金子彰史さんが語る新作『アームドファンタジア』のポイントは? タイトルに込められた思いや世界観設定を解説

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 “ダブルキックスターターキャンペーン”を実施中の新作RPG『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』の開発者インタビューをお届けします。

 『ARMED FANTASIA』制作には、『ワイルドアームズ』シリーズの生みの親にして、トータルゲームデザイン・シナリオの金子彰史氏をはじめ、キャラクターデザインの佐々木知美氏、作曲家のなるけみちこ氏と上松範康氏、音楽制作チームElements Gardenなどが携わっています。

 本作と『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』の“ダブルキックスターターキャンペーン”が実施中。それに際して、金子さんへのメールインタビューを掲載します。本作の開発経緯やこだわり、世界観などをお聞きしているので、チェックしてください。

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ーー本作についていつごろから構想されていたのでしょうか? キャラのイラストには2021年9月とありますが。


 以前、『PENNY BLOOD』のクリエイターである町田さんと、自分たちの好きな90年代のJRPGを、真正面からアップデートしてみたいと話をしたのが発端になっています。

 それからしばらく時間が流れてしまうのですが……複数の会社さんと手を組んで、具体的なプロジェクトとして動き始めるのはだいたい1年くらい前でしょうか?

 スタートが会社の業務として降りてきた案件ではなく、多分に自然発生的なところもあるので、ちょっと記憶が曖昧かもしれませんが……日付を見る限りはそうなのかもしれませんね。

ーー開発がスタートすることになったきっかけは?

 あくまでも金子の都合になりますが、抱えていたいくつかの仕事が落ち着きかけたので、今を逃すと次はないと考え、スケジュールへのねじ込みに成功したのが大きいです。

 やりたいことはたくさんあるのですが、時間と体力のマネジメントはいつもままならない状況です。

 あ、でもプロジェクトが実際に動き始めたら、一番ままならないのがフトコロ事情、つまりは開発費となりますので、ご興味のある方は、何卒ご支援をよろしくお願いします!(宣伝)

ーー『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』というタイトルに込められた思いを教えていただけますか?

 こちらからは元々、別タイトルを提案していました。それは物語に大きく関わるキーワードであり、自分的にもハマっていたタイトルではありましたが、今回のキャンペーンを手伝ってくれている海外のスタッフに見てもらったところ……「ダサい」と一蹴されてしまいました(笑)。

 今回のキックスタータープロジェクトは国内だけではなく、海外の市場も強く意識していますので、何とかしなければならず、とはいえ、海外市場にブッ刺さるタイトルなんてチンプンカンプンだし、そもそも自分は一蹴されちゃうようなダサいセンスの持ち主なので……

 いくつかのタイトル候補をこちらとあちらから出し合って、その中から海外でも通じるものをキャンペーンスタッフに選んでもらうことにしました。

 そんな経緯で列挙したタイトルの中に、自分がゲーム業界に入るきっかけというか、今はなき某社へ持ち込んだゲーム企画のタイトルがありまして、それが目に留まったみたいです。

 でもそれは、過去にワイルドアームズの企画書提出段階の名前でもあったので、ちょいちょいと手直しを施してもらって、今の『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』に落ち着いたという経緯があります。

 なので、名前決定した瞬間にはさしたる思い入れはなかったのですが……

 今回のプロジェクトは、自分が過去に携わったワイルドアームズシリーズの続編ではなく、金子自身への原点回帰を目的に動いているものなので、約30年前の自分が大学ノートに思いの丈を書き綴った、あのゲームのタイトルっぽくなっていることに不思議な縁と、どえらい感慨があります。

 とはいえ、こちらで考えたタイトルも、ダサいところ含めて個人的には思入れがありますので、当初の想定通り、本編のわりと重要なシーンではお披露目する予定です。

 この些細な復讐劇が果たされるには、無事にキャンペーンが成功しなければいけないので、あらためてご支援をよろしくお願いいたします。(2回目)

ーー佐々木知美さん、なるけみちこさん、上松範康さんというメンバーは、以前からのつながりでお願いされたのでしょうか?

 自分が夢見た理想を、夢見た以上に実現してくれる腕利きに声をかけたつもりです。

 自分の語る“新企画”という与太話に、おもしろがって耳を傾けてくれるのも大きいかもしれません。

 もちろん様々な都合や事情でかなわなかったり、もはやもう、声すらかけることがかなわない遠い仲間もいるのですが、今回のプロジェクトから参加するスタッフも、いずれ劣らぬ手練れが揃っていますので、非常に楽しく開発を進められています。

 先日も、会議にて怪獣好きのスタッフが判明して、こちらのモチベーションも爆上がりです。

ーー荒野やARM、渡り鳥など、『ワイルドアームズ』を思わせる設定が気になります。ゲームのベースは近いものになるのでしょうか?

 過去に自分が携わった『ワイルドアームズ』シリーズとはまったくの無関係です。それらのワードは新しい世界である“ロンデニアム”を舞台に考案された別設定となります。

 ですので、過去作の物語の続きを描いたり、キャラクターを再登場させたり、未消化となっている設定を『ARMED FANTASIA』で取り扱っていこうとは、別作品ゆえに一切考えていません。

 シリーズ恒例の、トニーに始まってラギュ・オ・ラギュラに終わるなんてこともありません。

 おそらくはキャンペーンチームが精神的続編と銘打っているところも大きいと考えますが、それはあくまでも作ってる人が同じというだけであり、ベースが同じという意味ではありません。

 わかっているんですよ。自分にもっと知名度があって、簡単に集客が見込めるのであれば、キャンペーンチームにこんな工夫をさせずに済むのですが、こればっかりは仕方がないなあと(笑)。

 あくまでも会社の都合や企業の思惑を抜いた個人的な見解ですが……

 続編を作ることイコール、ファンサービスであるとは考えていません。これは自分のキャリアの中でずっと普遍的に考えていることです。

 物語やキャラクターは、受け手が受け取った瞬間に、第二の生へと新生します。それが長い時間愛されているものであるならば、神聖かつ不可侵なものと言ってもいいかもしれません。

 自分にとって今日まで大好きだといってくれる『ワイルドアームズ』ファンは大切な宝物です。だからこそ、違う名前でシリーズの関連を謳うことは絶対にしたくないのです。

 もちろん『ワイルドアームズ』シリーズそのものにも強い敬意と誰よりも大きな愛着はありますので、原作権を持っているソニーさんが声をかけてくれるならば、いつだって続編となる“6th”の開発に参加するつもりです。あたりまえじゃん。

ーー金子さんのタイトルは、作品が変わって、物語や設定が異なっても“同じような世界観”を感じられるのですが、本作の世界観を作る際に、どのようなことを意識されましたか?

 前段の話をいきなり茶化すようで申し訳ありませんが、それこそがつまり、「“精神的続編”だから!」ということなのでしょうか?(笑)

 世界観の構築って作品ごとにアプローチが異なるのですが、本作の場合は、チーフディレクターを務める石井がワールドマップに注力したいと発言したところに端を発しています。

 ワールドマップ、つまりロンデニアムにどんな危機があるのか、物語上のどんなギミックが隠されているのかをみんなで詰めていった結果……

「じゃあ、怪獣は登場するよね」
「もはや人類の対抗手段は、エーテル理論の応用しかない!」
「……今、はじめて聞くんだけどエーテル理論ってなんなのさ?」

といった感じで世界観は固まっていきました。金子のボケに対して、周囲からのツッコミで成立したといってもいいかもしれません。

 自分的には常々、設定にこだわった作品を作っているわけではありません。仮に凝った設定を考えているとしても、物語の中でお出しするのは断片というか、必要分で充分という考えがあります。

 なので、設定の説明的な部分を極力排したいと考えた結果、似たようなカテゴリーであるならば(あるいは逆説的に活用するために)、「意図して用語を使いまわす」という、手塚漫画から学んだある種のスターシステムを採用しています。

 もしかしたら、どの作品にも同じ匂いを感じるとすれば、そういう思想・哲学によるところなのかもしれません。

ーーダッシュやジャンプができるということですが、フィールドはアクションRPGのような操作性になるのでしょうか?

 アクションゲーム的となる軽快なプレイフィールは目指すところです。ですが、アクションゲーム的な難易度は目指すところではありません。

 今回我々が作ろうとしているのは、あくまでもRPGです。よく、レベルを上げて物理で殴ればクリアできると揶揄されますが、それはそれでいいと考えています。いや、実際はもう少し戦略性のあるテクニカルな遊びを目指していますが、だとしてもそれは、指先の技術を競うような難易度への挑戦ではありません。

 メインストーリーのクリアに至るまでの道のりに、過度なアクション要素を設けるつもりはないと約束します。

ーーキャラクターごとに“ガジェット”が設定されているとのことですが、キャラを切り替えつつ進めていくようなイメージでしょうか?

 ガジェットとはキャラ固有のアクションでもありますので、切り替えつつの進行を想定しています。

 今作では、ダンジョンの中だけではなくワールドマップでもガジェットの使用局面を設けたいと考えていますので、これまで以上に遊びの幅を設けられるのではないかと期待しています。

ーーメインキャラはこの3人のみでしょうか?


 いえ、6人と想定しています。今後の情報解禁を期待してください。

 余談ですが、最初期にメインキャラを4人と構想していた頃があるのですが、海外のキャンペーンスタッフから「JRPGで主人公4人は少ない!」と怒られたことがあります。

 自分がゲーム開発の現場から離れている間に、そんなルールができたのでしょうか? 『WA3』や『WA4』のキャラクターたちに謝ってほしいと思います!(笑)

ーーイラストやビジュアルからは『1』や『アドヴァンスドサード』のような雰囲気を感じます。

 『1』を感じるのは、男性2人と女性1人からなる3キャラが公開されているからでしょうか? 『アドヴァンスドサード』を感じるのは、背景に荒野成分が多いからでしょうか?

 海外の人と話すと『アドヴァンスドサード』の人気が高いようで、商売っ気高くそろばんを弾くなら『アドヴァンスドサード』っぽい路線が成功の鍵なのかもしれませんが……元々、他人の評価があまり気にならない性格なので、今作においても、とくにそのような意図や意識はありません。

 PVでは、わかりやすく荒野な地域をお披露目の舞台と使っていますが、実際のゲームでは、西部劇のイメージは維持しつつ、もっと多彩な環境を取り揃えていく予定です。

 個人的には過去作との共通性を考察してくれるのはとてもうれしいです。自分では気づかない部分への指摘だし、それだけ過去作をよく覚えていてくれるているという証左でもありますので。

ーーちょっと気の早い話ですが、守護獣(ガーディアン)などは出てきますか?

 残念ながら登場の予定はありません。今回の世界ロンデニアムは、これまでとは違った理由・要因によって荒野化が進行している設定です。

 ただ、気になるのは質問の……“守護獣(ガーディアン)など”の“など”の部分ですが、これはいったい何を期待しているのでしょうか?

 もしかすると、期待されている“など”が登場する可能性はあるかもしれませんね!(すごい適当)

ーー本作を作るに際してあえて変えたこと、もしくは変えなかったことはなんでしょうか?


 新しく作品を作るにあたり、過去作からいろいろ変えねばならないという“強迫観念”は変えました。変えてもいいし、変えなくてもいいというスタンスです。

 どうしてもパブリッシャー相手のお仕事の場合、過去作からの変化が企画書に求められ、そうでないと企画が通りにくいという背景があるのですが、今作は、とりまパブリッシャーの意向に左右されないキックスターター案件です。自由にやりたいことを模索するよう努めています。

 変えなかったというよりも、結局変わらなかったのは、自分自身ですね。

 怪獣が好き。カッコいいメカが好き。昨日見た西部劇が大好きで、オカルトもファンタジーも大好物というスタンスは、『ワイルドアームズ』からというより、小学生の頃からまったく変わってないと胸を張れます。

 最近、何となく気づいてきたのですが、自分が神様からもらった才能は、ハートのアンチエイジングではないかと。大人が、子どもの時分を維持し続けるのはそれなりの努力や精進を必要とするのですが、存外うまくいってるなあと自負しています。

ーー金子さんといえば、さまざまなオマージュを用意されるという印象がありますが、本作でもそちらは健在でしょうか。

 マスコミによる印象操作だ! 風評被害だ! ……と言えないのが悲しいところですね(笑)。

 まだ制作が始まったばかりなので、ニントモカントモではありますが……(さっそくオマージュ)。

 ひとつご教授しますと自分の場合は、「さーて、今日もいっちょオマりますか!」と、あらかじめ用意した元ネタを意気揚々と書き始めるわけではありません。

 無心で書き進めているうち、普段は胸に秘めているはずの恋心がついうっかり筆先に溢れ出てしまった結果がオマージュとなり、それが渾身のボケとなっているのです。なので気づいた方には全力でツッコんでいただけるとありがたいです。放置は寂しいので。

 放置といえば、過去の『ワイルドアームズ』でもヴォイニッチ手稿ばりに解読が困難である為、未ツッコミのボケが今でもゴロゴロ存在しています。

 自分で解説するのはとても気恥ずかしいのですが、たとえば第一作のバトルに名付けられた“モーションビューシステム”は略すと“MVS”となり、当時のスタッフ(俺ら)がゲーセンに通い詰めて金を落としまくった、NEO-GEOのアーケード基盤名に由来するのをはじめ、毎作、ゲーム由来のネタが必ずシステムには仕込まれるというルールがあったりするのです。

 こういうのは……今のところの『ARMED FANTASIA』には存在していないですね……そこもまた、『ワイルドアームズ』の続編ではないと言い切れる所以になっているのかもしれません。

ーー最後に期待するファンにメッセージをお願いしますッ!


 ご無沙汰しています。金子です。最近はアニメ方面での活動が多かったのですが、今回、出会いと機会に恵まれまして、ゲームのお仕事に舞い戻ってきました。

 『ARMED FANTASIA』はキックスターター案件である為、もしも興味がありましたら、何卒、ご支援をお願いしたいのですが……ここまでの回答中、すでに2回もお願いしているので、これ以上の支援要請はいたしません。

 その代わりといっては何ですが……町田さんの手掛ける『PENNY BLOOD』とのダブルキックスターターという、これまでにないイベントを一緒に楽しんでもらえますでしょうか。

 約1カ月となるキャンペーン期間中、かなり短いスパンで、次々と新情報を解禁していくスケジュールと聞いていますので、どうか、このスピーディな展開に……ついて来れる方は、ぜひ、ついていただきたく思います!(やわらかなオマージュ)

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