世界で輝くソニックチームに。開発の熱い想いが語られた『ソニックフロンティア』インタビュー【TGS2022】

たく坊
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 9月15日~18日の期間に開催されている“東京ゲームショウ2022(TGS2022)”で、『ソニックフロンティア』についてインタビューを行いました。

 インタビューに答えてくれたのは、『ソニック』シリーズのプロデューサー・飯塚隆さんと、ディレクターの岸本守央さんです。

  • ▲プロデューサー・飯塚隆さん(右)、ディレクターの岸本守央さん(左)

 オープンワールドとオープンゾーンの違い、第3世代の『ソニック』とは? 最先端のアクションアドベンチャーのあるべき姿など、開発への想いが語られたインタビューとなっているので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

オープンゾーンは“ワールドマップ間の移動”をイメージしている

――3Dソニックシリーズの最新作ということで、企画はいつごろ立ち上がったのでしょうか?

飯塚プロデューサー(以下、敬称略略):『ソニックフロンティア』のチームは、2017年に『ソニックフォース』を出したチームです。なので、企画は『ソニックフォース』が発売した直後からスタートしています。

 “オープンゾーン”という新しいテーマにチャレンジするところまでは、想像の段階で決まっていましたが、それをどう実現していくかに、かなり時間をかけました。最初の1、2年は、テストをしては壊して、作っては壊してを繰り返し、試行錯誤の時間が続いていました。

――いわゆる普通のオープンワールドのゲームとはまた違うんですよね?

飯塚:オープンワールドのゲームとは、成り立ちが違います。“オープンゾーン”というのは、オープンワールドとは根本的に違うんです。

岸本ディレクター(以下、敬称略):我々が、オープンワールドに見えるフィールドを“オープンゾーン”と呼んでいるものは、いわゆるワールドマップ間の移動です。

 古典的なステージクリア型アクションゲームには、すごろくのようにステージを選んで、ボスに挑戦するようなワールドマップがあるじゃないですか。あのワールドマップを3D空間にして、自由に遊べるようにした中に、ステージを選べるようになったらどうだろう、それこそが新しいアクションゲームのフォーマットじゃない? という発想からスタートしているんです。

 なので、『ソニック』でオープンワールドのゲームを作ろうとしたわけではなくて、アクションゲームの進化として、「次世代のアクションゲームはこうなるよね」というのをまず『ソニック』で、アクションゲームの強豪たちに先んじてやるぞ、と決めたのが、『ソニックフロンティア』なんです。

 ただ、これが大変だったんですけど(笑)。先ほど言ったように2017年から5年かかってますからね。そう簡単に問屋はおろしませんでしたよ。

飯塚:オープンワールドのゲームというのは、現実世界のようなリアルな空間を作って、人間ができるような目的を達成していけばいいじゃないですか。我々の起点はそうではありません。3Dの全部の空間を遊べるプラットフォームにしようというテーマだったので、最初の1、2年は試行錯誤の繰り返しでした。

――イメージ的には、『ソニックアドベンチャー2』のワールドマップを、自由に移動できる感じですね。

岸本:そうです! それを頭の中にイメージした時に、今いる位置から、ステージの場所に行く過程を、3D空間にしたものです。しかし、何がおもしろいの? というのが、一番苦労しました。

――言ってしまえば、ただの移動ですからね(笑)。

岸本:そうなんです。3Dの空間を移動して、ステージに入るのはあっという間に到達したんですよ。今回のプロジェクトでは、北米でプレイテストをかなり重ねているのですが、その時は「つまらない」、「中身がスカスカ」、「ただの草原」などといった感想でした。

 それは、いわゆるオープンワールドでは当たり前の話なんです。車に乗って移動、馬に乗って移動する違いなだけなんですけど、それは『ソニック』では許されない。というか、本来アクションゲームはそれだと許されませんよね。移動している間がどうおもしろいの? という話になり、格闘が続きました。

飯塚:RPGなら、移動は移動でいいんです。アクションゲームは、そこにアクションがないとダメなんですよね。例えば、A地点からB地点に移動するだけなら直線なのでいいんですが、いろいろな目標地点を作ってしまうと、いろいろな線が生まれます。全部の線に対してアクションを設けるのか、と考えたら、頭がこんがらがってしまいました。

――2017年から企画が立ち上がったとのことでしたが、“オープンゾーン”がうまくまとまったのはどのくらいの時期なのでしょうか?

飯塚:どのくらいでしょうか……。もう、プロジェクトの半分は超えてますね。“オープンゾーン”とはいったい何だろうと。

岸本:そうですね。“オープンゾーン”とはいったい何なのか。しばらくは、その正解を探す作業でしたね。

第3世代の『ソニック』で、自分が憧れたソニックチームを目指す

――本作のコンセプトはなんでしょうか?

飯塚:コンセプトはまさしく、“オープンゾーン”の部分になります。最初に『ソニック』が誕生したのが、横スクロールのドット絵のステージで、スタートとゴールがあるリニアなステージですよね。第2世代の3D『ソニック』というのは、3Dにはなったものの、やはりスタートとゴールがあって、そこをいかに3Dでかっこよく走らせるかにあります。

 今回は、我々の中では第3世代であると考えています。スタートとゴールがないんですよ。とにかく自由な、フリーローミングなオープンな世界の中で、いかに『ソニック』らしく、すべての遊びを作れるか、というところに挑戦しています。

 開発チームとしては、第3世代の新しい『ソニック』を作るところに、フォーカスして取り組んでいます。

――過去作のどれかに似ている、ではなく、まったく新しい『ソニック』を作る、と。

飯塚:そうです。今後10年20年戦える、新しい『ソニック』フォーマットを作る意気込みで作っています。

岸本:ちなみに、飯塚さんが言ったのは、表のコンセプトです。開発内では、裏のコンセプトがあるんですよ。それは、ソニックチームが、もう一度輝かなきゃだめだろう、というものです。第1世代は、“速さ”で世界を席巻し、第2世代は“3D”で世界を席巻しました。そのまま続いて、私たちは第2世代にずっと甘んじているんですよね。

 「俺たちソニックチームだよね」、と。世界のトップレベルで戦うチームなんだから、もう一度世界で戦えるソニックを作るために、なんでもやろうと目標を立てて、“オープンゾーン”という武器を引っ提げて挑戦しています。

 もちろん、今まで手を抜いていたわけではありませんが、今まで以上にみんなに厳しく、檄を飛ばしてやってきました。とにかく、もう一度ソニックチームを世界のトップブランドにしようと。そういう裏テーマも一緒に持っていました。

――歴史の長いソニックチームですが、若手のクリエイターはいるのでしょうか。

岸本:そりゃもう、若い子たちだらけですよ。この話をした時は、チームに60人くらいいましたが、1人1人私が面談をして、若い子たちに昔のソニックチームがどれほどすごくて、憧れの存在だったのかを語りつくしました。

 そして、ソニックチームが今どんなチームになっているのか。私の憧れていたソニックチームと現状のソニックチームがどれくらい違うかを熱弁しました。もう一度私が憧れたソニックチームを、もう一度自分たちで作り上げようぜ、と。

 みんな、一発ドカンと決めたくてこの業界に来たんです。ソニックチームっていうメジャーリーグのようなチームに所属できたんだから、やれるチャンスやポテンシャルはあるんですよ。あとは、いつやるかだけなので、このタイミングになりました。

――“ハイスピードアクション”の金字塔である本シリーズですが、スピード感について、こだわった点はどこでしょうか?

岸本:スピード感という部分だと、ソニックチームの本丸が作っているゲームなので、意識をしなくてもスピード感が出るように作れてしまうんです。『ソニック』=スピード命の意識になっているので、ファンが求めるスピード感を生み出すのは造作もありません。

 しかし、ソニックチームがもう一度、世界にとどろくチームになろうとした時に、おひげのおじさんが出てくるアクションゲームだったり、まんまるピンクのキャラクターが出てくるアクションゲームだったり、ゴリラのアクションゲームだったりがあるじゃないですか。ああいうゲームをプレイして育ってきたアクションゲーマーたちが、怖くない、楽しい疾走感を生み出す必要がありました。

 ああいうアクションゲームで育ってきた人たちは、最先端のソニックのスピードは、“怖いもの”なんです。いってみれば、免許取り立てで、アクセル踏んだら300km出るような状態で公道を走ってくださいというようなものですから。

 それを安心して楽しめるもの、“やさしいスピード感”というか、気持ちのいい、流しているようなスピード感というか。本作では、操作感の違いを設定で変えられるようになっています。ソニックゲーマーのためのゲームスタイルと、他のゲーム出身のアクションゲーマーたちのためのゲームスタイルを変更できます。

 もちろん、他のアクションゲームに比べたら圧倒的なスピード感ですが、でも怖くない、楽しい、気持ちい領域でのスピードを生み出すことをもっとも注力しました。

――モードで選べるようになっているんですね。どうやら、慣性の乗り方が違うような。

岸本:そうです、よく気付きましたね。他のゲームと根本的に違うところですが、『ソニック』をやっていない人は、プレイテストをやっていてそこが引っかかるポイントなんですよね。なので、そこのスピードをどうやって味わせてあげるか、提供するか、そこに時間をかけました。

――本作は、戦闘面もかなり力が入っているイメージです。バトルに注力した理由はなんだったのでしょうか。

岸本:これは、“オープンゾーン”を採用したからできるようになったことです。先ほど説明した、遊べるワールドマップ“オープンゾーン”で、点在しているいつものリニアのステージに行く間に何が起こるのか、という遊びの中に、バトルの要素を入れられるようになったんですね。

 過去の『ソニック』シリーズでは、バトルを本格的にチャレンジしたタイトルもあったんですが、やはりリニアのソニックで耐久力のあるエネミーと戦うと、テンポよくリズムよく疾走感を壊さないで進んでいきたいのに、疾走感が死んでしまうんです。なかなかうまくいきませんでしたよ。

 しかし、“オープンゾーン”によって、バトルをするもしないもプレイヤーの自由になりました。バトルが好きならやればいいし、「バトルはソニックじゃないでしょ?」と思うなら、まったく戦わないでもゲームをクリアできる作りになっています。

 バトルをやるなら、本格的なバトルをここいらで一発やってみようと、コンボ型のアクションアドベンチャーゲームのスタイルでバトルを組んでみたんです。その要素は世の中にあふれているので、容易にたどり着きました。いったん固まったのでまたプレイテストをかけるわけなんですけども、そこでの感想は「ソニックじゃない!」でした。

 「ただポコポコ殴っているだけで単調」、「飽きる」、「というかソニックじゃない」。いろいろ言われたことを踏まえて、ソニックらしいコンボアクションとはなんなのかと考え、また作り直して、今のバトルになりました。また生みの苦しみを味わいました。

――個人的な話ですが、過去に『ソニック ワールド アドベンチャー』で、スピード感のあるソニックが遊びたいのに、またウェアホッグやらされるのか、と感じてしまったことはあります(笑)。

岸本:その気持ち、わかります。

飯塚:今回は、戦いたくないなら戦わなくていい、という条件が付いたがために、逆に自分から戦いたくなるんですよね。選択権は自分にあるので、バトルを純粋に楽しめる。ウェアホッグの場合は、“やらなければいけないもの”だったので、面倒と感じたところがあります。

 今回はそういった面でも、すべてが自由なので、パズル、謎解き、バトル、プレイヤーがやりたいことを、自由に遊べる。その環境が、ネガティブからポジティブに変わった要因だと思います。

――戦わなくていい、とは、マップに点在している守護神たちも戦わなくていいのでしょうか。

岸本:必ずしも、戦う必要はありません。

飯塚:基本的には、“守護神”を倒すとギアを入手でき、ギアを使うとポータルがアンロックする、というのがゲームの流れになります。なので、推奨はしますが、ボスと戦うのが嫌だとか苦手な人は、それを避けて遊ぶこともできます。

――逃げてもいいんですね。

岸本:逃げてもいいんです。逃げ切って知らないところに着いてしまっても、周りを見渡すと必ず何か見つけられるようになっています。そこで見つけたものにアクセスすると、新しい何かが起こるという仕組みになっています。

――スキルツリーのような成長システムが実装されていますが、こちらも解放しなくてもクリアは可能なのでしょうか?

岸本:もちろんです。ほぼ戦闘面にしか関係ありませんから。

飯塚:戦闘以外のスキルもありますが、そこは自分で選んでアンロックできます。

岸本:コンボ系の技が増えていくのが多くありますが、アクション面のスキルもあります。それを使えば、アスレチックの攻略がしやすくなりますよ。

――成長要素について、イメージ的には経験値を集めてレベルアップする、というものですが、いわゆる“経験値稼ぎ”のような稼ぎ場はあるのでしょうか。

岸本:稼ぎ場というのは特に用意していないですね。そもそもRPGではなくアクションゲームですので、レベルを上げなくてもクリアできるようになっています。

 それをテクニックで超えられるのがアクションゲームのいいところなので、アクションが上手かったらレベルを上げる必要は全然ないですし、アクションが苦手だったらコツコツレベルを上げて、ステータスの力で倒す、みたいなこともできます。どちらのプレイヤーも満足できるように作ってあります。

考察する楽しさも存在。新キャラクターや敵たちは物語に大きくかかわる

――新キャラクター“ココ”は、どうやって生まれたのでしょうか?

飯塚:“ココ”は、実はストーリーに深くかかわっているキャラクターです。見た目は石でできたキュートなキャラクターですが、あのキャラクターがなぜあの島にいて、なぜたくさんのココが生息しているかというのは、ストーリーに深くかかわってきます。そこは、プレイして、ストーリーを楽しんで、ココとはいったい何なのかを考えてもらえたらなと思います。

――新キャラクターといえば、“セージ”も新登場しています。見たところ人間ですが、モチーフはあったりするのでしょうか。

飯塚:“セージ”はもう、人間の姿かたちをした少女ですね。

岸本:これもストーリー的に非常に重要で、もはや第2の主人公と言っていいくらいです。『ソニック』ゲームなのに、動物じゃなくて人間なの? となるのが自然ですよね。そこも、ぜひ注目していただきたいところです。

飯塚:あまり多くは語れないところですが、“セージ”はキーとなるキャラクターです。トレーラーでもわかりますが、ソニックをとにかく追い出そうとしている。なんで彼女がそういう行動を取っているのか。なぜ巨神とセージが一緒にいるのか。そういうのを全部、ユーザー自身の手で見つけていくのが、おもしろいところだと思っています。

 従来の『ソニック』ゲームは、悪いやつが最初に出てきて、「俺がこの世界を支配する」と言って、ソニックがそいつを倒してハッピーエンド、という流れじゃないですか。今回は、あの島でなにが起こっているのかわかりません。ソニックはもちろん、プレイヤーにも隠されています。

 なので、ソニックも不安だし、遊んでいる人も、この島で何が起こるのかわからない。現れているエネミーがどう見てもエッグマンの敵じゃないですしね。こいつらは何なんだ、とソニックと同じ気持ちになって物語を進められます。そういう謎が多いところは、過去シリーズに比べて、物語に対してのアプローチが少し変わっています。

――確かに今回の敵は、どう見てもエッグマンのメカではないですね。神秘的な見た目をしているようにみえます。

飯塚:そうですよね。なぜ神秘的な敵が登場するのかは、こちらもストーリーに関わってきます。今わかっているのは、エッグマンのメカではない、というところだけです。

岸本:モチーフの話で言うと、デザインする際に、ディレクターの私から、「こんな感じでお願い」と要望を出すんです。しかし、ソニックチームのデザインセクションの親分である三浦アートディレクターがなかなかこだわりの強い人で、私が要望を出すと、「そんなのにはすまい」と分解して、無から作り出そうとして、最初の要望は微塵も残っていません。

 私からすると、なにがなにやらわからん、と(笑)。要望を聞かないというと語弊がありますが、とにかく「Aを作ってくれ」と要望しても、Aは出てきません。一応、世界設定的に裏付けがあって、こういう造形というのはあるので、そこはぜひ遊びながら考察して欲しいですね。

飯塚:ストーリーをひも解いていき、あいつらが一体何者なのかということがわかると、あのデザインの説得力がありますよ。

――なるほど、考察する楽しさもあるんですね。

岸本:そうです。誰にでもわかりやすいストーリーというより、セリフや設定に常に裏があって、深読みすると「これはこういうことじゃない?」とか、「このデザインはこれだからこのデザインなんじゃない?」とか、「なるほど!」と感じられるようになっています。ぜひ深読みしてみてください。

――試遊して気になった点として、スピードメーターがあったのが個人的に好きでした。なぜこれを採用しようと思ったのでしょうか?

岸本:今回、スピードの最高速度を上げる成長要素を実装しています。入れたはいいんですが、スピードは確実に上がっているのに、体感できないんですよ。200kmに走っている車が220kmになったところで、わからないんです。だから、それを視覚化できるようななにかが必要だと、これもテストで気づかされました。

――エフェクトが変わったりするのでしょうか?

岸本:最高速に達すると変わります。

――なるほど。テストプレイの時にそう要望があったのでしょうか?

飯塚:まず成長要素として、マックススピードの値を上げられるんです。ただ、成長が体感できないので、誰も成長させたがらないんですよ。なぜしないのかを突き止めたら、成長を感じられないからというのがわかりました。

 成長要素を入れて楽しんでもらいたいのに、そこが実感できないからみなさんそれを遊ばれない、というのがわかって、それを体感できるようにしたのが理由ですね。

岸本:『ソニック』のファン、いままで過去シリーズをやってきたお客さんは、スピード大好きですから、放っておいてもスピードを上げてくれます。ただ、そうじゃないお客さんは、スピードにこだわりがないんですよ。そもそも興味を惹いていないんですよね。スピードメーターがあることで、スピードに対する気付きにもなるんです。

――素朴な疑問ですが、スピードに興味がない人でも、『ソニック』を遊ばれるものなのでしょうか?

飯塚:遊んでほしいという思いがあります。今回の我々のターゲットは、ソニックファンだけではなくて、それ以外の、アクションアドベンチャーが好きな多くのお客さんです。そういったすべてのお客さんに遊んでもらいたいので、そういうケアをいろいろなところに入れています。

岸本:そこを達成しなければ、先ほど言った世界で輝くソニックチームに慣れないと思っています。ファンだけが満足するソニックゲームを作っているだけでは、世界のソニックチームになれないという判断です。

――もっと多くの人を巻き込んで楽しんでほしいという思いがあるのですね。

岸本:そうです。世界中のアクションゲーマーを巻き込んでこそ、世界のソニックチームになれるんでしょ? というところで。

飯塚:特にここ最近はハリウッド映画もありましたし、今年の冬にはネットフリックスでアニメも始まることもあって、『ソニック』ファン人口が世界中で増えつつあるんですね。そういった新しく入ってきたお客さんが増えている中で、従来のソニックファンだけをターゲットにした作品は不適切です。『ソニックフロンティア』はいろいろな人に遊んでもらいたいですからね。

――少し話はずれてしまいますが、映画の方はファン以外にも人気だとか。

飯塚:そうなんです。ゲーム層というのは、映画というエンターテインメントの中で考えると、少しの人数です。今回のハリウッド映画で、ファミリー層が圧倒的に増えましたね。

――確かに、映画は親子の絆のような面も描かれていましたね。

飯塚:映画を作っているチームは、人間ドラマをすごく重視しているプロデューサーとディレクターがいるので、単なる冒険活劇じゃなく、そこにハートフルな人間ドラマが必ず入ってきます。そういったところがファミリー層にすごく受けがいいですし、ファンの方にも支持されているので、ここ近年で急速に拡大していってます。

 私は普段ロサンゼルスで暮らしているんですが、ここ近年、生活の中で、『ソニック』グッズを身に着けている人をよく見かけるようになりました。Tシャツとか鞄とかを身に着けている人を見かけます。普段の生活圏内で目にすることが大分増えました。

――昨今で、特にSNSなどで話題となっている“RTA(リアルタイムアタック)”について、意識していることはありますでしょうか?

岸本:『ソニック』では初代から、タイムアタッカーと言いますか、そういった人たちに愛されています。3Dソニックに関しては、もうやりたい放題で、若干バグチックなこともやられています。“次元バグ”と呼ばれている、2次元と3次元の次元をすり抜けてショートカットする超絶テクニックまで発見されて、開発ももはや感心しているくらいです。

 もちろん、ファンの期待に応えるのは大事なことだと思っています。『ソニックフロンティア』では、電脳空間というリニアのステージを用意していますが、そこでは必ずイコールコンディションでタイムアタックができる、というかわざわざそういう仕様にしています。

 オープンゾーンのフィールドでは、成長要素があり、プレイヤーによって育て方がまちまちじゃないですか。でもリニアなステージでは、あえてそれらを一切反映せず、全員が同じ条件でタイムアタックしてください、とわざわざやってるくらい、きっちりこだわって皆さんのタイムアタック魂に応えられるように作っています。

 ファンにとって、経験値を集めて速度を上げないとタイムアタックができないよ、となってしまったら、面倒で『ソニック』ゲームじゃないんですよ。始めた瞬間からタイムアタックできて、開幕ジャンプをミスしたら再スタートして、というのがタイムアタッカーたちのプレイの仕方なので、それに耐えうる作りになっています。

飯塚:最近のRTAだと、1つのステージだけではなく、ゲームスタートからエンディングまでをタイムアタックするRTAが流行っています。『ソニックフロンティア』では、自分で好きなルートを選んでいい作りなので、人によってクリアのタイムにすごく差があると思います。

 通常、何十時間も遊べるゲームなんですけど、RTAでどういうフローチャートが最速なのか、そういうプレイはきっと発売後に出てくるんじゃないかと思います。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

岸本:『ソニックフロンティア』では、オープンゾーンという武器を使って『ソニック』ゲームの進化を目指しています。第3世代の『ソニック』の遊びを『ソニック』ゲームで提供するという目標が1つあります。

 もう1つ、“オープンゾーン”を使って、従来からある古典的なステージクリア型アクションゲームの進化、次の世代のオープンワールド的なものも、ステージクリア型アクションで使いこなすと、こういうフォーマットで作るべきじゃないか、という提案をしているつもりです。ファンにとっては第3世代の『ソニック』。アクションゲーマーにとっては、最先端のアクションゲームを新しい感動体験を提供できるものだと思っているので、ぜひプレイしてください。

飯塚:今、最先端のアクションゲームのプラットフォームという話がありましたけど、『ソニックフロンティア』の『フロンティア』という名前は、新しい島“スターフォールアイランド”を開拓する意味と、ソニックチームによる最先端のゲームという意味のフロンティアもあるんです。次世代の、最先端の『ソニック』というのを、ファン以外の人にも体験していただきたいと思っています。11月8日発売。よろしくお願いします。

岸本:ちなみに、私は『ソニック』ゲームのディテクションを十何年担当していますが、私がディレクションを担当するタイトルは、ソニックチームの親分である飯塚さんに必ず名付けてもらっています。今回の“フロンティア”も、飯塚さんにお願いしたんですよ。本当に、ゲームのコンセプト、意図にあった命名をしていただいたな、と思っています。

――ありがとうございました!

 なお、『ソニックフロンティア』は東京ゲームショウ2022(TGS2022)に試遊出展されています。電撃オンラインではレビューを掲載しているので、お見逃しなく!

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