明坂聡美さん&プロデューサー陣が『ミリオンアーサー』7年半の思い出を振り返る座談会
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- まり蔵
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スクウェア・エニックスの人気タイトル『乖離性ミリオンアーサー』の5周年を記念して、『ミリオンアーサー』シリーズ作品にかかわってきたキーマンたちによる座談会をお届けします。
座談会では、今年11月に5周年を迎えた『乖離性ミリオンアーサー(以下、乖離性MA)』をはじめ、『拡散性ミリオンアーサー(以下、拡散性MA)』、『ミリオンアーサー アルカナブラッド(以下、アルカナブラッド)』、『弱酸性ミリオンアーサー(弱酸性MA)』、『乖離性ミリオンアーサーVR』といったシリーズ作品について語られました。座談会に参加したメンバーは以下の5名。
・岩野弘明さん:元『ミリオンアーサー』シリーズプロデューサー。現在はスクウェア・エニックスを退社。
・明坂聡美さん:『ミリオンアーサー』シリーズのご意見番。モルゴース、イゾルデ他、多数のキャラクターボイスを担当。
・琢磨尚文さん:『ミリオンアーサー アルカナブラッド』プロデューサー。
・鈴木大地さん:『乖離性ミリオンアーサー』運営プロデューサー。
・加島直弥さん:『乖離性ミリオンアーサーVR』プロデューサー。
飲食店でご飯を食べながら、和気あいあいとした雰囲気のなかで実施された今回の座談会。今明かされる真実や、今だから言える裏話など、盛りだくさんな内容となっていますので、『ミリオンアーサー』ファンはぜひご覧ください!
『拡散性MA』騎士団の失敗を乗り越えて
――『乖離性MA』の5周年を記念して、今回『ミリオンアーサー』シリーズに縁のある方々にお集まりいただきました。ぜひ、今だから話せる裏話などをお聞かせいただければと。
琢磨尚文さん(以下、琢磨):明坂さんも、『ミリオンアーサー』にかかわっていただくようになってからすごく長いですよね。
明坂聡美さん(以下、明坂):そうですね。拡散性のボイス収録からだと8年くらいは。最初、生放送に出たときは普通だったのに、何回目かに出たとき岩野さんが縛られていて、ビックリした記憶があります。
岩野弘明さん(以下、岩野):ありましたね~。
鈴木大地さん(以下、鈴木):あれ、確か『拡散性MA』ので不具合が出たかなにかでオシオキだったんですよね。
明坂:あのとき、この会社ちょっと大丈夫かなって思いました(笑)。
岩野:正直いうと不評なご意見も多くて、やっぱりもっと真面目に謝った方がいいよねってなって。当たり前ですけどね……(笑)。
――『ミリオンアーサー』は不具合や失敗について、かなり前向きに取り組んでいる印象がありました。“騎士団”の失敗を公式が自ら認めるとか。
※騎士団:週ごとにランダム編成されたチーム同士でランキングを争って順位を決定するシステム。
岩野:実際、騎士団はなくなっちゃったくらいですから。お客様にはご迷惑をおかけしました……。
琢磨:実装してから取りやめましたからね。
岩野:失敗と言わざるを得ない。
明坂:“騎士団”ってなんだっけ、っていうくらいの歴史に……。
鈴木:騎士団のときはまだ入社していなかったので、実は伝聞でしか知らないんですよね。結構なスピード感でなくなったという伝説は聞いているんですが。
琢磨:個人的に騎士団はシステムとしてはおもしろかったと思っているんですが、あれがリリースと同時に実装されていれば問題にはならなかったと思うんですよね。でもこれまでのシステムに慣れてしまった後に全然違うゲーム性が入ってしまったから、お客様の拒絶反応がすごかったんだと思います。
岩野:しかも意図していた企画内容とちょっと違った形になってしまったんですよね。
鈴木:作っている途中で変わっていってしまったんですか?
岩野:変わったというより、やりたかったことがプログラム上できないってなってしまって。より正確にいうと、プログラム上できないということはないんですが、イメージする内容に落とし込むには根本から設計し直す必要があって、運営をしながらそんな大工事をするのことができなかった、という感じです。
鈴木:あー、よくありますよね、そういうの……。
琢磨:騎士団から始めて、こういうゲームなんだなって馴染んでいる人もいらっしゃったんですけど、元のゲーム性がなくなって騎士団が入っちゃったので、やっぱり多くの人には受け入れられませんでしたね。
明坂:そういえば私、「生放送で言いたいことがあったらなんでもしゃべっていいですよ」って言われて、クレームを持っていったら「全部いいよー」って。今考えると、なかなか他の作品ではない対応ですよね。
鈴木:そもそも明坂さんの不満っていうのは、どうやって運営に伝わったんですか? 収録のときとかですか?
明坂:収録のときもですけど、生放送に出てくださいって言われたときに、「でも私クレームとか言っちゃいますよ?」って言ったら、持ってきてくださいって言うので、メモ帳に30個くらい書いて実際に持って行ったんですよね。そうしたら岩野さんに「いいですよ」って言われて。
岩野:いや、でも「いいですよ」って言った後に不満が30個くらいあるっていうのが判明して、「そんなにあるんですか!?」ってなったんですよね。
鈴木:あ、「いいですよ」って言ったときは、そんなにあるとは思ってなかったんですね(笑)。
岩野:生放送中にそれが判明して、「不満、多っ!!」って(笑)。
鈴木:すごいサプライズだったんですね……。
明坂:あのときのクレームは、デッキ構築のシステムから合成の仕方まで、本当にいろいろありましたね。なんでここでデータダウンロードが起こるんだとか。
岩野:ガチのクレームでした!
琢磨:ガチだ!
鈴木:ガチプレイヤーだ!
明坂:でも『拡散性MA』システム、おもしろかったですよ。
琢磨:まだアプリがほとんどない時代でしたよね。
鈴木:あの頃、フルボイスのストーリーのアプリなんてなかったですからね。主題歌もあって、オープニングはフルアニメーションだったし。
明坂:すごい画期的でした!
岩野:もともとコンソールのゲームを作っていたので、その文法に則ってアプリを作ったらああなったんです。
琢磨:当時、シナリオやストーリーを読ませるのは離脱ポイントになるからダメだって言われていたんですよ。ストーリーはいらない、ボイスも飛ばすからいらないって。
明坂:え、そうなんですか!?
鈴木:あの頃、携帯のゲームは暇つぶしでやってる人が多いっていう認識でしたから。
琢磨:でも開発でタブーとされているものを、全力でやってみたらいいんじゃないって。それが『拡散性MA』だったんですが、あのゲーム以降、似たタイトルがめちゃくちゃ出てきましたね。
ガチャチケを配る理由を模索する日々
――『拡散性MA』は、ガチャチケットの配布方法も画期的でしたよね。「6月は祝日がないからガチャチケを配布します」って、すごい配布の仕方だなって思いました。
岩野:オンラインゲーム全般に言えることだと思うんですけど、運営タイトルって毎日突拍子もないことをやり続けるべきだと思うんですよ。いい意味でのツッコミどころというか。その根底にあるのが“笑い”で、そういうバカなことをやり続けていくことでお客様に楽しんでもらおうと。そういう意味で“ガチャチケ”はすごく使いやすかったんです。
配布するとその分損失じゃないかって思うかもしれないんですが、お客様が喜んでくれたり、それで話題になってくれるなら、安いものだと僕は考えていて。
琢磨:「金環日食だからガチャチケを配りたいんですけど」って岩野さんに確認したのを思い出しました。あっさり「いいんじゃない」って許可が下りたので、あわててバナーを作りました。
岩野:日々、配る理由をさがしていましたね(笑)。
明坂:画期的といえば、『弱酸性MA』ですよ! ゲーム内で漫画が読めるってあの頃あまりなかったと思うんですけど、さらに原作の世界観をぶち壊さんばかりのあの勢い……! でも、全然違う世界線として成り立ってたじゃないですか。ちょぼらうにょぽみ先生、すごいですよね。
鈴木:ああいう漫画って、これまではゲームの内容を紹介するものが多かったんですよね。チュートリアルとか初心者講座とか。
岩野:オンラインゲームって突拍子もないことをやって突っ込まれてなんぼだと思うので、ガチャチケ配布も漫画も、全部その想いなんです。『弱酸性MA』は、そこにちょぼ先生の作家性が加わって、ドライブした感じはありますね。
明坂:名言、たくさん生まれましたよね。「ナイちん!(ナイスちんちん!)」とか。なかなか出てこないですよ。
岩野:実は最初はもっとおとなしかったんですよ。僕、元々ちょぼ先生の作品を読んでいまして、あの突拍子もない作風が好きだったんですけど、最初は遠慮されていたみたいで。なので、「遠慮しなくていいんで!」っていう監修をしました(笑)。
明坂:ハードルを下げたんですね。
鈴木:そういえば『弱酸性MA』がWebアニメになったとき、真面目に確認を取ったことが1つあって、それが盗賊アーサー役の佐倉綾音さんに「心がぴょんぴょん」って言わせるシーンでした。あのときはちゃんと確認を取って許可をいただきました。
明坂:あっ、私、早見沙織ちゃんがボイスをやったパルディッシュがワカメを取られるシーン、あれ大丈夫だったのかなってずっと気になってたんですけど……。
琢磨:あれはワカメなので!
鈴木:そういう人工生命体なので!
明坂:そうなの!?
岩野:そもそも『拡散性MA』を作ったとき、会社からなんの期待もされていなかったんですよ。注目もされてなかったので、自由に作ってて、もし会社に怒られたら謝ろうって(笑)。
琢磨:いやいや、岩野さんが知らないだけで、確認はちゃんと取ってますよ。ファンの方が「これ大丈夫なの?」って心配されていたネタも、ちゃんと確認は取っていますので!
キャラクターの発注が大喜利みたい!?
明坂:登場キャラクターってどうやって作ってるんですか?
岩野:初期の150体は、シナリオを手がけていただいた鎌池和馬先生に元ネタを出していただいたんですが、それ以降は基本的にこちらで考えていました。月ごとに新キャラを投入していたんですが、どういうテーマのキャラにするか毎月考えていましたね。
琢磨:宝石や星座をモチーフにしたキャラとかいましたね。
鈴木:麻雀の役のキャラもいましたよ。
岩野:当時、僕がアニメの『中二病でも恋がしたい!』にハマっていまして。中二っぽいキャラが欲しいなって思ってできたのが、“エターナル・フレイム・オブ・ディッセンバー”です。
明坂:そういう経緯でできたんですか!?
琢磨:確か“エターナルフォースブリザード”から来てるんでしたっけ?
岩野:そう、ネットで調べた中二っぽいワードを参考にしました(笑)。
鈴木:『ミリオンアーサー』はイギリスが舞台なので、イギリスの妖精がキャラの元ネタになっている場合が多いんですが、エタフレは岩野さんオリジナルってイメージが強いですよね。
琢磨:エタフレは、もともと“キョウレイ”って名前だったんですが、もうちょっとインパクトがでないかなという話になって。岩野さんと中二っぽい名前にしようって雑談しながら決まったんですよね。あと12月に出すから、“オブ・ディッセンバー”って付けようって。
――ちなみに皆さんの印象に残っているキャラクターはいらっしゃいますか?
岩野:そういえば僕、海外サッカーが好きなんですが、『乖離性MA』の初期に蹴球型のサッカー騎士がいましたね。
鈴木:サッカー日本代表のワールドカップ予選のときに、『乖離性MA』の広告を出したこともありましたねー。
琢磨:あのとき、結構長い時間テレビに映ってたんですよね。
鈴木:各企業の広告がローテーションで表示されるシステムで、みんなで会社の会議室で試合を見ながら、広告が映っているときにゴールを決めて! って祈ってました。
琢磨:ゴールが決まったときに表示されていたら、その後のダイジェストで何度も映りますからね(笑)。
明坂:確かに(笑)。
岩野:どのキャラも印象深いんですけど、ガレスがすごく好きだったんですよね。僕、『狼と香辛料』のイラストがすごく好きで、文倉十先生にイラストをお願いしたという経緯がありまして。文倉先生の金髪ショートカットキャラなんて、もう「良い」以外ないですよね。
琢磨:僕は『拡散性MA』のリリース日から運営に携わっていたので、『拡散性MA』の主要キャラは思い入れがありますね。三妖精とか。
鈴木:逆に僕は『乖離性MA』から参加しているので、『乖離性MA』発のキャラに思い入れがあって、ドモヴォーイとか好きですね。メインじゃなくてストーリーに出てくるキャラじゃないんですけど、登場したときにすごく人気が出たので印象に残ってますね。
明坂:私はニムエかな。『拡散性MA』の頃から大人気のキャラですけど、最近ファルサリアやウアサハに押されてるじゃないですか。どうにか挽回してほしいなって!
岩野:押されているのは、ニムエが『弱酸性MA』に出てないからじゃないですか?
明坂:そうなんですよ! ニムエ全然出てこなくって! ビジュアル最強なのに!
岩野:おもしろキャラにしづらかったんじゃないですかね?
琢磨:ニムエは僕も印象的ですね。『拡散性MA』のとき、refeia先生が描くニムエがめちゃくちゃかわいかったので、運営側で推したんですよ。そうしたらちゃんと人気が出て。それがすごくうれしかったので、思い入れがあります。
岩野:話しているうちにだんだん思い出してきたんだけど、『ミリオンアーサー』ってコンセプトが“ラノベ感”なんですよね。ラノベって結構ちょいエロというか攻めてる感じあると思うんですが、なので「イケるところまで攻めよう」っていうのがありまして、ニムエはちょうどいいちょいエロ具合だったんですよね。そういう攻めた姿勢が、お客様に刺さったんじゃないかな。
明坂:他にもちょいエロなキャラっていましたよね。
岩野:夢之式先生の“スラップス”とか、みやま零先生の“輝夜”とか、尻神様と呼ばれていた“レプラホーン”とか、ちょいエロ方面ではかなり攻めていたと思います。
イラストレーターさんにキャラを発注するときは、まず「ツインテールで」や「ちびっ子で」といったお題を挙げて、あとは「とにかく攻めてください」という言葉を添えていました。
明坂:なんか大喜利みたいですね(笑)。今もその発注方法は変わらないんですか?
鈴木:今も変わりませんね。設定と年齢感だけ伝えて、あとはどんなものが上がってくるかみたいなところはあります。
――『ミリオンアーサー』シリーズの作品を開発・運営するなかで、苦労されたことってありますか?
琢磨:手がけていたタイトルが多すぎてパンクしたことですね。一時期、『拡散性MA』の運営をメインでやりながら、7プロジェクトくらいを同時に見ていたので、本当にしんどかったです。
『拡散性MA』の運営をしているとき、アクセスが集中してサーバが落ちていた時期があったんですよ。5週連続くらいで毎週末サーバが落ちたときがあって、あのときは高熱や蕁麻疹が出たりしていました。
お客様は24時間ゲームをプレイされているので、僕も24時間対応していて、表面上は特に何も感じていないつもりだったんですけど、身体には如実に出ていましたね。急に蕁麻疹や熱が出たと思ったら、急に治ったりして。あのときは心底つらかったですね~。
『アルカナブラッド』開発会社にラブコール
――琢磨さんは『アルカナブラッド』のプロデューサーをされていますが、もともと格闘ゲームの開発に携わっていらっしゃたのでしょうか?
琢磨:開発はしてないですが、20年以上ずっと格ゲーはプレイしてきました。1年365日中、364日くらいはゲームセンターにいるという生活をしていましたね。
明坂:すごい!
琢磨:実は『拡散性MA』が始まった7、8年前に、一度『アルカナブラッド』の開発会社(エクサム)にあいさつに行ってるんですよ。「御社の格ゲーを僕はすべてやりこんでいます。特に仕事の話をするわけではないんですが、お礼とあいさつがしたいです」ってラブコールみたいなメールを送ったんです。会社の問い合わせフォームに(笑)。
そうしたら、ぜひいらしてくださいと返信いただいて。その数年後に実際にその人たちと組むことになって、『アルカナブラッド』を一緒に作ったって感じですね。
だから僕が開発に口を出すときは、「これはプロデューサーではなく、イチ格ゲーマーとしての意見なので、いいと思ったら採用してください。ダメだと思ったら無視してください」って言ってから伝えていました。だから採用してもらったものもありますし、切り捨てられたものもいっぱいあります(笑)。
――格ゲーを制作することになったときは、やはり戸惑われましたか?
琢磨:いや、『拡散性MA』の運営をずっとやってきていましたし、『ミリオンアーサー』の格ゲーって意外といえば意外なんですが、これまでも実写版の『実在性MA』や、漫画の『弱酸性MA』といった広がり方はしていたので、今までと同じやり方で今度はアーケードのほうに広げていこうと。ですから戸惑いはなかったですね。
明坂:『アルカナブラッド』で珍しいなって思ったのが、『聖剣伝説3』とのコラボキャラがメインキャラとして実装されているじゃないですか。期間限定イベントとかはあっても、メインで入ることってあまりないから意外だなって。これはなぜ入れようと思ったんですか?
琢磨:『ミリオンアーサー』っていろいろな作品とコラボをしていて、“もはやなんのゲームなのかわからない”ということですらもアイデンティティだったりするじゃないですか。それは生かしたいなって思いました。
実装するキャラも、みなさんから愛されているスクウェア・エニックスの古きよきIPから持ってくると、それは他の会社ではマネできないことなので目立つかなって。
僕がスマホアプリの『聖剣伝説 RISE of MANA』の運営プロデューサーをやっていたということもあって、シリーズプロデューサーの小山田(※編注:小山田将氏)に「リースを出したいんですが」とお願いして、監修も本人にしてもらいました。
――『THE KING OF FIGHTERS XIV』ともコラボしていて、八神庵が実装されていますよね。
琢磨:もともとはSNKの小田さん(※編注:小田泰之氏)と何かおもしろいことやりましょうという話をしていて、お互いにキャラを貸し合うことになりました。最終的に押切蓮介先生に盗賊アーサーと八神庵が握手しているコラボイラストを描いていただいたので、すごくよかったなと。
『乖離性ミリオンアーサーVR』のスタートは自由研究
明坂:『乖離性ミリオンアーサーVR』はどうして作ることになったんですか?
岩野:『VR』って最初どういうスタートだったっけ……?
加島直弥さん(以下、加島):私がもともとスクウェア・エニックスに入る前、学生だったころにVRの研究をしていたんですが、『乖離性MA』で何か新しいことをしたいなと思い、自由研究のような気持ちでVR化してみました。
明坂:え、自由研究?
琢磨:いきなり最初から試作機を作ってきたんですよ。
明坂:いきなり!? すごい!
鈴木:VRって、実際実物を見てみないとピンと来ないんですよね。
加島:当時VRって、興味があるけどどういうものかよくわからないっていう方が多かったと思うんです。そこで、実際にプロトタイプを作って見せると、これはすごいってなりまして。まずは部内の人に見せて、その後役員や社長にも見せて、これはおもしろいってなったので、じゃあ開発を続けてみようかと。
ただ、いきなり事業化するのはリスクが高いので、定期的に開催していたオフラインイベント“御祭性ミリオンアーサー”のお客さんに見せてみるといいかもってなりました。
琢磨:それで一度テクニカルデモという形で、イベント会場に体験コーナーを設けたんです。
明坂:覚えてます。ちょぼ先生が大喜びしていました(笑)。
鈴木:最初は商品化ではなく、ミニゲームみたいな立ち位置だったんですよね。
加島:あと、イベントに出演されていた傭兵アーサー役の阿部敦さんにもプレイしていただきました。
琢磨:ステージから移動して別室でプレイしていただいたいて。
加島:本当はステージ上でやっていただく想定だったんですが、当日の朝にリハーサルしたら、VR機器の外部センサーが光に弱くてステージ上で照明に当たった状態だとうまく動作しなかったんですよ。
琢磨:それが当日判明しまして。
明坂:ええええ、大変……。
加島:それで急遽別室を用意してプレイしていただく環境を整えて、阿部さんにステージ裏でプレイしていただき、それを中継で流しました。綱渡りみたいな感じだったのですが、すごく盛り上がったんです。体験コーナーでのお客さんの反応もとてもよく、ビジネスとしてもいけそうだねってなりまして。製品版を開発することになりました。
――試作品を初めて見たとき、みなさんどう思われました?
鈴木:めちゃくちゃすごいなって思いましたよ。質感もそうですけど、ドラゴンの攻撃をよけちゃったりするんですよ。あの臨場感はすごかったですね。あとウアサハのモデルのクオリティがすごく高くて、あれをVRで初めて見たときは感動しました。
明坂:でも最終的にはウアサハにおさわりができなくなっちゃいましたよね……。
鈴木:僕、ウアサハのモーションキャプチャーの撮影に立ち会ったんですよ。スクウェア・エニックスにはモーションキャプチャーのスタジオがありまして、そこに一緒に行ってウアサハの動きに違和感がないかを確認するために行ったんですけど、そのときはいろいろな部位を触れたんですが、今は触れなくなっちゃいましたね。
加島:開発中はどこでもいろいろな部分を触れたんですけど、倫理的な課題もあり、健全な場所しか触れないように制限することになりました。
鈴木:アーサーのモーションも基本全部撮り下ろしましたよね。アプリにはないモーションとか追加されているんですよ。回復してくれた相手に、ありがとうという仕草を送れるモーションとか。
琢磨:やっぱり生きている感じっていうのがVRのキモですもんね。
明坂:あとかなりVR酔いも緩和されたって聞きました。
加島:僕自身がVR酔いするタイプで、自分でVRゲームを作るなら絶対に酔わないようにしようと思っていたので、なるべく酔わないような設計にするというのはかなり気を遣いました。
今の時代だからこそ『デッキメイクミリオンアーサー』がやりたい!
――11月に実装された5周年記念の大型アップデートで『乖離性MA』の舞台が3年後になりましたが、この展開はどのくらいの時期に決められたのでしょうか?
鈴木:あれは……結構急遽決まりました。
岩野さんが卒業してから決まったので、たぶん岩野さんは「こんなことするんだ~」って感じだったと思うんですが、やはり周年のタイミングで何かやりたいってなりまして、そこから生まれたアイデアです。もともとはなかったアイデアですね。ちょっとチャレンジではあったんですけどね。
琢磨:各新装型アーサーたちのデザインはかなり悩んでたけど、いいところに着地しましたよね。
鈴木:そうですね。もともと描いていただいていたイラストレーターさんたちにたくさん案を出していただいて、決めていきました。盗賊アーサーなんて、牛木義隆先生が10種類近くデザイン案を出してくださって。
明坂:ええ~、10種類も!?
鈴木:ちょっとずつ違うアイデアを、いくつも出していただいたんですよ。それで社内でアンケートを取ったりもしました。
琢磨:案配が難しいですよね。変えなきゃいけないけど、変わりすぎてもっていう。
明坂:3年っていうスパンは難しいですよね。すごく未来ってわけでもないし。
鈴木:一番気を遣ったのが盗賊アーサーでしたね。あのちんまりとした盗賊アーサーが好きだった人たちのイメージを崩さず、でもフレッシュな感じを出せないかと、髪を伸ばすか伸ばさないかとか牛木先生とかなり話し合わせていただきました。
琢磨:岩野さん的に3年後のデザインはどうでしたか?
岩野:いいんじゃないかな、って思ったよ。
明坂:軽い(笑)。
鈴木:盗賊アーサーがロングになったから歌姫アーサーはどうするって話も出まして、ボブにするのもアレだからロングヘアは残したいけど、あまり変わらないのもちょっと……って。それで結局ポニーテールになりました。
明坂:確かにボブにすると、洋服に合わなくなっちゃいそうですもんね。
鈴木:完全別キャラになるのではなく、正統進化感を出したかったんですよね。
琢磨:元のファンが嫌がらない範囲内に納めないといけませんからね。
明坂:でも4人とも3年後のキャラっていう統一感が出ていて、すごいなって思いました。
鈴木:『乖離性MA』のアーサーは、もともと『拡散性MA』のアーサーと比べて未熟っていう設定があるんですが、これまでにいろいろな危機を乗り越えてきたんだから、同じくらいの強さになってもいいんじゃないかって思って、提案したんですね。
それならベテラン感を出そうってなりまして、ひよっこな感じからちょっと慣れた感じに変化しました。
――それでは最後に、「これだけは言いたい!」ということがありましたらぜひ!
琢磨:僕は高熱と蕁麻疹の話ができたので満足です。
岩野:何かあったかな……。
明坂:『デッキメイクミリオンアーサー』とかの話はしなくて大丈夫ですか? 蘇った主人公のこととか。
琢磨:蘇りましたね~。『アルカナブラッド』にも出せましたし、『乖離性MA』でも新3Dボスとして発表されましたし。
鈴木:今回、盗賊アーサーの技のモーションを作り直したんですけど、『アルカナブラッド』の盗賊アーサーのフックショットのモーションを参考に、『乖離性MA』に逆輸入しました。あと設定も逆輸入したり。そういう横展開ができるのはいいですよね。
琢磨:個人的に『デッキメイク』のゲーム性は今でもおもしろと思っていますよ! 誰も知らないゲームですけど……おもしろかったです!
岩野:最近3Dゴリゴリのゲームが多い中、今だからこそ『デッキメイク』みたいな2Dでサクサク遊べるゲームがおもしろいかもしれないね。
琢磨:最近のゲームよりはかなり少ない予算で作ってましたからね。
明坂:逆にやりたくなったんですけど! 『デッキメイク』やりたい!
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乖離性ミリオンアーサー
- メーカー: スクウェア・エニックス
- 対応端末: iOS
- ジャンル: RPG
- 配信日: 2014年11月19日
- 価格: 基本無料/アイテム課金
乖離性ミリオンアーサー
- メーカー: スクウェア・エニックス
- 対応端末: Android
- ジャンル: RPG
- 配信日: 2014年11月19日
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