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『オクトラ大陸の覇者』悲劇の赤い花が咲く…辺獄の手記に込められた想い【ネタバレインタビュー:権力/名声を授けし者編】

タダツグ
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 スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』は、最新のメインストーリーとなる“全てを授けし者”編が佳境を迎え、ますます話題を呼んでいます。

 “辺獄”を舞台にますます混迷を深めていくストーリー、その魅力の根源をお聞きするべく、プロデューサーの鈴木裕人さんと、シナリオを執筆されている普津澤画乃新さんにインタビューを実施!

 第2回となる今回は“権力を授けし者”編と“名声を授けし者”編のお話を中心にお聞きしていきます。

 なお、企画の構成上、メインストーリーに関する重要なネタバレも掲載されていますので、まだ未プレイの方はご注意ください。

【ネタバレインタビュー01】
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権力を授けし者:女帝タトゥロックが生き残った理由とは

──“権力を授けし者”編も、ボスであるタトゥロックの個性が光っていましたね。先日のインタビュー(※)で、彼女は呪術師の力も持ち合わせており、男性から精気を吸いとる能力は指輪によるものではなく、彼女自身の能力であるともお聞きしました。

プロデューサー・鈴木裕人さん(以下、鈴木):はい。

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──じつは、指輪所持者たちのなかで唯一、タトゥロックだけはいまだに生き残っているんですよね。指輪の力を引き出しておきながら、どうして彼女だけ生き残れたのでしょうか?

鈴木:物語的な役割はひとまず置いておいて、指輪の力を引き出した者はその代価として死に至るわけではありません。アーギュストたちにしろパーディスにしろオスカにしろ、戦いのなかで致命傷を受けたことで命を落としたわけで、指輪の呪いといった影響で死んだわけではない認識です。

──考えてもみれば、使うと自分も命を失うことが確定していたら、誰も指輪の力を引き出したりなんてしませんよね。納得です。

メインシナリオ担当・普津澤画乃新さん(以下、普津澤):僕としては、指輪所持者たちが戦いの果てに全員死んでいくというのはちょっとパターン化しすぎだと思った側面もありまして……。全員が否応なしに死んでいくというのはあまりにもご都合的すぎて、どうなんだろうという気持ちが消えなかったんです。それでタトゥロックとの決着について、鈴木に相談した記憶があります。

鈴木:僕としても普津澤が懸念した点はもっともだと思いました。ボスは倒されたら必ず死亡しなければいけない、なんて決まりはありませんからね。だから協議を重ねたうえで、“権力を授けし者編”の最終章は丸ごと書き直してもらいました。今までにない海戦の演出も入れているので、あの章は本当に苦労したことを覚えています。

──あそこでタトゥロックがもし死亡していたら“全てを授けし者編”の展開も大きく変わっていますよね……かなり思い切った方向転換ですね。

普津澤:生き残ったタトゥロックの処遇をどうするかで揉めたときにも、アラウネというキャラクターの人となりをしっかりと描くことができましたし、自分としては書き直してよかったなと思っています。あそこでアラウネが、敵対者だから処刑するって決めてしまっていたら、それはもうパーディスと変わりがないんですよね。

──タトゥロックの処刑に関する多数決のシーンは、バトルなどと比べると地味かもしれませんが、自分は印象に残っていて。あそこでアラウネに一度中立の立場を取らせたのは、見せ方として秀逸だなと思いました。

鈴木:あそこで中立を表明するのはズルいと思う人もいたかもしれませんが(笑)

──正直、まさにそう思いました! リシャールが思わずツッコミを入れていましたが、自分も完全に同意見でした。結局は選ばれし者=プレイヤー自身が生殺与奪を握るのか……と思いきや、民衆の蜂起によって事態が急変して。最終的にはプレイヤーではなくアラウネ自身が問題に決着をつけることになりましたね。

鈴木:最終的な判断はしっかり自分で下したところに、彼女の成長が垣間見えますよね。

──普通に考えて、民衆にあそこまで詰め寄られていたら、そこは処刑しようって話になると思うんですよ。たくさんの民衆が「血を晒せ!」って詰め寄ってきてるわけですし、自分だったら恐怖で震えていたように思います。灯火の守り手たちの間でも処刑やむなしって空気は出ていたわけですし。

鈴木:はい。そんな状況だからこそ、あえて生かすことを自分の意志で決断したアラウネの器の大きさと成長が、強く印象づいたんじゃないかなと思います。

──この「血を晒せ!」というパワーワードは、普津澤さんの中から浮かび上がってきたセリフなんですか?

鈴木:そこは僕もちょっと気になりますね。あのセリフは開発スタッフのなかでも話題を呼んだというか、今でも何かあると「血を晒せ!」って口にするスタッフもいるくらいでして(笑)。

普津澤:そんなことになっていたとは……(笑)。でも、それくらい強い言葉が出てくるほど、民衆はタトゥロックに怒りと恐怖を抱いていたんだと思うんです。とくに、自分たちの王を惨殺されたうえに体を各国へ送られたドニエスクの人々は顕著でしょう。

 彼らの気持ちを考えたとき、ふっと浮かんできた言葉だった気がします。「血を晒せ」……たしかにパワーワードですね(苦笑)。

──ちなみにアラウネが治めるエドラス王国ですが、パーディス亡きあともかなりの強国ってイメージでよろしいのでしょうか?

鈴木:そうですね。パーディスが周辺諸国を侵略して領土を広げていたこともあり、当時のオルステラ大陸で一番の強国だったのではないかと思います。

──なるほど。ただ、約3年後の世界で展開する前作の物語では、エドラス王国ってほとんど名前が出てきませんよね? その頃は国が衰退していたりするのでしょうか。このあとの“全てを授けし者編”で描かれるであろう戦いが影響したりするのかもしれませんが……。

鈴木:それは国力がどうこうというよりも、前作には国という概念自体があまり出てこなかったからかもしれませんね。

──言われてみればたしかに。国の名前でよく耳にしたのは、もしかするとホルンブルグやアトラスダムくらいだったかもって気がしてきました。

鈴木:前作はあくまで個人の物語というか、8人の主人公の物語が軸として展開され、そこに国が絡むということもほとんど無かったように思います。物語としてのテイストの違いで名前が出てこないだけで、エドラス自体はしっかり存在しているのかなと。

普津澤:前作に関していえば、むしろそういう体験になるよう狙って作っています。国同士の関係性や内情まで描こうとすると、物語が広がり過ぎて個人個人にスポットを当てるのが難しくなるんですよ。そうなると「自分だけの物語」というコンセプトからズレるため、できるだけ国家単位の話は出さないようにしています。

──比較的平和だった、ということもありますよね。『オクトラ大陸の覇者』の物語で国家間の争いはひと段落するのかな……なんて、今のお話を聞いていて思ったりもしつつ。

鈴木:オフィーリアはエドラスとリーヴェンの間に起こった戦争によって孤児になったりもしていますし、少なくともパーディスが覇道を歩んでいたことで周辺国家と大きな軋轢があったことは間違いないですね。その時代と比べたら、前作の時間軸のオルステラ大陸は平和だと思います。まあ、裏では様々な思惑が蠢いていたわけですが……。

──この質問には続きがありまして。前作の時間軸ではエドラス王国ってエルマンという人物が治めているんです。一方、リーヴェンはリシャールが治めていることになっている。これはいったい……エルマンって何者なのでしょうか? そして、アラウネはどこへ……。

  • ▲前作『オクトパストラベラー』の公式サイトより。

普津澤:どこまでお話していいか悩ましいですが、今の段階ではひとまず、その設定はもちろんシナリオチームとしても把握しているとだけお伝えしておきます。

名声を授けし者:魔女リブラックとクロスフォードの血統──前作を遊んでいるとより味わいが増すストーリー

──続けて“名声を授けし者”編についてもお聞かせいただけますか? まずはリンユウについてなのですが、彼女の目が見えるようになった理由は、やはりタイタス大聖堂での一件で“赤い雪”に触れたからでしょうか?

鈴木:はい。あの事件のあとのことですね。

──ヴェルノートが緋晶薬の研究をしていたのも、リンユウの目を治したいというのが第一目的だったんですよね?

鈴木:“全てを授けし者”編の5章で見られる彼の手記をご覧いただければわかりますが、ヴェルノートは最初から緋晶薬を作ろうとしていたわけではありません。アプローチとしてはむしろ逆というか、肉体を活性化させることでどんな症状も治せる万能薬の研究を行っていました。

 リンユウに出会ってからは彼女の目を見えるようにするため、より熱心に研究に打ち込むようになったのですが、その過程で緋晶薬という危険な薬を作り出してしまったわけです。

──手記には友人とともに薬を作っていて、銀髪の女性からアドバイスをもらったとも書かれていました。この“銀髪の女性”とは誰なのか、セラフィナか、じつはタトゥロックだったりはしないかなど、いろいろ妄想を膨らませているところです。まあ、誰かの手のひらの上で踊らされていたって感じですよね?

鈴木:銀髪の女性についてはご想像にお任せするとして。ヴェルノートはちょっと焦り過ぎたのかもしれません。時間をかけて治験などもすればよかったのでしょうけど、当時の時代背景としてもそういった文化が強く根付いていたわけでもなく。リンユウのこともあって完成を急いでしまったんだと思います。

──よかれと思って作った薬で多くの人々が苦しむことになり、その呵責に耐えられなくてリンユウの存在に縋ったのだと考えると、ものすごく悲しいですよね。タイタスに外堀を埋められたようなものですから、抜け出す術もないわけですし。

鈴木:ヴェルノートは自分のなかにある正義と真逆のことをさせられていて、かなり抑圧された状態だったんだろうなと思っています。リンユウを救うために……という無理矢理心にフタをしていたがゆえに、彼女が死んだと知って、もう歯止めが利かなくなったというか。

──しかもそれは思い込みで、じつはリンユウが生きていたというのもあまりに哀しい……。だからこそ“全てを授けし者”編の5章で少しでも救われていたらいいなと思いますが、それはまた後ほど話をお聞きするとして。

 “名声を授けし者”編で印象に残っているキャラとして、ミザがいます。正直、辺獄で見た彼女の手記にはビックリしました。歪曲的な書き方ではありましたが、彼女は養父であるモナリスに……。

鈴木:そうですね……。

──モナリスから渡される花の色が少しずつ赤に近づいていく描写とか、意味が分かるとものすごくおぞましく感じました。

鈴木:最初に普津澤さんからテキストが上がってきたときよりはもう少し赤裸々な表現もあったので、さすがにこれは……と初稿はNGにさせてもらいました。

普津澤:確かに、私が書いたシナリオのなかで最もひどい内容だったかもしれませんね。

鈴木:物語の内容はすべて倫理部にチェックを入れてもらうのですが、あの手記はそこに回す前の段階で僕が初めてNGを出したシナリオでしたね(汗)。

──完成稿も相当やばい内容だったと思いますが……初期稿はいったいどんな内容だったんですか?

普津澤:方向性は最終稿と違いはないですね。ただ、表現がもっと直接的だったというか。

鈴木:普津澤さんが書きたいことはわかるけど、これはさすがに……と。現状のものでも意味が分かる人にとってはものすごく心が痛い内容だと思いますが、最初はもっと辛かったです……。

──こんなに礼儀正しくて奥ゆかしい普津澤さんのどこにそんな闇が潜んでいるのか……(汗)。ちなみにミザの生死については、劇中では描かれていませんよね?

普津澤:そうですね。明言はしていません。

──察するところが多すぎて、これまたしんどいですね……。個人的には、あの手記を読むまではミザって指輪の巫女が化けていたんじゃないかと思っていたんですよ。

普津澤:シグナがですか? なるほど。その発想はシナリオを書いた側の人間からするとちょっと面白いですね。

──今となっては深読みしすぎていたなと。お話がいつの間にか“全てを授けし者”編にまで飛躍してしまいましたが、手記ひとつとってもこの濃密さなのはさすがですね。

 “名声編”に話を戻しますけど、あの物語では黒幕としてリブラックが登場することにも衝撃を受けました。

鈴木:“名声を授けし者”編は前作との繋がりを濃密にすることで、物語としての広がりを持たせているシナリオです。その最たる部分がリブラックの存在であり、そしてリンユウがじつはグラム・クロスフォードの娘であるという事実だったりします。

──クロスフォード家の血を引くリンユウを手中に収め、ガルデラに捧げるというのがリブラックの目的……。時間軸的なものをおさらいしますと、あの時点ですでにリブラックは、グラムを利用してのガルデラ復活に失敗していることになりますよね?

鈴木:そうですね。物語中で、ある人物との戦いで深手を負わされたことで、リブラックはセラフィナの中に逃げ込んで力を蓄える必要があったと描写されています。彼女に深手を負わせた人物こそ、他ならぬグラムとなります。

──前作をプレイしていると、そのあたりが垣間見えてニヤリとできるところですね。これは意識して盛り込んだ部分なのでしょうか?

普津澤:はい。前作を知らなくても理解できる内容にしつつ、知っているとより味わい深くなる要素というのは、リブラックに限らずできるだけ盛り込んだつもりです。

──前作は未プレイだけど“名声を授けし者”編をプレイしたことで興味を持った……なんて方がもしいたら、ぜひ遊んでみてほしいですね。

《ネタバレインタビュー03に続く》


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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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