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2019年2月22日(金)

【STG座談会:後編】STGのeスポーツ参入はありうる? そして『ダライアス』シリーズの今後は?

文:電撃オンライン

 2Dシューティングに情熱を注ぐ4人のキーマンによるSTG座談会(後編)をお届けします。

【STG座談会:後編】

 前編では、“STG業界の現状”や“開発チームの人員構成”を語っていただきました。後編は、eスポーツ参入やスマホ展開など、STGの未来をテーマにしているほか、『ダライアス』シリーズの今後についても言及しています!

※以下、敬称略

▼座談会参加者(敬称略)

・外山雄一(タイトー)/担当作品:『ダライアス コズミックコレクション』

【STG座談会:後編】

~プロフィール~

 2016年の“スペースインベーダーチャンピオンシップ”では無念の予選落ち。『スペースインベーダー』好きが高じて2017年タイトー入社。現在は開発本部室所属。『ダライアス コズミックコレクション』では諸々調整担当。

関連作品:『ヘルツォーク』、『スプリガン mark2』、『蒼穹紅蓮隊』

・木村祥朗(Onion Games)/担当作品:『ブラックバード』

【STG座談会:後編】

~プロフィール~

旅人でゲームデザイナー。スクウェア(現スクウェア・エニックス)を経てラブデリックにてゲームデザイン、シナリオなどを手がける。その後、プロデューサー、ディレクター、シナリオ、ゲームデザイナーとして幅広く活躍している。

関連作品:『moon』、『勇者ヤマダくん』、『Million Onion Hotel』、『チュウリップ』、『NO MORE HEROES』、『王様物語』、『Shadows of the damned』、

・Ben Judd(ベン・ジャッド)(Dangen Entertainment)/担当作品:『デビルエンジン』

【STG座談会:後編】

~プロフィール~

CAPCOMの社内翻訳チーム編成に携わり、同社で初めての外国人プロデューサーに。その後、DDM社に入社し日本支社を設立。DANGEN ENTERTAINMENT設立にも携わり、個人ゲーム開発者に多くの機会を提供している。

関連作品:『バイオニックコマンドー:マスターD復活計画』、『バイオニックコマンドー』

・James Wragg(ジェームス・ラグ)(Degica)/担当作品:『ライバル・メガガン』

【STG座談会:後編】

~プロフィール~

 ゲーム業界に特化した人材紹介やエージェントの仕事を経て、 7年間に株式会社ピラミッドで マネジメントやローカライズ業務に従事してから 2016年にデジカに移籍して、 ゲームパブリッシング業務を全般的にかかわる。

関連作品:『ダライアスバースト クロニクルセイバーズ』、『怒首領蜂大復活』、『スペースインベーダーエクストリーム』、『式神の城』、『ゲーム天国 CruisinMix』

それぞれがリスペクトしている作品は?

『ライバル・メカガン』

【STG座談会:後編】

ジェームス・ラグ:『ライバル・メカガン』は、見たまんま『ティンクルスタースプライツ』(※)ですね。

※:1996年に稼働開始した縦スクロール対戦シューティングゲーム。

【STG座談会:後編】

 それが大前提にあるのですが、実はそれ以外にも、ファミベのよっしんさんが作った『超連射』という作品があって……遊んでいない人は遊ぶべきです! 作者がその作品のグラフィックが好きで、キャラで言うと“ジェン”と“ルビー”の2人の機体デザインが『超連射』寄りになっているんですよ。

 攻撃の種類も『超連射』からインスパイアされていると聞くと、ああこういうことって気づくと思います。同作は敵の出現パターンが気持ちいいゲームなので、それも学んで部分的に取り入れています。

外山雄一:『超連射』は爽快感がすごいですよね。

ジェームス・ラグ: “トモダチ2.0”の機体が、『怒首領蜂』のショットを押しっぱなしにするとレーザーに変化するというアイデアにインスパイアされていますね。

 あと、オープニングはもろに90年代のアニメや日本のSTGによくあったような演出です。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:“日本のアニメ好きです感”がすごいあるよね。

ジェームス・ラグ:合体とか変形とか、もろにそうですね。

木村祥朗:これどこで作っていたの?

ジェームス・ラグ:ゲームがカナダで、絵のほうはヨーロッパのどこだったかな?

木村祥朗:そんな違う国同士で作っているの?

ベン・ジャッド:最近、インディーはバーチャルスタジオが多いですね。

ジェームス・ラグ:ボスに変身するのもシューターなら憧れている部分があると思いますが、それを成立させるのが難しかったですね。

【STG座談会:後編】

 STGは協力プレイがあっても基本的に1人でプレイすることが大半なので、より多くの人に遊んでほしい想いがあったのも対戦型になった理由のひとつです。格闘ゲームを遊んでいる人にも少しは見てもらえるのかなと。

 あとは、最終面とかにわざわざ昔使っていた多重スクロールを入れています。やっぱり昔のゲームが好きなので。

ベン・ジャッド:多重スクロールとかラスタースクロールとか、言葉を聞くだけで心が躍る……こりゃ遊びたいわ(笑)

 『スターウォーズ』の何作目か出た時に、あまりCGを使わずにモデルを使うとか、昔の作り方にこだわることもありますよね。

木村祥朗:模型の方が密度高いからね。ビジュアル的に。

【STG座談会:後編】

『ブラックバード』

【STG座談会:後編】

ジェームス・ラグ:ドット、でかいっすね~。

木村祥朗:ドット大好きだから。やばいちょっと死ぬ死ぬ。斜めからだとコントローラーがちょっと……。

ベン・ジャッド:クリエイターさんがコントローラーのせいにしますか? まさかあ(笑)

木村祥朗:言っておくけどデバックしている時以外は下手ですよ(笑)

【STG座談会:後編】

 『ブラックバード』が影響を受けた作品で、たとえば『ファンタジーゾーン』はわかってもらえると思うんですけど、音楽の部分は何かを見習ったっていうのがないんだよね。(風見鶏を指して)たとえばこれとか、僕が好きな『セクションZ』のギミックのオマージュです。

【STG座談会:後編】

一同:わかんね~(笑)

木村祥朗:見た目が全然違うし、わかんないっすよね(笑) 心の中にある『セクションZ』のギミックを再現したら、ちょっと本物とは違っちゃいました。

 あと、これは『ツインビー』のベルを横スクロールでやったらどんな気分になるかなと思ってやってみたんですけど、すごい大変です。緑のジェムの落下とバウンド。出現直後の落下中に取ると価値が最大っていうのは『ファンタジーゾーン』のオマージュですね。

ジェームス・ラグ:ステージは大きくないけど密度が濃いですね。

木村祥朗:密度を上げることに集中している感じです。

ジェームス・ラグ:クリアしても一度では演出を全部見られないし、隠しボムとかもあったりしますね。

木村祥朗:あとこれ、4面のラストで突然弾幕が出てくるんですが、ZUNさんのゲームを好きでやってきていて、弾幕もSTGの歴史のなかで尊敬すべきものなんだよな~という想いから最後は意識して入れましたね。

ジェームス・ラグ:ボムで巻き込むボーナスとかは?

木村祥朗:これは独自のデザインです。隠しキャラと音楽とボムとあわせて遊ぶシステムなんですよ。なんやかんや大事なところは独自なんですね。

【STG座談会:後編】

 あ、これアスパラさんを下の弾で撃つと出るじゃないですか。我々の味付けはしていますけど。これはいわゆる『ゼビウス』のソルのオマージュです(笑)

ベン・ジャッド:いろんなゲームのパーツが含まれていますね。

木村祥朗:あ、倒しちゃった。今、時間切れになると現れるキャラが出そうだったんですけど、これは『マッピー』の時間切れで出てくるご先祖様のオマージュです。

ジェームス・ラグ:STGなのに全然関係ないところから(笑)

木村祥朗:1面のボスは遠距離から撃っているとわりと安全に倒せるんですよ。でもSTGで接射というのがあって、これをやりたくてギミックを入れました。あとSTGの多くは対地弾の威力が高いということがあって、下の弾を結構強くしています。

ジェームス・ラグ:自機の当たり判定はどの部分なんですか?

木村祥朗:この真ん中の黄色い目なんですけど、これはもう完全に東方の影響ですね。東方をやっていて、自機の当たり判定ってちっちゃくてもいいんだ、見えていいんだと気づかされました。あれいいですよね。

【STG座談会:後編】

 このゲームにはいろいろな仕掛けがあって、敵を全部倒せばクリアなんですけど、遊んでいくと隠れキャラクターの位置とか敵の出現パターンとかを覚えていくんですね。そうすると、たとえばボムが何個手に入るからこのタイミングで使おうとか、計算しながらスコアアタックができるようになるんですよ。

 お客さんから「20分でクリアできたのにいつの間にか10時間遊んでいました」って感想を聞くと、これがもうすごく嬉しいんです。

『デビルエンジン』

【STG座談会:後編】

ベン・ジャッド:死に方の例を見せます。

ジェームス・ラグ:難しいよね、『デビルエンジン』。『サンダーフォース』のオマージュ。

木村祥朗:『サンダーフォース』いいねえ。タイトルで“サンダーフォース!”って叫ぶんですよ。最初はPCだったけど、みんながイメージしている『サンダーフォース』って横スクロールでしょ?

ベン・ジャッド:メガドライブの『3』以降ですね。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:僕は俯瞰視点で8方向にスクロールする『サンダーフォース』が最初でした。

外山雄一:『3』から8方向スクロールがなくなっちゃいましたからね。

木村祥朗:あ、“DANGEN”の字がでかい!

ベン・ジャッド:調子にのりました(笑) トリスタンというクリエイターが1人で8割くらい作りましたけど、『サンダーフォース』シリーズが一番気に入っていて、インスパイアされているので。

 トリスタンが言うには、エネミーのデザインは実用的にしたいと。敵が弾を撃つ場所は、まさに弾が撃てそうなデザインにするとか。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:すげえ、いろんな敵にちゃんと発射口があるんだ。というかベンさんゲーム下手だ(笑)

ベン・ジャッド:年齢的に目が悪くなっているのもあります。

外山雄一:これ作った人はどこの国の方なんですか?

ベン・ジャッド:アメリカです。

木村祥朗: BGMとか敵の出現とか『トップをねらえ!』的な何かを感じるなあ。

ジェームス・ラグ:色使いが独特ですよね。

【STG座談会:後編】

ベン・ジャッド:見ての通り、ドットはちょっと細かくて実用的な敵デザインで、音楽もハードロックというか、90年代のSTGにまさにインスパイアされています。

 『サンダーフォース』は、当時海外でメガドライブやサターンに出ていて人気あったんですが、トリスタンもクラシック感のある90年代のSTGがあまり出ないので、自分で作ろうという話になりました。

ジェームス・ラグ:『サンダーフォース』をリスペクトして作るなら、もう作曲は九十九さんにお願いするしかないよね。

ベン・ジャッド:九十九さんの得意なジャンルだと思うので、どうしても好きでぜひ仕事一緒にしたいというこちらの熱意が伝わっていればいいのですが。

【STG座談会:後編】

『ダライアス』のシリーズ化が続いている理由

外山雄一:特装版はこれだけ(9タイトル、13バージョン)入っているんですよね、『ダライアス』ばっかり。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:作りすぎだね(笑)

外山雄一:たくさん入っているぶん、ちょっとお値段はしますが……。

ベン・ジャッド:2つのゲームにして販売する方法もあったと思うんですが。コレクション1とコレクション2で。

木村祥朗:最新の『ダライアス』も入っているんですか?

外山雄一:入っていないですね。『ダライアスフォース』が93年、『ダライアス外伝』が94年で、97年の『Gダライアス』以降は入ってないので、そのあたりまでですね。

【STG座談会:後編】
▲画面は『ダライアスフォース』。
【STG座談会:後編】
▲画面は『ダライアス外伝』。

木村祥朗:おお、なんじゃこの横長の画面、面白い(笑) 下にすごい説明書いてある。

ジェームス・ラグ:当時の3画面ぶんを横につなげて表現しているんですね。

【STG座談会:後編】
▲画面は初代『ダライアス』。

外山雄一:そうですね。いろいろな画面のモードがあるんですけど、画面の境目をオンにすると……。

ジェームス・ラグ:まさかの? あ、ほんとだ。境目が。

木村祥朗:こういうのいいなぁ。M2さんってすごいなぁ。

外山雄一:これはドットバイドットっていう小さめな画面なんですけど、画面に合わせて拡大もできます。

 過去のスタッフに話を聞いてわかりましたけど、『ダライアス』は本当にタイトーの筺体チームから営業から開発チームから総力戦で作っていまして、どうしても事業が大きくなって、毎回社運をかけての勝負だったようです。

木村祥朗:『ダライアス』シリーズがこんなにあるわけですけど、グラフィックって毎回どれくらい描き直すんですか?

外山雄一:『ダライアス』や『ダライアス外伝』でいえば、まずメカデザインが外部の人になります。タツノコプロの人にお願いしていて、それを社内のデザイナーがリファインしてドット絵にするという工程を組んでいました。

木村祥朗:じゃあ毎回描き直していたと。

ジェームス・ラグ:シルバーホークはまた違いますよね。

外山雄一:そうですね。毎回微妙にデザインを変えています。

木村祥朗:毎回ディテールまで違う印象があるけど、全体を通して見ると『ダライアス』っぽいなっていう。

外山雄一:昔は3画面でボスをみると結構デカかったんですけど、今見るとそうでもないですね(笑)

ジェームス・ラグ:当時はえらいでっかく見えたけどなあ(笑) デカキャラもウリのひとつでしたね。

外山雄一:タイトーの場合は、アーケードに関しては毎回社運をかけて作っていくので、それゆえ結果的に長いシリーズになったのではないかと。

【STG座談会:後編】

ベン・ジャッド:当時はよく3画面を1画面に移植しようと思いましたね(笑)

木村祥朗:こういうのって流用できているわけじゃないんでしょ。やっぱり、元のデータから作っているんですよね?

外山雄一:『ダライアス・アルファ』は当時NECアベニューの多部田さんが中心になって作ったんですけど、タイトーから基板が送られてきて「これでなんとか作ってください」と。基板からロムを外し、データを吸いだして作ったらしいです。かなり無茶ですよねえ。

ジェームス・ラグ:これはボスしかいないやつですよね。

外山雄一:非売品のゲームなんですよ。『スーパーダライアス』のHuカード版として『ダライアスプラス』を発売する時に、販促で作られたのが『ダライアス・アルファ』です。

 800人に懸賞とかで配られたものなので、現存している数が少なくて中古屋でかなり高いらしいです。

【STG座談会:後編】
▲画面は『ダライアス・アルファ』。

木村祥朗:これ見たい人は買うんだろうなあ。

ベン・ジャッド:Sega Master Systemの『ダライアス』も入っているね。

ジェームス・ラグ:『SAGAIA』ね。

外山雄一:日本では発売されなかったSega Master Systemのソフトですね。

木村祥朗:初めて見た。『ダライアス』っぽい!

【STG座談会:後編】
▲画面はSega Master System版『SAGAIA(サーガイア)』。

外山雄一:当時ヨーロッパの人たちはこれを買って遊んでいたんです。たしか92年だったかなあ。

ジェームス・ラグ:日本だとメガドライブ版しか出てないですもんね。

外山雄一:日本でメガドライブ版が出たあとにSega Master System版が出ました。これはナツメ(現:ナツメアタリ株式会社)さんが作っているんですよね。

ベン・ジャッド:曲もなんかいい感じ。

外山雄一:この中で特に人気があるのは『ダライアス外伝』ですかねえ。限られた開発期間のなかで1本ずつ作っていく作業だったので、『Gダライアス』まで入れようとすると発売が来年まで延びてしまう可能性が高く、入れられませでした。

 あとよく聞かれるのは、『ダライアスII』の3画面版があるんですが、これは『ニンジャウォーリアーズ』の基板で動いていて、それを移植するのと同じ手数がかかるんですよ。2画面版と3画面版では元が違いました(笑)

【STG座談会:後編】
▲画面は『ダライアスII』。

木村祥朗:そんな作り方していたんだ。すごい大変そう。

外山雄一:タイトーの作り方がちょっと特殊だったんです。

ジェームス・ラグ:『SAGAIA』の別バージョンは入っていますよね。

外山雄一:アーケードの『SAGAIA』は、日本版『ダライアスII』の基板と同じだったのですんなり動きました。

木村祥朗:おお! きれいきれい。

【STG座談会:後編】
▲画面はアーケード版『SAGAIA(サーガイア)』。

外山雄一:『ダライアス外伝』までいくと、ちょっと時代が進みましたね。当時は格闘ゲームがブームだったので、スタッフも格闘ゲーム好きでコマンドで技が出せるとかそういうエッセンスも入れ込んでいます。

ジェームス・ラグ:この背景にボスが登場する演出もいいし、ちょうど曲が終わったときに倒せるんですよ。あれが快感。

『ダライアス』シリーズの今後

外山雄一: 2月28日にこれが発売されるわけですけど、これが売れてくれると次の企画が通りやすいので(笑) これまでの『ダライアス』シリーズもそうですが、お客様のご支援あってのものです。

ジェームス・ラグ:『ダライアス』の新作は見たいですね。

外山雄一:前作の『ダライアスバースト アナザークロニクル』は、ピラミッドさんにご協力いただいて開発していて、それ自体がすごい大ボリュームだったんです。この次となるとものすごいプレッシャーですよ。

ジェームス・ラグ:3000面くらいあったんでしたっけ。この数値間違ってない? って一瞬思いました。

外山雄一:クロニクルモードというのがあって、とにかくステージ数が多いんです。

木村祥朗:うん、今日一番参考にならなかった話(笑)

一同:(笑)

【STG座談会:後編】

外山雄一:だからもし新作を作るとしたら、そういうボリュームはいったん忘れなきゃいけない。次6000面とか作れるわけありませんから。

木村祥朗:6000面あるって言えたらインディーで目立つかもなあ。

ジェームス・ラグ:3000面でも目立つよ。

外山雄一:ランダムで構成していくしかないですね。

木村祥朗:自動生成すればいいのか。

ベン・ジャッド:ローグライクは、いろんなジャンルでベースのプログラムがありますけど、STGにもそれを組み込めるかもしれませんね。

STGのeスポーツ参入はありうる?

木村祥朗:わかんないけど、ありえるよね。どっかの誰かが『ブラックバード』で勝手にやっても怒らないよ(笑)

ジェームス・ラグ:僕はどこかで実現してほしいかな。実際に『ライバル・メカガン』も対戦型ですが、そもそもSTGは観客側から考えると向いていないイメージがあります。

 eスポーツが成り立っているのは、プレイヤーが多いのも理由のひとつだと思うんですけど、それ以上にそのゲームを観戦したい人が多いからです。格闘ゲームは、キャラ同士が戦うというのも、勝負の決まり方も見ている側からわかりやすいですよね。『ライバル・メガガン』はその部分をシューティングにも反映しようという思いがあります。

 MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)や、チーム制のRST(リアルストラテジー)でプレイヤー対プレイヤーという構図は、見ている側からすると「このチームが好きだから」、「この人が好きだから」と応援したくなる。でもSTGは1人で遊ぶものが多くて、相手がCPUだとそういう感情移入もしにくいです。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:まずプレイ時間が長いよね、STGは。

外山雄一:そうなんですよ。

木村祥朗:でも短くするのは可能だし、対戦しているのを見るのも可能です。『ライバル・メカガン』のように画面内に2人くらいで出て、お互いに邪魔をするSTGなら可能だろうけど、なんで誰もやらないんだろう。

ベン・ジャッド:おそらくSTGの対戦がめずらしくて見慣れてないから。たとえば、Twitchなどのストリーミング的なプラットフォームで、プレイヤー対ストリーマーといった見ている側でもゲームのコンテンツを操作でき、なおかつプレイヤーと観客が一緒になって盛り上げるようなゲーム性があればまだまだ可能性あると思います。

ジェームス・ラグ:それをするためのツールはすでに揃っているね。

木村祥朗:見ている人がどんどん新たなステージ作っていって、配信しているプレイヤーはずっとクリアし続けなきゃいけないとか? ステージを自動で生成するんじゃなくて、手動で誰かが生成している感じに……面白そうじゃん(笑)

ベン・ジャッド:海外でTwitchが年に3回くらいやるゲーム実況プレイマラソンみたいなものがあるんですけど、ストリーマーがずっと難しいステージを作り続けて、スキルの高いプレイヤーがどこまでいけるか。寄付とかチャリティーに絡めて盛り上げていくといいと思います。

ジェームス・ラグ:もうひとつの懸念は、STGをやったことがない人がSTGで人気の弾幕系を見ると、何がどうなっているのかよくわからないらしい。

木村祥朗:本当? ニコニコ動画では東方系STGの弾幕をよけるのがうまい実況プレイヤーにお客さんがたくさんつく現象が起きていたよね。

ジェームス・ラグ:実況向けではあると思うんですけど、競技として見る場合は難しいんじゃないかな。

ベン・ジャッド:たとえば、見ている側がストリーミングプラットフォームのポイントを使うとかリアルのお金を使うとかで、自分が支払うと弾を2個増やせるとか10個増やせるとか、プレイヤーを倒すために弾を増やすっていうのがあったら面白いですね。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:敵側が課金すると出てくるザコのレベルが上がって、さらにそいつが発射する弾も1,000円投入で弾幕を出すとか? 何の嫌がらせかわからない(笑)

ジェームス・ラグ:従来のSTGは上手い人だと何周もできてしまうから、その競争方法となると『ドンキーコング』のハイスコアみたいに何日もやって、寝落ちるほうが負けになっちゃいますよね。

木村祥朗:だから、今のSTGのままでやるのは無理だよね。でも話していると何か思いつきそう。短いステージで、対戦型で、お客さんも喜べるような。

ベン・ジャッド:今回の話、ためになりましたね(笑)

木村祥朗:僕が作りたいかは別にして、とりあえず作れそうだよね。

ジェームス・ラグ:STGでeスポーツをするには、チーム同士の対戦型がいいと思うんですよ。STGのルール自体はわかりやすいから合うのではないかと。

木村祥朗:無理やりSTGを格闘ゲーム寄りにしなくても、STGの楽しいところはいっぱいあると思うんですよ。スクロールしていって、どんどん風景が変わっていって、ゴールにたどり着くとボスがいる。

 このわかりやすい文明はこのまま残ってほしいけどねえ。だって、絵巻物見ているみたいで面白いじゃん。

ベン・ジャッド:進んでくうちにどんどん自動生成して難しくしていって、生き残ったほうが勝ちとか。

外山雄一:eスポーツにするには競わせて差をつけなきゃいけない。そういえば3年前の“スペースインベーダーチャンピオンシップ”も、予選は実質タイムアタックでしたね。僕も出たんですが予選落ちでした(笑)

【STG座談会:後編】

木村祥朗:タイムアタックっていいですよね。やればやるほど短くなるので。

ジェームス・ラグ:タイムアタックといえばキャラバンシューティング。eスポーツがなかった時代にスポーツ化していますね。

木村祥朗:もうジェームスさん日本人でしょ(笑) そんなワード出てこないよ。

ジェームス・ラグ:ハドソンいいですねー。そういうSTGが限られた時間のなかでどうスコアを伸ばすか、生き残って伸ばすかっていう。

外山雄一:今ここで言うeスポーツってビジネスになるeスポーツですよね。STGは昔からスコアアタックしていて、ハイスコアボード上である種のeスポーツをしているわけですけど、これはビジネスにならない。

木村祥朗:ここまで話してて、もともこもない意見を言わせてください。「STG をeスポーツ化するのはどうですか?」って言われた時に、反射的に気色悪いなと思いました。細かく気持ちを言葉にしますが、そもそもSTGはゲームづくりのなかでは比較的手を出しやすいじゃないですか。

なのに、世界観を乗せやすいし、音楽も乗せられるし、自分の物語を作れる可能性のある一番手近な創作物だと思うんです。

 こういう、私小説を書くという感じのゲームがそのまま存在し続けていいんじゃないのかなと思うので、実は最初の質問の瞬間に、いや、別にそんなのやらなくていいんじゃない? って(笑)

ベン・ジャッド:すべてのジャンルがeスポーツに向いているとは思わないし、私も古い人間としてやっぱり1人用ゲームがめっちゃ好きなので、それを無理やり対戦とかオンラインとかにはしたくない派ですね。

木村祥朗:『ゼビウス』を最初に見た時、すべてのジャンルを超えて映画でもアニメでもない“何か”がそこにあったことを覚えています。テレビ画面の中に別の惑星の世界みたいなのがあって超わくわくましたよ。

 あれこそがSTGの魅力が最頂点に極まった状態で、以降は『ゼビウス』へのリスペクトで作っているように見えるんですけど、僕としてはこの歴史を続けたほうがいいと思います。

【STG座談会:後編】

STGのスマホ展開

木村祥朗:『ダライアス』がスマホになった時に、「なるほどね」と思ったんですよ。移動は指に沿って動かすのですが、STGのギミックにあるスピードアップの意味がなくなったのが残念だったな。

 でも、スマホにするんだったらあれしかなくて、例えば『ブラックバード』をやる場合は、スピードアップをなくすしかないというのが答えなんです。

ジェームス・ラグ:まさしくそれで、スマホにSTGを持っていく場合は、単なる移植というわけにはいきません。単純にCSの操作性をスマホに持ってこようとすると破たんするし、指で操作していると隠れる部分もあって、そこから敵が出るとかはナシにしないといけない。

木村祥朗:『ブラックバード』をスマホに持っていく場合は、何か工夫が必要だろうなー。

ジェームス・ラグ:スマホで成功しているSTGは、繰り返しプレイしたくなるようなデザインです。

 『ブラックバード』のような、繰り返してスコアを伸ばしたくなるようなゲームではなく、スマホゲームだと空いた時間にちょこっとやれて、かつ自分が強くなっていくようにしないと。そこに課金要素もあったほうがいいですね。

ベン・ジャッド:スマホゲームは課金じゃないとビジネスが成り立たないからね。STGがありがたいのは、私みたいな下手なプレイヤーが課金して何かを倒していくゲームが作りやすいのではないかと。

 ただ課金アレルギーを持っている海外のユーザーもいっぱいいるし、そのあたりは慎重に。

【STG座談会:後編】

木村祥朗:STGのコンティニュー課金とか、みんなするのかな?

ベン・ジャッド:たぶん、やめちゃうと思います。だからある程度プレイするとパワーアップするとか、見た目が変わるとか、何かあればいいんですけど。

ジェームス・ラグ:『Sky Force』という縦スクロール型STGのシリーズがあって、最初は10年以上前にドット絵で出ていました。

 このシステムが良くて、パワーアップがステージ中で取れて基本的に連射が早くなる。そのなかでゲーム内通貨も取れて、それを使って強化していくこともできます。

 あと、同じステージでも難易度が5つくらい用意されていて、前の難易度をクリアすると次の難易度を遊べるようになっていきます。

ベン・ジャッド:最初、自機が全然弱くて進むのが難しいけど、死にながらでもステージで溜めたゲーム内通貨を使ってパワーアップして、次挑んだ時にもっと遠いところまで行けるようになっているシステムは使えるかもしれないですね。

木村祥朗:僕、スマホで好きなSTGがありました。『アカとブルー』。技術的にどうやっているのかなって思う部分もあって。

外山雄一:あれはすごいですね。タノシマスっていう会社の。

ジェームス・ラグ:元ケイブのお二人ですよね。

外山雄一:そうそう。あれは今度アーケード版もでますよ。

木村祥朗:あの人たちが書いた「プログラムをこうしました」っていう本が売られていたんですけど、2冊も買っちゃいました。人にあげようかなと思って(笑)

外山雄一:藤岡さんの『Unityマニアックス』ですね。あの人たちはすごいです。

木村祥朗:スマホゲームは、基本無料とかタッチ操作とかの課題がいろいろありますけど、単純にお客さんがたくさんいるってだけでも魅力的だし、買い切りの有料ゲームでやれる可能性もありますよね。

外山雄一:『Sky Force』アプリ版は面白くてタッチパネルも操作しやすかったですけど、結局Steamでも買えるのでSteam版のほうが好きなんですよね。

【STG座談会:後編】

ジェームス・ラグ:あれはビジネス的な展開がうまかった。まずはスマホで出して、1年後くらいにSteam版を出したのかな。

 『Sky Force』自体がもう長いですよね。スマホが存在する前のpilot(後継機のPalmは1996年販売)っていう昔の端末用に作っていたらいしいです。

外山雄一:下積みがあるんだ。

ジェームス・ラグ:そのあと、iPhone版は3GSぐらいの時代(2009年)に登場しましたね。

木村祥朗:『ダライアス』がずっと続いている話とか、スマホゲームとかSteamとかでずっと作り続けているような話を聞くと、シリーズものもやってみたいと思うんですよね。

 でも、一作品作ったあとは燃え尽きているので、STGを作った時に次STGを作るメンタルになれるかっていうと、それが辛い。

ジェームス・ラグ:『サンダーフォース』もそうだったと思うんですけど、『ダライアス』もずっと同じメンバーでは作っていないんですよね。

外山雄一:そうですね。結構スタッフが入れ替わっています。

ベン・ジャッド:インディーや小さい会社だったら、ある程度自分の欲でゲームを開発できると思うので、多くの人は続編よりオリジナルを作りたくなるのはあると思います。

――このまま何時間でも続きそうなほどの盛り上がりでしたが、STG座談会はここで終了となります。STGに明るい未来は待っているのか? 今回ご参加いただいた4名をはじめとした関係者の方々の活躍に期待しましょう!

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データ

▼『ブラックバード』
■メーカー:Onion Games
■対応機種:Nintendo Switch
■ジャンル:STG
■発売日:2018年10月18日
■価格:1,980円(税込)
▼『ブラックバード』
■メーカー:Onion Games
■対応機種:Steam Win&MAC
■ジャンル:STG
■発売日:2018年10月18日
■価格:1,980円(税込)
▼『デビルエンジン』
■メーカー:DANGEN Entertainment
■対応機種:PS4
■ジャンル:STG
■発売日:2019年
■価格:2,050円(税込)
▼『デビルエンジン』
■メーカー:DANGEN Entertainment
■対応機種:Nintendo Switch
■ジャンル:STG
■発売日:2019年2月21日
■価格:2,050円(税込)
▼『デビルエンジン』
■メーカー:DANGEN Entertainment
■対応機種:PC
■ジャンル:STG
■発売日:2019年2月21日
■価格:2,050円(税込)
▼『ライバル・メガガン』
■メーカー:デジカ
■対応機種:PS4
■ジャンル:STG
■発売日:2018年11月29日
■価格:1,480円(税込)
▼『ライバル・メガガン』
■メーカー:デジカ
■対応機種:Nintendo Switch
■ジャンル:STG
■発売日:2018年11月29日
■価格:1,480円(税込)
▼『ライバル・メガガン』
■メーカー:デジカ
■対応機種:Xbox One
■ジャンル:STG
■発売日:2018年11月29日
■価格:1,480円(税込)
▼『ライバル・メガガン』
■メーカー:デジカ
■対応機種:PC
■ジャンル:STG
■発売日:2018年11月29日
■価格:1,480円(税込)

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