“なめ猫”ならぬ“なめどり”は『スクスト2』コラボでも活躍!? 『パラノマサイト』開発者インタビュー後編

紅葉つかさ
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 スクウェア・エニックスのNintendo Switch/iOS/Android/PC(Steam)用完全新作ホラーミステリーADV『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』。本作の開発者インタビューを2回にわたってお届けします。

 本作は、昭和後期の日本の墨田区を舞台に、呪いの力を得た9人の男女が七不思議に隠された“呪いの秘術”の行使を巡ってそれぞれの想いをぶつけ合う群像ホラーミステリーADVです。

 そんな本作のシナリオを担当する石山貴也氏とプロデューサーの奥州一馬氏にインタビューを敢行。後編となる今回は、本作の背景や音楽表現に加えて、現在実施中の『スクールガールストライカーズ2(スクスト2)』とのコラボについて伺いました。(※インタビュー中は敬称略)

→インタビュー前編はこちら

こだわりは画面全体の統一感

――本作は1作目にもかかわらず『FILE23』となっていますが、どのような意味があるのでしょうか。

石山:『パラノマサイト』シリーズ化を目論んで、己にプレッシャーを課しました(笑)。無数にあるエピソードのうちのひとつですよ、というニュアンスです。

 それ以前の数字を全部出したり、番号順に出したりするものではないので、中途半端な数字にしておこうと思ったのと、今年が20“23”年だったり、舞台の墨田区が東京“23”区だったり、ほかにも調べてみると“23”という数字が不吉な使われ方をしている例があったので、これらを含めて『FILE23』にしました。

 一応、今、挙げたもの以外にも、“23”にした理由も考えています。

――それは気になりますね。いまさらになるのですが、本作はホラーがテーマということで石山さんはホラーがお好きだったりするのでしょうか。

石山:個人的に本格的なホラーは、実はあまり得意ではなくて……。本作にはホラーとミステリーの要素が入っていますが、がっつりホラーというわけではないです。

 プロジェクトが始まったときにチームで話し合って、『金田一耕助』シリーズの『八つ墓村』のような怖めのミステリーというイメージを共有しました。ショッキングな表現や心霊現象は出てきますが、ベースはミステリーになっています。

――アドベンチャーゲームということでテキストはもちろんだと思いますが、ほかにも注目してほしい部分を教えてください。

石山:こだわっている部分としては、字幕風テキスト表示があります。

 メッセージウィンドウを出さずに、画面の下に2行で字幕を表示するこのやり方が、画面を広く使えて、文字と絵がいっしょに目に入るので、個人的に気に入っていて。昔に作成した『探偵・癸生川』シリーズから『スクールガールストライカーズ2』までこのやり方をしています。

 あと古い映像に見えるように画面全体にフィルターがかかっていて、ノイズや色修正が入っているのですが、同じフィルターをUIにもかけてあって、画面の一体感を出しています。文字にもかかっているのですが、それでも読みやすいように文字の大きさや太さも調整しています。

 UIとゲーム画面の融合っていうのは、ゲーム開発における永遠のテーマだと思っているのですけど、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』のアプローチとしては、目に入りやすいように絵と文字が一体になっているので没入感が出せるようにこだわりました。

 ただ、このフィルターが少し重いので、スマートフォン版ではオフにして軽くできるようになっています。

――演出にかなり力を入れているのがわかりました。演出もそうですが、音楽もレトロな雰囲気を作る大きな要素になっていると思います。

石山:音楽はスクウェア・エニックスサウンドチームの岩崎英則に全曲描きおろしてもらいました。

 昭和の東京というレトロな世界観にあわせて、音楽を作っていただいて、そのうちのいくつかの曲は生演奏したものもあります。さらに、生演奏した曲は楽器だけではなく、当時の雰囲気を重視して歌謡曲の伴奏をしていた方などに演奏してもらっているので、いい味が出ていると思います。

 それと効果音はサウンドチームの若手が2人で担当しているのですけど、360度のパノラマ背景にあわせて、環境音を複数トラック重ねてこっちからは水、こっちからは工場の音など、見ている方向から聞こえてより臨場感が出るように頑張って作ってくれて非常にいいものになっています。

 そこまで意識する部分ではないんですけど、イヤホンやヘッドホンを付けてプレイすると分かりやすいかと思います。

――演出と音楽が相まって、昭和のレトロな雰囲気が作り出されているのですね。そんな本作ですが、ボリュームはどれくらいになりますか?

石山:初めて遊ぶ人がじっくりプレイして10時間くらいを想定しています。テキストを読むのが早い人なら5~6時間というところでしょうか。

 さらに本作には、倍速モードがあるので、休みの日に小説を読むような感じでプレイできるのかなと思います。

――寄り道要素ではないですけどゲーム内にある“なめどり”を、探しているだけでも時間を忘れて楽しめます。

石山:今回、360度を見渡せる全天球背景があるので、能動的に見回したくなる要素が欲しいという意見があって“なめどり”が考えられました。新しい場所やシチュエーションになったら、探していただければと思います。

奥州:舞台が昭和ということで、昭和に流行した“なめ猫”をオマージュして、鳥にしたらおもしろいと思って“なめどり”を作りました。

石山:デザインしたスタッフがノリノリでいろいろとアイディアを送ってくれたので、デザインを見るのも楽しかったです。

昭和を感じられる要素として“なめどり”を作成。『スクスト2』コラボでも活躍

――“なめどり”といえば、コラボを行っている『スクスト2』内で“なめどりステッカー”がもらえるのもおもしろいですよね。

石山:『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』由来で女の子にプレゼントできるものがあるかを考えたときに“なめどり”を出すという話になって、ステッカ-ならプレゼントできるアイテムになるだろうということで“なめどりステッカ-”になりました。『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』では“なめどり”が20種類あるのですが、そのうちの3つを厳選してお届けします。

 衣装に関しても、前からパンツルックを提案していたのですが、あまりかわいくないってことで採用されてきませんでした。なので、満を持してパンタロンに白シャツの“利飛太の衣装”が登場します。もちろん、女の子が着るようにかわいくアレンジしてもらっているので、集めてみてください。

――その『スクスト2』で石山さんはシナリオ、小林元さんはキャラクターデザインとしてタッグを組んでいました。本作でもタッグを組むことになったのはどのような経緯があるのでしょうか?

石山:新しい企画を立てて進めていくときに、キャラクターデザインは大切な要素だと思います。小林さんはデザインが上手いうえに、いっしょにお仕事をしてよく知っているので、プロジェクトが立ち上がるときにお願いしました。

 生々しい感じのキャラクターを描くのが自分の作風で、それが小林さんの描くキャラクターと相性がいいと思っています。『スクスト2』は3Dモデルでしたが、本作は2Dのアドベンチャーなので、小林さんのキャラクターをそのまま出したかったというのもあります。

――キャラクターデザインに関して、小林さんに提案したキーワードがあったりだとか、逆に小林さんから提案されたりといった意見交換はされたのでしょうか。

石山:昭和の東京が舞台なので、当時っぽいファッションにしてもらうと地味になりがちでこれは社内でも言われていました。

 特徴のある髪型とか服装をした方が特徴を出せていいかもしれないですけど、あえてとがらせずに実写になっても違和感がなさそうなキャラクターになっています。あとは絵力で勝負です。

――作中で、キャラクターがすごい顔芸をしていたりもしますが、これはどのように決められたのでしょうか。

奥州:「こういう表情にしてください」というお願いはしましたが後は小林さんにお任せしました。差分に関しては別のデザイナーさんが担当することもありますが、今回は小林さんがすべての差分や塗りをしてくれたので、絵の統一感は高いと思います。

――コラボアイテムで“なめどりステッカ-”のお話をしましたが、『スクスト2』コラボの実施に至った経緯や見どころについて教えてください。

石山:新規のタイトルは宣伝が大変で広く知ってもらうためにあらゆる手を使わなければいけないということで、『スクスト2』とのコラボが決定しました。

 その代わりというわけではないですけど、『スクスト2』をプレイしている方に楽しんでもらえるものにしなければいけないと思っていて。

 コラボだと世界観が混ざっちゃうこともありますが、そういうのではなく、あくまで『スクスト2』の中の出来事として、女の子たちが『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』のPR案件を頼まれて四苦八苦しているところを最終的に妖魔(オブリ)に邪魔されるというストーリーをコラボ用に書き下ろしました。

 なので、いつもと同じように楽しんでもらいながら『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』の名前だけでも知ってもらえればという感じです。

 ストーリーには、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』の案内人を模したパラノマオブリと案件を見かねて現れたバ美肉オブリが登場します。バ美肉オブリは美少女のガワをかぶった妖魔なのですけど、すごい雑なガワのかぶり方で、目の前に立て板を置いてそこに美少女が書いてあるだけになっています(笑)。ちなみにその美少女の絵は小林さんの描き下ろしになっています。

――最後に、発売を待っているユーザーにコメントをお願いします。

石山:この場を借りてお願いがあります。もし、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』を遊んでおもしろかったら、ぜひ、感想を発信してください。

 いいことを言おうとしたり、的確に言語化しなくても、「おもしろかった」という一言だけでいいので。SNSじゃなくて、友だちとの雑談の中でも言っていただければ、その一言が次につながると思うので、よろしくお願いします。

奥州:アドベンチャーゲームは、小さいころから遊んできたジャンルで『トワイライトシンドローム』や『夕闇通り探検隊』にすごく影響を受けました。

 今回、ホラーゲームで、天球をメインに据えてここまで作りこんだゲームは、初めてに近いと思っています。そんな天球を活かした演出や“なめどり”のアイテム探しはうまく作りこめたと思うので、プレイして体験してみてください。

 聖地巡礼ではないですけど、実際の場所に行ってみたらゲームで使われているのが伝わるくらい、背景を墨田区と連携してこだわりを持って作りこんだので、感じ取ってもらえたらうれしいです。

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