“HOLIDAY SALE”で迷ったらコレ! 年末年始に遊びたいPS4タイトルのロングレビューを全文掲載(後編)

電撃PlayStation
公開日時

 現在PlayStation Storeでは、2019年12月20日~2020年1月5日の期間限定で“HOLIDAY SALE(ホリデーセール)”が開催されています。PS4の800タイトル以上の傑作ゲームが、最大85%OFFの驚きのセール価格で購入できるこのセール。年末年始にじっくり名作ゲームを遊びたい人には絶好の購入チャンスです。

 注目のセール対象タイトルの中から、電撃PlayStation本誌のコーナー"レビューエクストラゴールド"に掲載されたオススメタイトルをピックアップ! 後編となる今回は、2019年下半期に発売された誌面のレビューをお届けします。どれを買うべきか迷っている方は、ぜひ参考にしましょう。

■年末年始はPS4でこれを遊べ! “HOLIDAY SALE”対象タイトルから厳選作品のレビューを全文掲載!(前編)

 なお前編記事では、2019年上半期に発売された誌面のレビュー・12タイトルを紹介しているので、こちらもあわせてチェックしてください!

“HOLIDAY SALE(ホリデーセール)”
対象タイトルレビュー・後編

ライアン・マークス リベンジミッション
¥5,390⇒¥2,695(50%OFF)

映画の役になりきって遊ぶと最高に楽しい!

●PS4 ●FPS ●SIE 

 VRゲームが出始めてから数年経ち、ひと昔前と比べると体験したことのある人の割合もだいぶ増えたかなと思う今日この頃。VRは実際にプレイしないと、その魅力の本質には気付けない特殊な機器ですが、そんなVR体験にふさわしいゲームがまた1つ生まれました。それが今回紹介する『ライアン・マークス リベンジミッション』! 

 ざっくり説明すると、マフィア一家の息子(軍所属)である主人公のライアンが、家を奪ったライバルマフィアにリベンジするお話です。プレイヤーはライアンの視点で数々のミッションに挑むことになるわけですが、ただ銃撃戦を楽しむにとどまらないのがスゴイところ。戦闘外の物語を進めるシーンもしっかりと描かれており、ゲームをプレイするというより、映画の登場人物としてその場に参加しているような気分になります。

 VRタイトルでは、そういったシーンで頭を動かすことで周囲を見渡せることは珍しくないですが、本作ではなんといつでもハンドサインが出せるんです。親指を立ててサムズアップしたり、人差し指と小指だけ立ててキツネみたいなサインを出したり、中指を立てるサイン(あまり電波には乗せられなさそうなアレ)を出せたりします。海外の人って、けっこう会話中に大きな身振りをするじゃないですか。せっかく細かいハンドサインを出せるんだから、自分もそれに習って、会話に合わせて手を動かして、主人公になり切って遊んでみたんですよ。最初はふざけてハンドサインを出していたんですが、だんだんマジメにシーンに合わせた動きをするのが楽しくなってきて、いかに“らしく”演出するかに熱中。そう、この時点でまさに自分はこの物語の主人公になったんです。……まぁ、セリフまでは変えられないので、やたらアメリカンなテンションで話すのは止められませんでしたが。

 ともあれ、本作にはこういった“プレイヤーを主人公にする”工夫が随所に凝らされているんです。銃のリロードや持ち替えなんかもその一例。ハンドガンをしまったり持ったりするときは、腰のホルスターに手を動かす必要があります。アサルトライフルなどの大きな武器は背中に背負うため、左右のどちらかの肩まで手を持っていきます。リロードするときは胸のポーチに手をやり、弾薬をつかんだら銃のマガジンの部分に運ばなければなりません。こういった細かいリアルさが、プレイヤーをゲームにシンクロさせていくんです。

 言葉にすると面倒に感じますが、現実の動きに即した行動なので、実際にプレイするとしっくりなじむので安心してください。左手でも銃を持てるので左利きの人でも問題なく楽しめますし、もう一方の手を添えると弾道のブレが少なくなるなど、とにかくこだわりがスゴイ! もちろん、両手に銃を持った二刀(丁?)流もできます。

 自分は海外に出た経験もなく、実銃を撃ったことはないのですが、本物の銃はそんなに簡単には命中しないと言うじゃないですか。本作はまさにそんな感じで、サイトをのぞき込みつつしっかり狙わないと、近距離でも意外とはずれることがあるのが“それっぽい”んですよ。

 そんなこともあり、最初は無数に現れる敵の対処で精一杯。戦場経験のある兵隊とは思えないような挙動不審な動きで戦うさまは、兵隊はもとよりマフィア一家の人間としても似合わず、威厳も何もありません(苦笑)。しかし動きに慣れてくると、いかに落ち着いて敵を処理するかといった部分に思考を割く余裕が出てきます。爆発物に巻き込んで敵を一掃したり、臨機応変にポジションを変えながら応戦できると、勝手に自分の中でベテラン気分になり、ますます楽しくなってきますね。

 なお、本作には、リロード用のマガジンを宙に放り投げ、空中でリロードを完了させるというムダに(ホメ言葉)スタイリッシュなアクションが存在。これは「最高にクールなムーブをキメながら敵を撃ち抜いてくれよな!」という開発者からのメッセージに違いありません! “中指を立てたあとに敵を●す”という条件のトロフィーがあることからも、一目瞭然です。

 本作は、とにかく自分が映画の主人公だと錯覚させる力が強いので、ハンドサインやスタイリッシュムーブなども「やってやろうじゃねぇか!」という気分になるんですよね。ぜひ役者になったつもりで体を大きく使ってプレイしてみてください。(hororo)

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ
(ファイナルファンタジーXIV コンプリートパック 通常版)
¥6,380⇒¥4,466(30%OFF)

ずっと遊んできた『FFXIV』が、“人生で最も泣いたRPG”になった日

●PS4/PC ●オンラインRPG ●スクウェア・エニックス
※スターターパック¥2,420⇒¥1,694(30%OFF)
※コンプリートパック コレクターズエディション¥12,760⇒¥8,932(30%OFF)

 全世界累計アカウント数1,600万(※日本・北米・欧州・中国・韓国の5リージョンの累計アカウント数/フリートライアル版のアカウントを含む/2019年5月現在)を突破した、日本を代表するオンラインRPG『ファイナルファンタジー (以下、FFXIV)』。その拡張パッケージ第3弾『漆黒のヴィランズ』が、2019年7月2日に発売されました(アーリーアクセスは2019年6月28日から)。

 このレビューはそんな本作の魅力を、主にまだプレイしていない方にお伝えすべく書いていくものですが……いやはや困った。どう書くべきか。この『漆黒のヴィランズ』、物語も、それを支える世界設定も、キャラクターも、バックグラウンドも楽曲も画の演出もバトルも、本当にこれまでで最高で……胸が詰まって、正直“素晴らしかった”としか言いようがないのです。ただその反面、この感動を未プレイの方に伝えるのは難しいなあと、しみじみ思うわけで。ネタバレするわけにもいかないししたくないし、それで魅力が伝わるわけでもない。総体としてすべてが素晴らしいだけに、1つを取り上げて言葉にすることで逆にこの尊さが損なわれてしまうような感覚もあって……じつに悩ましいわけです。

 しかし、ゲームを構成する要素がここまで一体となって感動につながる作品は、過去に体験した全ゲームを鑑みても稀なもの。ドハマリした身としてはぜひ、もっと多くの人に体験してほしいと思うのですよ。RPGや“物語”が好きなら、なおのこと。

 『漆黒のヴィランズ』のストーリーをきっちり見た方は、すでにシナリオや演出のエモさ、カッコよさの多重爆撃で涙腺が破壊され、美しいものに触れた感動と尊さで胸が詰まりまくって感情がぐっしゃぐしゃになる体験をしたのではないかと思います。かくいう私もその1人。メインストーリーを終えたのがつい数日前(執筆は2019年7月初旬)で、中盤~終盤は感極まってほぼ何を見ても聴いても泣くような状態にたたき落とされました。ラストダンジョンからエンディングまではもう涙と鼻水で顔面めしゃめしゃ。エンドロールのあとに控えたエクストラダンジョンでまた涙腺が刺激され……と、怒涛のようなプレイ体験をすることになりました。

 一例をあげると、『FFXIV』の夜間の楽曲の多くは穏やかな音色なのですが、今回、“光に浸食された世界に闇夜を取り戻す”という大筋があるなかで物語を進めていき、いざ1区画に夜の闇を取り戻したときのその夜空の画や楽曲が、本当に“世界の本来の姿を取り戻した”やすらぎと救いに満ちていて胸を打たれたり……。私がこういった感動を抱けたのはもちろん物語とゲーム体験が素晴らしかったからですが、それと同時に、“これまで『FFXIV』を遊んできたからこそ”というのもあると思います。

 なんせ『漆黒のヴィランズ』では、これまでの6年(旧時代から合わせると約9年)の展開のなかに散りばめられてきたキャラクターたちの想いだとか、世界にまつわる謎や、それを語る人物の魅力だとか、プレイヤーがやってきたことの結果が、セリフや楽曲や画の美しさに形を変えて一斉に涙腺をぶっ壊しにくるわけですよ。耐えられるわけがない。

 RPGが好きな人であれば、“好きな作品は?”と聞かれたときに思い浮かぶラインナップがあるんじゃないかと思います。私の場合、それは『ゼノギアス』だったり『FF』『DQ』シリーズだったり、『サガ』や『聖剣伝説』『タクティクスオウガ』『デュープリズム』『ワイルドアームズ(無印)』『NieR』だったり(あげ始めるとキリがない)するわけですが……『漆黒のヴィランズ』5.0のメインストーリーは“人生で最も泣いたRPG”として記憶されることになりました。

 過去の“泣いたRPG”はだいたいが多感な10代に体験したものなわけで、想い出補正もあって、この先どんなにいい作品が世に出ようと、それらを上回って泣くような感動に出会うことはもうないと、なかば諦観していたんです(もちろん、各作品それぞれのよさがあるので比べるのはナンセンスですし、泣けるシナリオでない=おもしろくないというのは絶対に違うと思います)。それがまさかこの歳で、しかも仕事関係なく遊び続けている『FFXIV』が塗り替えるなんて! 『漆黒のヴィランズ』は、それほどの威力でした。これまでもよかった。けれど今回は、本当に最高だった。

 少なくとも『FFXIV』を始めれば、いずれ必ずこの『漆黒のヴィランズ』の物語にぶち当たるのは間違いありません。正直、そこまでの道のりは短いとは言えませんが……焦る必要はないんです。すぐに最前線に追いつかなければ楽しめないなんてことは、決してない。

 いちおうシナリオをすっ飛ばして次に進む“冒険録”と呼ばれる課金アイテムはありますが……初見で使っちゃだめですよ。『FFXIV』は新生編、蒼天編、紅蓮編それぞれで一般的なRPG1本ぶん以上のボリュームがありますし、各個で魅力的なゲーム体験ができるのもたしか。あなたがそれらを体験した時間こそが、あなたの“リアルタイム”ですので、ぜひそれを大事にしてほしい。そうして物語を味わったぶんだけ、『漆黒のヴィランズ』と出会ったときの感動がさらに大きくなるはずですから。これまでのすべてが感動につながるこの体験を、私はぜひ、多くの人に味わってほしいと思います。(まぐ)

PixARK(ピックスアーク)
¥6,050⇒¥4,235(30%OFF)

サバイバルゲームに触れたことのない人にこそやってほしい

●PS4 ●アクション ●スパイク・チュンソフト

 本作は、2017年10月に発売されたサバイバルアクション『ARK: Survival Evolved』(以下、『ARK』)を、ブロックタイプのゲームにしたものです。よりライトでとっつきやすい見た目になった『ARK』というだけならば、単なる購買層の拡大、というようにしか捉えられなかったでしょう。では、本当にそうなのかといえば、それは否。ただのガワを変えただけの“焼き増し”ではありません。ということで、今回は『ARK』との違いに触れつつ、本作の魅力について語っていきたいと思います。

 プレイして感じたのは、『PixARK』のサバイバルゲームとしてのとっつきやすさ。『ARK』が、川に入ればピラニアに食われるわ、ちょっと森に入ればユタラプトルに襲われるわと、序盤から殺しにかかってきたことに比べ、『PixARK』ではそのあたりがかなり配慮されています。そもそも最初に降り立つのが“ノービス草原”と呼ばれる、敵対的な生物はいないエリアですし。加えて、生命維持に必要な食料や水、気温なども全体的に控えめになっていると感じます。本家『ARK』の、あの殺伐としたサバイバル感を期待すると、少し肩透かしを食った感じを受けるでしょう。

 もともと、ここ数年で人気を獲得してきたサバイバルゲームというジャンル自体、危機管理におもしろさを見出すマゾっ気体質を持つプレイヤーをターゲットにしていたため、この部分を緩和するサバイバルゲームは意外と少ないのです。この部分が易しくなったおかげで、自分がやりたいことに意識を集中させることができ、素材集めなどが楽しくなりました。

 例えば、『ARK』だったら「いつ襲われるかわからないから、必要数だけ取ったら即撤収だ!」となっていたところが、本作では「作りたいものたくさんあるし、持てるだけ採取して帰ろ~♪」となるわけです。装備中の防具や、アイテムのショートカットに入れたアイテムは、死亡しても落とさないという仕様も効いています。水や食料も、よっぽど忘れていなければ深刻な事態に陥ることは少ないですし。ということもあって、本作はサバイバルゲーム初心者には、非常に向いた作品であると感じました。

 そんな(サバイバルゲームとしては)“優しい世界”な本作ですが、本家同様にゲーム開始前にワールド設定をいじることができます。つまり、これまで通りの過酷な世界で遊びたい人は、それを再現できるようにもなっているということ。もし本作をプレイしていて「なんか緊張感がないんだよな~」と思っている方は、ぜひ自分の望むバランスになるよう調整したうえでプレイしてみてはいかがでしょうか。

 過去の地球に存在していた太古の動物や恐竜たちが登場し、追いつ追われつしながら生活していくのが『ARK』の大きな魅力でした。本作にも、そういった恐竜や古代生物は登場します。むしろ、本家ではいなかったファンタジー生物まで追加されているほど。ペガサスやガーゴイル、ゴーストドラゴン、ケンタウロスなど、多種多様な幻想生物が、恐竜とともに存在する世界は、ほかではなかなか見つからないのではないでしょうか。こういった幻想生物たちも、そのほとんどがテイム(飼いならし)できたり、騎乗できたりします。これらは別に『PixARK』からの新要素というわけではないものの、やはり本作の魅力を語るうえで大きなウェイトを占めていることは否定できません。

 本作には“スキャンモード”という機能があり、スキャンモードで生き物を調べると、その生き物のテイム可否や、テイム時に必要な食料アイテムといった情報を確認することができます。一度スキャンしてしまえば、以降はメニューのハンドブックからいつでも情報を閲覧できるため、「あの生き物何食べるんだっけ?」ということもなくなります。ハンドブックでは大まかな強さや、ドロップする可能性のあるアイテムなどの情報も同時に確認できるので、『ARK』のようにすべてプレイヤーが覚える必要はなく、気楽にプレイできるようになっているのも、大きな変更点ですね。

 最も大きいのは、やはり世界観の変化でしょう。世界がブロックで構成されていることで、すべてが大きく変わりました。固定だったフィールドはランダム生成となり、新しいワールドを作るたびに新鮮なプレイが可能です。

 また、ピッケルで地面を掘ることもできるようになりました。建材や採掘したブロックを積み重ねれば、想像力の許す限り建築も可能です。建築に興味がなくても、ブロックを積んで囲いを作り、そこに獲物をおびき寄せて安全に倒す、といった工夫もできます。

 一方で、サバイバルに興味はないけど、建築には興味があるという人向けに、敵に襲われず、素材も好きなだけ呼び出せる“クリエイターモード”なんてものもあります。そういう意味で言えば、やはり本作は数多のサバイバルゲームのなかにおいて“優しい”といえるのでしょう。しかし、それは決して“味気ない”と同義ではないのです。なるべく多くの人がおいしく味わえるような大衆料理的存在。そんな、気楽に楽しめるサバイバルゲームという点こそが、『PixARK』の最大の魅力なのかもしれません。(hororo)

AI:ソムニウム ファイル
¥7,480⇒¥5,236(30%OFF)

アドベンチャーゲームの魅力を見つめ直し、立ち返った先にできた作品

●PS4 ●アドベンチャー ●スパイク・チュンソフト

 自分は数あるゲームのジャンルのなかでも、物語に大きくスポットを当てるアドベンチャーゲームというジャンルが好きです。

 本作のディレクションを手がける打越鋼太郎氏は、ゲスト出演した電撃PS Liveのなかで「アドベンチャーゲームはシナリオありきで物語を作れる“シナリオドリブン”が魅力である」と語り、同じくゲストの竜騎士07氏もアニメやコミックよりもインタラクティブ性があり、自分自身で体験できることがおもしろいのではないかと語りました。

 事実、スパイク・チュンソフトは『弟切草』や『かまいたちの夜』からはじまり、『街』、『ダンガンロンパ』シリーズ、『極限脱出』シリーズなどプレイヤーを引き込むストーリーと、そのストーリーを楽しめる工夫をしたシステムのゲームをたくさん発表してきました。そのスパイク・チュンソフトの最新作ということで本作に期待していたアドベンチャーゲームファンも多いでしょう。

 一方、固定ファンの多いアドベンチャーゲームですが、国内の売り上げを見ると厳しい現状が見えてきます。アクションのように派手なシーンがなかったり、小説のように長い文章を読む必要があるので、ファン以外が手を出しづらいジャンルになっているのだと思います。そんななか、本作はどのようなアプローチでゲーマーにアピールしているのかというと、原点回帰を行ってアドベンチャーゲームの魅力を掘り下げるというものになっています。

 たとえば文章はビジュアルノベルが流行する前のコマンド式アドベンチャーのように短いセンテンスの文が続くようになっているので、文章の量に圧倒されることはありません。その一方でキャラクターに振ることができる話題や調べられる背景はたくさん用意されており、やり込みがいがあります。

 事件と関係ない場所を調べたときは主人公や相棒であるアイボゥのギャグっぽいやり取りを聞いたりできるほか、『かまいたちの夜』などの過去の小ネタが仕込まれたりしているので、いろいろな場所を探るのが楽しいです。調べてもテキストが変わらない部分は色が変わってたり、場所移動できるようになったときは文字が点滅して教えてくれるため、ストレスなくゲームを進行させることができるのもうれしいです。

 また、本作のおもしろいポイントは“ルート分岐”です。本作には“ソムニウムパート”という他人の夢に入り込んで謎を解いていくモードがありますが、謎の解き方が複数用意されており、その解き方によってその後の物語が変わっていきます。作品によっては物語が分岐しても大枠の内容は変わらないことも多いですが、本作ではあるルートで重要だったキャラクターが、ほかのルートではあっさり死んでしまうことがあります。また、キャラクターの意外な一面を知ることもできたりするので、プレイしたルートの順番によってそれぞれのキャラクターに対する印象も変わってくると思います。

 そして、やはりいちばんの注目はストーリー。本作は警察官の伊達とAIを搭載した義眼のアイボゥが、左眼をくり抜かれるという凄惨な事件の謎を追っていくというもの。次々に事件が起きてメインのキャラクターでも容赦なく犠牲になったりするので目が離せません。

 また、キャラクターの過去だったり、意外なつながりが次々に明かされるような仕組みになっているのも特徴です。謎に包まれたまま物語が進んでいくというよりは「もしかして、こういうことなのだろうか?」と予想しながら物語を進めることができるぐらいの情報の明かし方になっているため、自分自身でも事件を推理しながら物語を楽しめるような仕組みになっています。ストーリーを進めていくと手に入れた情報で重要参考人を問い詰める“取り調べ”もあるので、ここで事件の内容について整理することが可能です。

 ソムニウムパートは6分間のあいだに謎を解かなければいけないのですが、プレイしていると毎回ギリギリになるので、いいバランスで作られていると思います。夢のなかの出来事ということで、現実では考えられない驚きのギミックがたくさんありますが、謎自体は連動した仕掛けを解いたりするものがほとんどなので理不尽に感じることはありません。

 また、ソムニウムパートでは普段のカエルのような姿から女の子の姿になったアイボゥを操作することになりますが、選んだ選択肢によって多彩な反応を見せてくれるので、彼女のリアクションを見るのも楽しい!

 凄惨な事件の謎を追うストーリーのため、ダークな雰囲気のある本作ですが、女子高生のネットアイドル・左岸イリスやネットアイドルオタクの青年・真津下応太といったキャラクターとのやり取りは軽快でおもしろいです。コメディとシリアスのバランスがよく、メリハリのある展開が魅力。登場人物のなかではとくにアイボゥがいいキャラクターで、伊達との軽快な会話の応酬はクセになります(笑)。

 物語がメインとなるアドベンチャーゲームはネタバレで魅力を語るのが難しいジャンルです。しかし、本作をプレイすれば物語への没入感、ゲームならではのインタラクティブ性など、確実にその魅力がわかるので、ぜひ手にとってもらいたいですね。(カワチ)

プロ野球スピリッツ2019
¥9,680⇒¥4,980(48%OFF)

ドリンク片手に遊べる手軽さでプレイヤーが監督になれる!

●PS4/PS Vita ●スポーツ ●KONAMI
※デジタルデラックス¥12,980⇒¥5,980(53%OFF)
※PS Vita版¥8,250⇒¥3,980(51%OFF)
※PS Vita版 デジタルデラックス¥11,550⇒¥4,980(56%OFF)

 9月も末ということで、日本プロ野球のペナントレースもいよいよ大詰め。この記事を書いている時点では(2019年)9月上旬ですが、すでにセ・パどちらかのリーグから優勝チームが決まっているかもしれません。

 ひいきのチームが、現在Aクラスでいれば優勝争いから目が離せないでしょう。また、Bクラスであればクライマックスシリーズへの挑戦権を獲得するために奮闘するチームの応援をしたり、来季に向けての戦力強化を球場に足を運んで確認してみたりと、シーズン終盤までワクワクしながら試合を楽しむことができます。プロ野球の9月末って、こんな感じですよね。そんな、否が応にもプロ野球熱が高まるこの時期に楽しみたいタイトルこそ『プロ野球スピリッツ2019』なのです!

 簡単に概要をお伝えすると、本作は前作『プロ野球スピリッツ2015』から約4年ぶりのシリーズ最新作となっています。このシリーズの大きな魅力としては、どこまでもリアルな野球を追求した点で、選手の表情はもちろん球場の看板や天然芝の揺らぎにいたるまで、その空気感はあたかも実際の球場で観戦しているかのよう。意外にもシリーズ初のPS4タイトルということで、前作からのグラフィックの進化は目を見張るほどです。

 対戦やスター選手を目指す従来のモードに加えて、高校球児となって選手育成を行う初のモード“甲子園スピリッツ”も搭載。本作に収録されたモードに触れることで、高校野球→プロ入り→スター選手として活躍するという、まさに野球人生を体験できる作りになっています。

 さて、野球のことならなんでも楽しめる本作の中でも私がとくにオススメしたいのが、オンラインを介して対戦が楽しめる“ドリームリーグ”。対戦という言葉を聞くと“難しそう”と思う人もいるかもしれませんが、このモードではプレイヤーが監督となって采配を振るうのみ。複雑な野球としてのアクションはいっさいなく、戦況に合わせて適切な采配を行う頭脳があれば、それだけで楽しめてしまうのです。好きな選手を集めてドリームチームを編成して試合を行うという、システム的には前作の“名将オンライン”に近いモードですが、本作ではほかのプレイヤーが作ったチームとCOM戦も可能となっています。

 このモードは、何よりも“手軽さ”が大きなウリ。基本的には、攻撃時&守備時ともにいくつかある指示のなかから1つ選ぶだけなので、片手でもプレイできるんです。相手の投球コースや打撃のポイントを読み切る“VS”という指示でも、マーカーを移動させて決定する操作のみ。“右手にコントローラ、左手にはドリンク”といった、くつろぎのスタイルで楽しむことが可能。もちろん、ドリンクではなく枝豆やスナック菓子でもOK。プレイヤーは監督というポジションですが、“プロ野球観戦を楽しむ観客”といった立ち位置で試合を進めていけるのです。COM戦と対人戦で、指示を送る際の待機時間は異なります(当然、対人戦での待機時間のほうが短い)が、ほとんどの場面で片手でも十分に操作できます。操作のハードルが低く、野球に興味がある人であれば、すぐにハマれると思います。

 もう1つの“手軽さ”は、プレイ時間です。このモードでは“ランクマッチ COM戦”と“大会 オンライン対戦”の2つの対戦形式を選ぶことができ、前者は常時プレイ可能で、後者は木~日曜日の期間限定で開催されています。このうちランクマッチは9イニング制のルールで時間がかかりそうな印象を受けますが、試合は自動的に進行し、指示を出すタイミングは要所のみ。“チャンスで得点せよ”、“失点のピンチを切り抜けろ!”など、試合中にミッション形式のように発生し、指示を出すことによって試合が展開していく流れです。

 試合時間は5~10分程度と早く、仮に負けたとしても「次の試合に進もう!」と、すぐに気持ちを切り替えて次戦へ臨めます。試合のテンポは早いし、選手の経験値は増えるしでいいことずくめです。ちなみにCOM戦とはいえ、ほかのプレイヤーが作ったチームなので味気ない対戦にはならず、対戦相手の好みの選手やチーム傾向がわかってニヤリとできたり……。

 そして、全国の監督と対戦する大会は期間限定ではありますが、やはり燃えますね! 互いの指示の相性によって結果が左右されるため駆け引きが熱く、COM戦とはひと味違う緊張感があります。正直、こちらが本番と言っていいでしょう。

 また、大会は対戦形式が毎週変更され、先日開催された“タイブレーク杯”では、5イニング制で指示可能回数が少ないというルールが課されており、10~15分程度で終わることも。もちろんイニング数が7や9と多い対戦形式もあり、その際はプレイ時間が20分程度となります。ですから大会は手短にプレイできる“手軽さ”よりも、“時間を忘れて試合を楽しむ”ことに特化している印象です。月~水曜日はランクマッチで選手を育成し、木曜から週末にかけては大会で、全国の監督たちと腕を磨き合ってみてはいかがでしょうか?

 発売から約2カ月が経過した現在(2019年9月)でも、20,000人超がプレイしているこのモード。今からスタートしても乗り遅れることなく、楽しめますよ!(BEN)

Black Desert(黒い砂漠)
¥3,259⇒¥1,629(50%OFF)

冒険そっちのけで寄り道してもいいんじゃない?

●PS4 ●オンラインRPG ●Pearl Abyss JP
※デラックスエディション¥5,398⇒¥2,699(50%OFF)
※アルティメットエディション¥10,694⇒¥5,347(50%OFF)

 『Black Desert(黒い砂漠)』という、ビジュアルも遊びごたえも半端ない韓国産MMORPGがPCで人気だと、MMORPG好きとしては前から注目していましたが、自前のPCスペックでは手を出せなかったんです。ですが、ついにPS4で遊べるということで、オープンβからプレイ開始。もちろんMMORPGなので現時点すべてをやり込んで……という目線で語るのはなかなか難しいですが、それなりにプレイを楽しんでいる目線での感想です。

 まずはPCからの移植&海外産タイトルでありながら、コントローラ操作に対応したUIに再設計され、さらにはローカライズも日本語(ボイスも)なのは好印象ですね。さらにはPC版とはサーバーが別で、まっさらな状態でスタートできているのも、間口が広がっていいんじゃないでしょうか。もちろん、PS4版はクラスも上位コンテンツも現状では未開放なものが多いです。それでも、最初から圧倒的な量のクエストがあり、戦闘だけでない生活系コンテンツも多々あり、物足りなさを感じさせないくらいの遊びが、PS4版の『黒い砂漠』では体験できています。

 ちなみに、自分は1つの街に着いたらそこに住居を借りて拠点を移し、依頼をこなしたらまた次の街に進むスタイルでプレイしています。ようやく3つ目の大きな街に移動するかな、というくらいなのですが、次から次へと依頼が出てくるし、メインストーリーがなかなか進みません。でも、この徐々に行動範囲が広がって、世界の形が見えていく感覚が、古きよきMMORPGのにおいを感じさせてくれて、すごく好きです(笑)。

 ただね、1点だけ難点が。依頼には状況説明などのくだりを語るテキストがあるのですが、これが短編小説くらい長いんですよ。読み込めばすごくおもしろいのですが、文字が小さいこともあり、ロートルには長文がちょっと辛い(苦笑)。

 そんな目をこすりながらも『黒い砂漠』にドップリハマっている自分ですが、ここまで惹きつけられている理由を語るとすれば、とにかく広大な世界が、シームレスでつながっていることでしょうか。いわゆるエリア切り替えではないので、街道を移動していればやがて街が見えてきて、人ごみの喧騒が目の前に広がり、街から離れれば魔物が徘徊する危険な地域が広がる……。個人的にこのゲーム設計は、ある意味理想のMMORPGです。

 しかも、風景はどこを切り取っても美しく、水の反射や日が傾くところなど、ため息が出るほど美しい景色が広がっているんですよ。よくこの規模のゲームをPS4のスペックに落とし込んでいるなと、素直に脱帽ですね。そして、そんな魅力的な世界には人間をはじめ、ドワーフ、ゴブリン、オーク、ジャイアントなど、純ファンタジーを代表するような種族が多数登場します。『指輪物語』のような世界にあこがれを抱いている自分としては、もうたまりません。

 そして、語らずにはいられないのが音楽です。これがまた聴き心地のいい曲が多いんですよ。どうしても長時間プレイが続くジャンルだけに、主張しすぎないけど流れないと物足りないという、絶妙なバランス感覚がすごく素晴らしいです。あ、もちろん、魔物との戦闘になると緊迫した曲に切り替わるなど、緩急付いた楽曲が用意されています。

 なお、『黒い砂漠』の戦闘はノンターゲットのリアルタイムアクションとなっています。習得したスキルをボタンや方向キーの組み合わせで繰り出すのですが、ぶっちゃけ魔物と戦うだけならば、R2ボタンに設定されているスキル中心でもなんとかなるので、アクションが苦手という方はご安心を。逆に対人戦のコンテンツに挑む場合は、そこのやりごたえは担保されているのではないでしょうか。

 と、ここまではだいぶ好意的な目線での感想でしたが、長い時間プレイすると気になるのがUIや、システム周りでの説明不足です。自分も何度悩んだことか。というわけで、PS4版をプレイするうえで覚えておきたい知識を5つご紹介します。これから始めようと考えている方は、ご参考くださいませ。(編集O)

【知識①】マスクされている依頼をオープンに!
 じつはスタート時はメインと戦闘以外の依頼がマスクされています。OPTIONSのメニューからキャラクター情報を選び、依頼設定にチェックを入れましょう。序盤の依頼はある意味チュートリアルも兼ねているので、最初からこなすことがオススメです。

【知識②】OPTIONSの設定から国家を日本語に!
 本作は日本専用サーバーではありません。ですが、OPTIONSの設定から国家→日本語を選べば、日本語以外にフィルターをかけることができます。

【知識③】カメラの距離は引くことができる!
 右スティックを2秒ほど押し込んで、手前にスティックを倒すとカメラの距離が調整できます。

【知識④】銃はメインとサブ武器をはずして装備
 銃を装備する手順はまずメインとサブ武器をはずし、道具で銃を使うと装備できます。

【知識⑤】ショートカット設定はRingメニューで!
 OPTIONSのメニューにあるRingメニューを開くと、ショートカットが設定可能です。1つだけセットすれば方向キーの入力だけで出せます。

ファイヤープロレスリング ワールド
¥6,380⇒¥1,914(70%OFF)

まだまだ広がりを見せる『ファイプロ』の世界

●PS4 ●アクション ●スパイク・チュンソフト
※デジタルデラックスエディション¥10,780⇒¥3,234(70%OFF)
※シーズンパス¥5,581⇒¥1,674(70%OFF)

 私が2018年から2019年にかけて、最も長く遊んだタイトルが、この『ファイヤープロレスリング ワールド』。Steam版から始めているので、もう2年以上遊んでいる計算になりますが、まだまだ遊び足りません!

 自分はレスラーエディットが大好きなので、そのロジック調整だけで何年でも遊ぶことができます。しかし本作では、そのエディット以外にも楽しい要素がいっぱいあるうえに、DLCでその“楽しい”がどんどん増えているのです! そこで今回は、そのDLCを中心に、今の『ファイプロ』のおもしろさについて語っていこうと思います。

●DLC第1弾『ファイヤープロモーター』
 このモードは、自分で作った団体を運営していくシミュレーションモード。毎月1回大会を開いてお金を稼ぎ、人気面と資産面でプロレス業界のトップを目指すのが目的です。

 このモードの最大の魅力は“脳内でドラマが作りやすい”ことでしょう。プロレスファンは試合そのものを楽しむうえに、その試合がなぜ組まれたのか、という過程のドラマも楽しむ生物。このモードならば、毎月の試合結果から脳内でドラマを作り出し、次の月のマッチメイクが楽しめるのです。

 ほかにも、たまたま年末にトーナメントを開催したら来場者数が増えたのを機に、毎年12月にはドームでトーナメントを開催する、といったオーナー視点でのプレイもかなり楽しいです。

●DLC第2弾『ファイティングロード:新日本プロレス・激動の2017年 Jr.ヘビー級編』
 タイトルどおり、ストーリーモードの“ファイティングロード”に、ジュニアヘビー級の物語が追加されました。こちらもヘビー級編に負けず劣らずの大ボリュームで、新日本プロレスの練習生がジュニアでのチャンピオンを目指すドラマを体験できます。

 そしてこのDLCのもう1つの目玉が、新日本プロレスのジュニア戦士が実名で大量に追加されるというもの! 来年に引退することが決まっている獣神サンダー・ライガー選手を始め、ROPPONGI 3Kの2人や、最近のジュニア戦線の台風の目とも言える、ウィル・オスプレイ選手なども参戦しています。

●DLC第3弾『新日本プロレス追加選手パック2018』
 このDLCでは、2018年の新日本プロレスマットを盛り上げた、ジェイ・ホワイト選手や鷹木信悟選手といったレスラーたちが追加されました。

 こうして、あとから新日本プロレスマットに上がった選手と、彼らの使う技が追加されるのは本当にありがたいです。昔は期待の若手を作ろうにも、外見パーツも技も足りなくて困ったものでしたから。

●DLC第4弾『ワールドワンダーリングスターダムコラボレーション』
 このDLCでは、ついに今ノリにノッてる女子プロレス団体“スターダム”の選手が実名で登場したのです! 以前、松本朋幸総監督がインタビューで「タイトルに“ワールド”とあるからには、もっと世界を広げて、実名選手も増やしていきたい」と語っていました。その言葉どおり、新日本プロレス以外からも実名選手が『ファイプロ』マットに上がる時代がきたのです。

 エディット大好き人間としては、実名選手のパーツやボイスが追加されることで、エディットの幅が広がるのでうれしいかぎりです。実在選手の使える技を変えて、若手時代を本人のボイスで作るといった楽しみ方もしています。


 ここまでで4つのDLCが配信されている本作ですが、次のDLCも発表されています。その内容はなんと『スーパーファイヤープロレスリングSPECIAL』のストーリーモード、“チャンピオンロード”の主人公の息子を主役とした、完全続編の『須田剛一氏による“チャンピオンロード2(仮)”』です! シナリオは“チャンピオンロード”を手掛けた須田剛一氏の手によるものとのこと。当時を知るファンならばきっとハマることでしょう。

 このように、まだまだ進化が止まらない本作ですが、PS4ならではの楽しみ方もあるのです。それが、iOS端末によるリモートプレイ! とくに『ファイヤープロモーター』は相性がいいです。マッチメイクだけして試合をCOM同士にやらせれば、まるでテレビでプロレスの大会を見ているかのような気分が味わえますよ! 移動中のWi-fi環境がある人はぜひ試してみてください!(うま)

ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~
¥8,580⇒¥6,864(20%OFF)

「ばいばいアトリエ」。そんな言葉が切なくなるひと夏のステキな想い出……

●PS4 ●RPG ●コーエーテクモゲームス
※Digital Deluxe¥9,955⇒7,964(20%OFF)

 発売前はキャラクターデザインを手掛けたトリダモノさんが描くライザが素晴らしすぎて(おもに太もも)、どうしてもその話題が先行気味だった『アトリエ』シリーズ最新作『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』。たしかにあのデザインは反則ですよね(笑)。ゲームってキャラクターを後ろから眺めて動かす時間が長いだけに、この眼福がずっと続くのは、本当に素晴らしい!

 でも、個人的にはキャラクターイラスト以上にセンセーショナルだったのが、等身大の光と影を感じさせるグラフィックに舵を切ったこと。そして『アトリエ』シリーズがこれまで積み上げてきた調合とバトルの鉄板要素に、思い切って手を加えたことです。

 グラフィックについては、遠くまで広がる採取地や、高低差を生かしたマップデザインがなされており、「この先にどんな景色が待っているんだろう」と、冒険心をくすぐってくれるようになりました。動画だけでなく静止画でも“映える”風景が広がるのは、なかなか感動しますよ。蝉の鳴き声をはじめ、環境音にもこだわっているので、ぜひ耳を傾けながら歩き回ってほしいですね。

 ちなみに、このビジュアルを存分に楽しめる“フォトモード”が、2019年10月10日の無料アップデートで追加されています。普段はライザだけしか画面に映りませんが、仲間になった全員で、さまざまな角度で自在に写真を撮るためのシチュエーションが作れるので、“映えスポット”を求めて踏破済みのエリアにまた足を運ぶことになりそうです。冒険が終わったくらいのタイミングでの配信はガストさん、心憎いです!(笑)

 で、かれこれ22年『アトリエ』を追いかけてきた自分が一番衝撃を受けたのが、“やり直し”が自由にできるようになった調合。今回の調合はどの材料を入れるべきかがチャート風に画面に表示され、そこに適切な材料を投入可能数だけ放り込むだけと、言葉にするとシンプルです。もちろん、調合のだいご味である特性を発現させる場合は、投入回数の制限内に特性枠のマテリアル環をレベルアップさせ、適切な材料を入れる必要がありますが、選択時はほぼ該当する材料しか選べませんし、あまり迷うことはありません。

 と、ここまでは基本を語りましたが、衝撃を受けた部分が“アイテムリビルド”と呼ばれるシステム。これを使うと一度完成したアイテムを、ジェムとアイテムレベルが許す限り手を加えることができるんです。例えば「もうちょっと品質を上げたかったな」と思ったら、対象のアイテムをリビルドすれば、自由にあとから調整ができるんですね。

 コアファンの自分にとって『アトリエ』の調合のだいご味は、調合開始前に悩みに悩み抜いて、その結果いいものを完成させるところにあると思っていました。貴重なアイテムで“一発勝負”! みたいな。だから最初はずいぶんぬるいなと思ったのも事実ですが、実際に活用してみると「ありなんじゃないか」と考えを一新。理由としては、バトルに持ち込める調合アイテムの数が少なく、より厳選することが重要だからです。

 しかも、初めて『アトリエ』シリーズに触れるであろう人も、調合で強力なアイテムを作る楽しさに触れられますよね。敷居は下がれど、調合するという土台は変わりありませんし、これでファンが増えるといいなと思っています。実際、発売後も新規ユーザーが増えているので、ライト層に間口を広げながらコア層も満足できる調合を、22年を経ての新たなタイトルで提示したチャレンジには拍手を送りたいですね。

 ちなみに、品質999を目指してみるというような、コアファンがいつも楽しみにしているやり込みもできます。全レシピ制覇もなかなかのボリュームがあるし、満足感でいえばこれまでの『アトリエ』と変わりません。

 そしてもう1つの大きな変化が、キャラクターたちが入り乱れて戦うバトル。本作はバトルメンバーのだれか1人を操作して、それ以外のキャラクターは自動で攻撃を行うのですが、1人1人が攻撃するのではなく、たたみかけるように攻撃を行い、とにかくスピーディに展開します。採取地の探索時はけっこうな数のバトルをこなしますが、1戦闘にかかる時間が短くなったので、テンポが上がっていい相乗効果かなと。個人的には今後はこれをベースに進化させてほしいと願うほど、かなり好印象でした。

 欲を言えば、もう少しアイテムをバンバン使いたいという点でしょうか(アイテムの使用にはコアチャージが必要で、基本の最大値は10と制限あり)。最大値が増える、もしくはバトル終了後に回復してもよかったのかな?(笑) また補助用のアイテムをセットしておく余裕があまりなかったので、これだけ豊富にアイテムがあるゲームだけにもったいないなと感じました(セットは最大で4つまで)。

 そうそう、コラムを締める前にネタバレにならない程度に物語についても語ろうかなと。公式のキャッチコピーは“ばいばいアトリエ。この冒険を、ずっと忘れない。”ですが、最後までプレイすると、ライザのその想いにきっと共感できると思います。ゲームをクリアしたときに達成感よりも哀愁を強く感じた、とても心に残る1本になりました。(編集O)

イースⅨ -Monstrum NOX-
¥7,741⇒5,805(25%OFF)

“動かしているだけで楽しい”イースアクションは健在!

●PS4 ●アクションRPG ●日本ファルコム

 いつかのインタビューで、日本ファルコムの近藤社長がおっしゃっていた、とても印象的な言葉があります。「『イース』シリーズは、動かしているだけで楽しいアクションから作る」というものです。

 もちろん世界観の設定などは並行して検討するのでしょうけれど、何よりもまずは“手触りのいいアクション”を目指して作り、そこをクリアしたものに物語を乗せれば、間違いなくおもしろいゲームになる、という趣旨のお話でした。それを踏まえての、本作の感想をお届けしたいと思います。

 本作は《監獄都市》バルドゥークという、1つの巨大な都市を舞台にしたアクションRPGです。まず特筆すべき点は、街区の行き来にロードを挟まない“オープンワールド”的な作りになっているところでしょう。とある事情によって街から外に出られず、最初は行ける街区も2つだけですが、物語を進めると1つずつ探索できる街区が広がっていきます。

 そう、本作は“街”そのものが冒険するべきフィールドであり、攻略の対象なのです。街中には人々が歩いており、物語の進行に合わせたメッセージをしゃべります。店も第Ⅱ部、第Ⅲ部と進んでいくと、新商品を仕入れたりするので気が抜けません。

 加えて収集要素の“蒼い花びら”と“落書き”が街のそこかしこに散らばっていますし、かなり探索しがいのある街だと言えるでしょう。そんなゲームで、いちいちロードが挟まるのはたいへんですよね? 本作は“オープンワールド”的な作りにすることで、街中の冒険を快適にしてくれているのです。

 そして、主人公たちは怪人としての“異能アクション”を使うことができます。たとえば《白猫》の《ヘヴンズラン》は、垂直な壁を駆け上がることができ、行動範囲がググッと広がります。《赤の王》の《クリムゾンライン》は特定のポイントにワープする異能で、屋根を跳び回りながらワープで高速移動するのは素晴らしく気持ちいい体験でした。探し物に役立つ《人形》の《ザ・サードアイ》にも、たいへんお世話になっております。

 なお、それらの異能アクションは対象の怪人が仲間になると使用可能になるのですが、操作キャラが誰でも使えるように、異能を“共有”してくれたのも英断だったと思います。基本的に移動は足の速い《白猫》で動きますが、彼女のままで《鷹》の異能《ハンターグライド》を発動させて遠くへ飛んでいけるのは爽快のひと言! こうした細かな仕様がユーザーフレンドリーで、まさに“動かしているだけで楽しい”につながるのだと感じました。

 さて、このように探索だけでも十分楽しい本作ですが、もちろんRPGとしての物語も充実しています。怪人としての異能を駆使して街中に現れる《邪霊(ラルヴァ)》を退治し、陰謀渦巻く大監獄の秘密に迫っていきます。その過程では、謎が少しずつ明らかになるミステリー要素も含んでいると感じました。

 主人公である《赤の王》はプレイヤー目線からすると間違いなくアドルですが、そうなるとこの人物はいったい……? といった疑問を抱きながらプレイすることに。クリアしてすべての真相を知った身としては、途中で想像を裏切られて「あぁ、そうだったのか!」と思ったり、逆に「ここはあの時の伏線から推理したとおり」とニヤリとしたりと、とても楽しめました。

 また、過去作をプレイしているとわかる、ファンサービスも多く用意されている印象でした。自分は『イースⅧ』で初めてシリーズに触れ、『セルセタの樹海:改』を経て、今回の『イースⅨ』というプレイ歴です。冒頭で「これまで何度も漂流してきたのはワザとか」と尋問官に聞かれたり、最強武器を作った際に「この武器もいつか僕の手から……」とすでに愛剣との別れを覚悟してたりと、クスッとできる小ネタが多かったです。

 また、やり込み要素の“蒼い花びら”を集めてマーガレットという街の女性に渡すと、何やらアドルのことを知っているような意味深な口調で語りかけてきます。じつはこれも物語の伏線の1つで、クリアするとなんだったのかわかります。恐らく、過去作をやっていればピンと来るのではないでしょうか。個人的にはこれもうれしい要素でしたね。

 総評すると、操作性◎、アクション◎、物語◎、ファンサービス◎と、言うことなしの名作です。前作と別ベクトルのゲーム性なので単純に比較はできませんが、物語の感動度合いでは『イースⅧ』に軍配が上がるかもしれません(個人の感想です)。ただ、探索は本作のほうが楽しかったですね。

 自分も古くからのシリーズファンではありませんが、“動かしているだけで楽しい”という制作コンセプトで作られ続ける『イース』シリーズは安心して楽しめます。もし「過去作を知らないからちょっと……」とためらっている人がいるなら、物語は作品ごとに完結していますし、初めて遊ぶ人でも全然問題ないと断言できるので、ぜひ手に取ってみてください。アクションが苦手な人向けに難易度選択はもちろん、オプションで“足場追加”も用意されており、穴にも落ちにくくなる徹底サポートっぷりですよ!(Zenon)

モンスターハンターワールド:アイスボーン
(マスターエディション)
¥7,119⇒¥5,695(20%OFF)

もうクラッチクローがないハンターライフには戻れない

●PS4 ●アクション ●カプコン
※マスターエディション デジタルデラックス¥8,138⇒¥6,510(20%OFF)

 『モンハン』と言えば、丸ごと買い切りでDLCで配信されるのは無料の追加クエスト。それが少なくとも自分にとっては常識でした。そんな今までの当たり前を打ち破り、有料の超大型拡張コンテンツとして配信されたのが『モンスターハンターワールド:アイスボーン(以下、MHW:IB)』。

 正直発売前は期待7割、不安3割ってところでしたね。なんせ、自分はこれまでの『モンハン』で、無料DLCで満足していたんですから。いつもより手ごわいモンスター、とんでもサイズのモンスター、そのクエストでしか手に入らない素材を使った新しい装備。うん、間違いなく楽しかったし満足していた。それが有料の超大型拡張コンテンツとなると、自分のなかの“無料の満足”を超えてくれないと困るわけですよ。

 「きっと超えてくるだろう、でも有料である点も踏まえると満足できるのか?」。まあ、ぶっちゃけ杞憂でしたけどね。マスターランクでの歯ごたえのある狩りは楽しいし、装備のバリエーションが増えたことによるコーディネートも楽しい。『モンスターハンター:ワールド(以下、MHW)』の時点でランダム性が強かった装飾品集めは、レベル4の装飾品のランダム性が極端に強くなったことで、「あの装飾品が欲しい」から「この装飾品をどう使おう」という考えに変わって、目当ての装飾品が出ないストレスもなくなっています。

 個人的には、セリエナがシステム的には狭い空間に施設を集約させて利便性を図った新しい拠点でありながら「アステラと比べると急ごしらえだから」という、物語上で狭いことへの理由付けがされていることもひそかに気に入っています。

 と、そんな『MHW:IB』ですが、一番大きな変化を感じているのはやっぱりクラッチクローですかね。自分はハンマーとランスをメインに使っているのですが、ハンマーの場合は“溜め攻撃を当ててもまだモンスターのスキはある。でももう一度溜め攻撃は間に合わない”というときにクラッチクローが便利。ワイヤーを巻き取る勢いを乗せて、そのまま殴りかかるというちょっと力まかせ感のある動きもハンマーらしくていいですね。

 ランスの場合は、構えるまでに時間がかかる代わりにリターンが大きいカウンターとして使えるのが文句なしに強い。しかも、ランスのクラッチクロー構えから、モンスターにしがみつくまでの一連の動きがカッコイイんですよ! 一度モンスターから離れつつ、ワイヤーを一気に巻き取るようにしてしがみつく。男の子はみんなワイヤーアクションが好きですから。

 メインに使っている武器種によってクラッチクローへの感想は異なるようですが、少なくともハンマーとランスに関しては、できなかったことができるようになったり、今まで一定の対策(主にカウンター突き)をしていたところに違うアプローチをできるようになった点で、クラッチクローが大きな魅力になっています。

 また、クラッチクロー中のスリンガー弾の“全弾発射”もモンスターの見方を大きく変えてくれましたね。というのは、モンスターの怒り状態ってこれまでは“なんか速くて受けるダメージが大きいからきっと怒り状態”くらいにしか見ていなかったんですよ。『MHW』で攻撃するたびにモンスターが怒り状態かを確認していたなんて人はそういないでしょう。

 ですが、全弾発射を怒り状態のモンスターに決めてしまい、モンスターをぶっ飛ばしできないというのは怒り状態だからこその明確な失敗。せっかく全弾発射をするならモンスターをぶっ飛ばしたい。だから、モンスターが怒り状態かを確認する。そんな風に観察することに今まで以上に大きな意味が生まれたのもクラッチクローの功績でしょう。

 もちろん、クラッチクローからの“武器攻撃”で肉質が軟化するというのも忘れてはいけないポイント。今までの『モンハン』での肉質が硬い部位に対する回答は、そもそも狙わない、タル爆弾を使う、属性値の高い武器でなんとかするくらいだったと思います。過去作でグラビモス亜種と対峙したハンターの武器から一斉にアメリカザリガニさんの「キジンカ!」の声がするという経験をした人もいるんじゃないでしょうか?

 そういった硬い肉質へのアプローチに“柔らかくする”という新しいものが加わり、しかも上であげたような既存のアプローチをしてもいいと、狩り方のバリエーションが増したのもクラッチクローがあってのものです。今気にしているのは、いつか発売されるだろう新しい『モンハン』で、もしクラッチクローがなかったら自分は満足できるのか、ということですね(笑)。

 ちなみに『MHW』で公式から“最も狩られていない”と発表され、『MHW:IB』でも多くの人があまり狩っていないだろう溶岩竜“ヴォルガノス”。肉質の変化という視点で見ると、かなり狩りがおもしろいモンスターです。体表の溶岩が固まると、斬れ味ゲージが白でも弾かれるので、クラッチクローで肉質を軟化させつつ立ち回る。それに加えてスリンガー松明弾などの火でも肉質を軟化させられるという、柔らかくする手段が複数用意されている秀逸なモンスターなんですよ。狩ってておもしろいのに……。みんなで狩ろう、ヴォルガノス!(オピオン)

CODE VEIN(コードヴェイン)
¥9,020⇒¥7,150(20%OFF)

ゲーム初心者に“高難度”を提案した意欲作

●PS4 ●アクションRPG ●バンダイナムコエンターテインメント
※デラックスエディション¥11,990⇒10,120(15%OFF)

 強大な敵、複雑難解なダンジョン……いわゆる高難度なゲームは、バランス調整がしっかりできていれば、“やりがい”として評価される、というのが近年のトレンドといえるでしょう。今回ご紹介する『CODE VEIN』は“共闘”をテーマに長年ゲームを作り続けてきたGOD EATERチームが世に贈る、高難度アクションRPGです。とはいえ、このジャンルには既に偉大な先人『DARK SOULS(ダークソウル)』シリーズがあり、どうシステムが差別化されているのか、発表当時から編集部で話題になっていました。

 しかし「どうも本作のポイントはそこだけではないらしい」と感じ始めたのは、発売目前となり話題が盛り上がってきた頃。これまで、この手の高難度アクションRPGに興味がなかったスタッフたちも「なんかカッコいいですよね」と興味を持ち出しました。ゲームユーザーに対する新ジャンルの提示って、なかなかできることではありません。これが本作の最大の特徴なのかも、と思ったんです。

 それが顕著に表れているのは、キャラクターカスタマイズ要素でしょう。いわゆるジャパニメーションのようなキャラクターを、高い自由度、高い水準の3Dモデリングで制作できる本作。現在も公式にアクセサリパーツが追加され、第2回キャラクターカスタマイズコンテストも好評のうちに終了するなど、熱量の高いユーザーがまだまだ自分の理想のキャラクターを制作しています。

 個人的に「なるほど」と思ったのはキャラクターカスタマイズもさることながら、パラメータなどのビルドのバリエーションと自由度の高さです。バリエーションは、ビルドを変えたときのプレイフィールがどれくらい異なるか。自由度は、ビルドがどれくらい変えやすいか。本作はレベルと装備を強化しただけではビルドは完成せず、ブラッドコード(いわゆるジョブ)、錬血(いわゆるスキル)を組み合わせることでビルドが完成します。

 ブラッドコードにはレベルの概念がなく、錬血の習得難度は低くなっており、適切なランクの装備がダンジョンに落ちていることも多いです。そしてどれも多彩な種類があるので、気になったとき、すぐにいろいろな組み合わせを試すことができるんです。

 とくにおもしろいと感じたのは“回避性能”というパラメータの調整。ステップとローリングでは、まったくプレイフィールが異なります。ステップで敵を翻弄しながら高火力の錬血でダメージを与えるか、敵の攻撃をガードでしのぎつつ重量武器で敵を殴り倒すか、といった選択を、ほぼ稼ぎなしに気軽に試せるのは、素直にうれしい点です。

 そのためかボス戦では、どちらかというとテクニックが求められるというよりは、ボスの特徴に合わせて事前のセットアップを的確に行うことのほうが重要だと感じました(もちろんどのセットアップでもエンディングまで見られるように作られています)。ある意味、RPG的な作りとなっており、この手のジャンルに初挑戦する方にとっても、親切な作りだなと感じました。

 反面、この手のゲームをやり慣れている人間としては、探索やアクション部分の作り込みはちょっと物足りない印象も。共闘してくれるNPCがめちゃくちゃ強いので、ちょっと引き気味に戦っているとなんとなく倒せた、というようなこともありました。ベテラン勢が“高難度なアクション”の要素を楽しむのなら、レベルを上げすぎない、NPCを連れて行かない、などの縛りを自分で工夫する必要はあるかと。

 とはいえこれは、ある程度は高難度アクションRPGを本作で初めて遊ぶ方に配慮した部分であるとも思います。この手のゲームの定番とも言える、2周目は敵が強くなっている、という要素も、アップデートで任意に変更できるようになりましたしね。

 本作はいろいろな意味で、高難度アクションRPGというジャンルに新たな視点をもたらしたと思います。おそらく、本作で高難度アクションRPGに初めて触れる方も多かったのではないでしょうか。その意味で、本作は非常に意義のある作品だと感じるのです。

 そのため気になるのが、本作の今後。DLCなどの展開も控えているので、注目したいと思います。個人的には、システム的にユニークな点も多いので、より小気味よいアクションを楽しめる“続編”があれば、また遊びたいと思うのですが!(あーや)

DEATH STRANDING(デス・ストランディング)
¥7,590⇒¥5,313(30%OFF)

『DS(デス・ストランディング)』から伸ばされた“紐”は我々の心に絡まり続ける

●PS4 ●アクション ●SIE
※デジタルデラックスエディション¥9,790⇒¥6,853(30%OFF)

 今から約30年前……ファミコンを中心としてコンピュータゲームが一般層に広く浸透しはじめた時代。当時は、華々しく登場した“インタラクティブに体験できるエンターテイメント”に多くの人が夢中になり、多彩な魅力を持ったゲームが世に出るのと同時に、ゲーム関連以外のクリエイターもインタビューで、評論で、そして実際のゲーム制作で、コンピュータゲームにさまざまなアプローチを試みていた(糸井重里氏が『MOTHER』を制作したのも、ちょうど30年前のことだ)。

 その頃、単なる一般のゲームプレイヤーだった自分は“そこから始まる何か”にものすごくワクワクしたのを覚えている。小説やマンガ、映画ではできない体験。個性的な作り手が見せてくれる“リアルでは味わえない体験”。その先にいったい何が生まれるのか……? 

 それから時が経ち、今から25年前にPlayStationが登場。ゲームは3D表現を中心とした新たな時代に入り、PS2、PS3、PS4とハードが進化するにつれ、ゲームは30年前には想像もつかなかった映像表現を得るに至った。一方では基本無料でもハイクオリティなゲームが楽しめるようになり、さらにスマホのような日常に密着したメディアでゲームが楽しめるようになり、ゲームの裾野は飛躍的に広がったといえる。それは30年前に思い描いた“何か”をはるかに超えた進化と言っていいだろう。

 でもその反面、ゲーム制作の費用は大きく膨らみ、1つの作品に膨大なスタッフがかかわるようになり、かつて少人数制作のゲームに見られた“作り手の強烈な個性によって生まれる世界”はインディ以外では稀少になっていった。もちろんそれは悪いことだけではない。できるだけ多くのプレイヤーが楽しめるように作られたゴージャスな世界。ゲームをスタートしてすぐに理解できるわかりやすさ。それらは手軽に楽しめるエンターテイメントとして重要なことだ。

 でもそんなゲームの一部に、もっと“重い”ものがあってもいいのではないか。ゲーム世界の“ルール”自体に強烈な個性を持つものがあってもいいのではないか。そんなことを考えていたところに登場したのが『DEATH STRANDING』である。

 本作は簡単に言ってしまえば、主人公・サムとなり“北米大陸をカイラル通信で繋ぐ”ことを大目的、“拠点から拠点へ荷物を配送する”ことを小目的とした作品だ。だがこのゲームの序盤に“ゲームでよくあるセオリー通りのカタルシス”はない。ディストピアとなった北米大陸は美しくも荒涼で、ストーリーは謎に満ち、見えない脅威であるBTを撃退する手段は乏しく、配送任務は苦労の連続だ。

 だが、CHAPTER3を越えた頃から、このゲームとプレイヤーが“繋がり”はじめる。サムの歩みとプレイヤーの操作するコントローラがなじんでくる。従来のゲームでは“歩く”という行為はあくまで目的へ移動するための過程であり、それ自体で達成感を得ることはほぼない。だが『DEATH STRANDING』ではサムが荒野を1歩1歩踏みしめる感覚、慎重にルートを探りながら崖を登る感覚、ちょっとしたきっかけで滑り落ちそうになる雪山を慎重に下る感覚、それらが忘れ去られる過程ではなく、“体験”としてプレイヤーに刻みこまれる。

 そして他のプレイヤーが建てた建造物や、看板の存在が、孤独なゲーム体験にとどまらない繋がり=広がりを持たせる。これは従来のゲームにはなかった感覚だ(あえて挙げるなら『風ノ旅ビト』のプレイ感覚が若干近いだろうか)。両足を踏ん張り、崖を乗り越えて新たな風景に感動し、時にはBTに恐怖し、時にはBBに癒やされながら、プレイヤーは長い歩みの果てにサムとシンクロしていく。おそらく動画配信などでプレイを観ただけでは、この感覚はほぼ伝わらないのではないかと思う。

 このゲーム体験はいったい何なのだろうか。少なくてもアクションゲームで剣を振ってモンスターを倒したり、FPSで銃を撃って敵を一掃する感覚とはまったく異なるものだ。さらに、終盤に向けて加速するストーリーも、その独自の体験に拍車をかける。そこで描かれるのは生と死、人類の存在そのものに思いをはせる寓話だ。

 このような作品はおそらく小島監督という一人のクリエイターが、シナリオから配役、ゲームシステムに至るまですべてに目を通し、監督しなければ生まれなかった作品であり、30年前には想像し得なかった、そして30年後の現在でも他に存在し得ないゲームである。だが、最大公約数的なエンターテイメントが多く存在する一方で、このようなゲームが登場することを、かつての自分は期待していた。想像していた“ゲームの未来”の欠けていたピースが見つかったような気がした。

 おそらく“ゲームを想像の範囲内のエンターテイメントとして楽しみたい”という人にとっては、本作は不満も多いだろう。だが、本作はゲームでしか味わえない体験として、間違いなくプレイヤーの心に何らかの“しこり”を残す。本作らしい言い方をすれば、本作から伸ばされた紐(ひも)が、心に絡まり続ける。そのような経験を少しでもしたいと思うなら、ぜひこの希有なゲームをその手で体験してみてほしい。(おしょう)

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