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『なつもん!』先行レビュー。ひと足先に20世紀の夏休みを体験! 綾部和氏のインタビューも掲載

ライターM
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 スパイク・チュンソフトより7月28日発売予定のNintendo Switch用ほのぼの夏休みアドベンチャー『なつもん! 20世紀の夏休み』。本作の先行体験レポートと、開発者インタビューをあわせてお届けします。

 本作は、四方約4キロにも及ぶ広大な町を丸ごと再現したオープンワールド形式の体感型アドベンチャーゲーム。プレイヤーは、緑豊かな“よもぎ町”にやってきたサーカス団・団長の息子となって、約1カ月間の夏休みを気ままに過ごします。

 大まかなストーリーや登場人物については、電撃オンラインの記事をご覧ください。

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懐かしくも新しい、夏休み体感型アトラクション!

 今回の先行体験会では、まっさらな状態で小一時間と、後半一時間はある程度成長済みのセーブデータでプレイさせていただきました。

 大まかなストーリーはあるようですが、何をするかはプレイヤーの自由。オープンワールドということで、とにかく好き放題暴れてみます。

  • ▲会話を通じてさまざまなクエストが発生。クエストと言っても厳しいノルマや時間制限が課されるモノとはほど遠く、のんびりと休みを楽しむための道しるべのようなイメージでした。
  • ▲虫取りなどの成果は絵日記に書き込まれていきます。素朴なイラストとスタンプがなんともほのぼの。
  • ▲ときには虫取り網なんて使わず、ど~んと木を蹴ってみたり……(何が降ってくるかはお楽しみ)。

 無邪気に遊びまくって、ふと気がつけば夕暮れ時。大人のお迎えが来てしまいます。

 ちなみに、とにかく物語を進めたい人は早く、じっくり探索を楽しみたい人は遅めと、時間経過の調節が可能となっています。

 晩ご飯を終えて、いざ夜の町の探索……と思ったのですが、あまり夜更かしをすると、夏休みの一大イベントであるラジオ体操のスタンプを逃してしまいそうなのでお布団へ。

  • ▲ラジオ体操に参加すると、こんな感じでスタンプがもらえます。
  • ▲体操が終わったら、せっかくなので舞台となっていた神社を探索。灯が灯っている石灯籠によじ登ったりと、まあまあお行儀の悪いやんちゃなこともできてしまいます。

 まだ陽が高いので遠くまで足を伸ばして見たいところ。まずはマップを開いてよもぎ町の全容を確認してみると……思ったより広くてビックリ。

 たからの山に巨大な煙突、遠くの海には沈没船など、お子様の冒険心をチクチクと刺激してくるスポットに暇がありません。

 海や川では釣りも楽しめるということで、まずは何も考えずに川へダイブ!

 そこらに転がっている空き瓶を拾ってみると「安い値段で回収してくれる」など、お小遣い稼ぎの匂いがぷんぷん漂ってきます。

  • ▲もちろん、ちゃんと魚釣りも楽しんでみました。ちょっとしたアクションゲームになっていて、魚影さえ視界に捉えれば簡単に釣り上げられます。

 さっそく小銭を手に入れようと商店を訪れると、お店の中では地元の子どもたちとの出会いが待っていました。彼らはどうやら少年探偵団を結成して活動している模様。物語を進めていけば、もしかすると大事件に遭遇するかも!?

もっともっと遠くへ!

 ある程度ステータスが成長したセーブデータをいただいた後半は、ダッシュやジャンプ、よじ登りなどを駆使してさらに広範囲を駆け回ります。

 ちなみに、クエストをこなしてステッカーを集めると、より長い時間しがみついたり、ジャンプ力が上がってとんでもないところまで登れるようになるようです。

  • ▲スタッフさんが地図に載っていない見どころをこっそり教えてくれたので足を運んでみると、あたり一面鮮やかなひまわり畑が!!
  • ▲さらにずんずんと進んでいくと、丈の高いトウモロコシ畑に阻まれます。気にせず進むと大きな岩にぶつかったのでひたすら登ってみると……。
  • ▲想像以上の絶景が!! 遠くに見えた時計台っぽい建物を次のターゲットに決めるも、いいところで日が暮れてきたので家路を急ぎます。

 夕暮れの町にはサーカス団の大きなテントが設けられていて、手前には魅力的な出し物が!! ここで寄り道してもあれこれ間に合うようなので、ちょっとしたミニゲームを楽しんでみます。

  • ▲射的にスマートボールなど、現在ではレトロ復刻系の温泉宿にでも行かないと楽しめない出し物がちらほら。

 晩ご飯が終わったら、いよいよ待望のサーカスが公演。わけあって、プレイヤーがディレクターとなり、サーカスの演目をお好みで変更できたりします。

  • ▲演目の内容や順番、BGMまでお好みで設定。演目ごとにお客さんの反応も表示されるので、「今日のオススメ」はぜひとも入れておきましょう。
  • ▲綱渡りの途中で足を滑らせて股間を強打。居たたまれなくなるシーンですがお客さんの反応は……。
  • ▲定番にして人気の空中ブランコはスタンディングオベーション♪
  • ▲ひととおり演目が終わると、お客さんの総評が見られます。

 祭りの後の寂しさというかサーカスの公演後すぐに帰るのが勿体なくて、少しだけ夜の町を散歩していると、何やら不思議な出来事が……。

 他にも、オトナのお姉さんと一緒にデート(!?)したり、何やら発展途上の博物館を訪れたり。

 こんな感じで、さまざまな謎とお楽しみが詰まった町を舞台に、ひと夏の体験が待っています。

メディア合同インタビューの模様をお届け

 先行体験会では、原作&脚本とゲームデザインを手がけられたミレニアムキッチンの綾部和さん、開発元のトイボックスより和田康宏さん、パブリッシャーであるスパイク・チュンソフトの榊原昌平さんら3名が、本作の魅力や制作秘話を語ってくれました。

 ここでは、その一部を抜粋してお届けします。

――本作を開発するにいたった経緯は?

和田:弊社のプロデューサーの発案で、『牧場物語』シリーズを手がけてきた自分と『ぼくのなつやすみ(ぼくなつ)』シリーズの綾部さんが一緒に仕事をしてみたらおもしろいのではというのがきっかけとなります。

 綾部さんの方に明確なビジョンがあったため、今回は一歩引いた立場で開発を見ることに専念して、クリエイティブの方はすべて綾部さんにお任せする形で開発が進みました。

綾部:僕のゲームは『ぼくなつ』も含めて、2D版オープンワールドだと思うんです。今回はそれを本当にオープンワールドで作っちゃおうというのが発想の原点です。『ぼくなつ』と同じで、最初に精度の高い2Dマップを作って、それがそのままゲームになっています。

 作っていてこんなに楽しかったり、色々なアイデアが出たのは初めてじゃないかなというくらいで、いい機会をもらってうまくいかせたかなという感じですね。

和田:もう少し具体的に説明すると、綾部さんがおっしゃった地図はちゃんと地形があって、等高線で高さもわかるモノなのですね。この地形をそのまま画面に出せたということもあって、この短い時間でここまで出来るのならと、綾部さんにもアイデアやゲームデザインに力を入れられると感じていただけたのかなと。

綾部:とにかく土台が出来るまでが早くて、その結果、上に積み重ねていく時間がたっぷり取れたので。たぶん今でも誰かが何かを思いついて、私も知らない要素をこっそり付け足していると思います(笑)。

――主人公の少年をサーカス団・団長の息子に設定した理由は?

綾部:大きく分けて2つありまして、1つは夏が終わったら町を去って行く設定でどのようなキャラクターが考えられるかということ。もう1つは、ステッカーを収集することでステータスが成長して、超人的な行動をしても違和感がないというところからですね。

――屋内のカメラ視点が固定カメラになっている理由は?

綾部:トイボックスさんのプロデューサー的な意見として、『ぼくなつ』のように止まっている背景の中を歩くというのがないと綾部らしさが出せないのではないかというのがありました。

和田:開発的なところでは、狭い家屋の中でフリーカメラのようなことをすると、色々とぶつかったりめり込んだりして快適な操作感を保てないというところが大きな理由です。

 もう1つ、開発として気を遣ったのがローディングです。オープンワールドの中で建物内をいかにストレスなく短時間で移動できるかというところに注力しています。例えば部屋の中からも同じように外の景色が見えるのですが、その物ではないけれど同じに見える。外の景色と違和感がないように見せるという工夫もしています。

――いろいろなところに登らせようというアイデアはどこから? また、オススメのスポットは?

綾部:発想としては、わんぱくな主人公にしたかったんですよね。ただ、屋根とかすべて登れるようにするとデバッグも大変じゃないですか。だから当初はデザインを変えて登れるものと登れないものを作ろうと進めていたのですが、いつの間にかほぼ全部登れるようになっていて(笑)。

 今回はそうやっていつの間にか増えていったものとかすごく多いですね。自由度はすごく高いし遊んでいて楽しいけれど、デバッグの人達は大変(笑)。でも、作っていて楽しいというのは正義ということで許してください。

 恐ろしい自由度の高さだなと思ったのが、かなり後半にならないと行けないはずの高所にある山小屋に、知恵をしぼれば始めて3日目くらいでたどり着けるのですよ。かなり違う景色が見られるのでオススメです。

和田:苦労した点は、本当にどこでも登れるようにしちゃったところですかね。開発はほとんど終盤なのですが、自分たちが想像もしていなかったような登り方を発見されてしまうことが楽しみでもあり、怖くもあります。

 オススメのスポットとしては煙突ですかね。普通なら、子どもがそんなところに登るなんて危ないと怒られるじゃないですか。でも、登っている方はめちゃめちゃ楽しいですよね。そういった現実では難しいわんぱくな楽しさも感じてもらえたらうれしいなと思っています。

榊原:ユーザー目線でいうと、高いところを目指そうというのが多々あるのですが、町の一番高いところに登ろうというのがあって、そこがかなり最初から行けるのですよ。ステッカーも手に入るし、かなり達成感を味わえるので、ぜひ見てもらえたらなと思います。

綾部:あともう1つ、灯台山というところに花火師さんがいて、毎日夜中に3回ずつくらい打ち上げをやっているのですよ。打ち上げ時間に近くの岩山に登頂すると、花火を上から見ることができます。ぜひみなさんの目で確かめてみてください。

――子ども向けのアピールポイントは?

綾部:本作では魚をある程度の数を釣っておばちゃんに渡すと、その日の晩ご飯に出してくれるのですよ。子どもの体験としてはかなりスペシャルだと思うので、ぜひ目指してみてください。

和田:子どもにオススメというか、探偵みたいに活躍して困っている人を助けるといったエピソードも入っているので、名探偵になったような爽快感を味わえますよ。

榊原:20世紀の夏休みということで、たぶん現在親の世代が子どもの頃だと思うのですけどね。世界観の違いみたいな所で、やっていることは同じなのだけれど昔はこうだったんだとか、親子で遊んでもらえたらうれしいなと思います。

――サーカスでお気に入りの演目は?

綾部:かなり後半にならないと出てこないかも知れませんが、巨大な車輪の中で命がけの演技をする「ホイール・オブ・デス」と呼ばれている演目があって、とても見応えがあるのでオススメかなと思います。

 また、曲とサーカスの同期もかなり工夫しているので、音楽も込みで見ていただけると楽しいかなというのもあります。

和田:子どもの頃に見た、輪っかの中でバイクがぐるぐる回るという演目が印象に残っていて、今回の開発に携わったことで「今でもやっているんだ?」と。世の中決まり事が増えて窮屈になっていく中、サーカスはギリギリの線でがんばっていらっしゃるのだなというのを印象的に思いました。

榊原:シーソーの演目は最初からあるのですけど、ナガセさんとラッキーさんの掛け合いがゲームらしい演出で、思わずクスッとしてしまうようなところもあるのでぜひ楽しんでいただければ。

――オープンワールド上でリアルタイムに進行するようになると1日の時間調節が大変なのでは? また、時間の進み方を選べるようにした理由は?

綾部:時間の長さについては正解がないのですよ。基本的にはちょっと足りないくらい、夕方になって「あ~、いいところなのに」というギリギリ感を目指しました。

 さすがに「今ここで呼び戻されたら泣くよ?」というところも出てくるので、程よく足りないけれど上手にフォローすることで破局を回避するようなバランスになっていると思います。

 普通の速度で遊んでいたら丁度足りないくらいにしたけれども、正解がないからこそちょっと時間をゆっくりにしたり、もっと早くしたりという機能もつけてあげようということで3段階選べるようにしています。

和田:どうしても序盤はコンテンツが揃わないので、時間が余りがちな傾向になるのですよね。ゲームの密度が足りないのではということで増やしていくと、今度は時間が足りないということも起きてしまったり。

 時間経過を感じさせなくするためだけに増やしたコンテンツって、本当にこのゲームに必要なのかというところを吟味して、最終的には普通の速度でちょっとだけ時間が足りないバランスになっていると思います。

 とはいえ、ただ座っているだけでもなんか懐かしくて良いなという空気感を感じてもらえるようなモノを目指しているので、そういった方もゆっくり自分のペースで遊んでもらえたら良いですし、少しでも早く一周クリアしたいという人はスピードを上げて楽しめるようにというところで、現在の最終的な形になっています。

――線路の上を走れたり、どんぐりの鉄砲で色々なものを撃てたりしますが、あえてこういった表現にも踏み込んだ理由は?

綾部:例えば高圧電線には登れないようにネズミ返しをつけたりと設計的な配慮はあるのですが、もしかするとものすごく高い山の上からマントを使って飛び降りたりするとどうなるかなど、ゲーム内の現実が我々の想定を超えてしまう可能性もあるのですよ。

 射撃についても悪意があって何かをしたり、生き物を仕留めてしまえることはありません。ちなみに動物を撃つと気絶して、アイテム扱いで運べるんですよ。

榊原:矢面に立つパブリッシャーとして、我々の方でも逐一見せていただいてやってきたのですが、綾部さんの世界観や和田さんのプロデュースを尊重したいということで、それほど口を出さなかったのではと思います。

 弊社内でも子どもが真似をしてしまったらどうするのだという懸念はありました。ゲームはあくまでもフィクションでありファンタジー。そういった部分を潰してしまっては遊びの体験が損なわれてしまうのは違うという判断で、現在の形になっています。

――周回プレイのメリットは?

綾部:要素がたくさんあるので、かなり効率よく回ったプレイヤーでもやり残しが出てしまうのですね。人によっては「夏休みは1回きりだから」と最初からやり直す人もいるでしょうし、「この先を見たいから」という人もいる。

 やり残しは気持ち悪いですし、心残りのある方に夏休みをもう一度という感じで、効率よく進めていけるような形での引き継ぎになっています。

――『ぼくなつ』は知っているけれども、日頃そこまでゲームを遊ばないという方々へのアピールを。

綾部:『ぼくなつ』のファンの方も安心して楽しめる、もっと自由度の高いゲームが出来ましたという感じです。体感的には4キロ四方くらいの町が丸ごと入っているので、この新たな大地でやんちゃに遊び倒してください。

和田:これは夏休みのお話ではなく体験なのです。小さな子どもが公園に行くと、あれこれ言われなくても好きなように駆け回って遊ぶじゃないですか? それがゲームになったという感じですね。

⇒次の記事では、木下大サーカスの取材に行っちゃいました!?

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