実在する伝承をテーマにすることで真実味のある物語を作り出す『パラノマサイト』開発者インタビュー前編

紅葉つかさ
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 スクウェア・エニックスのNintendo Switch/iOS/Android/PC(Steam)用完全新作ホラーミステリーADV『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』。本作の開発者インタビューを2回にわたってお届けします。

 本作は、昭和後期の日本の墨田区を舞台に、呪いの力を得た9人の男女が七不思議に隠された“呪いの秘術”の行使を巡ってそれぞれの想いをぶつけ合う群像ホラーミステリーADVです。

 そんな本作のシナリオを担当する石山貴也氏とプロデューサーの奥州一馬氏にインタビューを敢行。前編となる今回は、開発に至った経緯や苦労した点などについて聞きました。(※インタビュー中は敬称略)

実在する伝承をテーマにすることで真実味のある物語に

――まずは『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』の開発に至った経緯を教えてください。

奥州:はじめに、石山がADVゲームを新作で作りたがっているという話を会社内で耳にしまして、若いスタッフなどを集めて会議を重ねていきました。

 石山が思い描くゲーム設定や物語、やりたい事などを軸に、テーマやロケーションを話していき、途中から小林(元)や岡村(礁)なども加わわり、全天球背景のアイデアやデザインの方向性を詰めていったのがきっかけになります。

 ADVゲームが国内外でもヒット作品が増えてきているのもあったので、傾向なども考えて価格帯やサイズ感についても当時から議論していましたね。その結果、この価格での販売が実現できました。

――伝承の“本所七不思議”がテーマになっていますが、こちらをテーマに選んだ理由を教えてください。

石山:個人的には、完全にフィクションの物語よりも実在するものをテーマにすることで、私たちがいるこの世界と地続きな物語であるという見せ方ができると思い、奥州が提案した“本所七不思議”に決めました。あえて実在する伝承 をモチーフに決めたことで、地に足がついた感じになったかなと。

奥州:ホラーはフィクションに偏りすぎてしまうと真実味が薄くなってしまうと思うので、実際にある怪談を扱いたいと考えました。その中で、今回は墨田区に伝わる“本所七不思議”を扱うことにさせていただきました。

――同時に英語版を開発するということで、資料が古文で書かれていたりすることもある“本所七不思議”のローカライズは大変そうに思えるのですが。

石山:はい、インタビューで苦労した点を聞かれたら、真っ先に翻訳だと答えようと思っていました(笑)。

 個人的に、今回のプロジェクトで一番チャレンジしたのが翻訳でした。日本の伝承がモチーフになっているので、翻訳を担当したスタッフも苦労されたところなんじゃないかなと。

 本作は、テキストアドベンチャーなので、当然ですけどテキスト量がすごく多いです。さらに私が最後までテキストを調整するタイプなので、翻訳担当のスタッフに無理を聞いてもらいながら、どうにか実現できました。

 元の日本語のテキストにも癖があるのですが、翻訳されたものを見てみると、何かしらのひねりを入れたりしておもしろい翻訳がされてるという印象はありました。これが海外のユーザーにどのように映るのかはわからないですけど。

――ほかにも開発で苦労したところはありましたか。

奥州:翻訳以外には全天球背景も大変でしたね。ゲーム内に登場する場所は“本所七不思議”に関係する場所なのですが、実際に行って360度カメラで撮影して、それを昭和風にする必要がありました。

石山:撮影した写真をもとに背景をイラスト調に加工したのですけど、撮影したのは令和の墨田区なので、郷土資料館からいただいた資料を見ながら建物などを描きなおす必要があるのですが、全天球背景だとパースがおかしくなるんですよね。そこは、背景のスタッフさんが頑張って作ってくれました。

奥州:当時の墨田区の再現が難しくて、監修してもらったときに、当時はもっとこうでしたという指摘をいただいて修正していきましたね。例えば、公園の遊具とかが昭和にはあったけど今はないものもあったりして、ゲーム内ではそれを再現しているので、当時、墨田区に住んでいた人は懐かしい気持ちになる人もいるのではないでしょうか。

――背景の作成時に監修してもらったとのことですが、墨田区観光協会とは最初から協力体制にあったのでしょうか。それとも調査などを進めていくうちに協力をお願いしたのでしょうか。

石山:けっこう早い段階で協力してもらうようになりましたね。

奥州:まず最初に石山さんと図書館などで“本所七不思議”の伝承を調べて始めました。そして、調べていくうちに、より詳しい学芸員さんにお話を聞いたり、監修していただいたりするようになっていったという感じです。

 私が関わっている『サガ』は、佐賀県など自治体とコラボさせてもらっていて、非常にありがたいと思っています。なので、墨田区を題材にするなら同じようにして、活発な情報交換をしながら墨田区の方でしっかりと監修してもらいました。

――ちなみに墨田区観光協会と協力して、何かしらのイベントの実施などは考えられているのでしょうか。

奥州:まだ、詳細をお伝えすることはできませんが、イベントの実施は考えています。

――それは楽しみです。“本所七不思議”を題材にした本作ですが、9人の男女や呪いの力、蘇りの秘術といったキーワードが公式サイトには記載されています。こういった要素はどのように決めていったのでしょうか。

石山:“本所七不思議”を調べていくうちに、あいまいな伝承が多く、場所によって名前や数などが違っていて、想像の余地が多いと思いました。例えば七不思議と言いながらも、本作で出てくる不思議は9つだったりとか。

 こういった七不思議のあいまいな部分を補足しつつキャラクターに紐づけたいと考えて、どのキャラクターにどのような呪いを持たせるかを決めているときに呪いの力を使って何かを奪い合う展開がおもしろいんじゃないかなと思いました。

 七不思議なのに定まった7個がないというのも“本所七不思議”のおもしろいところかなと。

――公開されている画像から、いくつかのストーリーが用意されているように読み取れるのですが、ストーリーの進め方はどのようになるのでしょうか。

石山:ストーリーの構成は遊んでみてからのお楽しみということでプレイして体験してみてください。ただ、バッドエンドはいくつか用意しています。

 バッドエンドはありますが、すぐにストーリーの分岐箇所からやり直すことができますので、周回しなくてもすべてのエンドを見ることができます。

――ちなみにコンテンツの追加などは予定されているのでしょうか

石山:今のところ、コンテンツの追加の予定はありません。コンセプト的にも、そういったことをするよりもシリーズとするための次の展開を考えたいと思っていますが、発売前でどうなるのかはわからないので神のみぞ知るというところでしょうか。

→後編では『スクールガールストライカーズ2』とのコラボにも言及!

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