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2019年2月7日(木)

『アリス・ギア・アイギス』のBGMやSEにこめられたこだわりをひも解くサウンドインタビュー【アリスギア特集6】

文:Leyvan

 コロプラが配信中の、iOS/Android用アプリ『アリス・ギア・アイギス(通称:アリスギア)』。2019年1月22日にサービス開始から1周年を迎えた本作の、ゲームを彩るサウンドについてのインタビューをお届けします。

『アリス・ギア・アイギス』

 『アリスギア』は、数多くのプラットフォームでゲーム開発を手がけた老舗ゲーム開発会社であるピラミッドが開発・運営を行うアクションシューティングゲームです。

『アリス・ギア・アイギス』

 音楽は、数多くのゲーム音楽を手掛けているタイトーサウンドチームZUNTATAの石川勝久さんが効果音並びにサウンドディレクションを担当しており、旧ZUNTATAメンバーで現在はフリーランスのサウンドデザイナーのCOSIOさん、旧ZUNTATAメンバーの渡部恭久(Yack.)さん、ZUNTATAの土屋昇平さん、下田祐さん、MASAKIさんが制作しています。

 『アリスギア』の1周年を記念し、石川勝久さん、COSIOさん、プロデューサー/開発ディレクターの柏木准一さんにインタビューを行いました。『アリスギア』ファンはもちろん、ZUNTATAサウンドファンも見逃せない内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

【インタビュー参加者プロフィール】※インタビュー中は敬称略

石川勝久(ばび~)さん:タイトーサウンドチームZUNTATAの5代目現リーダー。効果音の製作やサウンドディレクションを専門としており、『アリスギア』でも効果音とディレクションを担当しています。

COSIOさん:2015年までZUNTATAに在籍し、その後フリーのサウンドデザイナーに。DJ活動の他、ゲーム楽曲の作編曲で活躍しています。『アリスギア』ではホーム画面や前半のバトル曲を担当。

柏木准一さん:株式会社ピラミッド代表取締役社長。『アリスギア』のプロデューサー/開発ディレクター。社長でありながら、現場で『アリスギア』をはじめ、さまざまなタイトルの指揮を取っています。

『アリス・ギア・アイギス』
▲写真左からCOSIOさん、柏木さん、石川さん。

 なお、好評発売中の『アリス・ギア・アイギス オリジナルサウンドトラック』の、視聴動画が公開されています。インタビュー中で話題になる楽曲も視聴できるので、ぜひこちらを聴きながらインタビューを読んでみてください。

●【公式試聴01】アリス・ギア・アイギス オリジナルサウンドトラック

【公式試聴01】視聴可能曲

01:『Silver Sky』(0:27~)作曲:COSIO
02:『Cerulean Flyght』(1:21~)作曲:COSIO
03:『Air-raid Alarm』(2:28~)作曲:COSIO
04:『Refreshing park』(3:20~)作曲:土屋昇平(ZUNTATA)
05:『AEGIS』(4:08~)作曲:MASAKI(ZUNTATA)
06:『BECAUSE IT'S THERE』(5:12~)作曲:下田祐(ZUNTATA)
07:『SPIRAL 4th』(6:03~)作曲:MASAKI(ZUNTATA)
08:『Over the Future』(7:06~)
  作曲:COSIO
  編曲:石塚 玲依(株式会社イマジン)
   歌:比良坂 夜露(声優:沼倉愛美)
     兼志谷 シタラ(声優:内田真礼)
     百科 文嘉(声優:石川由依)

●【公式試聴02】アリス・ギア・アイギス オリジナルサウンドトラック

【公式試聴02】視聴可能曲

01:『VANGUARD』(0:27~)作曲:MASAKI(ZUNTATA)
02:『COURAGE』(1:20~)作曲:下田祐(ZUNTATA)
03:『RHYME CRIME PART TWO』(2:19~)作曲:下田祐(ZUNTATA)
04:『Headhunted Aegis』(3:11~)作曲:COSIO
05:『VALKYRIE』(3:47~)作曲:MASAKI(ZUNTATA)

絶対に曲を聴いてほしいからZUNTATAさんに作曲をお願いした

──最初に、柏木さんにお伺いしたいのですが、『アリスギア』の音楽をZUNTATAさんにお願いしようと思ったきっかけ、始まりについて教えてください。

柏木:まず、僕らはスマートフォンのゲームを『アリスギア』の前も何本か作ってきました。スマートフォンのゲームだと、結構頑張って作っても、サウンドをあまり聴いてもらえないなと感じるところがあったんです。

 じゃあ、音楽をちゃんと聴きながらゲームをしてもらうにはどうしたらいいのか? というのを考えて、ZUNTATAさんに曲を作ってもらえば、聴いて欲しいとお願いせずとも絶対にちゃんと聴いてもらえるだろうと、そう思ってZUNTATAさんにお声がけさせていただきました。

 もちろん、今まで一緒に仕事をした中で、すごく信頼していたということも大きかったです。

──ZUNTATAさんに対する信頼があったということですね。

柏木:ヘッドホンを着けて遊んでもらいたくて、それならZUNTATAさんにかっこいい曲を作ってもらうしかないなと。

──思わずゲームを止めて音楽を聴きたくなるような曲もありますね。ちなみに、「こういうイメージの曲にしてほしい」というような作曲に関する指示などはありましたか?

石川:柏木さんから全体に関してお願いされたのは、「メロディはすごく重要だから、メロディでプレイヤーの耳に残るようなものにしたい」というのがありましたね。後は、バトルをするゲームなので、ある程度テンポ感は必ず必要だとも言われました。

 もう1つは、シリアスになりすぎないようにっていうのがありましたね。『アリスギア』はキャラクター的にはかわいらしいのですが、実はストーリー的には重厚な、ヘビーなところがあります。日常はその上で流れていくゲームなので。

『アリス・ギア・アイギス』

──楽曲を聴いていて、まるで昔の、いい意味で古きよきアーケードゲームのようなシリアスな曲調もありつつ、ポップな感じの明るい雰囲気を感じました。

石川:そうですね。あまりシリアスになりすぎないように、なおかつ戦っている感じは出したくて。ZUNTATAはこれまでシリアスなゲームを作曲してきたことが多いので、そのさじ加減が最初がなかなか難しくて……、柏木さんとはだいぶ話し合いましたね。

──例えば、ボツになってしまった曲などもあるのでしょうか?

石川:死ぬほどありますよ(笑)。『アリスギア』に関しては、たぶん僕がいるZUNTATAで作った中で、一番リテイクが多かったのではと思いますね。

COSIO:そんなにあるの!?

石川:うん、多い。

柏木:それはまことに申し訳ございません……。

COSIO:あまり、そういうイメージがなかった(笑)。

石川:リテイクが多かった最初のころは、COSIOはまだ参加してなかったからね。最初はZUNTATAの内部のメンバーでやっていたんですけど、作業しているうちに「あれ? これはボリュームがでかいぞ」と気づきまして。

 アーケードくらいのボリュームを考えていたんですけど、柏木さんの話を聞いていくうちに、実はアーケード以上のボリュームになるぞって。これは内部のメンバーだけではとてもまかないきれないと、あわててCOSIOを召喚したんです。

COSIO:その時、別の仕事をしていたのをいったん中断しましたからね。『reZonance world ~ZUNTATA 30th ANNIVERSARY~(レゾナンスワールド)』に入っている、リミックスの作業をやっていたんですよ。そうしたら、とりあえずそれをいったん止めてくれと言われて。

石川:『レゾナンスワールド』のDISC1が、COSIOによるリミックスアルバムになっているんですけど、あれは実は、別のアルバムとして1枚で出す予定だったんです。

 それが、『アリスギア』をCOSIOにも手伝ってもらうことになって、リミックスの作業時期が変わったため、ZUNTATA30周年アルバムに統合したんですよ。

COSIO:そうそう。結果的にいい感じに落ち着いたけど、30周年アルバムの1枚目になるのかって(笑)。気軽にリミックスやるよって言っちゃったけど、「おいおい大丈夫?」ってなりましたね。

『アリス・ギア・アイギス』

戦闘曲として「これだよ!!」と感じた『Silver Sky』

──本来やっていた作業を後回しにせざるを得ないほど、『アリスギア』の楽曲のボリュームがすさまじかったんですね。

石川:そうなんですよ。後は、柏木さんもわりと「お任せします」的なことを言いつつも、実はこだわりがやっぱりあって。そのあたりを、柏木さんとZUNTATAでコンセンサスを取るのが、初期のころはなかなか大変でした。

柏木:日常曲とかは、わりと全部ほぼいただいたままでOKだったんですけれど、バトル曲のイメージがなかなか固まらなかったですね。

──それは、どういう風に落ち着かせるのかというバランスですか? どこまでシリアスか、どこまで明るいか、どこまでアップテンポなのかとか……。

柏木:最初に、“90年代の古きよきシューティングゲーム風なテイストを残しつつ今風”っていう、抽象的なことを言っていたのがだいぶ悪かったと思うんですが。

───最初に出来上がったバトル曲は『Silver Sky』でしたっけ?

石川:COSIOに参入してもらってから、最初にOKが出たのが『Silver Sky』です。

──『Silver Sky』はすごく印象的で、『アリスギア』の戦闘曲というとまずこれが頭に浮かびます。

COSIO:ゲーム内でも、わりと早い段階で流れますしね。

石川:『Silver Sky』は最初にCOSIOから上がってきた段階で、「これだな」って思いましたね。メロディがしっかりあって、テンポ感、疾走感もあって、かつ未来感がある。やっぱりSFなので、SF感が欲しいなというのがありました。

柏木:硬質的な音の中にも暖かさというかそういうのがあって、イメージ的にも女の子がバトルしている感がありますよね。

『アリス・ギア・アイギス』

COSIO:石川さんは苦労していたと思うんですけど、実は僕はあまり苦労をしたという記憶がないんです。

石川:そもそも、COSIOの楽曲は『アリスギア』の世界観には無理なくハマるなと思って召喚しましたから。

COSIO:そうですね。実はタイトー時代も『アリスギア』のような、美少女キャラクターが出るシューティングやアクションゲームの楽曲を作りたかったんです。タイトーで最後に美少女が出たのは『サイキックフォース』シリーズ(※1)じゃないですか。

石川:『アイドルクロニクル』(※2)がありましたよ!

※1『サイキックフォース』シリーズ:タイトーが製作した3D対戦型格闘ゲーム。1996年に稼働したAC『サイキックフォース』を皮切りに、プレイステーションやドリームキャストなどコンシューマでもシリーズ作品が発売されました。

※2『アイドルクロニクル』:タイトーが配信していたiOS/Android用アプリ。マネージャーとなり3人のアイドルを成長させていく育成SLGで、ライブ映像を簡単に動画サイトに投稿できるシステムを搭載していました。2016年5月にサービス終了。

COSIO:シューティングじゃないしアクションでもないじゃん!

柏木:『ダライアスバースト』(※3)にも美少女出ていますよ。

COSIO:Ti2(※4)は曲がない! 僕はTi2の曲作りたかったんですよ。でもTi2に当てる曲がないって言われたから……。

柏木:そうですね(笑)。

※3『ダライアスバースト』:タイトーから発売されたPSP用STG。開発はピラミッドが担当。その後ACやアプリでもシリーズが展開。BGMはZUNTATAの土屋昇平さんをメインに、COSIOさん、小倉久佳さんが参加しています。

※4 Ti2(ティーツー):『ダライアスバースト』シリーズに登場するシルバーホーク1号機のパイロットで、美少女の姿をした人間型AI端末。『アリスギア』と同じく島田フミカネさんがデザインを担当しています。

COSIO:ほら! だから僕は、そういう鬱屈した思いをずっと溜めていて、『アリスギア』が美少女×アクションシューティングだというのを聞いて、ああこれはもう頑張るしかないなと。

 最初に、そういう美少女のイメージといろいろな資料をもらって書いたのが『Silver Sky』だったんです。

 今でも覚えているのが、石川さんに出来上がった『Silver Sky』をメールで送って、返信で「これだよ!!」って書いてあって……。「おお、アツいな」って思いましたね。じゃあこの方向で行きますかとなりました。

『アリス・ギア・アイギス』

──僕らプレイヤーからしても、まさに「これだな」という感じです。

石川:やっぱり、いくらかわいい女の子が出てくるとはいえ、あまりポップすぎても違うなと思ったんですよね。一応戦う、死ぬだの生きるだのというバトルじゃないですけど、それでもやっぱりバトルの緊張感みたいなものは少し欲しいので、『Silver Sky』はそれがうまくバランスがとれている曲だと思います。

──アクトレスたちの命のやり取りはない、死ぬことはないと設定であるとはいえ、痛みを伴う戦いだという緊張感はあると考えると、その緊張感というのが伝わります。

COSIO:バランスに関しては、僕はずっと美少女のアニメとかが好きで、そういう明るい曲が書きたかったんですけど、その通過点として『ダライアス』を通ったのが、ある意味よかったかもしれないです(笑)。

 『ダライアス』でこういう明るめの曲を書いていたら、全部ボツにされましたから。こうじゃない! こんな明るくないよ『ダライアス』は! って(笑)。

柏木:それはどのへんの『ダライアス』ですか?

COSIO:『バースト』ですよ! だから『ダライアス』の時は渋めというか、シリアスに寄った感じの曲を書いていたので、その反動もあったのかなと思います。なので、僕の曲はそんなに苦労したという覚えはなくて。僕自身の曲はリテイクもそんなになかったですよね。

柏木:そうですね。

メリハリが出るように外れ気味な曲も作る

──『Silver Sky』は少し明るい雰囲気も感じますが、ボス戦は一転して緊張感があふれる曲になることが多いですね。

柏木:そこは石川さんと調整を重ねましたね。僕は『Silver Sky』を聴いて、明るい雰囲気でもう少し押したいなって思っていたんですけど、石川さんからは、ボスのところは重かったりだとか、緊張も少しするような曲にしたほうがいいという話がありました。

石川:全体的に緩急が欲しいかなというのがありました。ボスだけではなくてバトルでも、全部が爽やかにメロディがメロメロしているのもいいと言えばいいんですけど、それでは飽きてきてしまうので。

 『Silver Sky』が基本路線としてあって、それ以外にメロがなくてリズムだけの曲があってもいいし、ゴリゴリと低音が来るような曲があってもいい。そういう緩急がある程度あってからこそ、メインのノリのいい曲が光ってくるのかなと思います。

 そういう意味では、ちょっと『アリスギア』では外れ気味かなという曲も一部は入っているんですよね。そこは柏木さんにも飲んでいただいたというか、僕のほうから言ってある程度容認していただいたというのがあります。

柏木:実際に『アリスギア』のゲームに曲を合わせてみて、石川さんが言っていることがすごく理解できました。ボスが登場したところで緊張感がある曲が聞こえ始めるのが、非常にマッチしていました。

 曲単体で聴いていると合うかの判断が難しかったのですが、ゲームシーンと合わせることで、すごく納得できました。

COSIO:テンポがゆっくり目の『Bronze Gate』は議論がありましたよね。これは僕の戦略上のミスなんですけれど、この曲を3曲目に提出しちゃったんです。なので、『Silver Sky』の路線がいいねって言われていたのに、3曲目でこれかよって(笑)。

 石川さんも言っていますが、僕もバトル曲を書く中で、こういう曲がメリハリとしてあったほうがいいと思っていて。ちょっとアンビエント(※5)っぽい雰囲気がある曲を書きたかったのもあります。

 本当は、もう少し他の曲を書いてから出そうと思っていたんですけど、タイミング的に先に『Bronze Gate』ができてしまったのもあって最初のほうに出してしまったら、これはバトルにどうなのかって話がありましたよね。

※5 アンビエント:環境音楽のこと。比較的静かな音響の変化を基調として、ある特定のシーンで雰囲気を添えることを目的としたもの。

──曲が書き上がるのが速かったんですね。

COSIO:アンビエントが得意なのもあって、アンビエント調の雰囲気のある曲を書こうと思ったら、先にできあがってしまったんです。

石川:『Bronze Gate』はメロディの後ろがすごくスペーシーですよね。

──宇宙で戦っている感覚があります。ゲームでも“調査任務”など、実際に宇宙の場面で流れますしね。

COSIO:そうなんですよ。実際ゲームにあててみると、この曲が意外とあっているんですよ。こんな感じで、バトル曲の中でのメリハリを大切にしています。

『アリス・ギア・アイギス』

バトルシーンが浮かばないまま作曲を!?

──先ほど話が出ましたが、ゲーム画面には後から音楽をあててみるんですね。

石川:話をいただいてしばらくの最初のころは、背景のイメージ画と3キャラクターくらいの立ち絵しかなくて、実はどういうゲームなのかが全然見えていませんでした。

 企画書やストーリーを見ると、重厚なしっかりとしたストーリーがあるのがわかったのですが、ゲームとしてはどういうものになるんだろうと。説明を受けても今のバトルシーンのような絵がなかなか頭に浮かばなくて、そこが大変でしたね。

柏木:街の絵だけはわりと最初のころにお見せできたんですけど、そこから先の宇宙だったりとかが、イメージボードしかなくて……。

──今みたいな、激しいアクションバトルになるとか、おちゃらけたイベントシーンがあるとかはわからないままだったのですか?

石川:そうです。なので、想像したよりもゲームのテンポが速かったなというのと、想像以上にぶっ飛んだイベントが多いというのが驚きましたね(笑)。

──バトルのステージを意識して作曲することなどはあるんでしょうか? 例えば、敵の出現タイミングを考えたりだとか。

柏木:例えば、曲のテンポが速いのでゲームのスピード感を速めるとか、曲を聴いてみて盛り上がるところで敵をバーンと出そうとかはできると思うんですが、その逆は難しいと思います。

 『アリスギア』だと、テンポ感みたいなところは合わせている部分もあるのですが、曲調に合わせて敵を出すというのは、タイムラインで敵が出てくるゲームではないので、そういう調整はしきれていません。

COSIO:僕は本当は、ゲーム画面がちゃんとできてから作曲するほうがラクなんですけどね。

石川:そうです。だから本当はステージができてから曲を発注していただけると……。

柏木:そういうタイミングにはちょっとならないかな(笑)。それにもう運営フェーズに入っていますからね。余裕のあるスケジュールではなかなか進めませんよ。

──例えば、これからの『アリスギア』の新曲をオーダーするとなると、具体的なステージとかも見られることもあったり?

柏木:いやあ、相変わらずあやふやな感じでお願いしていますよね。

石川:でも、逆にがっちりと「こうだ!」って言われるのも困っちゃうんですよね。こういう曲じゃないとダメなんだ! ってなると、それは逆にそういう曲を明確に書ける人に頼んでくださいとなってしまうので。

 僕らとしては、だいたいの感じを言ってもらって、後はある程度こちらにお任せしていただいて、キャッチボールしながら決めていくという昔ながらのやり方でやるのが一番なのかなと思いますね。

──イベントシーンについてはいかがでしょうか。

柏木:イベントはとにかく何もない状態で、「こういうシチュエーションで」というのだけ出して曲をお願いしました。イベントは正直、BGMの作業をしていた時と、最終的に実装されたものが完全に別物になっていますね。

 開発の初期段階では、いわゆるキャラクターの立ち絵で見せる紙芝居の延長のようなシステムと、軽い内容でシナリオを作っていたのですが、色々ありまして「これじゃあこの先戦えないよね」となり、システムもシナリオも全部作り直しました。

 今後の標準に合わせるためにキャラクターモデルが動くポリ劇(リアルタイムムービー)のシステムに作り直したのですが、現状そうしたポリ劇でイベントシーンを作っているスマホのゲームがほとんどなくて……。どんどんポリ劇のゲームが増えてくると予測していたのですが。

COSIO:そう言われれば、イベントシーンはポリ劇でしたね。力のかけ具合がすごい!

『アリス・ギア・アイギス』

柏木:コストをかけたお話を読んでもらうためにはどうしたらいいのか考えた結果ですね。新規のIPですから、ちゃんと読んでもらうために「これは飛ばせないな」「読んでもいいかな」と思わせるしかありません。ですから僕らも必死でした。

──見ごたえがあって、読みたくなるイベントシーンばかりです。クオリティ的にも内容的にも、いろいろな意味で。

『アリスギア』を彩る印象深い楽曲たち

──皆さんが、もっとも印象に残っている楽曲はなんでしょうか?

石川:僕はやっぱり『Silver Sky』ですね。さっきいろいろ語ってしまったので、理由はそんな感じです(笑)。

柏木:僕は、工業地帯の場面でかかる『Steel Grey Breaker』です。早く敵を倒さなければならないタイムアタック系の場面でもよく使っています。

 曲をゲームにあてる作業をしながら、この曲多めに使いたいなと思って結構あてていましたね。場面にあわせて曲は作っていただいているんですが、一部のこういったゲームの展開に合わせたような曲は、わりと自由にいろいろなところで使用しています。

『アリス・ギア・アイギス』
▲筆者が勝手に「ジニーのテーマ曲」だと思い込んでいる『Steel Grey Breaker』。静かに燃え上がる闘志のような曲調で、ゲーム中でも多くのステージに採用されています。

石川:『アリスギア』は基本的に、キャラクターではなくステージで曲が作られています。そもそも、BGMを作っていた時はキャラクターが最終的に何人になるのかもわかっていないし、プレイヤーがどのキャラを選ぶかというのもわからない。だから、ステージとシチュエーションで曲ができているんですよ。

 これは格闘ゲームでもそうなんですけれど、キャラクターに曲をつけるか、ステージに曲をつけるかで2通りの曲のつけ方があると思うんです。

 『アリスギア』の場合は、ストーリーがしっかりとあって、ストーリーの展開やシチュエーションで同じキャラクターでも置かれた立ち位置が変わってくるので、キャラクターのテーマにしてしまうと合わない場面も出てきてしまいます。

 そういう意味では、ステージとシチュエーションで曲をつけるほうが正解だったのかなと思いますね。

COSIO:まあ、ステージやシチュエーションの資料が先にあったっていう理由もありますけど(笑)。

──では、特定のキャラクターをイメージして作曲することはあまりないのでしょうか?

COSIO:僕はありますよ。僕はとにかく『アリスギア』の曲を作る時に、かわいい女の子の曲が書きたいのでかわいい女の子の絵をくれって言ったんです。そうしたらピラミッドのスタッフの方が、一番初期のころの絵を使ってお手製のPC壁紙を作ってくれたんです。

柏木:モック用のキャラクターを使ったやつですね。今まで出していませんでしたが、実はコミックマーケット95で用意した公式薄い本に載せちゃいました。

COSIO:他のキャラクターもいくつかラフをもらって、それを見ながら曲を作っていたんですが、だいたいの曲は楓ちゃんをイメージしていましたね。

 ちなみに僕は『アリスギア』をプレイしていて、楓ちゃんがなかなか来てくれなかったんですが、この前についに来てくれまして。これまで楓ちゃんが来ないとネタにしていたのが使えなくなりました!

──それはおめでとうございます、と言っていいんでしょうか(笑)。

『アリス・ギア・アイギス』
▲1周年記念の余興イベントでも主人公(メインヒロイン)と呼ばれた楓さん。もう1人の主人公は夜露ちゃんだが、1番最初にイメージが仕上がっていたのは楓さんだったという。

石川:他にも、キャラクターのテーマっぽい曲も実はあるんですよね。MASAKIが作った『AEGIS』であるとか、誰とは言いませんが“ぞーさん”というキャラの曲とか。

 後は、下田が作った“リンちゃん探検隊”の『BECAUSE IT'S THERE』ですね(笑)。下田にも聞いてきたんですけど彼もお気に入りの楽曲だそうです。

『アリス・ギア・アイギス』
▲ぞーさん……一体何志谷なんだ……。
『アリス・ギア・アイギス』
▲リンちゃん探検隊の異様な雰囲気を盛り上げる怪しげな楽曲『BECAUSE IT'S THERE』。常軌を逸したイベント内容と相まって、一度聴いたら頭から離れない。

柏木:僕はもう1曲、『アリスギア』の曲っていうと『Refreshing park』が印象的です。日常シーンに合っていて、シナリオのほうでよくかけています。

COSIO:土屋さんの曲ですね。

柏木:これがいい感じというか、『アリスギア』のシナリオの日常のテンポ感を、この曲が作ってくれているところが大きいと思っています。

──ほんわかするシーンもギャグシーンでも使えるし、何気ない会話、たまに真面目な会話でも、なんでもあう感じですよね。

柏木:そうなんです。最初のころはイベントシーンで『Refreshing park』しか使っていなくて、最初から最後までイベントシーンがずっとこればっかりに……。使いやすいんですよ。

COSIO:確かにすごい使い勝手がよさそうです。『アリスギア』の世界観にすごくあっているなと思います。

石川:ニュートラルな日常曲が、最初は『Refreshing park』しかなかったんですよね。なので、後から増やしたんです。

柏木:そうですね。シナリオをちゃんとしたものにしましょうとした時に、曲も増やしました。

石川:リリースされたタイミングでは全部実装されているのでユーザーさんにはわからないですけど、初期のころの日常曲は土屋が作っていて、後から追加された日常曲は下田が作っているものが多いです。

 下田と土屋は音楽的に通じ合うところがある感じがあって、わりと聴いている人にはわからないというか、それほど違和感なくできているかなと思いますね。

『アリス・ギア・アイギス』

──COSIOさんはどの曲が印象に残っていますか?

COSIO:いろいろな曲があるんですけれど、意外と気に入っているのがホーム画面でかかる『Green Office』ですね。

──ホーム画面の曲いいですよね。任務から「帰ってきた」という感じがします。

COSIO:ホーム画面の曲って結構悩むんですよ。どうしてかと言うと、間違いなくプレイしていて一番聴く曲だからなんです。なので、何曲かいろいろ用意して、自分の中でどういうものがいいんだろうと試行錯誤しました。

 あまり展開を付けてしまうとしんどいし、かといって展開がなさすぎると飽きるし、しかも長く聴くことになるので難しいですね。『Green Office』は、ずっと聴いていても気持ちのいい曲を目指しました。

柏木:ホーム画面はシステム的に言うと、すべての遷移のハブになるところなので聴く機会が必然的に多くなりますね。

 『Green Office』が落ち着いていていい曲だからこそ、スカウトのところの『Headhunted Aegis』がすごく“上がる”曲になっていて、僕はすごくいいと思います。

COSIO:『Headhunted Aegis』も評判がいいって聞きましたよ。『アリスギア』をやっている人から「ガチャの曲いいね!」って言われましたし。

──ガチャの結果はともかくとしていい曲だと思います(笑)。

今後も“最高点”以上の曲を作ればいいだけ

──他には印象に残っている曲や、何かエピソードがある曲はありますか?

石川:『VANGUARD』だとか最近のバトル曲を作っているMASAKIからは、『VALKYRIE』が今までの作風からすると珍しいアプローチだったとコメントをもらっています。

──最近は『メガミデバイス』コラボイベントの“SOLラプター トライアルステージ”でも流していましたね。シナリオで大事な曲だと思ったので、イベントで使っていいのかと少し思いました。

柏木:そこはもちろん、内部でも少し議論にはなりました。シナリオの後半のほうで使っているので、大切に使いたいなという話もありました。

 でも、基本的にイベントは期間が終わって閉じてしまったらそれっきりになりますし、シナリオが後半まで行っていない人もたくさんいるので、イベントで聞いてもらう機会があってもいいかなと思って使いました。

 石川さんはこういう曲の使い方はどう思いますか?

石川:『VALKYRIE』は、MASAKI自身も難産で、僕とやり取りをしつつこうじゃないああじゃないとやりながら作った曲です。MASAKIの他の曲、『VANGUARD』や『SPIRAL 4th』は彼の作風でツルっと出てきてOKだよっという感じだったのですが。

 『VALKYRIE』に関してはMASAKIと僕とで、「違うんだ! こうじゃないんだ! 今回はこうじゃない!」と、これまではMASAKIの得意な構成でよかったけれど、今回はちょっと頑張ってみてくれって、だいぶやり取りをして生まれた曲なんです。

COSIO:わかるわかる。すごくハマっちゃうパターンだねそれは。

石川:彼的にも、今までやったことなかったような民族楽器などをフィーチャーして、挑戦だったと思います。

 そういう意味では、せっかくこんなに苦労して作ったので、ユーザーには広く聴いてほしいです。逆に、今後のシナリオでは、単純にこれ以上の曲を作ればいいだけの話なので。

COSIO:おお(笑)。

石川:これがZUNTATAなりMASAKIなりの“最高点”と思われたくはないんです。ゲーム中に今後、もっと重要なシーンが出てきたとして、それに合わせて曲が欲しいと言われれば、今まで以上の曲を作ればいいだけの話だと思っています。とか、自分で作らないので言ってしまいますが(笑)。

『アリス・ギア・アイギス』

COSIO:それ、MASAKIがインタビュー見て「ええっ!?」ってなりますよ。「こんなこと言っちゃったんですか!」って。MASAKIが記事を見てどういう顔をするのかが気になりますね(笑)。

『VANGUARD』は次世代の『Silver Sky』を目指した曲

──MASAKIさんの楽曲の『VALKYRIE』や『VANGUARD』は、プレイヤーからも人気が高いですよね。

柏木:Twitterとかでは、最初のころは「楽曲、ZUNTATAがやってるんだ、いいね」っていう話がよく出ていて、最近はサントラCDで曲名が出たのもありますが、『VALKYRIE』や『VANGUARD』は曲名で「この曲がいい!」って言ってくれる人が増えましたね。

 曲名が書かれて「いいね」って言われるのは、ソーシャルゲームだとまず考えられないので、すごくいいことだなと思います。

──サントラ発売記念イベントの“溝の口シャード集会”もやりましたから、その影響もあるのかなと思います。

石川:『アリスギア』も1年やってきて、『VALKYRIE』のような曲があっても許容できるゲームの幅が出てきた感じがありますね。

 最初のほうはストーリーの序盤でもあるし、ここまで個性的というか激しい曲は、いきなりクライマックスみたいになってしまうので。1年たったからこそ、こういう曲があっても大丈夫だという幅が出てきたなと思います。

柏木:『VALKYRIE』は相当あとのほうでかかりますからね。普通に頭からストーリーをプレイすると、この曲が聞けるところに行くまでに、ちゃんとプレイしていても1週間くらいはかかるんですよ。しかも、クリアするとそのまま聞けなくなってしまうので……。

──『VANGUARD』もストーリーの大事な局面で流れるので、ついのあの“溝の口シャード集会”で聴いた曲が流れたぞって、すごくテンションが上がりました。

石川:ちなみに『VANGUARD』は、いわゆる後半面の『Silver Sky』を目指している曲です。

──『Silver Sky』は新人アクトレス時代の夜露ちゃん、『VANGUARD』はアクトレスとして成長した夜露ちゃんの曲だと勝手にイメージしています。

石川:まさに作る方も実際にそういうイメージで、実際に対になるように作っています。作曲者は違うのですが、COSIOが作った『Silver Sky』をMASAKIに聴かせて、次世代の『Silver Sky』というイメージで作ってくれと言いました。

『アリス・ギア・アイギス』

COSIO:ごめんねMASAKIくん。そういうオーダーって作曲者は困るんですよ。どうしたらいいんだろうみたいな(笑)。

 僕は結構、他の人の曲をこれっぽくしろっていうオーダーは別にいいんですけど、他の人の曲を超えてくれって言われると「おお、どうしよう」って思いますよ(笑)。どっち方向に超えればいいんだって。

石川:MASAKIはCOSIOよりもストレートなところがあるから、逆に後半のアツい感じが出てくるんですよ。『アリスギア』は、最初はどこが中心なのかわからない、バラエティ感があふれる感じでゲームが始まるんですけれど、だんだんと後半に行くにつれて全体が収束していくという物語なので、コンポーザー的にもちょうどいいのかなって。

 後は、後半のバトル曲では下田の曲の『COURAGE』も、これもまた変化球でおもしろいと思いますね。MASAKIの曲は『VANGUARD』のようにストレートな曲なんですけれど、『COURAGE』は、ちょっとレトロな感じがあって……。

COSIO:そうそう! 古いんですよね。古いって言っちゃいけないけど(笑)。古きよき懐かしさというか「ああ、こういうのあったあった」みたいな、昔のゲームセンターで流れていたような。メロディラインとかが90年代! って感じです。

柏木:“ヴァイスコロニー攻略作戦”のところは全部新曲でやりたいという話をして、イメージをとにかく変えてほしかったので、そのように曲を作ってもらいました。

COSIO:だいたいもう、最初からメロディにオケヒ(オーケストラ・ヒット)(※6)を使うっていうセンスがすごいですよ。20年前くらいのセンスです。

※6 オーケストラ・ヒット:オーケストラで全員が同時に音を短く出す「ジャン!」というような音のこと。音の素材としてサンプラーで使用されることが多く、1980年代にサンプラーが普及した際に、多くの楽曲で取り入れられました。そのため、現代の楽曲で使用するとレトロな雰囲気が感じられます。

柏木:僕がオケヒを使ってほしいって言いましたよ。80年代後半から90年代のゲームは、とにかくオケヒでしたからね。アーケードゲームもPCゲームも、やたらサンプリングでオケヒを使っていました。

COSIO:オケヒ全盛期でしたからね。じゃあ『COURAGE』のレトロな感じは柏木さんの仕業なんですね(笑)。

柏木:オケヒはいいなって思って(笑)。

プロの目線から語る楽曲の“エモさ”とは?

──次の質問もこれまでと少しかぶりそうな気がするんですが、皆さんが最高に“エモい”と思っている曲はありますか?

石川:僕は先ほど少し話題に出た、COSIOが作曲した『Headhunted Aegis』が一番エモいと思っています。

 どういうのが“エモい”かっていう基準にもよるんですけれど、『Headhunted Aegis』は曲そのものは僕的には普通だなって思うんです。ですが、これがゲーム内のスカウトの絵に合わさった時の破壊力がすごいんですよ。

 曲だけだと「アップテンポの明るい曲だな」くらいなんですが、スカウトの場面でカメラがパッパッと変わるじゃないですか。その演出との親和性が高くて、絵と合わさった時のエモさがとんでもないなと、すごいなと感じましたね。

COSIO:でも確かこの曲は、まだスカウトの画面がどういうのかわからないまま作っているんですよ。演出を合わせてくれたんですか?

柏木:いや、それはしてないですね。テストでプログラマがさっとつけてくれた演出が偶然音楽とあっていたので、それを最後まで残しておいたんだと思います。

石川:そうなんですね。偶然にしてはすごいエモさを感じますよ(笑)。

『アリス・ギア・アイギス』
▲スカウト画面と『Headhunted Aegis』のシンクロ感は石川さんも舌を巻くほど。曲にあわせて調子に乗って深追いしそうになりますが、常に好調とは限らないので引き際は見極めた方がいいです。

COSIO:僕はもう、任務やマルチプレイの待機画面で流れる『White Lounge』しかないです。“溝の口シャード集会”でも言ったんですが、その時と同じ質問なので、また語らせてください(笑)。

 『White Lounge』はずっとベースラインが一定で、和音のコードがどんどん変化していくという楽曲なんですけれど、そのコードの進行が、普通の一般的にこうするだろうなという進行ではない進行を使っていて、「えっ」と思わせるところが我ながら“エモく”いったなと。普通はこういうラウンジの曲ってあまり凝ったコードの進行は使わないのですが。

 溝の口シャードでも説明したんですけど、進行で普通ならシャープにするところをあえてフラットにするっていうのがいいんですよ。フラットサーティーンスっていうエモいコードで。改めて曲を聞き直したんですけれど、自分で作っておいて「なんでこのコード!」ってなって、自分のファイルを見て「フラットサーティーンス使ってるんだ過去の俺」ってなりましたね(笑)。

 溝の口シャードでは、他の人はストレートに語るだろうから、わざわざピアノまで用意して、フラットサーティーンスをマニアックに語ったんですけど、どれだけの人に伝わったかわかりませんね(笑)。でもMASAKIが横で「わかるわかる」って言っていました。

 それに、またこの曲もゲームの場面にあってるんですよね。任務を選ぶところのBGMにピッタリです。ゲーム画面とも相まって、エモさが結構あるのかなって思っています。

柏木:僕はあまりエモさについては語れないと思うんで、MASAKIさんたちはどの曲がエモいと思っているんでしょう?

石川:MASAKIたちにも聞いておきましたよ。MASAKIは先ほど言ったように『VALKYRIE』が自分でもエモいなと思っている曲だそうです。

 下田は『GIVE IT A WHIRL』を選んでいます。これはCメジャーセブン、Cマイナーセブン、Bマイナーセブンと半音ずつ動く進行が個性が出せていると彼自身は言っています。僕はよくわかりません(笑)。

COSIO:うーん、それはまだ甘いですね。そのコードだといわゆる下降進行なので、まあまあエモいかな? くらいのやつですよ。フラットサーティーンスくらい使わないと。

石川:それはもうわかったよ(笑)。

COSIO:僕はそのコード進行の後に、Bマイナー-5フラット、サーティーンスくらいまでいったらエモいな! って思いますよ!

石川:いや、下田が言う“エモさ”っていうのはたぶん、トラディショナルな、いわゆる伝統的なコード進行がエモいってことだよ。いまいち“エモい”がどういう意味だかよくわからなくなってきた(笑)。

COSIO:心にくれば“エモい”んです!

柏木:溝の口シャードでもそうでしたが、技術論と紐づいてエモさについて語っていくのが、すごくかっこいいなと思いました。

──僕もです。さすが本職の語り方だなって。

『アリス・ギア・アイギス』

テストプレイで聴き続けても飽きない楽曲

──柏木さんは“エモさ”は語れないとのことですが、ZUNTATAさんの楽曲に関して改めて感じることなどはありますか?

柏木:基本的にはどれを聴いてもすごく、特にバトル曲はバトルとマッチするような曲に全部が仕上がっていて、序盤から最新のところまで、全部新鮮な気持ちで気持ちよく遊べるような楽曲になっているなと感じていますね。

 たくさん曲を書いていただいたので、調査任務みたいな形式のシステムも成り立って、なおかつすごくたくさんあるステージと最新のシナリオの差別化だったりとか、最近は高難易度のところだけ別の曲を作ったりだとかを石川さん監修のもとできているので、そこはすごく満足しています。

 一番最初に言った、スマホのゲームなんだけど、しっかりと音楽も聴かせられるものになっているんじゃないのかなと思いますね。

──同じ戦闘でも音楽が違うと気持ちも変わるんですよね。新たな曲が追加されたりすれば、一生遊べてしまいまうくらい曲って大事だなと思います。

柏木:今回は楽曲数も凄く多かったので、テストプレイをする時にはずっとヘッドホンを付けて聴きながらやってました。

 ゲーム作っている人でありがちなのが、テストプレイで聴きすぎてメニューの曲などがトラウマになっちゃうことがあるんですよね。ですが、『アリスギア』は爽やかな気持ちで最後までテストプレイできました。

COSIO:開発やデバッグの人がトラウマにならないように、頑張って飽きないように作曲したのでよかったです!

『アリス・ギア・アイギス』

柏木:『ダライアスバースト クロニクルセイバーズ』の時は、メニューの曲でトラウマになりかけたんですけど(笑)。

COSIO:その曲は僕が作曲しましたね(笑)。

石川:そこは、スマホのゲームとアーケードやコンシューマゲームとの違いかもしれませんね。特にアーケードだと、そんなに何回も連続で聴いたりすることはありませんし、一発勝負のようなところがあるので、曲にかかっている存在感の大きさはあると思います。

 逆にスマホのゲームだと、毎日起動してしょっちゅう聴くことになりますから、何回聴いても飽きないスルメな曲であってほしいですよね。

ギタリストでも難しいコードの楽曲とは?

──では次の質問に行きますね。難しいお題かもしれませんが、この曲は難産だった、この曲は大変だったという曲はありますか?

COSIO:僕が思いつくのは、テーマ曲の『Over the Future』です。この曲は、最初はステージ曲として作ったんですよ。

石川:そうなんですよね。1曲くらいは歌ものっぽい曲があってもいいんじゃないかな、という提案がCOSIOからあって、ステージ曲として作られていたんです。

COSIO:ステージ曲としても、一番最初に聞いてほしいなという感じで、すごいメロディをわかりやすく作ったんです。わかりやすく作ったんなら、もうこれ歌にしちゃえばいいんじゃない? みたいな。

──テーマ曲として歌入りになったのは、後からだったんですね。

COSIO:ボーカル曲にする! と決めてからは、曲はわりとすぐにできたんです。

柏木:それで、声優さんに歌ってもらおうとしたのはいいんですが、急に思い立ったものでなかなかスケジュールが大変でしたね。

石川:実はオープニングアニメも、我々は後から見たんです。なので、「こういうアニメがつくのか!」って、不思議な感覚でしたね。

●『アリス・ギア・アイギス』オープニングアニメーションムービー

COSIO:もう1つ苦労したなって曲が、バトル曲の『Takeoff To Horizon Blue』です。この曲はサビのメロディを絶対ギターでやりたいと思って、ギターで入れたんですが……。

 最初のイントロ後とかを聴いてもらうとわかるんですが、コードが複雑なんです。でもそれをギターで弾かせようとしたものだから、ギタリストの池田(稔)さん(※7)に弾いてもらったんですけれど、「こんなコードは弾いたことがない」って言われまして(笑)。

 それで、ちょっと裏話的なんですが、この曲を8月にやった“THE SHOOTING!! #2”というライブで演奏したんです。その時に池田さんが初めてコードブックを持ってきたんですよ!「コードが覚えられてるか不安」って言って。

 池田さんは普段は全部暗譜して何も見ずに弾いているんですけど、『Takeoff To Horizon Blue』だけはコードが不安だからってコードブックを持ってきて、譜面を見ながら弾いていましたね。

※7 池田稔さん:高田馬場と池袋で営業しているゲームセンター“ゲーセンミカド”の経営者兼高田馬場ゲーセンミカドの店長。ロック・ギタリストとしても活躍しており、『アリス・ギア・アイギス』でも一部バトル曲のギターを担当しています。

──それだけすごいギタリストの方でも難しいと感じる曲だったんですね。

COSIO:確かに、コード譜も後で見直してみたんですけど、絶対にギターじゃ弾かないコードなんですよ(笑)。そもそもBフラットから始まってるしみたいな。オーギュメント(※8)もあるし、例のエモいサーティーンスコードとかもあるんです。

※8 オーギュメント:根音、長三度、増五度の3音で構成される三和音。メジャーコードの完全五度の音を半音上げているもの。

石川:へぇ、全然そんなコードを使っているような曲に聴こえなかった。

COSIO:そうなんですよね。でも実際コードを見てみると結構テクニカルで、なのでこれをそのまま池田さんに見せたら「これ難しいですね」って言われちゃいました(笑)。なんとか頑張りますと言ってもらえてよかったです。

 そもそもBフラットってキーボードだと普通に使うんですけど、ギタリストはあまり使わないんです。

──COSIOさんは普段はキーボードで作曲しているんですか?

COSIO:そうです。それで、ストレートな普通の数字がついていないコードならギターでも簡単だと思うんですけれど、数字いっぱいつけちゃったんで(笑)。苦労がありましたが、この曲も聴いてみるとエモいですね。

やよいはガチラッパーだから本格的なヒップホップで!

──他には苦労したような楽曲はありますか?

石川:下田が、藤野やよいのラップで流れる『RHYME CRIME』が、ヒップホップと言われて最初は悩んだらしいです。

 下田曰く、本格的なヒップホップにしてしまっていいのかどうかとか、あまり黒っぽいヒップホップにしてしまうとそれはそれで重すぎると、やよいがやるには重すぎるのは違うかなって、そこらへんで雰囲気は悩んだみたいですね。

──でも、やよいはガチでラップに目覚めたラッパーという設定ですよね。

柏木:実は僕の中ではもう少し軽めなラップをイメージしていたんですけれど(笑)。でも、やよいを担当したシナリオライターたちに聴かせたら「これこれ」って言うので、「これって言ってます」って伝えました。

石川:下田も、重めのヒップホップで出してしまったけれど、それを聞いて「ここまで行っていいんだ」と安心したみたいです。

『アリス・ギア・アイギス』
▲元文学少女のラッパーという異色のキャラクター、藤野やよい。セリフがことごとくラップ調でプレイヤーに強烈なインパクトを与えますが、素に戻るといたって真面目な子。

──ちょいラッパーじゃなくて本気のガチラッパーだということですね。たまに素に戻るところもいいんですけどね。どことはいいませんが、タッチしすぎると……。

石川:僕は『アリスギア』の音声も全部編集しているんですけど、最初にピラミッドさんからひと通り全部の音声が来た時に、やよいの素の音声は笑いましたね。

──元は文学少女ですし、根は真面目なんだなってわかります。

柏木:当初シナリオ中のパートボイスでやよいの素の音声が何カ所かあったのですが、シナリオチームと話をして外してもらったりしました。あんまり軽く素のやよいちゃんを出したくはないと考えていました。

 いろいろすると素の表情が出てしまうのですが、本当はプレイヤーにもやってほしくはないんですけれど(笑)。

石川:あれは触りすぎると、好感度だとかパラメータが下がったりとかはあるんですか?

柏木:いや、そういう要素はありませんよ。それで好感度を下げてしまうと、イライラしてしまうと思うので。

──それが実装されていたら、僕はとっくにニーナの好感度0ですよ。

一同:(笑)。

柏木:リアクションだったりは増やしていきたいですが、好感度を下げる要素は実装したくないですね。

 ちなみに、ホームはモニター越しという設定なので、女の子たちからチャット機能で隊長にリアクションを返してくるという仕組みもあったんですよ。

──そんな要素があったんですね。

ギアの駆動音1つとっても妥協がないSEのこだわり

──では次の質問です。『アリスギア』の楽曲、あるいはサウンドエフェクトで意識しているもの、今後も一貫してつらぬくこだわりはなんでしょうか。

石川:楽曲にしろSEにしろ、ある程度のわかりやすさが重要なのかなと思っていて、そこは心がけていますね。

 そして、『アリスギア』はタイトーのゲームではなく、我々ZUNTATAはサウンドを受諾、というか依頼されて作っているので、あまり押し付けにならないようにしています。楽曲はもちろんSEに関しても、僕の個性を押し付けすぎるとダメだと思うので。

 はっきり言うと、タイトーのゲームだったらもうちょっとはっちゃけてもいい時もあるんです。僕の好きにやって、僕がこれでいいんだ! って言えば通せる流れがあるんですが、『アリスギア』は違います。

 『アリスギア』という世界観に参加させていただいているという感じで、押し付けすぎない範囲で、ある程度の自分の個性は出したいなというのがありますね。

 SEの話でいうと、結構ピラミッドさんにもこっちが負けそうなくらいのこだわりがありますよ。

『アリス・ギア・アイギス』

──それは、具体的にはどういった部分でしょうか?

石川:バトル中のSEについても、僕は当初はもっとゲーム寄りに考えていたんです。ゲームっぽいSEを付けていたんですけど、もうちょっとリアルに寄せてくれという話になって、バトル中のSEをリリースまでに半分くらいは入れ替えました。

柏木:バトルのSEも手を入れようとなって、開発終盤なのにややこしいオーダーばかりをしてしまったと思います。

石川:リアル寄りの音にしてくれと言われて、最初は少し戸惑いました。半分くらいやり直しだというのもありましたけど、キャラクター的に見てもそこまで重々しい音ではないのかなと思っていたので……。

 SEを作っている時もゲーム自体は見られない状態だったので、最初はだいぶゲームっぽく作ってしまったのもあります。

 ですが、実施にゲームをやってみると、キャラクターはかわいいのですが根底には重厚なストーリーと世界観が横たわっているので、そっちを重視したかったんだなとわかりました。

──ギアが展開する時の音もかなり重めですよね。

石川:そうなんです。最初はもっと「カシャ」というか「シャキーン」みたいな音だったんですが、もっとそこは駆動っぽい「ガチャリ」とした音にしてくれと要望がありましたね。

──音がかっこいいので、自分でギアを動かしている感もすごいです。「ギュインギュイン」というこの音が、何とも言えないかっこよさでロマンを感じます。

石川:駆動の「ウィン」というところを0.何秒短くしてとか指示がくるんですよ!

柏木:ギアの音は何度も直してもらいましたよね。こだわったかいがあって、ハンガーでギアをいじってもらう時に、皆さんに「この音最高!」って言ってもらえている感じがします。

『アリス・ギア・アイギス』

──前に溝の口シャードでもおっしゃってましたが、ヴァイスを撃破した時の音もすごいですよね。ガラスが砕け散るようなきれいな音がするんです。

石川:それはピラミッドさんのこだわりですね。ピラミッドさんから来た指定にあったんです。ただの爆発音ではなくきれいな音でって、最初から明確にSEの要望として書いてありました。

柏木:いろいろな要素が混じっているので、普通に聞いていると聞こえない音とかも結構お願いしています。これ細かすぎない? ってくらいのものがいっぱいあります。BGMをオフにしてSEだけで聴いて遊んだりすると新鮮だったりしますよ。

──ホーム画面の、事務所の排気口の音なんかもリアルですよね。

石川:そうなんですよ。環境の音もちゃんとあるっていうのはなかなかないですよね。僕も発注されて驚いたんですけど、そのシーンの環境音もいるのかって。

COSIO:ホーム画面に環境音ってなかなかないですよ。

石川:実際に入れてみると、確かに環境音があるとキャラクターがそこにいるって感じがするんですよね。そういったピラミッドさんのこだわりはすごいなって思いましたね。

『アリス・ギア・アイギス』
▲事務所内では空気が流れる音までなるこだわり。普段はあまり気にならないが、意識を向けてみると、たしかになっている。そんなさりげない存在感が『アリスギア』の雰囲気を作り上げる。

──他にもこだわったSEはありますか?

柏木:シナリオの人たちもよくわがままを言っていて、最近だと除夜の鐘の音を何度も直させるっていうこともありましたね。

COSIO:ええっ? 除夜の鐘は何がダメだったんですか。

柏木:最初は「カーン」みたいな、ちょっと軽い感じだったんです。何回か直してもらったんですが、除夜の鐘って、みんなの心の中にある除夜の鐘が、お寺からのどのくらい離れているかで結構違うんですよね。

 最終的に2つの鐘の音が残って、それのどっちかというのが社内でもすごくもめて……。

COSIO:というか、SEを合議で決めるのもなかなかないですよ(笑)。

柏木:最終的にはディレクターが決めますけど。やっぱりみんなに一回聞いてみないと。シナリオ系は特に、ライティングしている人がこだわるんですよね。

COSIOさんによるアニメ劇伴に期待大!?

──それでは、次の質問です。ご自身が特に作曲とは関係なく好まれる音楽のジャンルはありますか? また、今後こんな曲を作ってみたいという希望などはありますでしょうか。

COSIO:僕はバトル曲は自分の得意なジャンルで、いわゆるエレクトロとか、明るい女の子に合いそうな曲が、まさに自分の好きな曲なんです。そういう意味では、『アリスギア』の曲が自分の好きな曲とピッタリ合っていますね。

 次に挑戦したいのは、まさに今、柏木さんがいらっしゃるからぜひ聞いてもらいたいんですが、劇伴(※9)を作りたいんです。作りたいんですよ本当に!

※9 劇伴:映画やテレビドラマ、アニメなどで主題歌以外で劇中に使われる伴奏音楽のこと。

柏木:なるほど(笑)。

COSIO:『アリスギア』はストーリーの曲は土屋さんが担当していることもあって、自分でやってみたらどうなるんだろうなって。なので劇伴に挑戦してみたいですね。

石川:MASAKIたちにも聞いてきましたが、MASAKIはEDMとか、どっちかというとエレクトロ・ポップが好きなんですよね。あと『GROOVE COASTER』のサウンドディレクターもやっているので、音楽ゲームの曲もいろいろ聞くようです。

 彼はZUNTATAの前にアイドルの曲などもフリーで作っていたりしたので、『アリスギア』でキャラクターソングを作りたいそうですよ。

COSIO:ああ! キャラソンもいいですね! でも、キャラソンと劇伴でどちらかと言われたら劇伴かな……(笑)。

石川:下田はエンパイア中野のキャラソンを、ラップでヒップホップで作りたいって言ってます(笑)。あの3人はキャラクターとしてのクセが強いのでそこを引き出したいですと。怪しい感じの曲にしたいんでしょうね。

──桃歌ちゃんは設定としてもアイドルですからね。キャラソンがあったらおもしろそうです。

柏木:確かに、キャラソンもお願いしたいよねと定期的に話題には出るのですが、その後がなかなか難しくて……。バーベナのボーカル曲を作りたいというのもよく話題に出ます。

 お話もノリで作っているところがあるので、中長期的な予定とノリでタイミングがあえば作りたいですね。きちんと検討していきたいです。

『アリス・ギア・アイギス』

COSIO:薄い本を出したんだから、薄いCDとか出しちゃえばいいんじゃないですか?

一同:(笑)。

なんでもできる機械に立ち向かっている

──では次は開発者というか、この場には柏木さんしかいないのですが、今後の『アリスギア』で求めていく音楽とはどういうものなのかをお聞きしたいです。

柏木:そうですね。やっぱりゲームの中で音楽ってすごく大きいものだと思っているので、特にバトル中の曲に関しては、今後も結構な勢いで増やしていきたいと思っています。

 音楽の質についてはもう、ZUNTATAさんにお願いしているので保たれていると思っているので、新鮮な遊びをずっと繰り返していけるように、バトルのところに曲を多めに今後も作っていきたいなと思っています。

 バトル曲の追加についてはたぶん、遊んでいただいている客さんも望んでくれていることだと僕は思っているので、すごいかっこいい曲をいろいろなシチュエーションで聴いて遊んでもらいたいです。

 ただ、スマホのゲームなので音楽をミュートして、自分の好きな他の曲を聴くということもできるんです。機能も実装していますし、でもそうではなくて『アリスギア』の曲で『アリスギア』を楽しんでもらいたいです。スマホというなんでもできる機械と自由な機能に、僕らは立ち向かっていかなければならないと思っています。

 本当に一番最初に言っていたのは、そもそもが音楽を聴いてもらえないところからのスタートだと思っていたので。そういう状況、そうできる機械が事実としてあるので、負けないようなものというのを今後も提供していきたいと思っています。

『アリス・ギア・アイギス』

──石川さんからは、今後の『アリスギア』のSEについて何かありますでしょうか。

石川:新しい武器などがあるたびに新しいSEも必要になるので、今後も曲だけではなくてSEにも注目をしてほしいかなと思いますね。

 なかなかこういうインタビューでSEについて語れる機会がないのですが、語らせてもらえるのはありがたいです。

 僕は曲は作らないですけど、SEを作るという人間で、わりと表立って発言するのにはSEをもっと聞いてほしい、ゲームの中でのSEの重要性をもっとわかってほしいという啓蒙の気持ちもあるんです。それはピラミッドさんにも認めていただいているので、ありがたいですね。

──先ほどの環境音だったりとか、SEのこだわりについてのお話もとてもおもしろかったです。

石川:BGMがなっていると全然気づかないんですけどね。ただ、BGMは残してSEを消すと、何か物足りないなってなるんですよ。なので、SEとして環境音がある意味があるんだなって感じましたね。

柏木:ソーシャルゲームだからとかではなくて、スマホのこのスペックの中で出せるのはこうだから、必要なのはこれですという作り方をしちゃったので、いいのか悪いのかはわからないですよ。こだわって作っているのは間違いないです。

 こだわった結果、お客さんにすごく喜んでいただいているので、それはいいこだわりだったんだと思っています。

──いいゲームと言われるもので音楽やSEがよくないゲームって存在しないと思っているんです。それはゲーム全体にこだわりを持っているからだと思います。

柏木:そう言ってもらえるとありがたいですね。

『アリス・ギア・アイギス』

ZUNTATAにとっても新たな展開となった『アリスギア』サウンド

──それで最後の質問です。1周年を迎えて、これまでの『アリスギア』への思いと、今後の抱負について、それぞれお聞かせください。

COSIO:ゲーム業界全体の事情でいうと、2018年あたりから残念なことに終了するタイトルが結構多くて……。重い話になっちゃうんですけど、僕が担当したタイトルなんかもいくつか終わってしまったりして、非常に寂しい思いをしています。

 そんな中で『アリスギア』は無事に1周年を迎えて、どんどんユーザーも拡大しているように感じています。ぜひこれからも2年、3年、5年くらい続いていろいろな展開を、さっき話をしたTVアニメの劇伴をやりたいといった話もありますので、広がっていってほしいなと思っています。

 僕も参加させてもらったスタッフとして、どんどんテンションが上がる曲を作っていけたらなと思っていますので、よろしくお願いします。

石川:リリースから1年とのことなのですが、僕は開発の初期からかかわっているので、1年どころの付き合いではないんです。正直に言うと「まだ1年しか経ってなかったっけ?」という気持ちです(笑)。

 『アリスギア』に関しては今年の夏に、オリジナルサウンドトラックCDを出させていただいて、もともとZUNTATAが好きだよ、ファンだよという方はもちろん買っていただいたんですけれど、『アリスギア』をきっかけにZUNTATAを知らなかった方が買ってくれて、実はこのアルバムは我々の想定以上のヒットアルバムになったんです。

 そういう新しい出会いだとか、展開を生み出してくれた『アリスギア』に、ZUNTATAとしても僕としても非常に感謝しています。

 これからも『アリスギア』を通じて新しいユーザーにZUNTATAサウンドを届けていけたらなと思っておりますので、よろしくお願いします。

『アリス・ギア・アイギス』

柏木:今年1年、サウンドに関してで言うと、やっぱり大きな転機となったのはアルバムCDを出しましょうという話になった時ですね。

 CDのキャンペーンとして、今までのZUNTATAサウンドの宇宙にまつわる主にSTGのBGMを紹介させていただいたんです。結構いろいろな方に「この曲知らなかったけどかっこいい!」って言ってもらえて、イチZUNTATAファンとしてもすごくいいことができたんじゃないかなと勝手に思っています。

 CDにZUNTATA仕様の着せ替えジャケットを入れてもらったのが、僕的にはすごくうれしくて、『アリスギア』のサントラということと、ZUNTATAのCDという意味合いがすごく強く出せて、うれしかったです。

 『アリスギア』のCDが売れたのもとてもうれしくて、これを2枚目、3枚目と続いていけるように、頑張っていきたいと思っています。

 サウンドに関してもSEに関しても、ゲーム全体に関してもそうなんですが、本当にお客さんの期待を裏切らないように1つずつ丁寧に作っていくということしかできないので、1周年を迎えるまで1年は頑張れたと思うので、今後も丁寧に頑張っていきたいと思います。

──ありがとうございました。

【アリスギア特集】連載記事一覧

『アリスギア』公式設定画集が好評発売中!

 サービス開始1周年となる2019年1月22日に、『アリス・ギア・アイギス』の公式設定画集が電撃より発売されました。

『アリス・ギア・アイギス』

 本書では、サービス開始から2018年10月までの間に実装された、30名のアクトレスのビジュアルや設定画などを収録。島田フミカネさん、海老川兼武さん、柳瀬敬之さん、かこいかずひこさん、くーろくろさん、フヂロウさんらが手がけたアクトレスやギアのデザインをじっくり見たい人のための本ということで、本のサイズはもちろんA4判!

 1周年の記念にふさわしい本となっているので、ファンはぜひ手に取ってみてください。

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