『鉄拳8』開発者インタビュー。ワンボタンで“最速風神拳”が出せるスペシャルスタイルの沼とは?

ophion栗田親方
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 3月31日よりクローズドαテストが実施される『鉄拳8』。テスト版のプレイを元に、本作のプロデューサー・安田イースポーツ氏と、ゲームディレクター・池田幸平(ナカツ)氏にお話を伺いました。

 また、クローズドαテストのレポート記事も掲載しているので、あわせてチェックしてみてください。

■TEKKEN 8 - 新バトルシステム紹介

ヒートシステムでキャラクターの個性がさらに際立つ!

──今回遊んでみて、まずビジュアル面に驚かされました。なかでも攻撃時のエフェクトが派手できれいでしたね。

池田幸平(ナカツ)氏::エフェクトは、見た目にアグレッシブなものを目指しました。そのなかで、例えば一八がデビルの力を使う際には羽根のエフェクトを出すなどキャラクター性を引き出せるものを意識しています。

 また、ホーミングアタックは回転の軌跡がわかるようにするなどキャラクター性とシステム的な記号の両面をよりわかりやすくしていますね。

──主に上位層のプレイヤーのなかでは、エフェクトについて賛否両論の声がありますが『鉄拳8』ではエフェクトによるビジュアル面の強化と視認性のバランスはどう意識していますか?

安田イースポーツ氏:トレーラーのニューヨークステージの夜が見づらいなど、視認性についてのご意見があることはこちらでも把握しています。

 それを踏まえて、現状で派手になっているものは慣らしつつ、エフェクトの強弱はつけて見やすさと遊びやすさの両立を目指しています。エフェクトを調整する機能も用意しますが、これからクローズドαテストという段階。プレイヤーさんには気になる点があればご意見を寄せてほしいですね。

──大会では、個々人のエフェクトの設定で遊べるのでしょうか?

安田:大会のエフェクトは、全プレイヤー共通にする予定です。

──続いてヒート状態についてお聞きしたいのですが、回復可能ゲージとヒート状態による回復によって『鉄拳7』よりも1ラウンドの試合時間は長くなるのでしょうか?

池田:体力とダメージのバランスは回復可能ゲージを含めずに調整しているので、多少は試合時間が伸びると考えています。ただ、ヒート状態の維持や体力の回復を行うには相手にダメージを与えなくてはいけません。

 ヒートシステムが積極的に攻めることで恩恵を得られるシステムであることも含めて、実際の感覚としては意外と試合時間を短く感じると思います。

──ヒートシステムのひとつ“ヒートスマッシュ”の性能は、ヒートエナジーが1個か2個かで変わるとのことですが、2個消費した際の具体的な強化点を聞かせてもらえますか?

池田:まず、ヒートスマッシュ自体のダメージやガード時の削りダメージが増加します。こういった単純な強化に加えて、ヒット時に相手の回復可能体力を減らせるようにもしていますね。

安田:あと、“HARD WALL BREAK”と表示されているステージには、その壁で壁やられが2回起きると初めて破壊できる壁が用意されていますが、ヒートエナジーを2個消費したヒートスマッシュで壁やられを引き起こした場合は、1回で壁が破壊されます。

池田:まだ調整段階ではありますが、ヒートエナジーを2個消費するのにふさわしいメリットを盛り込んでいきます。EVO Japan 2023から始まるクローズドαテストで、いろいろとご意見をいただきたいですね。

──ヒート状態中にキングの特定の投げ技とロウの返し技を決めるとヒートゲージが回復しましたが、こういった技は各キャラクターに用意されているのでしょうか?

池田:キングやロウがヒートゲージを回復できるのは、キャラクター固有の要素ですね。ヒート状態にはキャラクターごとの個性が際立つような強化要素が盛り込まれており、キングなら特定の投げ技を決めると歓声とともにヒートゲージが回復するといった具合です。

 とくにキングは投げにフィーチャーした要素が強く、ヒート状態中にのみ繰り出せる投げ抜け不可の投げ技も用意しています。

──ニーナの特定の技で相手の回復可能ゲージを減らせるのも、個性を際立たせる一環でしょうか?

池田:本作ではニーナというキャラクターを形作るにあたって、“サイレントアサシン”というキャッチコピーや、スピンオフ作品の『デス バイ ディグリーズ 鉄拳:ニーナ ウイリアムズ』.で拳銃やサブミッションを使って活躍したことも意識しました。

 そういった要素を踏まえて拳銃を使うアクションを盛り込んだり、特定のサブミッション技を決めると『デス バイ ディグリーズ』を思わせる演出とともに回復可能体力を減らせるキャラクターにしましたね。

安田:『鉄拳8』では今までのシリーズ以上にキャラクターの個性を際立たせるためにナンバリング作品だけでなくスピンオフ作品などから要素を洗い出して、キャラクターを再定義したうえでアプローチしています。

 こういったヒート状態に際立つ個性は、気にしなくても問題なく遊べるのですが、『鉄拳8』の深みでもあるのでクローズドαテストを遊ぶプレイヤーさんにぜひ楽しんでほしいところです。

──そういえば、投げ技のなかに最近のプロレスシーンを感じさせるようなものも取り込まれている印象を受けました。これは新しいスタッフがプロレス好きなのでしょうか? それともこれまでも『鉄拳』を開発してきた方にプロレス好きの方がいるのでしょうか?

池田:後者ですね。以前より開発スタッフにプロレス好きな人が多く、キングには我々のプロレス愛をギュっと詰め込んでいます(笑)。キング自体世界中に一番ファンが多いキャラクターなので、PVの反響も大きかったですね。

──投げ技の流れでお聞きしますが、キングの“ワンダフルメキシカンコンボ”やニーナの“サブミッションスペシャル”などいわゆる投げコンボに簡易入力を用意した理由を聞かせてください。

池田:ワンダフルメキシカンコンボなどは、ご存じのとおりキャラクターの独自性のひとつです。それをより多くの人に手軽に楽しんでいただきたいと考えて、今回ボタンひとつで投げ技が派生するようにしました。

 ただ、これまでやり込んで投げコンボを覚えた方もいて、また、複雑な入力を覚えて派生技を繰り出すのも投げコンボの楽しみのひとつです。そのため、従来のコマンドで派生するとパワーアップするという仕組みを盛り込んでいます。

──キングの“スペシャルコンビネーション”など簡易コマンドが用意されていない投げコンボもありますが、こちらは意図的なものでしょうか?

池田:そうですね。あえて簡易コマンドを用意せず、これまでやり込んだプレイヤーに対する恩恵とこれからやり込むプレイヤーへの目標としているものもあります。

──“ロメロスペシャル”はかっこいいですからね(笑)。『鉄拳2』で登場したときには、何度もコマンドを練習しましたよ。

安田:その練習して「できた!」という瞬間の気持ちよさを、新しいプレイヤーにも味わってほしいですね。

──ただ、水を差すようですが『鉄拳7』の競技シーンでは、正直投げ技が活躍する機会は少なかったように思えます。

池田:その点は我々も認識しており、『鉄拳8』では投げ技をパワークラッシュに強い選択肢に位置付けました。

──具体的な調整内容を聞かせてもらえますか?

池田:まず『鉄拳7』では、パワークラッシュを入力してから攻撃を受け止められる状態になる前、細かな話をすると出始めから8フレームまでは投げ抜けが行え、パワークラッシュ後の硬直中も投げ抜けが可能でした。ですが、『鉄拳8』ではパワークラッシュの出始めも硬直中も投げ抜け不能な時間になります。

 もともとパワークラッシュで攻撃を受け止められる状態中は投げ抜け不能だったので『鉄拳8』ではパワークラッシュの動作中はいっさい投げ抜けができません。

安田:パワークラッシュ後の硬直中に投げ抜け不能になったことで、投げ技がパワークラッシュへの確定反撃として使えるようになったのが、大きな変更点ですね。とくに投げ技がコンボ始動技になっているロウや、壁を背負ったときのジャイアントスイングのダメージが非常に高いキングなどが恩恵を受けています。

 ちなみに、投げ技が確定した場合、カメラ演出やSEが特殊なものになるので視覚的に投げ技による確定反撃がわかりやすくなっていますよ。

──なるほど。一方でパワークラッシュが以前より使いやすくなったという話を聞きましたが、パワークラッシュの強化点についても聞かせてください。

池田:パワークラッシュは攻防一体のアクションで『鉄拳8』では守りの要素が強化されており、まず、パワークラッシュで相手の攻撃を受け止めると受け止めた攻撃によるダメージが回復可能体力として残ります。さらに、攻撃を受け止めつつ放ったパワークラッシュが相手にガードされた場合、仕切り直しになるように技の硬直が軽減されました。

安田:ほかのメディアさんからのインタビューなどで、『鉄拳8』で掲げているバトルコンセプトのキーワード“アグレッシブ”を受けて、今までのつちかった守りのテクニックが生かせないのではないかという話が出ました。

 ですが、相手のヒート状態をしのぐのに今まで学んだ守りのテクニックは必ず役立ちますし、使いやすくなったパワークラッシュも相手優位な状況を仕切りなおす手段としてより強力になっていますね。

スペシャルスタイルは初心者から上級者まで使えるシステム

──スペシャルスタイルのコンセプトについても聞かせてください。

池田:スペシャルスタイルを作る際に決めたことが2つありまして、ひとつはいつでもアーケードスタイルと切り替えできるようにすること。そしてもうひとつがどんなプレイヤーでも使えるようにすることです。

 『鉄拳8』への導入として使いやすいシステムですが、カジュアル層だけが使うシステムにはならず中級者以上でもなんらかの恩恵が受けられるように調整しました。

安田:あと、『鉄拳』の基礎がわかっている中級者以上のプレイヤーでも、新キャラクターなど初めて使うキャラクターの個々のコマンドや動きはわからないですよね。そういったときにスペシャルスタイルで遊んでもらうと、どんな動きをするキャラクターかなどキャラクターの魅力をつかみやすくなります。

──正直一八の“最速風神拳”が△ボタンだけで出せるのに驚き、プレイ中は最速風神拳を出したいときだけスペシャルスタイルに切り替えていました。

安田:自分の操作のなかに一部分だけ組み込むというのも、我々の望んでいるスペシャルスタイルの使い方のひとつです。絶対に落とせない空中コンボを決める際に、L1ボタンを押してスペシャルスタイルに切り替えるとかもいいと思いますよ。

──ただ、最速風神拳を自由に出せる気持ちよさはありつつ、ちょっとズルをしてる感があって心が痛みました(笑)。

安田::その気持ちの揺らぎやそこからスペシャルスタイルにハマっていくのを、我々はスペシャルスタイルの沼と呼んでいます(笑)。

──沼ですか(笑)。

池田:実際、スペシャルスタイルを起点にしてそのままスペシャルスタイルを使うかアーケードスタイルで遊ぶかはユーザーさんの好みしだいです。

 あと先ほど安田も話していましたが、今レイジアーツを繰り出せば勝てるけれどもボタンの同時押しをミスするかもしれない。そういったどうしてもミスできない瞬間にスペシャルスタイルならボタンひとつで確実にレイジアーツが出せるというのも魅力のひとつですね。

──得意技を方向キー+ボタンという形でいろいろな技を出せるようにする選択肢もあったと思いますが、なぜ1種類だけなのでしょう?

池田:初心者の方は慣れてきたプレイヤーと比べると、どうしてもある程度レバーをガチャガチャ動かすことがあります。そのため、レバーとボタンの組み合わせで繰り出す得意技が変わると、ボタンを押したときにどの技が出るかわからなくなってしまいます。ですから、あえて得意技はひとつに絞り、ヒート発動技で最もそのキャラクターらしいものを割り振っています。

 また、ヒート発動技をあてて、ヒートダッシュで距離を詰めるというヒートシステムの核となる部分をわかりやすく遊びやすくユーザーさんに提供しようと考えたのも得意技をひとつに絞った理由ですね。

安田:逆に空中コンボはいろいろな技が連続で当たる気持ちよさを重視してバリエーションを用意しており、ヒートダッシュやレイジアーツなども状態に応じて空中コンボに組み込まれます。

──空中コンボと言えば、スペシャルスタイルで出せる空中コンボを実際にアーケードスタイルで決めたいとなったとき、本来のコマンドや技をプレイヤーに示す導線はありますか?

池田:例えば、プラクティスモードにはこれまでのシリーズと同じく技やコンボの再生機能などがあるので、実際のコマンドとキャラクターの動きを照らし合わせながら確認できます。そのほか、いろいろと楽しみながら操作を学んでいけるような仕組みも用意しているので、こちらについても時期が来ればお話できるかなと。

──なるほど。言われてみれば『鉄拳』シリーズのコンシューマ版と言えば特殊なゲームモードがあるのが定番でしたね。

安田:いろんな切り口で『鉄拳8』が上達する仕組みを盛り込んでいるので、期待していただければと思います。ただ、今回はクローズドαテストということもあって、コアユーザーさんが主なプレイヤーです。そういった方々にコアな部分のフィードバックをしていただけるようにヒートゲージをはじめとした新システムなど対戦シーンに絞った内容になっています。

──ゆくゆくは初心者向けの大会も考えているのでしょうか?

安田:大会を含めたeスポーツ全体として、参加機会をいかに増やすかをポリシーとして掲げています。ただ、現実問題として毎日オフィシャルで大会を開くことはできません。

 大会には見る人、参加する人、そして大会を主催する人の三者が必要であり、我々はこの主催者を増やしたり、1人の主催者が大会を何度も開けるようにサポートしてきました。

 一時期、オフラインで大会をするというのが難しい社会情勢になりましたが、これからはオフライン・オンラインともに大会を開こうという人が増えていくでしょう。

 『鉄拳8』でも、こういった未来の主催者をサポートして大会を増やせるように尽力していきます。


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