ネタバレありでも伝えたい物語の魅力4:衝撃の結末を知ってなお、発見がある神シナリオ。名声編がガチでマーヴェラス!【電撃オクトラ日記#343】
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- タダツグ
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2021年10月28日、スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』が配信1周年を迎えました。キャラの覚醒要素や強力な固有必殺技の追加、メインストーリーの更新に新コンテンツ“試練の塔”の実装など、大規模なアップデートが行われて話題を呼んでいます。
今回は記念すべき節目を迎えた本作について、ますます盛り上がること請け合いなストーリーのおさらいも兼ねた、緊急座談会を決行! 編集部のスタッフが一堂に会して、“富を極めし者編”、“権力を極めし者編”、“名声を極めし者編”、そして“全てを極めし者編”の物語について語り合います。
今回の話題は“名声を極めし者編”。企画の構成上、ネタバレを多分に含む内容となっておりますので、まだ未クリアの状態でお読みになる方はご注意ください。
《座談会参加者の紹介》
タダツグ:ガチ勢とエンジョイ勢の中間くらいをウロウロしているゲームライター。『オクトラ』に関してはおもにインタビューやプレイレポートなどの記事を担当している。電撃オンライン以外では、シシララTVというWEB動画媒体でも本作の実況プレイ放送を配信中。
KK:レトロゲーム好きライター。2Dグラフィックの良き雰囲気を残しつつ、最新のシステムに対応した『オクトラ』シリーズは特に大好物。
ことめぐ(ことぶきめぐみ):『オクトラ』シリーズが大好きで、ゲームはもちろん、グッズなどを集めることも好き。キャラクターを愛でたり、ストーリーを楽しむ派。トラベラーストーリー記事や、直近ではコラボカフェのレポートとイラストを担当しているライター兼イラストレーター。
誰も見破れなかった? アーギュスト、そしてシュワルツの正体
KK:それでは、ここからはみんなが大好きな“名声を極めし者編”について語りましょう。この物語はかなり倒錯しているというか、どこからどこまでが真実なのか、探り探り進める感じでしたよね。
タダツグ:今回はネタバレOKなんですよね? だったら言っちゃいますけど、お2人はアーギュストとシュワルツが同一人物だって気づいてました? 正確に言えば、僕らがアーギュストだと思っていた人物は実際は替え玉で、シュワルツこそが本物のアーギュストだった、ってことですけど。
ことめぐ:いえ、すっかり騙されてました(笑)。アレを初見で見破ろうというのは無理じゃないかと……。そもそもアーギュストはどこであの交代劇を思いついたんですかね。一章冒頭で、旅団のメンバーがアーギュストと出会って、そのすぐ後にシュワルツが登場しますけど……。
タダツグ:最初に出会ったアーギュストは替え玉ではなく本物ですよね。旅団に対して「良い“題材に”なりそうだよ」ってつぶやいていますし。で、劇場の奥に消えたアーギュストを追いかけようとして進んでいくと、道の途中でシュワルツと出会うって流れ。
ことめぐ:つまり、出会ってほんの数分であれだけの脚本を考えだし、替え玉のアーギュストを仕立て上げて、自分はシュワルツとしての役割に就いたってことですよね。天才か!
KK:どう考えても天才ですね……。
タダツグ:実際は「面白そうな連中に出会ったからちょっと狂言回しに付き合わせてみよう」くらいのノリで始めてそうですけどね。ただ、思っていた以上に旅団の存在が興味深いから、どんどんエスカレートしていったということかも。彼ら自身の即興も織り交ぜつつ。
KK:その場その場での即興はあるでしょうね。すべてが思い通りに進んでいくとは考えづらいし……。そう考えると、アーギュスト役の替え玉は演技力はもちろん、頭の回転の速さや本物のアーギュストに対する理解度が半端じゃないことになる。アドリブ力がヤバイ。
ことめぐ:あそこまでアーギュストに心酔して、内面的にシンクロしていたというのは、やっぱり指輪の力が関係しているんですかね。
KK:アーギュストはただでさえカリスマ性がありますからね。それが指輪の力でブーストされた結果、演じる替え玉の力も底上げされたのかもしれません。なんにせよ、アーギュストが持つ名声に深く心酔していたからこそ、破綻することなく“アーギュスト役”をまっとうできたのかな、と。
タダツグ:「こういったことをやってみたい」って構想自体は、ずっとアーギュストの頭のなかにあったんじゃないですかね。さすがにあの一瞬で、替え玉にしっかり説明するのは無理だと思うし。事前に打ち合わせとかはしてあって、それを実行するのがあの瞬間だったってことなら納得もいきます。アイデアを昇華させる相手が聖火神の指輪を持つ旅団メンバーだったというのは、ある種運命的ですがね。
KK:アーギュストの替え玉も1人とは限りませんよね。場面場面に応じて、複数の人物が演じ分けている可能性すらある。彼に心酔している人間はたくさんいそうですからね。
タダツグ:その考え方は面白い。実際に明言されていないですし。
ことめぐ:そうだったら怖すぎる……ホント、言い出したらキリがないですね。それだけ倒錯してるということでしょうか、この“名声編”は。
KK:街の人々のなかにも、アーギュストファンってものすごくたくさんいるのが印象的でした。まさに“名声を極めし者”ですよ。アーギュスト様のためなら命も惜しくないって人が、何人もいる。そういうファン心理って、じつはすごく恐ろしいものですよね。
タダツグ:アーギュストの劇作家としての本能というか、創作物に対する熱意は本物なんですよね。だからこそ、あれだけのファンがついていたのかなって。指輪の力によって増幅されてはいたでしょうけど、才能自体は元からあったんだと思います。
ことめぐ:あそこまで劇にノメり込めるというのが、そもそも才能ですよ。私はちょっとうらやましいとすら感じました。
垣間見えるアーギュストの葛藤。真に手に入れたかったのは“名声”ではない……?
タダツグ:こうなると、彼が指輪を手に入れた時期が気になりますよね。指輪を手に入れてしまったがゆえに壊れていったのか。それとも、壊れていたからこそ指輪に選ばれたのか。今後の“名声を授けし者編”で語られるのかもしれないけど……。
KK:タイミングは気になりますね。上げ潮のときに指輪を手に入れたことでその潮流が狂ってしまったのか、くすぶっていたところに指輪を手に入れたことで上げ潮に変化したのか。どっちなんだろう?
タダツグ:僕のイメージとしては、アーギュストは前者でヘルミニアとタイタスは後者な気もするけど……どうですかね。
ことめぐ:“指輪を授けられたことで極めし者になった”ということは間違いなさそうですけど……。
KK:私としては、アーギュストは“普通の人よりは秀でているけど大作家というわけではない”くらいのレベルじゃないかと思ってます。“名声編”をプレイしていると、アーギュストは実際に己で体験したり、誰かの行動を見たりすることでインスピレーションを得るタイプに見える。つまり、すべてをゼロから生み出せるほどの想像力があったわけではないのかな、って。
ことめぐ:スランプのような描写もありましたもんね。実際に人が死ぬところを見ないと物語が書けないっていうのであれば、そこがアーギュストの限界なのかもしれません。
KK:スランプというか、現実とのギャップに苦しんでいる可能性もありそう。自分としては駄作と思っているような作品でも、指輪の力で大衆には受け入れられてしまい、名声だけはうなぎ上りになっていくわけですよね? 想像したらゾッとしますよ。「俺が作りたいものはこんなもんじゃないのに!」ってなってそう。
タダツグ:作品を正当に評価するのは自分だけ。何を書いても民衆は面白いと持ち上げるとなると、作家としてこれほど張り合いがないことはないのかも。彼がどんどん闇に飲み込まれていくのはわかる気がします。
ことめぐ:ただ売れればいいってわけじゃなくて、いいものを作りたいという気骨はしっかり持ち合わせていそうですからね。
タダツグ:そう考えると、指輪の力って万能じゃないなってあらためて思いますね。過剰なほどの名声は得たけど、劇作家としての才能が引き上げられたわけではないとなると……それはものすごい地獄のような。
ことめぐ:名声も権力も、目に見えるものではないですからね……。その点、富はわかりやすくていいかも。ヘルミニアはお金をたくさん貯め込んでいたわけですし。
タダツグ:もし3つの力のうちどれか1つを選べるなら、僕は富を選ぶかな(笑)。
KK:生々しい(笑)。でも、あそこまでのお金に囲まれていても、ヘルミニアは満たされていなかったように思えるところが、このゲームの業が深いところですよね。きっと三傑の誰もが、本当に手に入れたかったものは別のところにあった気がします。
ことめぐ:誰も幸せになっていませんからね、おっしゃるとおりかも。そうなると前回の座談会で“小者感”が取り沙汰されたタイタスさんの見方も変わってきますね。強大な権力だけは与えられたけど、部下たちは自身のカリスマ性に惹かれてついてきているわけじゃないから、人質みたいな汚い手法に頼らざるをえなかったのかなとか、色々と考えてしまいました。
タダツグ:僕だったら四の五の言わずに有頂天になってるなぁ。アーギュストレベルの名声を得ていたら、めっちゃ天狗になりそうです。きっとそういう人間のところには、指輪はこないんでしょうね(笑)。
ことめぐ:私たちのところには、“聖火神エルフリック”の指輪が来てくれてるじゃないですか!
タダツグ:そうでした! でも、エルフリックの指輪は何を与えてくれているんだろう……。
KK:設定としては、仲間を導いてくれているのは指輪の力ってことになってるんですよね? あれだけの仲間との出会いが指輪によって導かれているとするなら、それはものすごい力のような気がします。
ことめぐ:普通なら絶対に出会わないような人々が集まってますからね、自分たちの旅団には。
タダツグ:出会いこそ導いてもらえるけど、そこから彼や彼女との関係性を構築するのはプレイヤー自身だよって考えると、決して万能ってわけでもないでしょうしね。
KK:そもそも、導きにバカにならない量のルビーを消費しますし(笑)。
タダツグ:それはゲームの仕様として仕方ないでしょう(笑)。でも、なんらかの設定があったらそれはそれで面白い。
ことめぐ:指輪の起動に必要とかあるんでしょうか……。
タダツグ:指輪にルビーが吸い込まれると導きが発動するとか? なんかガメツイな(笑)。個人的には契約金って思っておけばいいのかなって気もしました。ただで手を貸してくれというのもムシのいい話ですから、それくらいは必要でしょうしね。
母としてか、それとも女優としてか? フランセスカの選択に驚愕
KK:お話を“名声編”に戻しましょう。お2人はフランセスカに関してはどういう印象をお持ちですか?
タダツグ:個人的には、本作最大のトラウマポイントがフランセスカとのバトルでした。彼女と戦うこと自体もそうですけど、そもそもの行動自体に問題が……。
ことめぐ:愛する人と自分の息子が天秤にかけられて、結果的に息子を捨てるというのは驚きましたよね。
タダツグ:そう。『バキ』の母ちゃんもビックリなムーブをかましてくれたから「マジで?」ってなりました。これまでに僕が触れてきた数々のコンテンツのなかで、似たようなシチュエーションは何度かありましたけど。母親としての自分よりも女性としての自分を選択したのを見たのは、フランセスカが初めてかもしれない。はたして、あれが女性としての選択だったのかはわかりませんが……。
KK:私のなかでは、あそこでアーギュストを選んだ理由は女性として愛する人をというより、女優として自分を輝かせてくれる人を選んだって認識かな。うん、母親としてダメだろって点では一緒ですけどね(苦笑)。
ことめぐ:たしかに、異性としてのアーギュストを取ったというよりは、劇作家としてのアーギュストを選んだ感じはしました。彼女にとってステージの上で輝くことこそが至上であるのなら、そういう選択になるんですかね。
タダツグ:結局は自分本位というか……。名声の力が肥大したアーギュストのそばにずっと居たことで、彼女自身も名声に取り憑かれていたのかもしれませんね。
KK:あそこでフランセスカと戦うことになり、ビックリした人はたくさんいたと思います。
タダツグ:そりゃもうビックリですよ。シュワルツがじつはアーギュストでした……という“名声”最大のオチよりも、個人的にはここでフランセスカと戦うことになった事実のほうが、衝撃としては大きかった。なまじ先に“名声編”を遊んでいたことも影響しているかも? おかげで“富編”でソニアと戦うときは、ちょっと免疫ができていた気がします(苦笑)。
ことめぐ:“権力編”のユルゲンなんかは、物語的にまったく違和感ありませんでしたしね。
KK:ユルゲンはね……。むしろ、あそこでリンユウと戦うことになったりしたら面白かったけど。
タダツグ:それはない……と言い切れないのが、この『オクトラ大陸の覇者』の恐ろしいところ。この先そういった展開がないとは言えませんからね。誰が裏切ってもおかしくないと思っている。
ことめぐ:このゲームにいい感じにヤラれてますね(笑)。
タダツグ:そして、そんなアーギュストとフランセスカの間に生まれたミハエルくん……。彼も結構、闇が深いですよね
KK:最も信頼していた母親に殺されかけたわけですから。ものすごいトラウマを背負っているでしょう。
ことめぐ:“全てを極めし者編”をクリアして、ミハエルがサイラス先生を師事して勉強している姿を見たときはホッとしましたけど。“追憶の書”のチャットイベントを見た感じ、なかなか危ういですよね、彼。まさか自分が殺されかけた舞台演劇の世界に、自ら飛び込んでいこうとするとは。
タダツグ:しかも劇作家としてね。血は争えないというか……。そっちの道はヤバイと思うけどなぁ(笑)。サイラス先生がしっかりと育ててくれることを祈るばかりです。
KK:本当に……。こうして思い返すと、フランセスカ戦の衝撃度は本作のなかでもベスト3に入るレベルでした。シナリオライターさんとしては“してやったり”かもしれませんね。
タダツグ:二章の冒頭で、フランセスカはミハエルをアーギュストから守るような行動をして母性をチラ見せしてたから、余計にラストの衝撃が増しましたよね。ミハエルにはマジで同情しかない……。
ことめぐ:二章ラストのイベントはフランセスカだけではなく、アーギュストやシュワルツの心境を推し量るのも面白いですよね。どこまでが脚本なのかはわかりませんけど、全員が即興であれだけの演技をしていたとすると、相当すごい。
KK:アドリブもバンバン飛び出しているでしょうし、底知れぬ演技力ですよ。アーギュストは劇作家としてより、演者としてのほうが向いていた可能性すらある。
タダツグ:アーギュストとミハエル、どちらを選ぶか選択しなければならない局面では、フランセスカはアーギュストが替え玉だとわかってないんですよね。その後、戦闘になって旅団に敗北し、シュワルツの腕の中で死んでいくとき、何かに気づいたように「あ……」って口にして息絶える。
KK:以前の開発者インタビューでは、あそこで彼女が真実に気づいたかどうかは、プレイヤーそれぞれに判断してほしいってニュアンスでしたね。
タダツグ:僕は、フランセスカはあそこでようやく気が付いたように思うんです。「あ、こっちが本物のアーギュストだったんだ」って。そこで後悔したのか、逆に安心したのか。息絶える瞬間のフランセスカがどんな気持ちだったのかは想像もつきませんね。
KK:シュワルツとアーギュストの替え玉は、あそこでフランセスカがミハエルを救おうとしたらどうするつもりだったんでしょう。たぶん、なんらかの打開案を考えていたようには思いつつ。基本的には成り行き任せというか、「こういう時に人間はどんな反応をするのか見てみたい」っていう好奇心のほうが勝っているような気がしてならない。
ことめぐ:筋書きが決まっていなかったとすると、アーギュストの替え玉は本当にすごいですね。自分が死ぬかもしれないのに、動揺している素振りなんて一切ありませんでしたから。
KK:それだけ本物のアーギュストに心酔していたんでしょうね。
タダツグ:彼には“演技を極めし者”の称号をあげたいですね。アーギュストがどこから連れて来たのか知りたい。真っ当な人間であれば、旅団に導かれてもおかしくないほどのポテンシャルを感じます。実際、戦ったら強かったし(笑)。
KK:あの人が一番スペック高いまでありますね。いやいや、こうしてしゃべってるとフランセスカのシーンしかり、ラスト直前のシーンしかり、今の知識を持ったうえでもう一回この物語をイチから体験してみたくなります。
タダツグ:完全に同意。三章のラストも、シメオンがいい感じにまとめてくれはしましたけど、結局シュワルツの話とアーギュストの話、どこまでが真実でどこからが虚構なのかはしっかり明言されてませんし。今の視点で見ると、また別の解釈とか生まれてきそうです。
ことめぐ:“名声編”はキャッチーですよね。このゲームを遊んでみるか悩んでいる人には、まずこのシナリオから遊ぶことをオススメすればいいのかなって思いました。
タダツグ:そうですね。このシナリオさえ読めば『オクトラ大陸の覇者』というゲームがどんなゲームなのか、色々と理解できる気がします。ああ、人は裏切るものなんだ……とかね。
KK:別邸の離れで読める手記とかもぜひ読んでみてほしい。あれを読めばアーギュストの狂気がより深く理解できますし。物語にこそ影響はしませんが、そういうプレイヤーの好奇心をくすぐる要素はたくさんありますよね。
タダツグ:追憶の塔にある書庫や、追憶の書そのものもそうですけど、世界観を掘り下げる手記や書物が散りばめられてますからね。それらを拾っていけばさらに深く世界観に浸れるというのは素晴らしいと思います。作り込みというか、作り方が、手軽に遊べるはずのソシャゲのそれではない(笑)。
ことめぐ:本当にそうですよね、RPGファンには絶対オススメかと!
ことめぐ:では“名声編”はこのくらいにして、次はいよいよ“全てを極めし者編”に突入しようかと……引き続きお願いします。
タダツグ、KK:よろしくお願いします!
『オクトラ』ネタバレあり座談会
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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者
- メーカー: スクウェア・エニックス
- 対応端末: iOS
- ジャンル: RPG
- 配信日: 2020年10月28日
- 価格: 基本無料/アイテム課金
OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者
- メーカー: スクウェア・エニックス
- 対応端末: Android
- ジャンル: RPG
- 配信日: 2020年10月28日
- 価格: 基本無料/アイテム課金