『スパロボ』は“好き”を肯定してあげられる場。オオチPが今だから話せること【スパロボ30周年記念連載:1】
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生誕30周年を迎えたバンダイナムコエンターテインメントの『スーパーロボット大戦(スパロボ)』シリーズ。ロボットアニメから漫画、ゲームに至るまで、多彩な版権作品が一堂に会して戦う人気シリーズの生誕を記念して、今回から4回にわたって特別インタビューを実施します。
第1回は、スマートフォンの『スパロボ』として新たな新境地を開いた『スーパーロボット大戦X-Ω(スパクロ)』と、現在配信中の『スーパーロボット大戦DD』のプロデューサー・オオチヒロアキ氏。運営型の『スパロボ』に長年携わってきたからこそ語れるお話や、オオチさん自身の『スパロボ』への関わり方など、今だから話せる裏話をお聞きしてきました。
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──オオチさんは、過去に『スーパーロボット大戦X-Ω(以下、スパクロ)』、そして現在は『スーパーロボット対戦DD(以下、DD)』のプロデューサーとしてご活躍されていますが、まずはオオチさんが『スパロボ』シリーズに関わるようになった経緯、ゲーム業界に携わるようになった流れから教えてください。
オオチさん:バンダイナムコエンターテインメントに所属していて、人事異動で『スパロボ』シリーズに関わることになりました。そこから気がつけば十数年経っています。『機動戦士ガンダム』シリーズや、その他のロボットアニメをいくつか見てはいましたが、最初は多くのユーザーさんと一緒で『スパロボ』の参戦作品をすべて見ていたわけではなく、ほとんどイチからロボットアニメを視聴して勉強し直しました。見たことはあるけど記憶があいまいだったアニメも含めて最初から見直し、そうした形で『スパロボ』シリーズとの関わりが始まっていったんです。
──『スパロボ』関連のお仕事をはじめてから、最初はどの作品に関わられたのでしょうか?
オオチさん:i-modeで『スーパーロボット大戦i』というサイトがあったのですが、そこが最初ですね。『スーパーロボット大戦モバイル』よりもさらに前で、携帯電話向けに『スーパーロボット大戦A』や『スーパーロボット大戦R』を移植していたサイトです。そこを担当していたのですが、事業再編の関係でコンシューマーも携帯電話も関係なく統合され、IPで仕事をまとめる形になったので、今は『スパロボ』というIP全体に関わっています。
もともとはバンダイナムコエンターテインメントの新卒ではなく中途採用なのですが、学校を出てフラフラしながら「楽しい仕事をしたいな」と思っていて、一番最初に入った会社がゲーム会社でした。そこでゲームを作っているうちに「キャラクターが好きなので、キャラクターゲームを作りたい」と当時のバンダイネットワークスに就職したところ、そこがバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)と統合して……あとは先ほどお話しした通りです。
『スパロボ』に関わる以前は、『仮面ライダー』のゲームや『たまごっち』のゲームを作っていました。もともと特撮が好きなのですが、複合混載のロボットゲームに携わるようになってからは、ずいぶん苦労しました。着任してみてから気づいたのですが、本当に、見たことがないロボット作品が多い!(笑)
もちろん、『仮面ライダー』も作品自体はたくさんありますが、そうはいっても数もロボット作品程ではなかったので見ていたんですよ。ロボット作品はアニメから漫画まで、まったく見たことがないものがあり、しかも量が桁違い。なので勉強するのに苦労した覚えがあります。
『たまごっち』は、グループの玩具なので設定資料もまとまっていました。『仮面ライダー』も東映さんの作品ですが、グループに関連商品を多く発売しているので、資料をそろえやすかったですね。『スパロボ』の場合はゲームを販売している会社がバンダイナムコエンターテインメントですけど、数多あるアニメ会社さんや版権を持っておられる方々からの許諾を得て開発・販売しているので、資料があったりなかったり、映像が見られたり見られなかったりと大変でした。しかも、「この話数の、このカットを参考にしてください」といった会社さんごとの要望があったりもします。なので本当に手探りで進んでいった形ですね。
加えて、70年代のロボットアニメ等は話数も多くて資料がない。そうなると、とにかくアニメ見て覚えるしかないんですね。ただオオチだけがアニメに詳しくなれば『スパロボ』を作れるというわけでもなく、『スパロボ』の開発では、ロボット作品の習熟度や把握度というか、好き度が各人異なります。その中で、「この人はコレに詳しいからここを作っておいて」というような形で任せていくので、本当に集合した知識と人材が求められるプロダクトだなぁと思ってます。
──オオチさんは『仮面ライダー』ゲーム出身とのことですが、どのような作品を担当されていたのでしょうか?
オオチさん:コンシューマーではなく、i-modeの『仮面ライダー』ゲームです。僕は、最初に入った会社だとコンシューマーゲームを作っていたのですが、部署移動の関係で当時盛り上がっていたi-modeなどの公式サイトビジネスに異動して、そこからパチスロやパチンコのシミュレーターを作っていったんです。その中でパチスロやパチンコのシミュレーターはキャラクターの取り扱いも多いんですが、そもそも自分がキャラクターが好きなので、シミュレーターじゃなくキャラゲーを作りたいと考えるようになりまして。バンダイネットワークスに転職しました。その流れで、携帯電話では『仮面ライダー』等のゲームを作っていました。
『スパロボ』に関わってからもすぐに表へ出たわけではなく、コンシューマーでは一番最初に『魔装機神F』を担当していました。アレは本当にいいゲームで思い入れもあります。
──そこから『スパクロ』を始められる前に、シリーズ初のソーシャルゲームである『スーパーロボット大戦 Card Chronicle(CC)』がありましたよね? もしかして、あちらにも関わっていらっしゃったのですか?
オオチさん:はい。『CC』も僕が立ち上げと運営を担当していました。あれは、当時流行り始めていたMobage(モバゲー)さんでスパロボを作ろうと企画を立ち上げました。ただ、ゲームIPをFree to Play化することは苦戦するだろうとわかっていました。『CC』から数えて10年くらいゲームIPのFree to Play化に携わっていますが、『スパロボ』はかなり難しい部類に入るタイトルだと個人的には思います。
なぜかと言うと、ゲームの中の構成要素のベネフィット(顧客が商品から得られる効果や利益)が、戦闘演出と複合混載の重厚な世界観と参戦作品で構成されているからです。例えばお金を払ったら長いシナリオが読み放題のパッケージを売っているのに、ソーシャルゲームではお金を出さないと参戦作品によるシナリオが読めない……という仕様だと話にならない訳です。
そんな仕様だと、やってられないと言われてしまいますよね。そういう意味では、かなり難易度が高い部類だと思います。
しかも『CC』を運営していた時代は、表現力の部分においてもまだまだコンシューマーゲームと開きがありました。戦闘演出でも勝てる要素がないですし、シナリオをたくさん書いてもi-modeの容量だと入れられない。そうなると携帯電話でできる利便性を軸に、キャラクターを売るしかなくなります。
しかし、1万円弱払うと機体やパイロットも含めて使い放題のコンシューマー『スパロボ』に対して、1万円出しても特定の機体やパイロットしか使えないとなると、かなり難しいサービス形態だなぁと。サービスは3年くらい運営しましたが手探り手探りで運営してました。
──『CC』ではコンシューマーでは見られなかった兜甲児同士の競演シナリオなど、ソーシャルゲームならではのチャレンジも印象的でした。
オオチさん:仮に、コンシューマーで兜甲児を同時に何人も出そうとすると相当準備しないと難しいですね。『スーパーロボット大戦Z』シリーズでも、並行世界の同一人物は同時に出さないと明言しています。ただ、こちらは携帯電話のゲームなので大丈夫だろうと。僕が「一緒に出してもよし」と権利元と相談して決めました。要はタイトルの売りとして『CC』独自の魅力にしたかったわけです。
──むしろ、そこがおもしろくてよかったと個人的に思っています。ユーザーとしては、自分のように思い切った挑戦を望んでいる層もいるのでは……?
オオチさん:挑戦は賛否両論なんですよ。YESと言う人とNOと言う人が同時に存在していて、その時にNOを言う人が多いほうを選択してしまうと事業規模が縮小してしまいます。挑戦していい場と、挑戦すべきではない場があると個人的には思ってまして。今は、たまたま『スパクロ』や『DD』のようなスマートフォンタイトルがあるので、そちらのほうで新しい試みを1回踏んでみてから、色んな所に反映するのが良いのではないかなと感じてます。
──そこから、スパロボ初のネイティブアプリというウリで『スパクロ』がスタートしました。本格的なFree to Playのアプリ『スパロボ』としてサービスが始まった経緯を教えていただけますか?
オオチさん:『スパクロ』を立ち上げた当初は、事業という単位で考えた時にスマートフォンでFree to Playを選択しないのはありえない状況でした。もちろん、あえて外すという戦略を取ることも可能ですが、商品展開をするなら必ず触れたほうがいい事業カテゴリーだと今でも思ってます。
『スパクロ』は5年6カ月運営しましたが、企画が始まったのは7、8年前。その時期はMobage(モバゲー)さんが全盛期で、市場の有名IPがモバゲーにそろい始めていました。いずれスマートフォンでも同じことが起きるのは確実だったので、やるしかなかったんですよ。ただ、お客様のスマホのガシャゲーに対する認識が今ほど一般化されてはいない過渡期の時代です。スマートフォンの課金システム、いわゆるガシャが嫌だという人は結構いました。
そんな時代だったうえに、そもそも『スパロボ』はコンシューマーゲームも発売されているんですよ。先ほども言いましたが、僕はゲームIPのFree to Play化はそもそも難しいと思っています。基本無料ゲームは『スパロボ』の要素に必ず課金要素を入れなければなりません。
事業として、コンシューマーゲームの売上がずっと右肩上がりだったらFree to Playをやらなくてもよかったのですが、当時の市況で言うとコンシューマーゲーム事業は横ばい。ここで数字を積み重ねないと『スーパーロボット大戦』シリーズ全体が厳しい状態になっていたんです。事業を継続するためには、事業成長率が必ず100%を超えていかないと行けないので、やらないと『スパロボ』シリーズが終わってしまう。
そんな状況だったので、ここはもう覚悟を決めて始めました。覚悟は決めていたのですが、予想通り楽な道ではなく、この流れのなかでどうやって生き残っていこうかと試行錯誤もしました。
──確かに、当時は今の比ではないくらい基本無料のゲームに対する風当たりが強い時代でした。
オオチさん:そこでいくつか施策を打ち、なかでも反応がよかったのが“期間限定参戦”という施策でした。ここに勝機を見出して期間限定を入れ続ける方向に舵を切り、作品を許諾いただけそうなところにはあらかたお話に行き、許諾ていただけたなかに、たまたま特撮作品があったんですよ。だから、『スパクロ』のなかに特撮作品があるのは、とくに僕が特撮を好きだからという理由ではありません。
『スパロボ』は“ロボット”と言う冠があるので、特撮やロボットが出ていない作品が入ること自体を嫌がるユーザーさんもおられたのですが、もともと『スパロボ』シリーズ自体と同じ世界観の『ヒーロー戦記』や『スーパーヒーロー作戦』でも、ガンダムと仮面ライダーとウルトラマンが一緒に戦っています。したがって、こちらとしてはもともとロボットアニメと特撮が一緒に戦っていたので大丈夫だろうと。それから、ちょっとずつ「ここまでなら許してもらえる」という参戦作品の領分を広げていくことも狙いでした。
そんな感じの入れ方だったので、ものすごく強いバイアスで何かを決めようと期間限定作品カラーリングを決めていたわけでもありません。期間限定のほとんどは、「今回はこれを入れよう」と運営チームと企画立案し、コンシューマーのスパロボチームと調整して許諾交渉を行っていました。
ただ、そうやって運営を続けていくうちに、ユーザーさんの一部からも「コンシューマーの『スパロボ』とは参戦作品の種類やカラーリングが違っていていい」という評価をいただくことが増えました。『スパクロ』と同じような挑戦をコンシューマーでしようとすると開発期間の関係で無理ですし、『スパクロ』自体が周囲から「スパロボのニセモノ」と呼ばれたりしていたので…であれば何かしら足跡を残そう、実験的な作品も入れて今後の『スパロボ』でIP展開をするためのいい下地を作ろう、という目論みもありました。
『アイドルマスター XENOGLOSSIA』の参戦でわかった「好きなものを好きだ」と肯定してあげること
──ちょっとずつ『スパロボ』で参戦可能な領域を探りながら広げていったというお話ですが、期間限定作品に関しては第1弾が『アイドルマスター XENOGLOSSIA』ですよね。結構、当初から思い切った参戦作品だと思いました。
オオチさん:5年6カ月のサービスのなかで、一番印象深かったのが『アイドルマスター XENOGLOSSIA』の参戦です。僕は、予定調和が苦手でして。だから、必ずみんなが「んっ?」と何か引っかかるような内容を心掛けてます。そういう方向性を持って仕事をしているということです。
なぜかと言うと、予定調和や同じことをやっていると事業が衰退するからです。常に105%から110%くらいにしておかないと、必ず衰退します。人間は刺激に飽きるので、前と同じだと買わなくなってしまう、遊ばなくなってしまう。必ず変化を入れなくちゃいけない。そう思って行動すると、だいたい会社の中ではビックリされるのですが、毎回何かに挑戦するというテーマを持って仕事をしています。
『アイドルマスター XENOGLOSSIA』を期間限定作品の第1弾として決めたときもそうですね。予定調和を回避するというテーマもあったので、当時は触れることが難しく、誰も参戦を想像していないであろう『アイドルマスター XENOGLOSSIA』に目を向けました。
各関係者に話を聞き、いろんなハードルがあることを確認したうえで、10周年なのですからとやりましょうと。
ただ、これだけでは単なる自己満足にしかならないとも思っていました。だから、そのあとで当時サンライズさんで行ったオフラインイベントに、長井龍雪監督をお呼びして、アイマス総合プロデューサーの坂上陽三さんとトークをしてもらいました。そこで、坂上さんが自身の口から「『アイドルマスター XENOGLOSSIA』には、『アイマス』制作サイドとして何も悪感情を持っていない」と明言して、長井監督は長井監督で「当時としては全力で作った」と語る、そんな場を設けたんです。
――当時のイベントを取材した編集にも話を聞きましたが、『XENOGLOSSIA』の一番のファンは、ひょっとしたら坂上さんだったのではないかと言うくらい、熱のこもったやり取りをされていたようです。
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当時のことを振り返ると、賛否両論の作品評価でしたが、当然のことながら『アイドルマスター XENOGLOSSIA』を地上波で見て感動した人もいます。嫌っている人と同時に、好きな人たちもいるんです。その人たちが、『アイドルマスター XENOGLOSSIA』を「好きだ!」となかなか言えなかった。それは気の毒なことですし、コンテンツを提供した側としても残念なことだと思います。
せっかく期間限定参戦が叶ったのであれば、『スパクロ』がハブになってユーザーさんを対象にした来客イベントを準備しようとサンライズさんと企画しまして、そしたらそこに来てくれたお客様が泣いていました。なぜかと言うと、『アイドルマスター XENOGLOSSIA』のイベントに来られる方は、当然『アイドルマスター XENOGLOSSIA』が好きだから。10年越しに自分の感情が昇華されて、泣いて、喜んで、本当にうれしかったんです。
彼らの感情を肯定して、泣いて喜ばれた時に「ああ、スーパーロボット大戦はただのロボットゲームじゃなく、誰かの想い出を肯定してあげられるんだ」と気付かされました。そこに『スパロボ』の商品としての可能性を感じましたね。
5年以上運営しましたが、最初に『アイドルマスター XENOGLOSSIA』の期間限定参戦を決めたことは、今でも一番印象深いです。『スパロボ』は、好きなものをYESと言うことができる “肯定の場”でもあると気付けました。『スパロボ』は、ユーザーさんの想い出を肯定して、それが一度に30作品近く登場するから商売として成り立つ。『スパクロ』の運営中は、様々なロボット作品を入れられるだけ入れようと、最初の期間限定作品で得た反応を見て決めました。
──1作品だけでは商品として成立しない作品だったとしても、今の時代に遊べることが『スパロボ』の強みですものね。
オオチさん:とはいえ、もちろん作品を許諾いただけない場合もあります。あくまでも許諾いただけた場合にはなってしまいますけどね。『スパロボ』自体も僕が生み出した商品ではなく、人の作ったものに乗っかっているだけです。ですが、そのブランド自体は少なくともロボットアニメ業界にとって価値があると思っています。『スパロボ』に参戦しただけで、その作品自体や作品を好きだった人たちを肯定する機能を持っている。これは、本当にすごいことですよ。今でも、参戦したことでロボットアニメの会社さんや原作者様に喜ばれることもあります。
──『スパクロ』が挑戦したことで、参戦作品自体の幅も広がりましたよね。ロボットが出ない作品でもロボットを作って参戦させていましたし、本当に『スパクロ』は挑戦的でした。
オオチさん:あれこそ運営タイトルだからできたことです。もし、コンシューマーの『スパロボ』で同じことをやろうとしたら僕が止めますね。ハードとコンテンツの相性、重み付けはあるので、本流であるコンシューマーの『スパロボ』で参戦作品で同じ挑戦をしても、ユーザーの皆さんの方を見ていないことになりますから。そもそも、スマートフォンでのコンテンツ配信自体が『スパロボ』としては挑戦だと思いますし。
──そうした『スパクロ』の挑戦的な参戦作品のなかで、ユーザーの反応が一番よかったものを教えてください。
オオチさん:ユーザーさんの反応だと何が一番だったのか判定が難しいですね。ただ、会社のなかで一番驚かれたのは『ガサラキ』の参戦です。
──えっ。『ガサラキ』ですか? それは意外でした。
オオチさん:『ガサラキ』は期間限定参戦PVもなくタイトルロゴだけを生放送で出して告知したのに、Yahoo!リアルタイム検索の1位になったんですよ。それが、会社の中でビックリされました。僕は1位を取れると思ってたんですが、僕の言うことを当時は会社が全然信じてくれないんですよ(笑)。
『アイドルマスター XENOGLOSSIA』が参戦した時もYahoo!リアルタイム検索の1位を取っていたのですが、その時は『スパロボ』や『アイマス』のおかげだと言われたので、いやいや『ガサラキ』の参戦も1位を取れますよと。自分の周囲も、そこら辺でようやく「あれ? オオチの言うことは本当かもしれないな」となりました。
やっぱり、どうしても『スパロボ』は寺田貴信さんが顔だったので、当時の僕の言うことは会社からすると信ぴょう性が乏しかったのかもしれない。だから、当時は「ガサラキの参戦がユーザーにウケます」と言っても信じてくれる人がいない。そういう事情があって、会社をビックリさせたという意味でも『ガサラキ』の参戦はすごく印象深いです。
あとは、実写系の作品のなかでも『ガンヘッド』ですね。サンライズさんの実写作品として作られたロボット作品なのですが、ゲームデータ化しづらかったんですよ。実写で俳優さんが出ている作品を使うと、肖像権の問題でどうしても出てくるのですが、そこは最初から肖像権をなんとかする覚悟を決めて向き合い、ユーザーの皆さんに驚いてもらえました。
──『スパクロ』では戦隊シリーズやほかの特撮作品も参戦していますが、肖像権の問題で変身を解いた姿が出ないことを1ユーザーとしても察していました。だからこそ、あの時の『ガンヘッド』には驚きましたよ。
オオチさん:複数人の肖像権をクリアするのは本当に難しいです。単独なのでなんとかできた形ですね。しかし思い返しても、ユーザーさんに何が一番驚かれたかというと悩みますよ。『ロックマン』とかはイベントとして驚いてもらえたかな?『ロックマン』はシリーズの周年記念でカプコンさんから許諾いただけたんですが、その際せっかく実装するならアニメじゃなく、2Dゲームの『ロックマン』を入れようと思って提案したら、OK出まして。「うわ~!」と苦労しながらも運営チームが実装してくれた記憶があります。参戦が叶った作品が本当にいっぱいあり過ぎて、何が一番反響があったかちょっと選べないですね。
──『スパロボ』の新規参戦の概念を塗り替えてしまうくらい、『スパクロ』は本当にいろいろな作品が出ていましたよね。
オオチさん:それもよし悪しですよ。世に数百ある殆どのロボット作品は、発売ペースの関係でコンシューマータイトルに参戦する機会がありません。そうは言っても、コンシューマータイトルのほうで出ないまま10年20年経ったらファンも待ちきれないかもしれない……。本当に『スパクロ』で沢山の作品を期間限定で参戦させて良いのか、悩みはありましたね。直近『スーパーロボット大戦30』のDLCでは『サクラ大戦』が参戦しましたよね。あれのおかげで、今では「あ、なんだ。『スパクロ』で出ていてもコンシューマーのほうにも出られるんだ」と思ってもらえたのでそこはよかったです。
──言われてみると、ユーザーのなかには『スパクロ』で出るとコンシューマーには出ないんじゃないか……という先入観を持っていた人がいたかもしれません。
オオチさん:僕はそもそも『30』のラインナップ自体を発表前から知っていますから、そんなことはないとわかっていました。ですが、ユーザーの皆さんにはわからないことですからね。よく「『スパクロ』に出たからコンシューマー版で出ない」みたいなコメントを、SNS等で見ることもありますが「そんなことはないですよ」と思っていました。ですが、ユーザーの皆さんも答えを知るのが4年後とかになっちゃうので、そりゃ仕方ないなと思っていました。
──コンシューマーの『スパロボ』は固定ファンがついている印象ですが、スマートフォンの『スパクロ』はユーザー層も世代交代している印象があります。やはり、客層もまったく異なるのでしょうか。
オオチさん:それがそんなこともないんですよ。コンシューマーのユーザーが90%くらいで遊んでくれていました。だからこそ、『スパクロ』でバーンと変えたものがコンシューマーに波及したとしても「あ、これは『スパクロ』でもやってたね」となるので、新規参戦作品をネタに大きく振り切れた理由にもなっています。
そこもいいことと悪いことの両面がありますね。新しいユーザーさんに入ってきて欲しくてFree to Playを始めている事業的な側面もあったのですが、今ではコンシューマーパッケージが販売されない期間にスパロボに触れて頂く機能に収まってしまった。
とはいえ残りの10%は期間限定参戦作品が切っ掛けで、初めて『スパロボ』に触れたユーザーさんも大勢いたので、スマホでFree to Playを運営した意味はあったかなと思ってます。
──そこから5年6カ月という長期にわたってサービスが続いたあと、円満にサービス終了となりました。サービス終了の理由については、『スパクロ』自体の売上が厳しかったわけではなく、ゲームとして限界に来ていたのでしょうか?
オオチさん:そうです。許諾してもらえる作品数もだいぶ限界に来ていましたし、ゲーム自体のフレームワークも古すぎて拡張できなくなっていました。もともとは、別ゲームをベースに作られたタイトルで、ベース自体が8年前、9年前のゲームなんですよ。そうなると新しいことをやろうとしても、やりたいことができなかったんです。
実はタイトルを長持ちさせたいのであれば、ベースの作りがシンプルなほうがいい。スマホでもそういうことがあるんだと思いました。普通に考えたら、コンシューマーゲームでも8年前のゲームエンジンを使い続けることはありませんし、限界も限界。そこは、当初そんなに長く続けるとは思っていなかったということもあります。当時は、短距離走で全力でした。本当はもっと長く続けたかったのですが、ゲーム自体が限界で無理でしたね。
──最初は、どれくらい続ける予定だったのですか?
オオチさん:2年は続けたいと思っていました。大切なキャラクターをお借りしているのだから24カ月は続けたかったんです。そこから考えると、5年6カ月というのは結構な長寿でした。
『スパクロ』は企画に着手したのが2013年で、その時は『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』が始まった1年後。まだ、パズルゲームくらいしかゲーム性がない時代でした。2012年から2013年のタイミングは、まだまだスマホでも複雑なゲーム性は受けない市場だったんですよ。モバゲーのタイトルほうが複雑なくらい。そんな時代だったので、『DD』のようなシミュレーションRPG型のスパロボも検討していたのですが、真っ先に無理だろうと。その時は諦めたのですが、そこから実際のサービスが始まったのが2015年。出すのが2015年になったのなら、シミュレーションRPGの『スパロボ』でも大丈夫だったかもしれない……という話を、サービスが開始してから2年後くらいに社内で話していた記憶があります。
──確かに、まだまだモバゲー全盛期でシンプルなゲームしか受けない時代でしたね。
オオチさん:今だったら、スマホのFree to Playタイトルはどんなゲームジャンルでも受け入れられる土壌があるのですが…当時は本当に手探りでしたね。
バラエティ番組を目指した『生スパロボチャンネル』と、オオチ土下座事件
──手探り感といえば、宣伝もそうですよね。1ユーザーとして『生スパロボチャンネル』を見ていると、紹介の仕方も試行錯誤している感じを受けました。
オオチさん:そもそも『スパクロ』は、プロモーションに苦労していて当時は毎週、毎週、何かが提供されるようなビジネスに対しての知見がありませんでした。さらに、IPもので毎週何か新しい情報が追加されるとはいえ、自社IPではなく権利者から許諾を受けているものなので、どうプロモしようかと。
ただ、当時『パズドラ』などでも生放送をやっていたので、「今は生放送じゃね?」「やってみるか!」という単純な発想から『生スパロボチャンネル』が始まりました。最初は収録番組で、2回くらい収録したあとに生放送へ切り替えたのですが、配信中にオオチが叩かれるわけですよ(笑)。
当時は今よりもFree to Playに対する嫌悪感が強かったですし、『スパロボ』にとっては異質で、いらないもの扱い。要はコンシューマータイトルを邪魔する敵な訳です。ただ事業としての規模があるから続いていますし、叩いてもいつまで経っても終わらない。何で終わらないんだと、ユーザーさんから叩かれ続けていた記憶があります。
そんな感じで3回か4回くらい生放送をやったあとに、会社の当時の上司から「真面目すぎる」と言われたんです。自分としては、ゲームを遊んでもらうのに作る人間は誰でもいいと思っているんですよ。究極的に言えば、“おもしろければいい”。自分自身プロデューサーに対する憧れや信仰がゼロで、作る人は誰でもいい派だったので、可能な限りオオチ個人のキャラクター性を生放送ではなくそうと思っていました。だから、なるべく説明口調で丁寧に話す形で進行していたのですが、上司に「つまらん」と言われて、「わかりました。喋り口調を口語体に変えて、明るくやってみます」と対応を変えたんです。でも、ですね……。明るくなっても叩かれるもんは叩かれます。つまんないから叩かれてる訳じゃないですしね(笑)。
それは僕もわかるんですよ。コンシューマーの『スパロボ』だけで多くのユーザーさんは満足しているんですから……。でも、『スパロボ』がIPとして事業を継続するためには、もうFree to Playに挑戦さぜるを得ないような市況感だったので、叩かれても続けていこうと。何をやっても叩かれますし、真面目でも明るくても叩かれるので、どっちでもいいや明るく行こうくらいの気持ちで続けていたのですが、その当時の広報だったレッドから「メチャクチャ叩かれてますよ。もっとお客さんにイエスと言ってもらえるようにしましょう」と言われたんです。
ちょうどその時は『第3次スーパーロボット大戦Z 天獄篇』から『スーパーロボット大戦V』の発売まで結構間が空いていた時期で、『スパクロ』しか市場に『スパロボ』がありませんでした。コンシューマーの情報が何もない期間だったので、せめてユーザーの皆さんには楽しんでもらおうと思って“バラエティ番組”にしようと決めました。それで、この箱の中身はなんだろうとかクイズをやったり、バラエティの真似をして気楽にみられる番組にしましょうという決定をして進行していくなかで、今流行りのゲーム実況をやることになって……。
──もはや、伝説になった「オオチ土下座事件」ですね。
オオチさん:はい。ユーザーの皆さんが絶対にクリアできないと言っていたので「オオチが、大器なしで征覇47以降をクリアする」という話になりました。『スパクロ』では、すべての要素をオートでクリアされても商売にはならないので、「●●を持っているとクリアできる」という高難易度ミッションが用意されていたんです。ただ特定のユニットを所持してなくてもクリアできるようにも作っていまして。これは『スパクロ』運営チームのプライドで、絶対に「ガシャに頼らなくてもクリアできる調整」を全ステージに入れていたからです。かなりの上級者の腕前じゃないと無理なくらい難しかったのですが、ガシャに頼らなくてもクリアできたらステージを実装する、というルールで運営していたので、全ステージを大器なしでクリアできる調整になっていたんですよ。
そんな状況のなか、生放送で「お客様が大器なしで制覇47がクリアできないと言っているので、やってやりましょうよ!」とレッドに言われ、その時点でもう僕の腕ではクリアできないかもと予感はあったのですが「まあ、やるか」と腹をくくりました。仮にクリアできなくてもユーザーさんに謝ろうと決めまして。生放送出演者にも「クリアできなかったら、そこをいじっていいです」という話をしていました。
とはいえ、もちろん努力もしないといけません。だからかなり事前練習をして、生放送で自分のクレジットカードを使い、自腹でユニットを揃えてデッキ編集したりできることは突き詰めました。でも、やっぱりクリアできなくてですね…。ただその時、クリアできないことに対してユーザーの皆さんが自分の予想よりも怒っている。こりゃただ謝るだけではダメだと思ったので、その場で土下座に切り替えたんですよ。プロデューサーが土下座するとインパクトがあったのか、お客様の反応も怒りから「オオチwww」に変わってくれました(笑)。
──オオチさん……。土下座までするって普通の感覚では思いつかないですが……。
オオチさん:まあ普通ではないかもしれませんね(笑)。ただ真摯に謝るつもりがあったので自然と出て来た土下座だったわけです。そのおかげでユーザーのなかにも擁護してくれる人が出てきて、「バカなやつだけど頑張ってるから見守ってやろう」という人が50%。相変わらず厳しい言葉をぶつけてくる人が50%くらいになって、コメント欄も浄化されるようになりました。僕自身も土下座までするつもりはなかったんですよ。事前に練習していたのですがまったくクリアできなくて、運営チームには「クリアできますから頑張ってください」と言われていたものの、最初から謝ることになりそうだなぁ、と生放送に臨んであーなった、って感じです。
──でも、アレでユーザーとの距離感が近くなって結果的にはよかったと思います。『生スパロボチャンネル』自体も、すごく楽しかったです。
オオチさん:生放送開始まではどうしてもそれまではユーザーさんとの距離感がありました。『生スパロボチャンネル』を通して定期的にユーザーさんとやり取りができるようになり、リアルタイムでユーザーさんの反応が見られるようになったのはよかったですね。
ただ、今では生放送にこだわりすぎたという反省もあります。生放送でオンタイムの情報発信だけの時代はではないなと。僕はやりたくないのですが、今はプロデューサーがSNSを使ってユーザーさんと近い距離から話しかけるほうが効果が高そうです。ただ、それは僕はやるつもりは今はありません。面倒くさがりの僕にはまあ無理なツールですねSNS(笑)。
──オオチさんが突然、麻雀エキシビジョンマッチを始めてから『ゲッターロボ牌』の参戦を発表するなど、生放送自体も驚きが多くて毎回楽しみでした。
オオチさん:僕は『スパロボ』の業務に携わるようになってから『ゲッターロボ』を見たのですが、一番衝撃を受けたシリーズ作品なんですよ。とくに、漫画版の『ゲッターロボ』には衝撃を受けました。
最初にアニメの『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』を見てすごく壮大な話だと思い、漫画の『ゲッターロボ』シリーズを読んでから『天元突破グレンラガン』にも影響を与えている作品だと気付いて、ここまで突き抜けた話のゲッターロボサーガはすごいなぁと。
石川賢先生以外のゲッターロボ漫画もいくつかあるのですが、そのなかでも『ゲッターロボ牌』は、スケールのデカい世界観。敵を倒したら、さらに宇宙から強い敵が来るようなゲッターの世界を受け継ぎつつ、麻雀で戦うのが特に良い!
このすごさを誰かに伝えたいと思いましたし、僕も麻雀大好きなので、ありとあらゆる人に「こういった理由で、麻雀エキシビジョンマッチの生放送が要ります」と説得して企画書を書いてから、承認を得てやりました。結果的に同接が10,000人弱のユーザーさんが視聴していて、自分にも数字があることに衝撃を受けています。人生の中で、最高におもしろいと思った生放送でしたね。実は僕は、人前に出るのが得意じゃないんですよ。だから、いつもかなり気合を入れて生放送に向かっているのですが、これだけは自然体でやれました。
──やっぱり生放送自体は気を使いますし、気が重いですよね。オオチさんは、生放送をする時に何か心がけていたことはありますか?
オオチさん:普段はローテンションなので、それを表に出さないようにしようと決めています。当時の上司からも「もっと明るく行け」と言われたように、生放送でのキャラクターを作っていたので、そのスイッチをはずさないように努力してますね。
もう1つ心がけていることは、「誤魔化さないこと」です。
──誤魔化さないこと? たとえば、どんなことですか?
オオチさん:ユーザーの皆さんに批判されてしまうので、ネガティブな情報は言いたくないんですよ。でも、ガシャゲーでFree to Playというスタイルなので、そこを隠してもしょうがない。「次に●●が参戦します」と言っても、絶対にガシャがあるじゃないですか。だからこそ、ちゃんと「課金してください」「お金がかかりますよ」と言うべきだと、自分に厳しく律しています。
それから、「売上がないと事業を続けられない」ということも明言しています。ユーザーの皆さんからは「そんな生々しいこと聞きたくない」と言われるので言いたくはないのですが、逆の立場だったら「ついに登場! ●●!」と言われて遊びに行っても、不意打ちで課金を要求されたらガッカリされてしまいますよね。
低い気持ちから入っていいことがあったらプラスに転じますけど、期待感を煽り過ぎるとろくなことがないです。だから、なるべく正直にネガティブな情報は伝えていますし、マイナスは先に言いたい。そうすると期待していないので、前向きなことがあると少しだけプラスの気持ちになると思うんです。
──ユーザーとしても、正直に言ってくれたほうが助かります。
オオチさん:自分は本当は、もっと「これはすごいでしょう!」というプロモーションをしたいんですよ。でも、Free to Playのタイトルを担当している以上、この形しかないと思っています。
あまりにも突然だった『DD』のプロデューサー交代劇の裏話
──生放送1つを取っても、そこまで深く考えて運営されていたのですね。『スパクロ』の運営が終わり、今はレッドさんがプロデューサーをしていた『DD』を引き継いで運営に携わっておられますが、その辺りのお話もお聞かせいただけますでしょうか?
オオチさん:4月に言った通り、レッドの異動が決まって「オオチ、お前が後任だ」と会社から伝えられたのが3月末でした。それまで、僕はずっとオオチ以外の人の方が良いと言い続けていたんですよ。Free to Playタイトルのプロデューサーの引き継ぎは、良いことをやっても悪いことをやっても、前任者のほうがよかったと言われると予想していたからです。
ユーザーさんへの見え方を考えた時に、別のゲームを運営していたプロデューサーが引き継ぐと「前の仕様はこうだった。もっとよくなるだろう」と比較できてしまう。改善しても「オオチの改善方法は思ってたのと違う」と言われてしまうかなと。とくに、オオチの場合は『スパクロ』をやっていたので、改修情報一つ一つにバイアスが掛かってしまうんです。違う人にしてくれと言い続けていたのですが、「今は『DD』を担当できる人がほかにいない」と言われてオオチになりました。
『DD』のプロデューサーを半年以上やって経験した感想としては、プレイ時間の短縮に関しては明確な目標を持って削減したので、少しずつそこは改善できたのかな、と。ただ削減しただけだとつまらなくなってしまうので、また新しい遊びを入れようと考えています。
──時間の短縮に関しては、スキップチケットが導入されて本当によくなったと思います。
オオチさん:今はいろいろなコンテンツがある時代なので時間の奪い合いの側面もあって、“めんどくさい”という感覚がつきまとうじゃないですか。だるいと感じる部分は飛ばしたい。技術力や優先度の問題もありますが、できるならどんどんそうしたいですね。今のところ、改善という意味では前倒ししたものもありますが、発表した予定通りには進行しているんじゃないでしょうか。
──『スパクロ』とは異なり、『DD』では“クロッシング・パイロット”や“期間限定参戦”などを除く定期的なイベントにシナリオがついていませんよね。これはなぜそうなっているのでしょうか?
オオチさん:『DD』は『スパクロ』と違って、通常の『スパロボ』のようなマップスクリプトがあるので、かなりシナリオ実装に手間がかかってしまいます。
『スパクロ』はバトルもほぼやらずに済む形式で、運用を楽にするためにキャラクターのバストアップだけでシナリオを作れる構造にしていました。もし『DD』で定期的にシナリオがついたイベントを展開するなら、マップスクリプトがない形式を考えないとダメかなと思います。
──言われてみると、コンシューマー版の『スパロボ』と同じようなシミュレーションRPGですものね。ちなみに、スマートフォンタイトルだとスタッフの人数や中身が見えないのでよくわからないのですが、シナリオは何人くらいの体制で書かれているのでしょうか?
オオチさん:今はライターや企画含めて10人くらいで知恵を絞り合って書いています。
──10人! コンシューマー版の『スパロボ』に比べると、かなり多くないですか!?
オオチさん:『DD』は大変なんですよ……。ロングスパンでゆっくり書けないので……。それでも『DD』のシナリオにかけるコストはコンシューマーの1話ごとと変わらないですね。むしろ、コンシューマーよりも作るのが大変かもしれません。「12月にこのキャラを出そう」と販売都合と、シナリオの進行の都合の両方を加味してプロットを準備するわけです、これは本当に大変な作業な訳です。
しかも、全体プロットがその個別に調整されたプロットでズレて行くので軌道修正もしないといけない。半年後の登場ユニットがズレるので、また調整する……という繰り返しを毎週やってますね。
──話を聞くだけでも恐ろしい……。
オオチさん:ですから、今の状態でイベントに毎週シナリオをつけようとすると、そもそもロボット作品を知っているライターがもっと追加で必要になりますし、マップスクリプトを組むプログラマーとか開発陣の増強も必要となる。それを考えると『スパクロ』のようには簡単にシナリオは入れられないと思いますね。
──そういった裏事情を聞くと、『生スパロボチャンネル』でも奇跡の産物みたいに言われていた“クロッシング・パイロット”は、本当に奇跡みたいなイベントなのですね。
オオチさん:あれは、サービス開始前からレッドが準備していたからこそできた案件と思います。サービス開始後だと簡単にはできませんね。なぜかと言うと、コンシューマーと同じように決めた内容を監修し終わったあとで進行できたサービス前と違って、先ほど述べたように通常のシナリオ運営も大変なのに、それを維持しながらさらにクロッシング・パイロットをしなくてはいけなくなるからです。ですが、今でもいくつかの何かを諦めればできるんですよ。たとえば、通常のシナリオ運営をずっと止めれば“クロッシング・パイロット”のほうに注力できると思います。ただ、それはユーザーさんにも「ない」と言われてしまうでしょうし……。
──事前に仕込んでいるものとしては、生放送内で『機界戦隊ゼンカイジャー』の期間限定参戦について話されていましたよね。
オオチさん:『機界戦隊ゼンカイジャー』は、うちのグループで玩具を扱っていることもあり、去年の夏くらいに『DD』でも盛り上げられないかという話をレッドが受けたそうです。そこから3月くらいにレッドの異動が決まったのですが、そのタイミングでも参戦するかどうかを検討する状態で止まっていたんですよ。なので、最終的に入れることを決めたのはオオチになります。
『ゲッターロボ アーク』に関しては、『スパロボ』自体がゲッターロボ作品と懇意にしていることもあり、アニメを放映するタイミングで入れたいとレッドが決めていました。ただ、レッドが異動になってしまい、そこはオオチが引き継いで完成させています。
──そのお話を聞くと、レッドさんすごいタイミングで異動になっているなと思ってしまいますね。
オオチさん:両方とも企画自体はレッドだったのですが、異動してしまったので引き継ぐことになりました。期間限定参戦をレッドが決めたのは、おそらく“クロッシング・パイロット”が簡単にはできないとわかっていたからだと思います。サービス開始直前くらいに、レッドから「DDでもいずれ期間限定参戦を真似していいですか?」と聞かれて「別にいいよ~」と返した記憶がありますね。
──そういう経緯だったんですね。残りの期間限定参戦作品である『超合金 パックマン』は、オオチさんが決めたものですか?
オオチさん:はい。『超合金 パックマン』は会社から出してほしいと言われました。入れることを決めたのはオオチになります。
──オオチさんは4月からレッドさんの業務を引き継いで『DD』のプロデューサーとなり、『スパクロ』と『DD』の両方でプロデューサーを経験されています。2つの作品を運営してみて、いかがでしたか?
オオチさん:『スパクロ』は、既存の『スパロボ』ファンの方と新しい作品を期間限定参戦に紐づいて新しい人たちが遊んでくれました。『DD』はそうではなく、既存の『スパロボ』ファンと同じ人たちが長く遊ぶゲームになっています。逆に言えば『スパクロ』よりも『DD』のほうが、ある程度ユーザーの客層がわかった状態で運用をできるので、どのような形でコンテンツを提供していけばよいかが読みやすい部分もあります。
『スパクロ』は、ものすごい短距離走で運営していました。1カ月に1回、違う人たちが新たな作品目当てで遊んでくれるので、インフレーションしないとビジネスが成立しないという事情も大きかったです。『DD』のほうは客層がコンシューマーと似たユーザーさん達と向き合っているので、対話の密度がより濃いですね。ユーザーさんと深いレベルで対話をしないと、運営できないなと感じています。
『スパクロ』に関しては、ユーザーさんとの向き合い方が「毎月のお祭りはなんだろう」ってのを楽しんで欲しいという感覚でした。『DD』に関しては、どのようなゲームになって行ったらうれしいのかを真剣に聞かなければいけないと感じています。『DD』に関しては今後も運営を頑張って行きますので、引き続き楽しんでいただければと思っています。
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