『オクトパストラベラー2』インタビュー#01 HD-2Dの新境地! 昼と夜の概念が新しい遊び方を生む

タダツグ
公開日時
最終更新

 スクウェア・エニックスから2023年2月24日にリリースされることが決定した、Nintendo Switch/PlayStation 5/PlayStation 4/SteamのRPG『オクトパストラベラーII(OCTOPATH TRAVELER II)』(※Steam版は2023年2月25日(土)発売予定)。ファン待望の新作として大幅な進化を遂げている本作の開発者インタビューを、計3回に渡ってお届けします。

 お話をお聞かせいただいたのは、プロデューサーである髙橋真志氏と、ディレクターを務める宮内継介氏、音楽を手掛ける西木康智氏の3人。第1回となる今回は、本作が生まれることになった経緯やこだわりについておうかがいしていきます。

前作の主要メンバーが集結して開発する“まったく新しい『オクトパストラベラー』”の魅力

──東京ゲームショウ2022年に合わせたタイミングで、ファン待望ともいえる『オクトパストラベラーII』のリリースが発表されました。まずは、今の率直なお気持ちから教えていただけますか?

髙橋真志氏(以下、髙橋、敬称略):ようやくファンの皆さんにお伝えできてよかったって気持ちが一番大きいです。当然ながら、つい最近の話ではなく、もう何年も前から作り続けてきたものなので。時期が来るまでは言うに言えなかったこともあり、ようやくこうしてお伝えすることができました。


──ファンからしても「待ってました!」って気持ちです。宮内さんはいかがですか?

宮内継介氏(以下、宮内。敬称略):僕としても前作には深く思い入れがありますので、その続編をようやく発表できて嬉しいです。個人的なことですが、ひとつのタイトルのナンバリングを2作連続でディレクションするのは、この『オクトラII』がはじめての経験でして。すでにファンがついてくれているゲームの続編をさらに面白くするにはどうすればいいのか、ずっと考え続けてきた数年間でした。

──長い時間をかけて温めてきたからこその想いがありそうですね。西木さんからもひと言いただけますか?

西木康智氏(以下、西木。敬称略):僕自身は開発に本格的に参加したのは去年の頭くらいからなので、お2人ほど時間がかかっている感覚はないんですけど。『オクトラ』の開発が終わってすぐくらいのタイミングで髙橋さんとお食事に行く機会があって、そのとき「覚悟だけはしておいてください」と言われていたので、覚悟だけは決めて待っていました(笑)。

──そんなエピソードが(笑)。ちなみに、前作の音楽はすべて西木さんが作曲されていましたが、それは本作でも同様なのでしょうか?

西木:おかげさまで、今回も全曲担当させていただいています。今回はまったく新しい世界での冒険になると聞いていたので、音楽的にも前作とはやや趣向を変え、たくさんの新しいことに挑戦させてもらいました。

──それは楽しみです。ちなみに、プロジェクト自体はいつ頃から始動していたのでしょうか? 

髙橋:西木さんもチラリとお話しされていましたが、『II』の企画自体はそれこそ前作が出たちょっと後ぐらいから動き出していました。我々としては「次もやりたい!」と強く思っていましたし、何より遊んでくれた皆さんから良い評価をいただけたことで、企画立ち上げ自体はスムーズに進めることができました。

──開発の進捗についてもお聞きしたいのですが、今の感触としてはどれくらいの出来上がりなのでしょう?

髙橋:来年の2月にリリース予定ですからね。開発自体はすでに終盤で、最後の仕上げを抜かりなくやっているところです。

──発表から半年たたずに発売というのは、個人的なスピード感としてはものすごく早いなって印象です。開発は前作同様にアクワイアさんとスクエニさんの浅野チームが合同で手がけているかと思いますが、前作から引き続き開発に関わられているスタッフさんも多いのでしょうか?

宮内:そうですね。すべてが同じメンバーというわけではありませんが、メインどころは変わっていません。前作で構築できた信頼関係を引き継いだ形で開発を行っていますので、ディレクターとしても安心感はあります。

──前作では、8人の主人公たちの物語を複数のシナリオライターさんが手分けして制作されていましたが、今回は普津澤画乃新さん(※シナリオライター/漫画家。前作ではアーフェン、トレサ、プリムロゼ編の物語を担当)がご担当されるとのことで、これはお一人で全シナリオを書き下ろされているのでしょうか?

髙橋:はい。今回は普津澤さんにシナリオを書き下ろしてもらいました!

さらなる進化を遂げたHD-2Dによるビジュアル。ドット絵表現は新たなる極致に

──今回、リリースを拝見して一番わかりやすく衝撃を受けたのは、HD-2Dのビジュアル的な進化でした。キャラの等身が明らかに上がっていますよね?

髙橋:気づいていただきありがとうございます。我々としてはものすごくこだわって作っている部分なのですが、いかんせん自分たちは見慣れてしまっていることもあって「大丈夫かな」「皆さんは気づいてくれるかな」と、ちょっと不安もありましたもので(笑)。そう言っていただけるとちょっとホッとします。

──前作や『大陸の覇者』も遊んでいる自分からすると、逆に見慣れないレベルなんですけどね。本作のビジュアルはこれまで以上に立体感を感じられるというか、明らかに表現方法としての完成度が上がっているように思います。

宮内:続編を作るにあたってグラフィックを進化させるというのは、自分たちが最も挑戦したかった部分のひとつでした。ファンの皆さんにも望まれている部分だと思いますので、ものすごくこだわっています。シンプルに「1枚のドット絵として見て美しいゲーム」を作りたかったんですよ。

──ビジュアル的な進化はリリースのスクリーンショットやPV、東京ゲームショウでの生放送などを拝見しただけでビンビンに伝わってきていますよ。かなりの試行錯誤があったんじゃないかな、と。

宮内:美しさを追求するのはいいとして、じゃあ具体的にどんな手法をとればいいのか? それを考えるところからのスタートでした。さまざまな意見が出てきたなかで、今回は「世界を描く密度を上げる」ことをコンセプトに据えています。

──密度といわれるとたしかに納得です。自分は真っ先に等身に目がいきましたが、よくよく見るまでもなく風景などの描き込みもすごい。

宮内:風景に関してはまさに一番最初にブラッシュアップを行った部分です。建物もしかりですが、とくに自然地形などに単一的な直線ばかりではない有機的な曲線を取り入れました。これによって先ほど申し上げた密度はがぜん上がったわけですが、結果、これまでどおりのキャラクターを入れ込むと違和感が生まれる事態になりまして……。

──なるほど。では等身に関しては最初から上げる前提だったのではなく、グラフィックを作り上げていくうえでそうする必要にかられたわけですか?

宮内:そうですね。この密度に適した等身はどれくらいなのか、細かくテストして決めていきました。それこそ1ドット減らしたり、やっぱり2ドット増やしたりと、ものすごく細かい修正を何度も重ねた結果、今の塩梅に落ち着いた形です。

──さまざまなバージョンを重ねたうえで、最適解へとたどり着いた感じなんですね。風景もそうですけど、バトルシーンも美しくなっていて感動しました。

宮内:ありがとうございます。バトルシーンの演出に関しても、等身を上げる決め手のひとつでしたね。シナリオイベントでの感情表現もそうなんですけど、キャラの等身が小さいと、どうしてもアニメーションでの表現に限りが出てしまうんです。それを解消する意味でも等身を上げてよかったなと。

──前作では通常攻撃だろうがバトルアビリティであろうが、武器を振るモーション自体は変化しなかったと記憶していますが……。本作ではいくつかのモーションが用意されているってことですか?

髙橋:いくつかどころか、アビリティによって多種多様なモーションを用意しています。作るのはものすごくたいへんでしたけどね。例えば狩人の「ねらいうち」というバトルアビリティでは、敵に狙いをつけたあと空中に飛び上がって攻撃を繰り出し、着地してくるっと回ったあとに最後の一射を浴びせる……なんてものがあったりしますよ。

──モーションでキャラやジョブに個性を出しているとなると、受け取り方は全然変わってきそうですね。楽しみです。あとはこの劇場のスクリーンショットなどが顕著ですけど、背景に奥行きが感じられるのもすごいと思いました。

宮内:はい。前作では基本的に見下ろし視点のみでしたが、本作ではカメラワークにも演出を盛り込んでみました。色々と煩雑にしたくはなかったので、イベント中に限定した演出ではありますが。我々としてもより緻密に作った世界を、一番映える形で見せたいって欲求が出てきてしまったんですよね(笑)。


──その気持ち、わかる気がします。

宮内:こちらも試行錯誤を重ねたうえで、このグラフィック密度であればある程度カメラ操作をしても楽しめるとわかったため採用しました。イベントシーンはよりダイナミックにカメラを使って、とはいえ昨今の3Dのゲームともひと味印象が異なるような、HD-2Dならではの見せ方を模索したつもりです。

髙橋:静止画としてはもちろん、動いているシーンとして見ても美しいと思ってもらえるようにこだわった部分ではあるので、ぜひ楽しみにしてもらえればと思います。

──自分はHD-2Dはドット絵表現のひとつの境地だと思っていますので、ビジュアルに力を入れてくれていることが聞けて、ものすごくテンションが上がりました。

髙橋:ありがとうございます。『オクトパストラベラー』がHD-2Dの原点であるという自負はチームとしても持っていますので、そう言っていただけるのは嬉しいです。ちなみにHD-2Dにはバージョンが存在しまして、『オクトパストラベラー』からはじまって『トライアングルストラテジー』で「1.1」、『ライブアライブ』で「1.2」と、着々とアップデートを積み重ねてきたんです。そして今回、満を持してバージョンが「2.0」になりました。

──マイナーチェンジではなく、バージョンアップということですか! これはさらに期待感が高まります……。

前作と同じキャッチコピーが用いられたことにはもちろん理由が存在

──ここからは物語的なところもお聞かせください。まずはキャッチコピーなのですが、今回も前作から引き続き「旅立とう、君だけの物語へ――」がPVで用いられていました。こちらの意図するところはなんでしょうか?

髙橋:キャッチコピーについては熟考を重ねたうえで、前作と同じ「旅立とう、君だけの物語へ――」を引き続き採用しました。前作から世界観やビジュアルなど大きく一新している部分はありつつ、『オクトパストラベラー』として譲れないもの、変えてはいけないところ、皆さんに楽しんでもらいたい部分というのは大きく変わってはいないんですよね。正直、別の文言も色々考えたんですけど、そもそも前作の発売の際も散々考えたうえで今のキャッチコピーに落ち着いたわけでして。これはシリーズ共通のものだろうということで、今回も継続して使っていくことにしました。

──自分が思うままに旅をして、自分だけの物語をつむいでいく。『オクトパストラベラー』の世界観にマッチした、とても素敵なキャッチコピーかと。

髙橋:新しいものを積極的に提供していきつつ、コンセプトはブレないという気持ちを込めている部分もあります。我々としては、引き続きシリーズが継続していくとしたらこのキャッチコピーを使い続けて、この言葉を聞いたら『オクトラ』のことを思い出してもらえるぐらいなものにしていきたいです。

──新しいものに積極的とのことですが、その言葉を最も体現しているのはやはり、物語の舞台がオルステラからソリスティアに変わったことだと思います。個人的には、オルステラの物語はまだまだ掘り下げることができる気もしつつ、新たな冒険の舞台にワクワクしています。

髙橋:新作を開発するにあたり、前作を遊んでくれたファンの皆さんにより深く楽しんでいただけるものを作ることは最重要ですが、さらに前作を遊んでいない方でも100%遊べる内容にしなければならないこと。この2点が大きな課題だと思っています。予備知識がなくても楽しめるものを作るというコンセプトはプロジェクトの初期からあり、世界観や物語の舞台を一新することにしました。

──前作ファンはもちろん大切にしつつ、新規ユーザー層も掘り起こしていくというのは、新作を開発するにあたって意識しないわけにはいきませんよね。

髙橋:そうなんです。ありがたいことに、前作が全世界300万本を突破しまして、とても多くの方に遊んでいただくことができました。それでも、まだオクトパストラベラー知らないなあという方もまだまだおられるわけで。そういった方々が『II』が出るタイミングで「これって前作から遊び直さなきゃいけないのかな……」と、重荷に感じて躊躇されてしまうのは避けたいというのも、世界観を一新した理由のひとつではあります。

──納得です。そんなお答えのあとで空気を読まない質問をしてしまいますが、ソリスティアにキャットリンはいるのでしょうか? 自分はキャットリンが大好きで、シリーズのマスコットキャラくらいに思っていますので、出て来てくれたら単純に嬉しいのですが。

髙橋:なるほど(笑)。キャットリンを愛していただいてありがとうございます。これは別に隠すほどのことでもないと思うので申し上げますと、キャットリンはソリスティアにもいますよ。

──本当ですか? めちゃくちゃ嬉しいです!

髙橋:いるどころか、今回は動きますよ、キャットリン。

──キャットリンが? 動くんですか!?

髙橋:キャットリンがというか……今回はエネミーもしっかり攻撃モーションを用意しています。声高に言うことではないかもしれませんが、このあたりからもHD-2Dの進化を感じていただけるのではないかと。

──俄然、期待が高まりますね。物語的な部分もお聞きしたいのですが、『オクトパストラベラー』のストーリーは主人公たちが重たい過去を背負っていたり、登場人物が容赦なく命を落としたりして、大人向けのRPGというイメージがあります。『II』もその方向性は変わらないのでしょうか? 

髙橋:そうですね。メインとして遊んでいただいているプレイヤーさんはドット絵のRPGに慣れ親しんだ方々で、年齢層的にはまさに自分の年齢に近い30代~40代の方々がメインですので。

──では、本作の物語も大人が楽しめるストーリーを期待していいのでしょうか。ファンとしては人間の欲望とか、心の汚い部分なんかも容赦なく描かれていくところに期待している人も多いと思うのですが……。

髙橋:ファンの皆さんの期待を裏切らない内容になっていると思います。今はまだ具体的に「こうなってますよ」とお伝えすることはできないのですが、そこはご了承いただければ……。

──高橋さんの口から今のお言葉聞けただけで十分です。むしろネタバレを知りたくないって方も多いと思いますし、ここらへんの情報量はさじ加減が難しいですよね(笑)。個人的に、8人の主人公がいるというのは本作も変わっていないわけですから、前作同様いろいろな方向性の物語が楽しめると嬉しいです。

髙橋:そこもしっかりご期待に沿えるものになっていると思いますので楽しみにしておいていただければ。

昼と夜の概念の導入でNPCとの関わり方も変化! ボタンひとつでBGMまでシームレスに遷移する?

──本作には昼と夜の概念があるというのも驚きました。フィールドコマンドから何からガラッと変わるというのは、ロールプレイとして面白そうだと思っているのですが、こちらはどのようなところから生まれたアイデアなんでしょうか?

宮内:『オクトパストラベラー』を作るうえで最も大事にしているもののひとつに“旅感”があります。かみ砕いて言えば、遊んでくれている皆さんに“旅をしている感覚を味わっていただく”という部分ですね。ひとつの景色に対して昼と夜でまったく別の顔が見られるというのも、旅というものの醍醐味だと思ったので、それをゲームにも取り入れてみようというのが導入のきっかけでした。

──たしかに。旅先で外を回るとき、昼と夜で違った印象を受けることって思いのほか多いですし、それが情緒につながっていいんですよね。ゲーム内でもあの感覚が味わえるとしたら素敵です。

宮内:狙いはほかにもあって。自分は手遊びって呼んでるんですけど、アクションゲームなどを遊んでいるとき、意味もなくジャンプしたり、ローリングしたりすることってありませんか?

──あります。とくに意味もなくローリングしたりします(笑)。

宮内:あの感覚をRPGに落とし込むというか、ボタン一つで何か楽しめる要素がRPGにもあったらいいんじゃないかとずっと思っていまして。しかもそれが、世界にもっと影響を与えるような何かだったりすると面白いな……と考えて生まれたのが、昼と夜をワンボタンで切り替えられるシステムが生まれたきっかけです。

──ワンボタンで切り替えられるんですか。では、かなり気軽に昼夜を逆転させられますね。

宮内:物語の進行上、やらなきゃいけないところもあることはありますが、正直ほとんどの場所で“やってもやらなくてもいい”くらいの要素です。ただ、町に住んでいる人々は昼と夜でまったく違う生活を送っていたりして、昼夜を切り替えることで彼らの新たな一面を知ることができます。そういう部分にまで興味を持ってくれた人は、積極的に使ってもらえればいいかなと。

──世界を深く知りたい人にとっては嬉しい要素になりそうですね。NPCにさまざまな設定が設けられているのも『オクトパストラベラー』の醍醐味だと思うので、自分は間違いなく昼と夜の顔を覗き見ると思います(笑)。

宮内:ぜひ! 昼は外で忙しく働いている人が、夜は家で家族とのんびりしたりしている姿を見たりすると、その人に対する印象も変わってくるかもしれませんよ。

──単純にボリュームが増えるわけですから、開発スタッフとしては苦労されたのでは(笑)。それでも、物語を進めるにあたって特にマストではないというのも好感触です。忙しくてプレイの時間がとれないプレイヤーさんは、昼夜を絶対に見なくてはいけなくなると負担が大きそうですもんね。

宮内:おっしゃるとおりです。あくまで深堀り要素として、マストにはしていませんのでご安心ください。まあ、データの設定などに苦労したのも事実なので、興味がある方はぜひ覗いてみてほしいですけどね(笑)。

──昼と夜で別の顔を見せてくれるNPCに、フィールドコマンドで干渉していけるというのも楽しみな部分です。ちなみに現在公開されているヒカリとアグネアという主人公2人については、フィールドコマンドも明かされていますよね。そしてそれぞれが昼と夜でフィールドコマンドが異なっている、と。

宮内:はい。ヒカリは昼がバトルを申し込む“試合”で、夜は情報を得られる“買収”を使えます。アグネアは昼がNPCを連れ歩ける“誘惑”で、夜はアイテムを“おねだり”することができますね。

──2人とも夜のフィールドコマンドはひとクセありますね(笑)。こちらは昼のものが前作を踏襲していて、夜のものが完全新規になっているように思えたのですが、偶然の一致なのでしょうか?

宮内:フィールドコマンドについて、昼のものを前作と同じにしたというのは狙ってやっている部分です。主人公の8つのジョブを前作から踏襲しているのに、フィールドコマンドをシャッフルしてしまうと前作を遊んでいる方が混乱すると思うので、あえて揃えるようにしました。

──前作をプレイしている身としては、ありがたい配慮ですね。

宮内:そのぶん夜のフィールドコマンドはまったく新しいものになっていますので、新鮮に感じてもらえるんじゃないかと。

──音楽についても、昼と夜で変化することになるんですよね?

西木:はい。音楽も昼と夜で別の顔が楽しめるように分けております。実際のところ、昼と夜があるって話を聞いたとき、音楽をどうするかは悩んだところで。2バージョン作るとなると単純にボリュームが倍になりますから、それはもうすごい曲数になるよねって話になりました。

──たしかに。それだけでとんでもないことになりそうです。

西木:なので、当初は昼のバージョンをまず作り、そこからトラックを差し引きしたり、テンポを落としたりすることで対処できないかと考えたりもしました。省エネ的な考えで。

──省エネ(笑)。いやでも、RPGで夜の町を表現するときによくある手法じゃないですか。ちょっとゆっくりになるみたいな。誰も省エネとは思わないでしょうし、違和感もないと思いますけど。

西木:そうかもしれません。でも、やっぱり自分のなかで納得できなくて……。夜バージョンも別途作曲させていただくことにしたんです。さすがにすべてのシチュエーションにというわけではありませんけど、タウンやフィールドに関しては全部、昼と夜で別バージョンを作ってみました。

──なんと……イチファンとして嬉しい限りですが、曲数はとんでもないことになっていそうですね。

西木:はい。とんでもないことになっております(笑)。あと、先ほど宮内さんが手遊びとおっしゃっていた昼と夜の切り替えについても考える必要がありまして。プレイヤーさんが好きなタイミングで昼夜を切り替えた時、音楽の遷移はどうしようって話になったんですけど、自分としては音楽に関してもキレイに昼と夜が移り変われるようにこだわりたくて。昼から夜に変わるときも、夜から昼に変わる時も違和感が出ないようにしております。

──さまざまなシチュエーションで、そんなに細かい配慮が出来るものなんですか? 自分には想像がつかないわけですが……。

西木:ちょこちょこ昼と夜を切り替えるだけで結構楽しいと思いますよ。かなり頑張って作らせていただきましたし、僕以上に、実装を担当されたアクワイアのサウンド担当の田崎さんは大変だったかと思いますが、丁寧に実装してくださって大変感謝しております。

──昼と夜でテンポの違う楽曲もあると思うんですけど、それを違和感なくつなぐというのはすごいですね。

西木:そうですね。同じテンポのサウンドを切り替えるのはさほど違和感なく行えるものの、テンポが異なる曲のシームレスな遷移というのはテクニカルな処理がいるので。田崎さんさまさまです(笑)。

──思えば前作のボスバトルなどは、前奏からシームレスでボスバトルのサウンドに切り替わることで、ものすごく盛り上がりましたからね。そのこだわりはファンとしてありがたい限りです。結局のところ曲数はどれくらいになったんですか? 前作は明らかに超えてますよね。

西木:前作の楽曲は85曲とかそれくらいだと記憶していますが、実はスマホの『オクトパストラベラー 大陸の覇者』の音楽がいつの間にか110曲くらいありまして、そして本作はさらにそれを越えているって感じですね(笑)。

──とんでもないボリュームじゃないですか……。自分は『オクトパストラベラー』を語るうえで、西木さんの神サウンドは欠かすことのできない要素だと思っていますし、お話を聞いているだけで滾ってくるものがあります。インタビューの後半でもっと根堀り葉堀り聞かせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

西木:ありがとうございます。承知しました!

■関連記事
#02 やり込んだだけ味が出る、奥深いゲーム性を実現するためのアプローチとは?
#03 “底力”で多様性が増したバトルシーン──音の厚みも大幅進化

(C) SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら