『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』リマスター版レビュー。日本の原風景と青春が詰まった学園モノの最高峰、シリーズへの入門用にも最適!
- 文
- まさん
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アトラスより2023年1月19日(木)にPS4、Nintendo Switch、Xbox One、Xbox SeriesX|S(Xbox Game Pass対応)、Steam(※)、Windows向けソフト(※)として配信予定の『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』リマスター版。オリジナル版から高解像度のグラフィックで生まれ変わった本作の魅力をレビューしていきます。
※Steam版は好評発売中。2023年1月19日頃のアップデートにてリマスター版で追加された内容を実装予定。
なお、同日発売される『ペルソナ3 ポータブル』リマスター版のレビューも公開しているので、あわせてチェックしてください!
シリーズ屈指の人気&完成度を誇る『ペルソナ4』のリマスター版が登場!
『ペルソナ4 ザ・ゴールデン(以下、P4G)』は、2012年6月14日にPS Vitaで発売された作品です。心の力・ペルソナに目覚めた高校生たちが、田舎町で起きる連続殺人事件と奇妙なウワサ“マヨナカテレビ”の謎を追う物語が展開します。
2008年7月10日にアトラスからPS2用ソフトとして発売された『ペルソナ4』に、新キャラクターや新たなコミュ、3学期を含めた追加イベントや夜間の行動など、ゲームとしてのボリュームが大幅に増えたパワーアップ版となっている本作。
リマスター版では、当時の魅力はそのままに自室のアルバムから思い出のシーンを振り返る機能を搭載。好きなコミュイベントを振り返り、別の選択肢を試した結果も見られるようになりました。
システム面や演出では、シリーズ最新作の『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』が圧倒的な遊びやすさとスタイリッシュさを両立した作品となっていますが、学生から大人まで多くの人々に共感される青春を強調した学園生活、殺人事件の謎を追うミステリーとしての緊張感、そして仲間たちやコミュの人々との心温まる交流まで、『ペルソナ4』はシリーズの中でもある意味で異色と言えるほどに明るい部分があり、万人が楽しめるポジティブさが魅力と言えるのではないでしょうか。
本編の人気はもちろんのこと、ストーリーが繋がった正当続編としての格闘ゲーム『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』や、ダンスゲーム『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』などのスピンオフタイトルも誕生し、どれも良作。また、『ペルソナ』シリーズ初の作品を越えたコラボタイトル『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス』が、やけに作り込まれたシナリオで本編に匹敵する完成度と、関連作品も楽しめました。
2011年10月~2012年3月に放送されたTVアニメ版もゲームとは違った魅力が引き出されており、大成功。アトラスの屋台骨を支えたと言っても過言ではない一大コンテンツにまで成長したのは、やはり土台であった『ペルソナ4』の出来がそれだけズバ抜けていたからだと思います。
だからこそ、今でもシリーズのなかでナンバー1だと言う人も多いくらい素晴らしいタイトル。私自身も好きな『ペルソナ』シリーズを挙げるなら、1番か2番のどちらにするか悩むくらい大好きな作品です。
今回のリマスター版を機に、ぜひいろいろな人に遊んでいただきたい! そんなわけで、これから始める人のためにネタバレは極力避けつつ、『女神転生(メガテン)』シリーズが好きな人も『ペルソナ』シリーズが好きな人も、そしてまったく知らない初心者の方にもオススメできる『P4G』ならではの良さを語っていこうと思います。
牧歌的な田舎町で起きる殺人事件を追い、日々を過ごしていくカレンダー制の学園モノ
本作の舞台は、シャッター商店街も目立つ田舎町の八十稲羽。親の都合で都会から越してきた主人公が、叔父である堂島遼太郎の元を訪ねるところから物語が始まります。
人でごった返したリアルな東京を歩ける『ペルソナ5』とは正反対な“田舎”という舞台。これは、アトラスの作品のなかでも非常に珍しいパターンです。何もない住宅街や河原を歩いて登校する風景や、ジュネスと呼ばれる大型スーパーがある光景は、多くの日本人の原風景とも言える懐かしさすら感じさせてくれます。
ゲームの発売当時は3年先の未来でしたが、地デジ化したばかりの2011年という作中の年代も、今ではノスタルジーを呼び起こすものになっていますね。田舎の街並みと合わせて、地元の友人に会いに来たような感覚にもなれる非常に珍しい『ペルソナ』でもあります。
メインのストーリーは霧の日に起きる殺人事件ですが、日常は「晴れの日」のイメージが強く青春の明るい側面が際立つ作品です。
ゲームの目的は、1年間を通して学生として過ごしつつ町を震撼させる殺人事件の謎を解くこと。『ペルソナ3』から引き継がれた1日ごとに行動するカレンダーシステムはさらに自由度を増し、学校の授業をこなしつつ仲間やコミュキャラクターと交流できるのはもちろん、夜の自由行動も可能になっています。
カレンダー制としては『P5』に、ほぼほぼ近いものですね。あちらほど一気に出来ることが増えるわけではなく、緩やかに増えるのも田舎風。『P5』から入った人なら、すぐに馴染めるでしょう。
メインとなる殺人事件や心の悩みを切り取った話も見どころではあるのですが、『ペルソナ4』の魅力と言えばやはり何といっても青春の光がまぶしすぎる学生生活。運動部と文化部に入ったり、委員会の活動をしたり、事件を追う自称特別捜査隊の仲間たちと一緒にダラダラと過ごしたり……。戦うだけではなく、学生としての穏やかでかけがえのない日常の追体験。その積み重ねこそが、仲間を増やして事件を解決に導く説得力に繋がっていくのです。
学園モノとしては、追体験の良さがシリーズ中でもっとも突出していると思います。夜の自由行動で“お弁当”を作って仲間と食べたり、菜々子と一緒に家庭菜園を育てたり、できることがどこか家庭的なのも良い味を出しているんですよね。
明るく楽しいゲーム性と根底に流れる重いテーマを両立した、バランスの良い本作。日常部分がとにかく明るい! 嫌味な人間のように見える担任のモロキンですら、教師としては『ペルソナ5』のアイツより遥かにまともです。
学校内のモブ生徒にも積極的に話しかけたくなるくらい明るいですし、家に帰れば従妹の堂島菜々子たちが待っています。ゲーム開始時から、あっという間に八十稲羽になじむんですよ。遊んですぐに「学校、楽しい!」と思える温かさ。アルバイトや部屋での趣味に没頭したりと、穏やかで平均的な学生の日常を過ごせます。
『ペルソナ5』でもおなじみの知識や伝達力といった人間パラメータを勉強などで鍛え、それによってコミュの発生や新たな段階を解禁して交流するのは『ペルソナ3』以降でもおなじみの要素です。
知らない人のために説明すると、さきほどからずっと書いている“コミュ”とは、仲間や町の人たちと交流して絆を結ぶ『ペルソナ3』以降の重要なシステムです。コミュが発生したキャラクターと交流することで仲良くなっていき、戦闘における特殊行動が増えたり、新たなペルソナを生みだすペルソナ合体時にボーナスが発生したりと、さまざまな恩恵が得られます。
『ペルソナ5』で“コープ”と呼ばれていたものと仕組み上は一緒ですが、あちらはアウトローな少年たちや大人との共犯・協力関係を描いていたのに対し、こちらはそのまま人との交流であるコミュ。日常で誰もが抱える悩みに耳を傾けながら交流することで、八十稲羽の事件を解決する力となっていくのです。
日常のシステムと、RPGとしてのバトルやダンジョン。メインストーリーがしっかり1年かけて絡み合うのがカレンダーシステムの魅力であり、それらをストレートに明るく楽しく気持ちよく遊べて、どこか懐かしい。多くの日本人が抱くイメージのような田舎だからこその安心感は本作を遊ぶうえでの最大の魅力でしょう。
ある意味、常にメインストーリーで暗い影の付きまとうシリーズの中では異質なほどに異質――。アトラス作品の中でも、クリア後に「ここに住みたい!」と思える稀有な舞台です(アトラスのゲームは、たいてい生きるのがつらい町が舞台になりやすいから)。
主人公も仲間たちも、どこか安心感や頼れる感覚がある。等身大の友達なんですよ。『ペルソナ4』はそうした意味でも独特ですし、今遊んでも楽しい作品だと思います。
気軽に潜りやすいランダムダンジョンに、弱点を突くのが楽しい“1 more システム”!
ゲームの主な流れは、タイムリミットである霧の日までにテレビの中の異世界を攻略して殺人犯に狙われた人を救出。次の事件が起きるまでに日常を過ごし、絆を積み重ねていくのをだいたい1か月くらいの単位で繰り返し、1年を通して真相を見つけ出す流れになっています。
テレビの中の異世界には、人の心を歪んだ形で反映させたシャドウが住みつき、潜るたびに形を変える迷宮のような構造になっています。霧の日である期限までにダンジョンを潜ってシャドウと戦う、いわゆるRPGとしての部分が集約されているのがここです。
ダンジョンに潜るだけでも1日使ってしまうので一気に攻略したいところですが、序盤は回復手段が乏しく泣く泣く戻らなければいけないことも……。こういうバランスも楽しいところですね。
RPGが苦手という人もご心配なく! 『P4G』では“SAFETY”から“RISKY”まで難易度を自由に選べて、いつでも変更できます。
与えるダメージから入手経験値の調整。バトルで全滅したときのリトライ(ONにしておくと、ゲームオーバーになっても全回復してその場で復活するかどうか選べる)など、より細かい項目も設定可能です。
もっとも、バトル自体が楽しいので「使わない!」というのも自由です。ストーリーだけを楽しむためにサクサク遊べる便利機能を使うのも自由ですし、バトルの楽しさを堪能するのも自由。
『ペルソナ』シリーズは、相手の弱点を突いて再行動する“1 more システム”があるので、通常戦闘も緊張感があって飽きにくいですからね。初見の人は、ぜひじっくりと好みのバランスで遊んでください。
どのシリーズでも仲間たちとは深い絆で結ばれていますが、この『ペルソナ4』における仲間との関係は戦闘面でも“地元の仲良しな親友たち”という印象が強め。
コミュのレベルを上げることで追撃してもらえたり、状態異常になっても助け起こしてもらえたり、一緒に仲良く戦っている感じがします。演出のせいか、すごく仲良し感があるんですよ。
総攻撃などでトドメを刺すと、戦闘後に“シャッフルタイム”が発生。新たなペルソナを入手できるチャンスが生まれます。
ペルソナ同士を合体させる“ベルベットルーム”でスキルを引き継いだ新たなペルソナを作り、合体素材を求めてダンジョンに潜る。アトラスファンがず―――っと愛してやまない悪魔合体……このシリーズでは“ペルソナ合体”にハマると、時間が無限に溶けていくのはいつもと同じです。
『ペルソナ』シリーズのシステム的には、ほぼ『ペルソナ4』で完成したと言ってもいいくらい、今遊んでも滅茶苦茶良く出来ています。
リマスター版は値段も1,980円で、コストパフォーマンスが良すぎ! もちろん、移植度に関しても問題なし。Switch版を携帯モードで遊んでみたのですが、ロード時間などもほぼ感じないレベルです。
自分は、ペルソナマガジンや設定本などで仕事も含めてもう何十周……では済まないくらい遊んでいて、目をつぶっても台詞がスラスラ出てくるくらい遊び込んだタイトルなのですが、それでも今回のレビューのために遊んだら、あっという間に数十時間ぶっ通しでプレイしてしまったくらいの名作。止め時が見つかりません。
どんでん返しからミステリーとしての推理要素までしっかり仕込んだうえで、青春の光も影も明るい部分も描き切ったメインストーリー面は言うに及ばず、システム面でもちょうどよい詰め込まれ方なんですよ。『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』のようなお腹いっぱいのフルコースも良いのですが、特性幕の内弁当くらいのちょうどよい満腹感というか……。
まさに、タイトルのごとく“ゴールデン番組”のような安定感がありますね。自分は「人生ではじめて『ペルソナ』シリーズを遊ぶ」という人には、間違いなく『P4G』をオススメします。
発売順としては『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』リマスター版の後でもありますし、新作からナンバリングを遡っていくのも断然アリ。もちろん、グラフィックなどは最新作からすると多少デフォルメされている部分はあるのですが、ゲーム的にはまったく見劣りしません。
現役で学生の人たちは同じ年代の高校生たちに共感できると思いますし、大人でも在りし日の郷愁を思い起こさせるような作りです。『ペルソナ3』のように旧シリーズ色との混ざり具合が良さとなっている作品とも、『ペルソナ5』のように重いテーマをスタイリッシュに描いた怪盗物の良さとも違った、学園モノとしての魅力。老若男女に遊んで欲しい『ペルソナ』です。
リマスター版はお値段もお手頃で、ハードもマルチに展開。さまざまな人が手に取りやすくなりました。無印の『ペルソナ4』しか遊んでいない人も驚くほどの進化を遂げているので、PS Vita版やSteam版を遊んでいない人にもオススメです。ぜひ、プレイしてください!
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