『FF14』14時間生放送インタビュー④:頼れるまでに成長した仲間たちとの曲作りは新境地へ――

電撃オンライン
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 毎年恒例となっているスクウェア・エニックスのMMORPG『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』の14時間生放送。そんな長時間イベントの合間に敢行した、さまざまなセクションのスタッフへのインタビュー企画。第4弾では『FFXIV』サウンド班・祖堅正慶氏、石川大樹氏、今村貴文氏にパッチ6.0以降の曲作りや12月開催のオーケストラコンサートの注目ポイントなどをうかがいました。

 なお読みやすさを高めるため、お三方のコメントに若干の編集を加えています。開発者の方々の発言が、そのまま記事に掲載されているわけではないので、あらかじめご了承ください。

  • ▲左から今村貴文氏(コンポーザー)、祖堅正慶氏(サウンドディレクター)、石川大樹氏(コンポーザー)。

◆インタビュー企画のリンクはコチラ!
インタビュー①/吉田直樹氏、室内俊夫氏
インタビュー②/廣井大地氏、石川夏子氏、織田万里氏
インタビュー③/祖堅正慶氏、絹谷剛氏、藤田麻美氏

ゲーム体験に寄り添えるBGMを作れるようになってきた

──本日の14時間生放送の出演された感想と、からあげクン1年ぶんをゲットした感想をお聞かせください。

今村貴文氏(以下敬称略):からあげクンはいったん置いておいて……(笑)。

一同:爆笑

今村:僕の中で予想していたのが、祖堅さんのTwitterで、よくダジャレで宣伝をしていたりするので、そのあたりが出題されるかなと予想していたのですが、出題されなかったので悔しかったです(笑)。曲に関する問題は意外と当てられたので、勘が冴えていたのかなと。とにかく楽しかったです。

石川大樹氏(以下敬称略):今村さんの解答力がすごかったので、それに助けられた部分が大きかったですね。ひとまず、チームとして優勝できてよかったです。からあげクンに関しては、これを機にしっかり味わって食べたいなと思っています(笑)。

──祖堅さんはからあげクン1年ぶんをこのおふたりに取られたわけですが、いまの率直な感想はいかがですか?

祖堅正慶氏(以下敬称略):悔しいですよ(笑)。こいつらが食べているのを横で見なきゃいけないのかと思うと憂鬱ですけど、負けたわけですから仕方がないなと。うらやましい……(笑)。

──では早速本題に。以前、おふたりにはパッチ6.0の曲作りについてお聞きしましたが、最新パッチ6.2でおふたりが手掛けられたお仕事の中で、とくに印象に残っているものがあれば教えてください。

石川:直近のパッチ6.2ですと、先日配信された『ENDWALKER - EP2』にも収録されている、"バルバリシア討滅戦"で流れる「ゴルベーザ四天王とのバトル ~禁断の記憶~」のアレンジを担当させていただきました。すごく人気のある曲なので、それをアレンジするというプレッシャーもある中での作業でした。

 従来の『FFXIV』のアレンジは1ループ目が原曲を再現して、2ループ目は好き勝手にやるという流れになっていることが多いのですが、今回は2ループ目で原曲をそのまま使ってラジオ加工のようにして流すというアレンジをしています。そのあたりの展開まわりを祖堅さんといっしょに詰めていって、いいものが出せたかなという手応えがありますので、すごく印象深いですね。

祖堅:最初は、方程式に従ったような感じでピアノのアレンジを提出してきたので、「これじゃダメだよ」と言ってもう一度練ってもらったんですよ。そうしたらなかなかハマったものを出してきて、おもしろいなと。

 ちなみにサウンドチームでは、次のパッチで必要なリストを渡された後に、誰がどの曲を担当するかということを決めていくんですけど、バルバリシアの曲に関してはめずらしく石川が「この曲をやりたい」と手を挙げて。

 最初に作曲予定のリストを見たときは「自分がやるんだろうな」とぼんやりと思っていたのですが、石川の熱意を買ってまかせてみたんです。その代わり「厳しく見るよ」とプレッシャーをかけたんですけど、できあがったものが僕の思っていたとおりのアレンジに仕上がっていて、素晴らしいなと。安心してブラッシュアップ作業を進められましたね。

──バルバリシアの曲は、『FFIV』のイメージを踏襲しつつも、激しいバトルにマッチした楽曲に仕上がっていますよね。今村さんは印象に残っている曲はありますか?

今村:僕はパッチ6.2では、"万魔殿パンデモニウム:煉獄編"の2~3で流れる「Scream ~万魔殿パンデモニウム:煉獄編~」を担当させていただきました。この曲に関しては、作曲段階からまかせていただきましたね。ボーカルはすでに公表されているようにAKINOさんにお願いしまして、そのレコーディングにも立ち会わせていただきました。

 結果、めちゃくちゃパワフルな歌声を聴かせていただいて、「全部オッケーじゃん」って(笑)。『FFXIV』のコンポーザーになってからはまだそういう経験がなかったので、すごく楽しかったですね。いい経験ができたと思っております。

──AKINOさんにボーカルを依頼した経緯はどういったものだったのでしょうか?

祖堅:もともとチームで「こういう声色でやりたい」などと話し合うのですが、そのときに候補者としてAKINOさんの名前も挙がっていたんですよ。そこで「もう本人に直接聞いてみよう」となって、いきなりお願いしちゃいました(笑)。

──そうしたらご快諾いただけたと。

祖堅:AKINOさん自身も『FF』の作品に参加してみたいという思いがあったらしくて、お声がけをさせていただいたときに「知っています!」という返答をもらって、そこからトントン拍子で話が進んでいきました。今村に「AKINOさんに決まったから」と伝えたときは、めちゃくちゃビビッていましたね(笑)。だから「気合い入れて譜面書けよ」って。

今村:まさかと思いました。いやー、冷や汗ものでした(笑)。

──レイドの曲ということも相まって、6.2でいちばん聴いた曲かもしれません(笑)。

祖堅:レコーディングも今村主導でディレクションをしてもらって、自由に録れたのかなと。

今村:歌声を聴いて、「これは言うことないな」という感じでした(笑)。

──祖堅さんは6.2の楽曲で印象に残っているものはありますか?

祖堅:"万魔殿パンデモニウム零式:煉獄編4"の後半で流れる専用曲ですかね。

──ミニアルバム『ENDWALKER - EP2』の最後に入っている『White Stone Black ~万魔殿パンデモニウム:煉獄編~』ですね。

祖堅:そうです。今回はだいぶアバンギャルドな感じにしていて、いままでの『FFXIV』にはあまり取り入れていなかったジャンルの楽曲になっています。それを"零式"に挑戦する限られた方に対して提供するのは、不安がすごく強かったのですが、いざ蓋を開けてみたら好評でよかったなと。

──"煉獄編4"では前半が王道なロック調の楽曲で、後半からガラッと雰囲気が変わりますよね。すごく新鮮でした。

祖堅:後半の曲は勢いで作っちゃったので、じつは前半の楽曲のほうが時間はかかっているんですけどね(笑)。前半はインスト曲でという指定があったので、どのようにラハブレアを表現すればいいのかが難しかったです。最終的にはいい楽曲ができたんじゃないかな。

──話題は変わりますが、12月にはオーケストラコンサートが控えていますよね。今回の見どころ、聴きどころはどこでしょう?

祖堅:本当にこれは申し訳ないのですが……"全部"です。今回は全部ヤバいです。現段階では、CD用に演奏予定曲を収録したのですが、もうその時点ですごいという感じなので、これがコンサートになるともっとヤバくなると思います。

──コンサートの直前にCDで予習ができるのはいいですよね。

祖堅:コンサートで最初に体験したい人は事前に聴かなくてもいいですし、予習したい人は聴いていただければなと。できれば聴いてほしいというのがサウンドチームの想いではありますが、マストではないので、とにかくコンサートを楽しんでほしいです。

 今回は"音と映像と生演奏の醍醐味"を出せればいいなと思っています。会場にも何度か下見に行っていますが、今回は収容人数が多いだけに音響が難しそうで……。まだまだやらなきゃいけない準備もいっぱいありますし、がんばらないといけないなという想いで、まさにいまがんばっています(笑)。

──今村さんと石川さんもオーケストラコンサートに関わられているのですか?

今村:レコーディングには立ち合わせていただきました。

石川:細かなお手伝いやサポートをやっていますね。

──前回のオーケストラコンサートが『漆黒のヴィランズ』発売から半年後ぐらいでしたよね。

祖堅:前回は『紅蓮のリベレーター』の楽曲をメインに演奏して、最後に1曲だけ『漆黒のヴィランズ』の曲を滑り込ませたという感じでした。今回は『漆黒のヴィランズ』の曲も『暁月のフィナーレ』の曲も演奏する予定です。まさにいままでの『FFXIV』の歩みをオーケストラで味わえる形になっています。

──同じく12月に『暁月のフィナーレ』のLPレコードが発売されますが、こちらに関しても聴きどころをお聞かせください。

祖堅:これは前回と同じで、レコードの巨匠と言われているバーニー・グランドマンという、レコードのカッティングをさせたら右に出る人はいないすごい方に依頼していて、すごく素晴らしい音が堪能できると思います。できればレコードプレイヤーで聴いてほしいなという思いはありますが、LPはとにかく大きいので……(笑)。

 ジャケット絵はイラストレーターの黒イ森さんに描いてもらったのですが、黒イ森さんは光の戦士でもあるので、いろいろな思いが詰まった『暁月のフィナーレ』の絵になっていると思います。ネタバレになるので多くは語れませんが、わかる人にはわかる素晴らしい絵がジャケットになっており、絵を飾るだけでも価値があるかなと。

 LPには素晴らしい音が入っているし、ジャケットと合わせてそれをこの値段で売っていいのかなというぐらい贅沢な板になったと、個人的に思っています。

──あれは飾りたくなるジャケットですよね。

祖堅:そうなんですよ。かわいくて温かい絵で、何を見ているのかなと思いを馳せながら針を落として音楽を聴いてもらえれば、すごくいい時間を過ごせるのかなと思います。

──最後に、これからパッチ6.3、オーケストラコンサート、さらに『新生』10周年に向けてますます盛り上がっていくかと思いますが、楽曲面に関して、プレイヤーの皆さんに期待しておいてほしいことをひと言ずつお願いします。

石川:僕も今村さんも『漆黒のヴィランズ』から『暁月のフィナーレ』までコンポーザーとして歩ませていただいているのですが、その歩みをこれからも継続していきたいです。プレイヤーの皆さんからは、これまでもさまざまなポジティブな意見をいただいて、それが励みになる機会が多くありました。

 今後もゲームを楽しんでいただいている皆さんのために、"BGMとして何ができるか"ということを考えながら作り続けていきたいです。改めてそうするというよりは、これまでもそうでしたし、これからもそうしていきたいと思っています。

今村:僕たちがサウンドチームに入ってから4年近くが経ちます。もちろん、そのあいだ曲を作ってきたのですが、チームに入ってからも普通に『FFXIV』をプレイしていて、プレイヤーとしての経験も積み重ねてきています。

 その経験もあるからこそ、プレイヤーの皆さんの感情と近いような曲作り、ゲーム体験に寄り添えるBGMを作れるようになってきたのではと思っています。そんな楽曲をプレイヤーの皆さんにいい形でお届けできればと思いながら曲を作っているので、引き続きがんばっていきたいです。

祖堅:ふたりの前で言うのもなんですけど、初期の「めちゃくちゃ頼りなさそうなやつらがやってきたな」という印象から比べると、頼りがいのあるやつらに育ってきていて、最近は本当に楽をさせていただいております(笑)。

──といっても、祖堅さんのお仕事自体も相当増えていると思いますが……(笑)。

祖堅:そうですね。最近は仕事の量的にマジでひとりだと回らないんですよ。どうしても落とさなきゃいけないところもあって、それが悔しい。でも、そういうところを彼らにまかせられるようになったので、本当にいいチームになったなと思います。これからもふたりに頼って、僕は楽をさせてもらおうかなと思っているのですが……これがまた一向に楽にならないんですよね(笑)。

今村:まかされる仕事の量も増えていっていますよね(笑)。

祖堅:おかしいなぁ(笑)。とにかく僕らは作るものがたくさんありますが、毎日のように会議をして、いい関係性で制作進行できているなと感じています。これからもその関係性でプレイヤーの皆さんに向き合いつつ、いいサウンドを作っていければと思っています。頼りにしているよ!

石川:こちらこそ(笑)。

今村:できるだけがんばります(笑)。

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