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2019年3月28日(木)

KLabの社長に就任した森田英克さんは何を意識しているのか? グローバル展開や開発との取り組みを明かす

文:電撃オンライン

 さまざまなゲームアプリを手掛けるKLabの代表取締役社長に就任された森田英克さんへのインタビューを行った。

インタビュー

 昨年12月26日の同社IRにて専務取締役から代表取締役社長に内定したことが発表。3月21日に行われた定時株主総会にて、正式に代表取締役社長に就任した。

 就任を受けて、最近のKLabについてや今後の展望などについて、お聞きした。なお、本インタビューの聞き手は電撃ゲームメディア編集部・総編集長の豊島秀介が担当した。

転機になったのは『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』の海外での成功

――社長就任、おめでとうございます。

 ありがとうございます。

――まずは社長就任にあたり、今後の意気込みをお聞かせください。

 以前のKLabはゲーム事業とその他の事業という形だったのですが、約2年前からゲーム事業に集中するという方針になりました。ゲーム事業を立ち上げからずっと担当していたのが私だったので、これからもゲーム事業で成長していこうという方針に基づいて、私が代表取締役社長に就くことになりました。

 ゲーム会社として、コンテンツ会社として、お客様に楽しんでいただけるいいものを世の中に出していきたいと思っています。それによって会社としても、今よりさらに成長していくことを目指していきたいと考えています。

――KLabとして、2018年を振り返られていかがでしたか? 

 2018年でいちばん大きなトピックは、『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』のグローバル展開が成功したことです。ロシアでのワールドカップに合わせて各国代表の公式ユニフォームの許諾をいただいたり、世界のレジェンド選手とコラボさせていただいたりといった施策が非常にマッチしました。弊社の海外売り上げの成長に貢献したと思っています。

 海外の展開では、これまで日本の他社様があまり意識されていなかったマーケットで、成績が出てきています。具体的には中東、ヨーロッパ、香港といった地域です。

インタビュー
▲『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』

――そういった地域で『キャプテン翼』というコンテンツが広く知られていたことが大きかったわけですか? 

 おっしゃるとおりです。昔からアニメが放送されていたため、認知度がかなり高かったようです。

――グローバル展開を成功させるためのポイントは、どのようなものだと考えられていますか? 

 日本のゲーム会社がグローバル展開を行う際には、まず最初にシステムや運用面でのハードルがあります。そこは我々も悩んだところでした。

 具体的に言うと、日本版のゲームをローカライズして、海外用に運営チームをもう1つ作ると、同じぐらいの規模の運営チームが2つ併走することになります。でも我々は今から5、6年前に、1つのチームでたくさんの言語のバージョンを運営できるようなシステムを標準にしていったんですね。

 当時は海外で目立った成功はしていないのですが、これから海外でもビジネスをしていきたいと思っていたので、1つのアプリでいくつもの言語を切り替えられるように、システムに組み込むことをしました。

 あとは最初から海外版にも対応することを前提にしてプロジェクトを動かすことで、先行してローンチした日本版に続いて、海外版も可能な限り短いタイムラグでサービスを開始するようにしています。

 これによってそれ以前の形、日本版がヒットしたので海外でも展開することを意志決定して、海外版のために新たにスタッフを集めてチームを作るといった形から、ハードルを下げることに成功しました。

――ただ、中東での『キャプテン翼』のサービスは、日本版が出た後に考えられたわけですよね? 

 『キャプテン翼』のグローバル版の場合は、初期の対応言語にアラビア語は入っていなかったのですけれども、英語をはじめ6カ国語に対応していました。その状態で中東でもサービスを開始して、ローンチ後のリアクションを見て、2018年6月にアラビア語を追加する形で対応しました。

インタビュー
▲『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』

――なるほど。英語をはじめとする多言語に対応していたことで、中東のようにそれまで言語対応していなかった地域でも、サービスできたと。

 グローバルに配信できるシステムや運用上の仕組みが整っていれば、そこまでコストがかからずに全世界に配信することができますから。それで様子を見つつ、人気の高い地域に力を入れていくということを、現在も行っています。

携帯ブラウザ時代の縁が今まで生きる

――KLabさんは『キャプテン翼』や『BLEACH』、『ラブライブ!』など、幅広い地域で人気のIPを扱っていますが、ゲーム化するIPを、どのようにして決めているのでしょうか? 

 最初のIPタイトルは『キャプテン翼』で、当時はニコニコ動画向けのPCゲームで、その後、Mobageのモバイルブラウザゲームにも展開しました。モバイルのブラウザゲームで『怪盗ロワイヤル』や『ドラゴンコレクション』などがヒットして、次に何がヒットするのかを考えた時に、「マンガやアニメの人気IPを持ってくることができたら、それは人気になるだろう」と。

 それを受けて、当時のチームとディスカッションしていくなかで、「『キャプテン翼』がいい」という話があがり、権利元様にアプローチさせてもらった流れになります。

 実はこの時はまだ、グローバル展開は考えていませんでした。MobageやGREEといった携帯ブラウザゲームの世界でヒットするためには、IPタイトルを扱ったほうが絶対にいいだろうと考えて、我々がアプローチしたなかで、いいお返事をいただけたのが『キャプテン翼』や『幽☆遊☆白書』でした。

 時代がスマートフォンのネイティブアプリに切り替わった時に、以前からの流れで「アプリでもやりたい」というお話を権利元様にさせていただき、順次展開していきました。

――ある意味、正攻法なアプローチだったのですね。

 そうなります。スマートフォンのネイティブアプリだと、iOSのApp StoreやAndroidのGoogle Playを通じて配信するので、海外に配信するハードルがすごく低いと考えました。ネイティブアプリに参入する際、海外版も一緒に作ればチャンスがあると考えて開発したのが、オリジナルタイトルの『ロード・オブ・ザ・ドラゴン』でした。

 『ロード・オブ・ザ・ドラゴン』が米国を中心にスマッシュヒットしたことで、海外にもしっかりマーケットがあるとわかりました。そこで、大型IPをネイティブアプリで展開する話が進んでいた時に「海外展開も含めて契約を行いたい」とお願いしたんです。

インタビュー
▲『ロード・オブ・ザ・ドラゴン』

――海外でも人気のIPだからオファーしたのではなく、海外での展開の可能性を考慮して、将来のために許諾を得ていた……それはスゴイですね!

 当時の携帯ブラウザゲームと、現在のネイティブアプリのユーザー層は、若干変わってきていると感じています。昨今はコアなファンに支えられている作品が、大きな支持を得られるように変わってきたように思えます。

 ただモバイルブラウザゲームの時代は、誰もが知っている歴史の長い作品が強かった。そのため、『週刊少年ジャンプ』に載っているような多くの方に認知度のある作品で、アニメが海外でも放送されているタイトルが、僕らがぜひやりたいと思う作品だったんですね。そこで生まれた関係が、今も続いている形です。

――やがてスマホのネイティブアプリの時代に移ると、先ほど言われたようにファンの熱量が高い『ラブライブ!』や『うたの☆プリンスさまっ♪』のような作品と一緒に取り組まれていることからも、先見の明があると感じました。

 今お話ししたように、昔からのお付き合いがあるタイトルでポートフォリオ(※投資対象の一覧)が埋まっていった時に、残りのポートフォリオをどうするのかで悩んでいた時期がありました。

 自社のオリジナルタイトルに投資するべきなのか、今後の可能性があるIPに投資するのがいいのかと考えていた時期に、ちょうど『ラブライブ!』のお話をいただきました。

 女性キャラクターを扱った作品にアプローチしたいと考えていたんですけれども、それを自分たちでイチから作り上げていくのがいいのか、既存の作品をお借りしたほうがいいのかと悩んでいました。いろいろ考えて、『ラブライブ!』を一緒にやらせてもらうことを決断しました。

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▲『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』

――自分たちに今できることと、できないことをロジカルに判断した結果、できない部分を他社様と一緒にやろうと考えられたわけですか? 

 はい、そうなります。その当時はソーシャルアプリの音楽ゲームは珍しかったため、新規性が高くアイデアとしてはいいと思い、やらせていただくことにしました。

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▲『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』

――クリエイターの方々が自分の意見を言いやすい開発環境作りも心がけているのでしょうか? 

 それはすごく重要なことだと思っています。先ほどもお話ししたように、今までの我々のビジネスはロジカルにマーケットを分析して、作品を作っていくやり方でした。ただ、ロジカルに分析してもうまくいかないものはうまくいかないし、一方ではまったく想定していなかった体験のタイトルが突然出てきて、新しい流れを作っていく状況もあります。

 これからは、クリエイターの作品性がユーザーに評価される時代になっていくと思います。そうなると、弊社のスタッフやパートナー様に、いい作品を作れるクリエイターがどれだけいるかという勝負になってくるでしょう。

 その背景としては、いろいろな会社がトライ&エラーを繰り返してきた結果、ソーシャルゲームはこうあるべきという方程式が、ある程度見えてきていることがあります。それを踏まえたうえで、ゲーム性、クリエイティブ、プレイサイクル、プレイ体験、これを総合したプロデュースなどで、ユーザーの評価が決まる状況になってきていると感じています。

――質が高いことを前提としたうえで、そこにある種の作家性を加味できるか、ということですか。

インタビュー

 そうですね。従来型のモバイルゲームの基本形はこれからも残っていくと思うので、ユーザーが楽しめる洗練されたシステムがあることに加えて、ゲーム性やクリエイティブがどんな方向性を向いているかが問われるでしょう。

――森田さんが社長に就任されて、今お話された方向に進んでいくような形で開発体制を新しく変えていくことは、予定されているのですか? 

 開発体制としましては、品質をできるだけ高い状態で完成させる取り組みは、現状でも取り組んでいます。そのうえで新しいクリエイティブをどう生み出すかにつきましては、会社全体で取り組んでいるというよりは、プロデューサー同士でディスカッションしながら方向性を決めている感じです。

オリジナル作品はIPそのものを生活のなかで体験してもらいたい

――人気IPを原作としたゲームだけでなく、御社は『ラピスリライツ ~この世界のアイドルは魔法が使える~』や『禍つヴァールハイト』といったオリジナルIPも手がけられています。そのうえで、3月23~26日に開催された“AnimeJapan 2019”に出展されていましたが、“AnimeJapan”のような場所で、自社のオリジナルコンテンツをアピールするのには、どのような狙いがあるのか、お話いただけますか?

インタビュー
▲『ラピスリライツ ~この世界のアイドルは魔法が使える~』

 我々のオリジナル作品は基本的に、ゲームだけの展開を考えているのではなく、まずはIPを作って、そのIPをゲームにしたり、その他のメディアで展開していくことを、念頭に置いています。“AnimeJapan”に出展したのは、今後IPをさまざまなメディアで展開していくうえで、ゲームが好きな人だけでなくアニメが好きな人にも幅広く期待してもらいたいという意図があるのです。

 これはプロデュース論になるのですが、ゲームにはすでにプレイしているユーザーと、今後プレイしてくれるかもしれない潜在的なユーザーの2種類がいます。その2種類のユーザーに対してゲームの情報しか提供していないと、話題がゲームの世界だけで閉じてしまいます。

 そうなると、既存のユーザーにとっての体験としては物足りないですし、話題が限られていることでアテンションが弱くなってしまい、そのゲームが忘れられてしまったり、興味の優先順位が変わってしまったりします。潜在ユーザーへのアプローチも弱くなってしまいます。

 ゲームと同時にアニメやコミック、ノベル、音楽、イベントといったメディア展開を行うことで、作品に関する新しい話題をユーザーに心地いいタイミングで、コンスタントに提供できます。1年を通して、できるだけたくさんの異なる体験を提供したいというのが、メディア展開の狙いです。

――その話題作りとなるのが、『ラピスリライツ』でいえば、各アイドルユニットの声優さんによる2.5次元的な展開であったり、『禍つヴァールハイト』でいえば公式サイトにカルロ・ゼン先生の小説が掲載されていたりというものになるわけですね。

 私の原体験は『週刊少年ジャンプ』なんですよ。『ジャンプ』の場合は読んでいる少年たちの生活の中で、毎週月曜日がマイルストーンになっていました。先週発売されたマンガを繰り返し読み込んで、自分なりに考察して、友だちとの話題にもなり、次の月曜日を楽しみに待つ……それが1年中、毎週繰り返されていました。

 そのため我々の作るコンテンツでも、ユーザーにそういった体験を味わってもらいたいという思いがあります。気持ちのいいスパンで新しい体験やサプライズがあることを、さまざまなメディアを通して提供できればユーザーにとっても我々にとっても心地いい関係が作れると思っています。

――週刊雑誌がモデルの原点だったとは思いませんでした。

インタビュー

 1週間や1年間といったスパンの話をさせていただきましたが、1日のあいだにアプリを遊ぶ時間は、おそらく1~2時間前後……それ以外の時間にもゲーム以外のメディアでIPにふれてもらえれば、より楽しんでいただけると考えています。

 例えばアニメであれば、ただ作品を視聴するだけではなくて、物語を考察したブログを読んだり、出演者様のSNSを見たりと、そこにかかわるものはいろいろとある。我々としては、そういうところでファンの1日の生活を埋め尽くしてみたいと考えています。

――なるほど。リアルイベントや生配信に力を入れているのも、タッチポイントを増やす活動の一環になるのでしょうか?

 そうです。弊社が毎週、YouTubeやPeriscopeをはじめとするSNSを通じて日本と海外向けに配信しているKLabGames放送局(海外向けタイトルはKLab Games Station)や、東京ゲームショウやフランスのJapan Expoなどへの海外イベントの出展も、ユーザーのゲームへのタッチポイントを1つでも多く増やし、直接的なコミュニケーションの機会を作りたいという考えからです。

――『ラピスリライツ』に関しては2月に、中国の盛大遊戯(シャンダゲームズ)と共同開発・運営を行うことが発表されましたが、オリジナルIPもグローバルに展開していくということでしょうか? 

 『ラピスリライツ』はもともと中国語圏でも展開していきたいと考えていました。そのためゲームだけでなく、アニメなど他のメディアについても、シャンダゲームズ様と協力して中国でも展開できればと思っています。シャンダゲームズ様も、すごく高いテンションで取り組んでくれているので、刺激になっています。

――『禍つヴァールハイト』は、かなり骨太なモバイルオンラインRPGになっているとお聞きしています。

 このタイプのゲームはコンセプト作りが難しいところがあります。我々がイメージしているのは主に、世界観やストーリー性といった日本のRPG的な部分を楽しまれているユーザー。そのうえで遊び方をより現代的にして、多人数のマルチプレイ、コミュニティプレイが入っているという形です。

インタビュー
▲『禍つヴァールハイト』

――その『ラピスリライツ』と『禍つヴァールハイト』ですが、進捗具合はいかがでしょうか。

 『ラピスリライツ』は先日のAnimeJapanでスペシャルステージを開催しました。これまで『ラピスリライツ』のステージは出演声優様のライブを中心にやってきたのですが、今回のAnimeJapanでは『ラピスリライツ』がどういう作品なのか、世界観や物語の部分をアピールできたと考えています。

 『禍つヴァールハイト』に関しては、4月下旬から5月上旬には皆さんにプレイしていただけると思いますので、あと少しだけ楽しみにお待ちいただければと。

――最後に、KLabのゲームを楽しんでいる、あるいは期待している読者に向けてメッセージをお願いします。

 質が高くておもしろいゲームを世界中に発信していくのが我々のミッションですので、皆様にワクワクしてもらえるようなゲームを作って運営していくことが、まず基本にあります。

 そのうえで、オリジナルIPのところでお話ししたように、ゲームの周辺にある体験も含めたおもしろさを、提供していきたいと思っています。

 アイデアを実現していくまでにはいろいろな壁があることが多いのですが、私自身がもともとゲーム作りの現場から代表になっていますので、そういった壁はできるかぎり取り払っていきたいです。

 皆様に喜んでもらえることをできる限り実現していきますので、今後もご期待ください! 

――本日はどうもありがとうございました。

(C)高橋陽一/集英社
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原作「キャプテン翼」高橋陽一(集英社文庫コミック版)
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