです。そして、次の対戦相手を見て「あの青魔法が必要なのか。ラーニングしにいこう」となるか、はたまた「手持ちの青魔法でがんばってみるか」となるのか……。そういった遊びが楽しめる感じですね。

――“マスクカーニバル”の報酬はどういったものが用意されていますか?

吉田:どのジョブでも自慢できたり、強くなれたりといった報酬のために、青魔道士をやらないといけない……というのは違うと思うので、今回は誰もがほしがるような極端な報酬は入れてないです。あるのは青魔道士に関する報酬ですね。

――青魔道士の専用装備は、ここで手に入れるのでしょうか? それとも他ジョブと同じようにクエストで入手できる形ですか?

吉田:それはジョブクエストで入手できます。

――“マスクカーニバル”では属性の概念が登場するとのことですが、それは青魔道士をプレイしているときでなく“マスクカーニバル”のみの仕様でしょうか?

吉田:はい、“マスクカーニバル”のみの仕様になります。

――特定の属性でしかダメージを与えられない敵、というのが登場するんですよね。

吉田:“大ダメージを与えるなら、属性を意識しなければならない”だと思ってください。そのために、「その属性を使える青魔法はどの敵からラーニングできるのだろう?」「こういう敵が出現するなら、こういったセットにしよう」といった攻略法を編み出す、という遊びです。そういった情報をみなさんで共有しあって、勝ち抜いていっていただければと。

――ちなみに、“マスクカーニバル”のクリアを条件として参加可能になるコンテンツ……といったものは存在しますか?

吉田:システム上は可能ですが、先ほどお話したとおりジョブ間のバランスに巻き込まれてしまうので、そういう予定はありません。青魔道士のレベルキャップが開放されれば、“マスクカーニバル“の上位も開放されることになると思います。

■シナリオスキップは厳禁!! “リターン・トゥ・イヴァリース”の見どころに迫る

――“リターン・トゥ・イヴァリース”ですが、やはり一番の見ドコロは物語の部分ですよね?

吉田:そうですね。コンテンツに入るまでに物語に怒涛の展開があるので、絶対にスキップしないほうが良いと思います。そうしないと、超絶衝撃のシーンを見逃すことになってしまいます。いろいろな意味で盛り上がる瞬間だと思うので、絶対に飛ばさないようにESCキーやキャンセルボタンは外しておいたほうがいいです(笑)。

――物語としては松野(泰己氏/ゲームクリエイター、株式会社ALGEBRA FACTORY代表取締役)さんが想定されていたシナリオは、すべて入れきった感じですか?

吉田:“リターン・トゥ・イヴァリース”の全三作は、松野さんが脚本を書かれるたびに、『FFXIV』側の設定とのかみ合わせ、プレイヤーのみなさんからのリアクション、松野さんのイヴァリースに対する想いなどによって、当初のプロットの細部からは都度細かく変わっています。しかし、当初松野さんが想定されていた思いや、伝えたいものは、詰め込んでいただけたと思います。原作至上主義、という方にとっては、物議を醸すシーンがあるかもしれませんが、少なくとも僕はイヴァリースファンとして「よく描いてくださった」と、20年越しの思いが満たされたと感じました。正直、チェックの段階で2シーンほど泣きました。僕もファン心理が入ってしまっているので、お伝えしづらいのですが、本当にご一緒できてよかったなと思います。

 松野さんのテキストボリュームや、こだわりにもぜひご注目ください。本当にスゴイんです! シーンが進むたびに、大道具部屋のNPCたちのセリフも変わりますが、それも一字一句見逃さないほうがいいと思います。

 本編が終わり、後日談的なものも含めてものすごいボリュームで、パッチ4.5 Part.1のメインシナリオよりも大きいかもしれません(笑)。カットシーンもかなり気合いが入っていますし、バトルコンテンツとしても凝っています。カットシーンにしてもダンジョンにしても、画の見せ方が『FFXIV』というよりも“イヴァリース”なんです。そこだけ切り出すと、イヴァリースと思えるようなこだわり方をしています。

 また今回は、雨宮(慶太氏。映画監督/イラストレーター)さんにデザインしていただいたボスが2体登場するのですが、先日、最終チェックをしていただきました。そのときに、モンスターのテクスチャやパーツ、キャラクターシェーダーのクオリティ以外にも、バトルマップやその環境設定に対しても「ここはこういうライトにしたほうが、もっとよくなるんじゃない?」といったアドバイスをいただきました。キャラクターデザイナーとしてだけでなく、映像監督として見てもらえまして、実際に調整したら断然よくなって驚きました。まさに、総力を結集して作った感があります。

――まさに“リターン・トゥ・イヴァリース”の集大成ですね。

吉田:クリア後も大道具部屋にこもってニヤニヤできるネタがたくさんありますので、ファンの方はぜひ。

――これまでも、クリア後の大道具部屋の情報量はかなりのものでした。

吉田:今回は、過去最大規模のボリュームだと思います。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――これまで、ラバナスタやダルマスカといった『FFXII』に登場した舞台でしたが、今回のオーボンヌは『ファイナルファンタジータクティクス』が元ネタです。そこでも、雰囲気的な違いはあったりするのでしょうか?

吉田:今回のシナリオでは、イヴァリースアライアンスのなかで、設定はあれど描かれなかった部分にもスポットが当たります。そこは、注目していただきたい部分ではあります。

 “そもそも聖石とはなんなのか”“聖石から力を引き出すというのはどういうことなのか”ということを、松野さんがあらためて提示してくれているシナリオになっています。『FFXIV』においてのイヴァリース、獅子戦争の裏側にあったものは何なのか。はたして、今まで語られてきた獅子戦争とは史実なのか物語なのか……深読みが色々できると思いますので、そういうところを全部見てもらえるシナリオになっています。

――ちなみに、パッチ5.0でン・モゥ族が新蛮族として登場するという発表がありましたが、“リターン・トゥ・イヴァリース”にも登場しますか?

吉田:いえ、登場しません。ン・モゥ族は、パッチ5.0の雰囲気をファンタジー側へ舵取りしたいという思惑があって、これまでの『FF』シリーズに登場してきたファンタジー感の強い種族を出そうというところからチョイスした一例です。ですので、イヴァリースとは絡んでいないと思っていただいて問題ありません。

――BGMに関しては、これまでのイヴァリースアライアンスのBGMを使ったものになるのでしょうか?

吉田:はい、すべてイヴァリースアライアンスのBGMになっています。松野さんからは「祖堅(正慶氏/サウンドディレクター)さんがイヴァリース用に書いてくれた曲も聴いてみたいなあ」というご要望もいただいていたのですが、祖堅からするとイヴァリースを支えてきた数々のBGMが完璧すぎて、アレンジしても原曲以下にしかならないと。祖堅なりの音屋としてのこだわりのようでした。

――今回で“リターン・トゥ・イヴァリース”という物語群はひと区切りとなりますが、パッチ5.0以降も何らかの形でイヴァリース関連の要素が出てくることはありますか?

吉田:松野さんは、『FFXIV』が描いている世界観・設定・ストーリーというものを本当によく理解し、世界設定の織田に確認や提案をしていただき、惑星ハイデリンという世界の上に“イヴァリース”という新たな歴史や土地、場所、人というものをすごくていねいに実在させてくださいました。“リターン・トゥ・イヴァリース”という物語群がここでクローズしようとも、それらの存在は惑星ハイデリンにあった歴史の1つとして組み込まれています。この先、ダルマスカなどに注目が行かないかというと、そんなことはないと思います。ダルマスカも帝国によって粛清の嵐に巻き込まれてしまいましたが、今の反帝国という機運のなかで「いずれダルマスカをなんとかしよう!」という話が出てこないとは限りません。

 『FFXIV』とイヴァリースという分け方ではなく、NPCとして登場するジェノミスが如く、松野さんが『FFXIV』の世界にイヴァリースというものの実在を証明してくださったというか……。それをしっかりと……うーん、活用するという言い方も、もはや違っていますね。例えば、サベネアと呼ばれている、現在では名前しか出ていない地域がありますが、『FFXIV』ならではのイヴァリースや、それに関連する地域は、サベネアと同じように1つの地域として確立したと思っています。機会があればさらに描いていきたい部分です。

■まさかの麻雀! パッチ4.5は驚きのコンテンツが盛りだくさん

――“青龍征魂戦”が実装されますが、具体的にストーリーとしてはパッチ4.5で完結するのでしょうか?

吉田:きれいに完結します。

――バトルとしては青龍が最後になるのでしょうか?

吉田:そうですね。朱雀は朱雀でかなり妙なキャラ立ちをしていましたが、青龍も一筋縄ではいかない性格です。ちなみに、今回はイケメンです(笑)。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――白虎、朱雀はこれまでの蛮神と比べるとオリジナリティの強いバトルが展開しました。その点で、今回も青龍ならではの独自性がありますか?

吉田:その点は、僕個人としては苦笑いな部分でして。もちろん、毎回楽しんでいただこうと思って作ってはいますが、白虎や朱雀の履行のバランスがあまりよくないと感じています。とくに朱雀がそうですが、演出が長すぎてなかなか仕切り直しもできないですし。開幕もすぐに朱雀が飛び立つせいでバフを持て余しますし、個人的にはフラストレーションが……。

 以前からお話しているように、若いスタッフがチャレンジしていっている部分でもあるので、失敗を経験することは悪いことではありません。ただし、さじ加減に気をつけるようには伝えました。ミニゲームがあればいいというものでもないですし(苦笑)。そういう話をしたうえでの青龍戦なので、これまでの『FFXIV』らしいコンテンツ+新しいアイデアが入ったコンテンツになっていると思います。

――ストーリー的にはいかがですか?

吉田:それぞれのキャラクターたちがどんな想いで黄龍を封じたのか。長く連綿と続いている東方の古い歴史に光の戦士たちがかかわってもなお、それを飲み込んで脈々と続いていくというところは、西洋にはない東洋らしい物語性です。また、テンゼンというキャラクターが『FFXIV』の世界では、どんなふうに生きてきたのか、というあたりも『FFXI』ファンが納得できる終わりになったかなと。

――既存コンテンツの追加要素としては、4人目のお得意様が実装されるとあります。どのNPCが対応するのでしょうか?

吉田:4人目はアドキラーです。イディルシャイアにいる、あのポーキーヘッドの彼ですね。その素顔は……!? みたいな。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――ということは、着せ替えも可能なのですね。

吉田:はい、可能です。

――ちなみに、報酬の黄貨と赤貨は、どれぐらいになるのでしょうか?

吉田:アドキラーが一番高くなり、残りの3人は横並びになります。

――なるほど。となると、今後も新しいお得意様が実装された際は、新しいお得意様が一番高く、残りが横並びになると考えてよいのでしょうか?

吉田:そのイメージであっています。

――シロ・アリアポーと同じ建物なのは助かりますね(笑)。

吉田:あと、お得意様用のレシピリストが縦に長くなりすぎたので、キャラクターごとにお得意様用のレシピを整理することにしました。この辺りは機能面も拡張しています。

――ちなみに、黄貨・赤貨の交換に追加はありますか?

吉田:多少はありますが、装備などが目玉なわけではありません。

――となるとクラフター・ギャザラーの装備の更新もなさそうですし、現行の装備で拡張に挑むことになりそうですね。ギャザクラの拡張といえば、イシュガルド復興が大きな話題を呼びましたが、プレイヤーからの反応はいかがですか?

吉田:やはり日本のプレイヤーのみなさんの期待が高いように感じます。先日、たまたま私用で北海道にいく用事がありまして、その際にエオルゼアカフェ札幌出張店に顔を出したのですが、そこがイシュガルドをテーマにしていることもあってか、「イシュガルド復興が楽しみです」というお声を多くいただきました。「がんばってください!」とも言われましたが、復興をがんばるのは、僕らではなくみなさんなので「みなさんも、がんばってください」と答えておきました(笑)。

――月末のプロデューサーレターLIVEでは“ドマ式麻雀”が実装されるという発表があるそうですが、ルールとしては普通の麻雀ですか?

吉田:はい、日本で一般的なルールの麻雀です。基本的にはゴールドソーサーに置いてありますが、マッチングにも対応しています。世界設定としてはドマを開放したことで、ドマで古くから遊ばれているテーブルゲームにマンダヴィル家が目をつけた……という感じでしょうか。

 先ほどの「MMORPGではあるけれど、もっと気軽に1人で遊べてもいい」というところにもつながりますが、麻雀に限らずポーカーなど世界中にある本格的なテーブルゲームを、『FFXIV』のゲーム内で遊べて悪いことはないと考えました。もちろんオリジナルのコンテンツも制作していきますが、これだけたくさんの人にプレイしていただいているゲームですし、アバターとしてのプレイヤーキャラクターにも相当な愛着があると思います。そうなのであれば、もっと“オンラインゲーム”としてできることを増やすのもありではないか、と。今回はその第一弾として本格的なオンライン麻雀を目指して制作されています。フリートライアルの人でも遊べますので、オンライン麻雀をプレイしたくなったら、『FFXIV』をどうぞ(笑)。

――ルール解説なども同時に実装するのでしょうか?

吉田:はい、今回初めて麻雀に触れる方も多いと考えましたので、そういった初心者の方への対応は、すべて実装されています。とある会社さんの全面協力を受けて、実績のあるオンラインゲーム用麻雀エンジンを導入させていただいています。今後、さらに細かいルールも設定できるようにしていく予定です。

――NPCとの対局も可能ですか?

吉田:もちろん可能です。コンテンツファインダーのマッチング待機中にCOM戦をやってもらってもいいですし、ひと通りのコンテンツを遊び終えた頃に、FCメンバーと一緒に遊んでいただきたいなと。ちなみに、牌は現実と同じものとドマ式牌の2つから選べます。

――それはグッズとして出してほしいという人も出てきそうですね(笑)。

吉田:若い世代の光の戦士は、そもそも麻雀を遊んだことがないという人もいると思います。そのあたりの人も遊べるように、ルールもしっかり覚えてもらえるように作ったつもりです。

――ちなみに、海外プレイヤーから見た場合、麻雀というのは、どのような認識なのでしょうか?

吉田:アメリカにも麻雀協会がありトーナメントが行われていたりしますが、多くの人は日本でいう“上海”というゲームを連想するみたいです。

――アジア版にも実装予定はありますか?

吉田:はい。ただ、中国麻雀は日本のものとはルールが違います。ですので、今回はドマ式麻雀を覚えていただこうかなと(笑)。いずれ派生ルールは増やそうと思っています。

――いずれ“ザ・フィースト”みたいに、大会に発展すればおもしろいですね。

吉田:盛り上がれば、考えてもいいかもしれませんね。コンピュータ麻雀ですので、手打ちより遊びやすいと思いますし、COM戦もありますから、多くの人に触ってみてほしいです。点数も自動計算してくれますし、コンピュータの指示に従って打っていくだけでも十分遊べます。

■これからの5年を見据えた『FFXIV』のさらなる展開――

――パッチ4.5のお話ではありませんが、パッチ4.5 Part.1実装直後に欧州ファンフェスティバルが開催されます。その見どころを、お話できる範囲でお願いします。

吉田:現時点でお話できるのは、冒頭のトレーラーをお見逃しなく、というくらいでしょうか。今までのファンフェスの流れですと、北米のファンフェスでティザートレーラー、最後の日本のファンフェスで完全版が公開されます。その間の1回は、すでに知っている映像が流れていたのですが、今回はココも変えました。

 また、トレーラーの作り自体も今までとは制作方針を変えています。シーンの追加や入れ替えをいろいろやっているので、また新たな気分で冒頭のトレーラーを見ていただけるかと思います。

――情報は増えるけれども、そこもまだ全貌ではないんですね。

吉田:現時点の皆さんの予測が、さらに混沌とするかもしれません(笑)

――パッチ5.0の舞台は鏡像世界なのか過去なのかと、いろいろ話題になっていますよね。

吉田:すごいですね、みなさんの想像力。それを拝見するのがとても楽しいです(笑)。

――2018年も12月に突入しましたが、今年を振り返っていかがですか?

吉田:毎年のことなのですが、歳のせいか、時の流れが恐ろしく早いです。ついこの前、E3だった気がしていて(苦笑)。『漆黒のヴィランズ』の開発自体は、2017年から仕込み始めているので、じつは今年の話ではないのですが、やはり僕にとっては拡張版開発の印象が強いです。

 MMORPGは、お客様の趣味や趣向、時間の使い方がものすごく多様化した今の時代に、わざわざ集まって遊ばないとおもしろさが伝わらないという、ものすごく贅沢な遊びです。時代が違えば、もっとたくさんの人に遊んでもらえているかもしれないな、と思うこともあります。でもこの時代に『旧FFXIV』の苦しいスタートから、ここまで登ってこられたこと自体のイレギュラーさも理解しています。

 それを踏まえて“『FFXIV』をどのレベルまで拡大していくべきか”“5年先を考えたときに、どういう位置にいるべきか”など、今決断したもの・考えたことが、5年後の『FFXIV』の姿を大きく左右するだろうと思っていたのが、去年の暮れくらいでした。『紅蓮のリベレーター』をリリースしたあとの状況データとにらめっこしながら、それと同時にオンラインゲーム市場も見て……「さて、どうしようかな」と。『FFXIV』というゲームは、何百人ものスタッフの人生を使わせてもらって作り続けている作品です。どこまで自分のワガママを押し通していくべきなのか、というのも真剣に悩んだポイントです。一生に一度やれるかどうかのチャレンジですので、「ここまできたら、いけるところまでいくか!」と、腹を括ったのが今年です(笑)。

――ここまで大きな規模のゲームになると、背負う責任の重さも尋常ではないと思います。

吉田:目標を「ここでいいか」と思ってしまうと、きっと結果はそのちょっと手前で着地してしまう。もっと上に行くための明確なゴールを定めました。そこからは、ひたすらパッチ4.Xの陣頭指揮を取りながら、拡張版の開発を並列で行ってきました。僕が最初にパッチ5.0の“テーマ・行くべき場所・大まかな雰囲気”を決めて、トレーラーの字コンテを書き始め、そこにシナリオチームを巻き込んでいって……今に至ります。そんなわけで、パッチ4.Xを進めながらも僕のなかで今年はパッチ5.0が多くを占めていました。

――パッチ5.0というのは、これまでの5年だけでなく、これからの5年を見据えた拡張になるんですね。

吉田:そうですね。繰り返しになりますが“MMORPGだけど1人で遊べてもいい”ということも、その覚悟の1つです。会場で発表した“フェイス(NPCを連れて冒険できる要素)”や“強くてニューゲーム(クリアしたストーリーを強いまま再挑戦)”といった、1人で遊ぶ系のシステムに関しての大幅な新しい試みが多いのも、その現れだと思っていただければと。

 ドマ式麻雀もそうですが“RPGですらなく、オンラインゲームの要素が全部『FFXIV』に集まっていても悪いことはないだろう”ということですね(笑)。もっともっとMMORPGの価値観を良い意味で壊していきたいなと。こんな考え方をするのも僕くらいしかいないだろうと思っているので、だったらみんなで一緒に思い切ってやるか!という心境です。

――では、最後にパッチ4.5のどこに期待してほしいか、光の戦士たちにメッセージをお願いします。

吉田:新年1月8日リリース予定のパッチ4.5は、次期拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』への導入だけでなく、コンテンツ量も非常に多いです。既にパッチ4.5だけで幾つかのシリーズパッチが用意されており、皆さんのプレイコンテンツが枯渇しないよう、これらを順次投入していきます。また、欧州、そして日本と続くファンフェスティバルもさまざまな趣向を凝らした一大イベントとなりますので、ぜひ、ゲームだけでなくそちらにもご注目ください。パッチ4.5では『FFXIV』初の仕組みを持ったリミテッドジョブ・青魔道士がついに実装となります。みなさんが想像されている以上に、時間泥棒で試行錯誤ができる、まったく新しいジョブになっています。世界中のプレイヤーと情報交換しながら、お楽しみいただけると幸いです。

 光の戦士のみなさん、電撃プレイステーション読者の皆さん、今年も大変お世話になりました。来年の『FFXIV』はさらなる高みを目指すため、チャレンジスピリットをこれまで以上に強く持って、開発と運営にあたります。みなさん、今後とも『ファイナルファンタジーXIV』をよろしくお願いします。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

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