ネタバレありでも伝えたい物語の魅力3:権力を極めたはずなのに、なぜ? と問題提起をすることで見える物語の深さ【電撃オクトラ日記#339】

タダツグ
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 10月28日、スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』が配信1周年を迎えました。キャラの覚醒要素や強力な固有必殺技の追加、メインストーリーの更新に新コンテンツ“試練の塔”の実装など、大規模なアップデートが行われて話題を呼んでいます。

 今回は記念すべき節目を迎えた本作について、ますます盛り上がること請け合いなストーリーのおさらいも兼ねた、緊急座談会を決行! 編集部のスタッフが一堂に会して、“富を極めし者編”、“権力を極めし者編”、“名声を極めし者編”、そして“全てを極めし者編”の物語について語り合います。

 本記事では“権力を極めし者編”をピックアップ! 企画の構成上、ネタバレを多分に含む内容となっておりますので、まだ未クリアの状態でお読みになる方はご注意ください。

《座談会参加者の紹介》

タダツグ:ガチ勢とエンジョイ勢の中間くらいをウロウロしているゲームライター。『オクトラ』に関してはおもにインタビューやプレイレポートなどの記事を担当している。電撃オンライン以外では、シシララTVというWEB動画媒体でも本作の実況プレイ放送を配信中。

KK:レトロゲーム好きライター。2Dグラフィックの良き雰囲気を残しつつ、最新のシステムに対応した『オクトラ』シリーズは特に大好物。

ことめぐ(ことぶきめぐみ):『オクトラ』シリーズが大好きで、ゲームはもちろん、グッズなどを集めることも好き。キャラクターを愛でたり、ストーリーを楽しむ派。トラベラーストーリー記事や、直近ではコラボカフェのレポートとイラストを担当しているライター兼イラストレーター。

ボスなのにどうして? タイタスから漂う謎の“小者臭”

KK:“権力を極めし者編”では、罪人の更生組織を謳う“緋翼兵団”と、それを束ねる元英雄・タイタスさんとの戦いが描かれていきます。

ことめぐ:いきなりディスるわけではありませんけど。タイタスってアーギュストやヘルミニアと比較すると少し格落ち感がある……そう思っているのは私だけでしょうか?

KK:同意ですよ。誤解を恐れずに言うと、格落ち感があるというか残念感があるというか……“脳筋”過ぎません? タイタスは。

タダツグ:いきなりぶっこんできた(笑)。つまるところ、小者感があるってことですよね? 僕も完全同意です。ただ、それって人間としては一番マトモってことだとも思いますけど。

ことめぐ:マトモ……ですかね?

タダツグ:いや、もちろんマトモではないですけどね。あくまでも“三傑のなかで比較したら”って意味。なんだかんだで有能な部下には自由にさせているというか、上司としてはわかりやすいタイプというか。自分にとって有益なヤツは、無条件で厚遇しているわけじゃないですか? それってけっこうマトモですよね。ヴェルノートに噛みつかれたからボスとして小者感が出ちゃったけど、人間味があるなって気はします。

KK:そういうことか~。ほかの2人がぶっ壊れ過ぎているから、比較的マトモなタイタスが小者に見えてしまう説……あると思います(笑)。例によって“権力”のストーリーもまあ暗いわけですけど、それゆえにリンユウの存在がキラめいていますよね。

タダツグ:リンユウはかわいい。それは間違いない。でも、ヴェルノートはちょっとなあ……って感じです。

ことめぐ:ヴェルノートお嫌いですか?(笑) 私は結構好きなんだけどなぁ……。

タダツグ:嫌いというか、感情移入しづらいって感じですね。彼って“権力を極めし者編”の主人公的なポジションだと思うんですけど、やってることは相当ヤバイじゃないですか。ある意味、タイタス以上にぶっ壊れてるキャラだと思う。

ことめぐ:なるほど。

KK:ちなみに、ヴェルノートのどのへんが好きなんです?

ことめぐ:あのリンユウちゃんが好きな男性だし……そんなに悪い人間だとは思えないんですよね。

タダツグ:そうね。悪いというか“弱い人間”ってイメージ。

KK:ああ、その表現はしっくりくるかも。ヴェルノートさえしっかりしていればこんな結末にはならなかったんじゃないって局面が多々ありますよね。それこそ“緋晶薬”の研究だって、いくらでも途中で辞められたハズだし。

ことめぐ:そこはモヤッとしますよね。リンユウのことが大好きで、すごく大切にしていることは伝わるじゃないですか。それゆえにもう少しシャキッとしてほしいってことですかね。お2人としては。

タダツグ:ですね。まあ、僕自身がヴェルノートの立場になったとしたら……やっぱり同じような感じになるかもしれないけど(苦笑)。

KK:リンユウがいなくなったあと、彼女が得意としていたシチューをふるまおうとしてくるシーンにはゾクゾクきましたよ……(笑)。傷ついているところに申し訳ないけど「うわ、この人ダメだー」って思っちゃった。

ことめぐ:私もすごく怖かったから、印象に残ってますね。あそこで壊れてしまったから、それ以降の行動がすごく極端になってしまったのかな……って。

  • ▲旅団に対し、リンユウが得意としていたシチューをふるまおうとするヴェルノート。椅子に置かれているリンユウ人形(?)が彼の壊れっぷりを象徴していて、なんとも芸が細かい……。

KK:同情の余地はありますよね。ヴェルノートのあれほどの壊れっぷりを見てしまったがゆえに、“名声を授けし者編”での謎解きシーンでは、つい●●●●を選びたくなってしまうという……。

タダツグ:めっちゃわかります! でも“授けし者編”のネタバレはもうちょい後にとっておいてもいいかもしれませんね。ここは伏字で書くことにしますか(笑)。

KK:その方向で……そして、分かってくれる方がいて、ちょっとうれしい(笑)。

崖から落ちても死ななかったリンユウの強さにビックリ

タダツグ:タイタスのことを小者と評しておきながらなんですが、演じる小山力也さんの演技はものすごかったですね。一気に骨太感が出てくる。

KK:たしかに。小山さんでなければ、タイタスはますますもって小者っぽく見えていた気がします。そういう意味では、このゲームの声優さんの演技ってどなたもすごいですよね。三傑、そして“全てを極めし者編”のボスであるパーディス王。いずれも実力派が声を当てているのは大きい。

ことめぐ:ヘルミニアが田中敦子さんで、アーギュストが浪川大輔さん。パーディス王が玄田哲章さん……どなたも「この人しかいない!」って配役ですよね。素晴らしいの一言。マーヴェラスです!

タダツグ:ちなみに、お2人が一番印象に残ったシーンはどこですか?

KK:“権力を極めし者編”でってことですよね? 私はリンユウが谷底に落ちたシーンかな。ああ、死んだか……と思いきや「無事に生きてるんかい!」って(笑)。

ことめぐ:私も真っ先にそのシーンが思いうかびました。リンユウちゃん強いなって。

KK:このゲーム、結構やすやすと命が奪われることが多いから逆に新鮮ですよね。高所から落ちてもあきらめてはいけない。……普通に考えたら助かりませんけど(笑)。

タダツグ:ホント、命がやすやすと奪われるシーンは多い。一章の冒頭で、使用人がタイタスに未完成の緋晶薬を飲まされたシーンもすごく印象に残っています。「大事な使用人にこんな未完成品は飲ませんよ」ってシーン。おお、死亡フラグ回避かって思いきや、手のひらをクルーってするあの根性。タイタスさん鬼畜だなって思いました。それでも三傑のなかではマトモに見えるんだから、ホント不思議(笑)。

  • ▲このシーンをあらためて見直すと、やっぱりこの人の部下にはなりたくないですね……。

KK:それで大物感が出るかというと、ちょっと違うんですよね。逆に小者感が出ちゃってる。部下を粗末にし過ぎるのもどうかなって感じ。

ことめぐ:結局、部下に噛まれてめちゃめちゃにされちゃうわけですしね。

KK:おっしゃるとおり、結局タイタスはヴェルノートの裏切りで計画が大きく狂ってしまうわけですけど。あそこは「オヤ?」ってなりましたよ。私としては、タイタスはヴェルノートが裏切ることも視野に入れつつ行動しているとばかり思っていたので。

タダツグ:そう! あそこは一周回って新鮮でした。てっきりヴェルノートを泳がせてるんだろうと思ってたら「まさか“緋晶薬”を己の体で味わうとはな」って……お前ホントに騙されとったんかーいって!

ことめぐ:たぶん、たくさんのプレイヤーが同じツッコミを入れたと思います(笑)。

  • ▲「タイタスさん……マジですか?」と思わずツッコミを入れてしまった人も少なくないのでは?

タダツグ:あそここそ、タイタスを小者だと決定づけた名シーンですよね。でも、なんだろう……。こうして思い返していくと、もしかすると僕はタイタスのことが結構好きなのかもしれないぞ。

一同:(笑)

KK:小者臭さが人間らしいという意味では、タイタスは憎めないところもありますね。

尽きない疑問──はたしてタイタスは権力を極めていたのか?

タダツグ:“権力編”といえば、エンバーグロウという街の美しさに目を奪われました。僕、コンシューマ版『オクトパストラベラー』ではフレイムグレースがすごく好きだったんですけど、それを彷彿とさせる雪景色が印象的。

ことめぐ:フロストランド地方はいいですよね。サウンドもしっとりとしていて素敵ですし、舞い散る真っ白な雪がものすごくキレイ。そしてその白い雪が、イベントで緋晶薬が散布された瞬間、紅く染まるという演出も素晴らしかったです。ビジュアル的にものすごい絶望感がありましたよね。

KK:否応なく盛り上がりましたよ。、あの紅い雪の中でタイタスと決着をつけるというのは。タイタスだって、最初はあの美しい街を異国の脅威から守るために戦っていたんですよね。ちょっとボタンを掛け違えてしまったばかりに、あんなことになってしまったわけですけど。

タダツグ:そうですね……。本当に、タイタスは些細なボタンの掛け違いなのかもしれません。ヘルミニアは確かに“富を極めし者”でしたし、この後語り合うことになるアーギュストに関しても、やっぱり“名声を極めし者”だった気がするんですよ。そんななかで唯一、タイタスだけが「権力は極めてなかったんじゃないかな……」って思えてしまう。

ことめぐ:わかります。

タダツグ:自分のなかで、タイタスは“権力に焦がれし者”って印象なんですよね。まだ極めてはいなかったんじゃないかなって。そういう意味では、旅団がタイタスの野望を事前に打ち砕いたシナリオって捉えてもいいのかも……。“タイタス大聖堂”が完成してから乗り込んでいたら、まったく違ったシチュエーションになっていたと思います。

KK:権力を手にしていたこと自体は間違いないんですけど、それに心酔している人物が誰一人いなかったというのは、テーマとして深い気がしますね。各シナリオの二章で戦う中ボスたちって、三傑の影響力を受けていると思うんですよ。

タダツグ:ふむふむ。“富編”で戦うソニアはヘルミニアの財力を妄信していたわけだし、“名声編”の──まぁあとで改めて語るとして名前は書いちゃいますけど──フランセスカも、アーギュストの名声に魅入られていた。……確かにおっしゃるとおりですね。

KK:その点“権力編”のユルゲンはというと、タイタスの権力に従っていたかどうかは私のなかでちょっと疑問なんですよ。単純に母親を人質に取られていたから従っていただけって気がして。少なくとも、ほかの2人ほどボスに心酔していたかというと、そんなことはなさそう……。結局のところ、表向きの権力だけで人間を押さえつけることはできないんじゃないかなって思っちゃいました。

ことめぐ:権力に酔っていたのかもしれませんね。ヴェルノートを権力で押さえつけようとしないで、リンユウとラブラブさせてあげていれば、あんなことにはならなかったかもしれないのに。

タダツグ:まさにそれ。うまく“飼い殺し”にすればいいものを……結局、己の権力を過信しちゃっていたのかな? 権力に固執してしまったがゆえに、部下なんてどうでもよくて「俺が俺が」っていう状態になっていたのかもしれない。

KK:そこをテーマとして描いていた部分はありそうですね。逆説的ではありますが、そう捉えると“権力を極めし者編”はほかの二編と味付けがちょっと違ってて、そこが面白いのかなって思います。では、今回はこのへんでまとめるとして……。次回はみなさん大好きなアーギュストさんが登場する“名声を極めし者編”についてトークしていきましょう。

タダツグ、ことめぐ:マーヴェラス!

【名声を極めし者編に続く】

『オクトラ』ネタバレあり座談会


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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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