『DQウォーク』はやっぱり健康になれる! 柴プロデューサーが出演した学術大会をレポート

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 最新のデジタル技術により、医療やヘルスケアの効果を向上させることを目的としたデジタルヘルス。この研究に日夜励んでいる、デジタルヘルス学会主宰の第5回デジタルヘルス学会学術大会に、スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『ドラゴンクエストウォーク(ドラクエウォーク)』の柴貴正プロデューサーがゲスト出演しました。

 

 第5回デジタルヘルス学会学術大会は、去る2021年12月20日から12月26日まで開催され、柴プロデューサーは4日目の12月23日に出演。『ドラクエウォーク』と健康の関係性について、いろいろと興味深い話を語ってくれました。今回の記事では、そのレポートの前編をお届けします!

  • ▲スクウェア・エニックス 『ドラゴンクエストウォーク』プロデューサー 柴 貴正氏。

第5デジタルヘルス学会学術大会レポート バックナンバー

そもそもデジタルヘルスって何?

 デジタルヘルスとは、人工知能(AI)やビッグデータ解析、仮想現実(VR)など最新のデジタル技術を活用して、医療やヘルスケアの効果を向上させようという動きのこと。医療関係者はもちろん、医療にかかわる学者や企業家の多くがデジタルヘルスに注目し、その推進に取り組んでいます。

 デジタルヘルス学会はそんな人々が集い、デジタルヘルスの発展のための日々研究に勤しんでいます。デジタルヘルス学会学術大会はその成果の発表や意見交換の場となっています。

 なお学術大会は、多人数が視聴&チャットでの参加ができるウェビナー方式のオンライン開催で、参加費も無料。すでに第6回の開催も決定しているので、興味のある方は以下の公式サイトをチェックしてみましょう!

デジタルヘルス学会公式HP

『ドラクエ』で育った2人が語る『ドラクエウォーク』の可能性と誕生秘話

 第5回デジタルヘルス学会学術大会は、クリエイティブ分科会の座長である石井洋介氏が進行役として出演。石井氏は消化器外科医にして株式会社omniheal代表取締役、さらには消化器疾患の予防啓発を呼びかける非営利の任意団体‟日本うんこ学会”の会長も務めています。

  • ▲デジタルヘルス学会 クリエイティブ文化会 座長 石井 洋介氏。

 ‟日本うんこ学会”の活動は多岐に渡ります。大腸ガン検診率の向上を目的に、腸内細菌を擬人化したスマホアプリ『うんコレ』も開発しており、iOS/Android用アプリとして好評配信中。『うんコレ』はユーザーが便の状態を観察&報告することで自分の健康状態を判断できるというゲームで、これもデジタルヘルスの1つと言えるでしょう。

 そんな石井氏も、『ドラゴンクエスト』シリーズをプレイして育った世代。氏が代表を務める株式会社omnihealの社名は『ドラゴンクエスト』シリーズに登場する全体回復魔法‟ベホマズン”の英語表記から取ったものだったりします。

 『ドラゴンクエスト』シリーズから生まれた位置情報ゲーム『ドラクエウォーク』に、ユーザーに行動変容を促す可能性を見出した石井氏が、柴氏を登壇者として学術大会に招いたというのが、今回の経緯とのことです。

 石井氏に紹介されて登壇した柴プロデューサーは、まず自身のプロフィールと『ドラクエウォーク』の概要について説明。柴氏が旅好きで世界一周を3回おこなったことや、普段から交通機関をあまり使わず歩きに歩いていることなど、『ドラクエウォーク』の開発に携わる人物らしいエピソードに、石井氏も関心している様子がうかがえました。

 その後は本格的なディスカッションに突入。石井氏は手始めに、柴氏が『ドラクエウォーク』を作ることになったきっかけについて尋ねました。

 これに対して柴氏は、「スマートフォンでゲームをすることが当たり前になったこの時代に、位置情報を使った“あのタイトル”が登場したのがキッカケですが、位置情報を活用して「ドラゴンクエスト」を作ったらどんなゲームができるんだろう? という思いと、自分も40代になり、健康に気を付けなければならないという思い。そのほかいろいろな考えが合わさって、『ドラクエウォーク』の企画を立ち上げることにつながりました」と発言。

 ただ、位置情報ゲームの開発は初めてだったこともあり、どんなプレイ体験がユーザーに面白いと思ってもらえるのか? ゲームの難易度やユーザーに歩かせる強度をどのレベルに設定するか? など、各種要素を詰めていく段階でかなりの苦労があったようです。

 柴氏はとくに、ユーザーに歩かせる強度のさじ加減に難儀したようですが、今では歩かせる強度を徐々に上げているとのこと。その理由を石井氏が問うと、柴氏は「サービス開始以降、どうやらユーザーのみなさんが歩くことを楽しんでいるようだ、ということを示す反響やデータが集まり始めたんです」と語りました。

 この成果により、手探りで進めていた『ドラクエウォーク』の運営は、ユーザーが歩くことで多くのメリットを得られる方向に方針転換。サービス開始2周年を期に実装された、倒したモンスターをスカウトする“なかまモンスター”の機能も、そのうちの1つとのことです。

  • ▲特定のモンスターを倒してスカウトしたり、モンスターのたまごを拾ってふ化させるなど、あらゆる要素が‟歩く”ことで推進できる‟なかまモンスター”。モンスターを仲間にできる『ドラゴンクエストV』とのコラボをきっかけに実装されました。

歩くことは楽しいこと。『ドラクエウォーク』ユーザーの歩数データが明らかに

 次に石井氏が、『ドラクエウォーク』のユーザーのプレイ状況について尋ねると、ユーザーの男女比については、男性が多いものの、ほかの『ドラクエ』シリーズ作品よりも女性比率は高めと回答 。

 年齢層については、20代から40代を中心に幅広い年代のユーザーがいるとのこと。いわゆる世の中で言われる“ 『ドラクエ』世代直撃ではない若い人たちにもけっこうプレイされているようです。

 このなかで最も歩いているのは30&40代で、1日の平均歩数は8,000歩以上。新型コロナウイルスの感染が広まった2021年でさえ、平均で7,700歩以上も歩いているという結果が公開されました。

 これを聞いた石井氏は「厚生労働省が推奨している1日の歩数も8,000歩で、『ドラクエウォーク』ユーザーはその基準値を満たしています」、「40代の人間が1日に何千歩も歩くイメージがなかったので、このデータは意外でした」と、興味深そうに応じました。

 さらに柴氏は、ライフログ機能「あるくんですW」にデータ入力している20代~40代ユーザーの約20%が1日に10,000歩以上歩いていることを公表。柴氏が最近知り合った友人などは、『ドラクエウォーク』をきっかけに1日 40,000歩前後も歩くようになり、やや不調気味だった健康状態が劇的に改善したという話も聞かせてくれました。

 ちなみにこの発言のあと、チャットで循環器内科の先生が「1日40,000歩も歩けたら生活習慣病は全部よくなる」と太鼓判。健康維持のためには、歩くことはかなり効果的と言えます。

 柴氏自身も、1日12,000~13,000歩は歩いており、この1カ月で体重は2kg減。お酒好きで食生活がやや乱れがちだという柴氏ですが、「お酒はどうしても止めたくないので、歩いたり睡眠に気を使って帳尻を合わせています」とのことです。

 これに対して石井氏は、「お酒を飲んでハッピーになれる患者に、お酒は身体に悪い”という理由で止めさせるケースが多いけど、柴さんのようにほかの要素で健康を維持できるようなら人生もハッピーでより健全に思えます。そういう人がもっと増えるようにしていきたい。まぁお酒も適正量にしてもらいたいですけど(笑)」 と語りました。

 また石井氏は、「患者さんに歩くことを薦めるときも‟患者さんが嫌がる”前提で話してしまうことが多く、‟歩くことは楽しいこと”として薦めるアプローチはしてこなかったので、そういった思想で『ドラクエウォーク』を作ってきた柴さんの話は学ぶところが多いです」とも発言。柴氏のゲーム作りの姿勢に興味を覚えたようです。

 柴氏も、相手が嫌がりそうなことを続けさせる方法として「たとえば散歩なら、犬を飼ったりすれば犬が好きになって、当然犬を連れての散歩も楽しくなります。こういったように、面白さを追求するなかで、何かを学んでいけるのが一番なのではないかと思います」と、何かを学ぶうえでの‟面白さ”の重要性を主張しました。

ランドマークめぐりからわかるユーザーの行動変容

 話題は全国のランドマークをめぐっておみやげを集められる、『ドラクエウォーク』の旅行的な要素に移行。もともと旅行好きなうえ、プロデューサーとしてちゃんとおみやげを集められるかを確認すべき立場にある柴氏は全国をめぐり、全部で188こあるおみやげをすでに182こも集めていると言います。

 石井氏はそのやり込み振りに驚きつつ、その際の印象的なエピソードを聞くと、柴氏は「お城系は基本、山を登る必要があるので大変でした」とのこと。また、ランドマークめぐりはスポットの位置確認の意味合いもあり、「初期のとあるスポットでは、触れられる範囲が狭く 、入場料を払って入る必要がありましたが、外からでも触れられる位置に調整してもらいました」と具体的な調整例も語ってくれました。

 また、「高尾山の頂上にスポットを置いたら、もしかすると 『ドラクエウォーク』の効果か 山頂に向かうケーブルカーの売上がちょっと上がったというニュースをみかけました」というエピソードも語りました。

 石井氏はこのことを、『ドラクエウォーク』がユーザーの行動を変容させた事例として注目。ほかにも『ドラクエウォーク』を遊ぶため、通勤通学で1、2つ前の駅で降りるようになったというユーザーの話を知り、『ドラクエウォーク』による行動変容の可能性を実感しているようでした。

 学術会議レポートの前編はここまで。後編では医療と『ドラクエウォーク』の関係性についてさらに掘り下げていくので、そちらもお見逃しなく!






※『ドラゴンクエストウォーク』は、Google Maps Platformを使用しています。
※『ドラゴンクエストウォーク』を遊ぶ際は、周囲の環境に十分気を付けてプレイしましょう。
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ドラゴンクエストウォーク

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2019年9月12日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

ドラゴンクエストウォーク

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2019年9月12日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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