趙雲の七変化に曹操が幻惑!? “長坂の戦い”にまつわる伝承2撰【三国志 英傑群像出張版#27-1】
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三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。
英傑群像出張版では、わたしが中国各地で集めた三国志武将の民間伝承の古書から、日本で知られていないものを厳選して文章をまとめて紹介しています。
さて今月は物語的にも重要なシーンに関する荊州のお話を選んでみました。
①曹操軍に追われた劉備軍が趙雲と張飛の大活躍でなんとか逃げ切る“長坂の戦い”
②関羽の最後の戦い“麦城の戦い”
この2つの場所、実は現在の当陽市というほぼ同じ場所にあります。
この地域に伝わる伝承からピックアップしてみました。2週に渡りお送りします。まずは「趙雲」の逸話からご紹介しましょう。
【長坂の戦い】その2 趙雲マントの七変化
過去書いたコラムで趙雲が登場した“長坂の戦い”のお話があります。(趙雲が“長坂の戦い”で助かったのは徐庶と仙人のおかげ!?#14-1)未読の方はぜひそちらも御覧ください。
さて、今回は少し異なる亜種とでもいうようなお話があるので、こちらもご紹介していきます。
この話では仙人ではなく、漆の木そのもの(樹霊とでもいうべきでしょうか?)が話すという点が異なります。
趙雲は戦死した仲間の兵士に捧げるべく白い布をまといマントとして阿斗を探しにまわった。
曹操は徐庶に「あの白いマントの男は誰だ?」と尋ねた。徐庶は「趙雲です。彼の白いマントは三十六変化するそうです。白龍のように、白馬のように、白い雲のように。」と答えた。
その後、趙雲は何度も血みどろの戦いの末、白いマントが血で真っ赤に染めた。
曹操はまた徐庶に「あの赤いマントの男は誰だ?」と尋ねた。徐庶は今度は「趙雲です! 火に包まれ、赤い光を放ちます。」と答えた。
その会話の最中、趙雲の馬は後ろ足が深い大きな泥穴に落ちた。曹操の兵士たちは泥穴の周りに群がり、剣や槍を趙雲に向けた。
しかし突然、泥の穴から赤い光が出て兵士たちは驚いて後退った。趙雲の馬は飛び上がり再び逃げだした。
「どうなっているんだ?」と曹操は叫んだ。すると漆の樹の樹霊がいう「赤い光が体を覆い、龍は飛ぶと言われている」と。
これを聞いた徐庶も「龍から生まれた趙雲は、泥水を得ると龍の体を復活させ、空を飛んだのです」と相槌を打った。
その後、日が沈みかけると、趙雲の赤いマントは血しぶきが乾き紫色に染まった。
曹操はさらに徐庶に尋ねた。「あの紫のマントの男は誰だ?」と。また徐庶は「趙雲ではありませんか!」と答える。曹操は驚いて言った「なんと本当に偉大な戦士だ!」と。
曹操は不安のあまり、漆の樹霊に頭を下げて助言を求めた。漆の樹は曹操に「昔から言われるように、三軍を集めるのは簡単だが、将軍を見つけるのは難しい。」と言った。
これを聞いた徐庶も同意し「英雄・趙雲を手に入れることができれば、天下は閣下のものになると保証できます。」と伝えた。曹操はそれを聞き決然と「伝令だ! 趙雲を生かし殺すな!」と言った。
結果、趙雲は曹操陣営の多数の将を倒し劉備の子・阿斗を救い包囲網から抜け出すことができた。
趙雲の三つの丘陵での知恵
長坂の地に立って西に二里ほど離れたところに、長い龍が泳いでいるような丘があり、“龍の背”と呼ばれる三つの隆起した丘がある。緑の松と栗の木で覆われている。
当時、趙雲は長板で戦うため鼓打台と兵舎をこの三つの丘に設けていた。
趙雲は劉備らを救うために騎馬隊を率いて坂を上り下りし、曹軍と激突し七回出撃し七回撃退した。戦いが夜に進むにつれ、彼の指揮下にある兵士の数は徐々に少なくなり騎兵十数騎だけが残った。
包囲されて全滅する危険もあった。趙雲は冷静沈着に、巧妙な計画を思いついた。
ヤギを木に逆さまに吊るし、前足二本が動くことで自然と太鼓に当たって音がなるようにした。兵士たちに提灯やたいまつを持たせ、栗の森の前後を走り回りまわらせた。
沮江の対岸にある錦屏山で戦いの様子を見ていた曹操は、遠くから提灯とたいまつが斜面の上下に流れており太鼓が一晩中打ち鳴らされているのを、劉備が大量の兵士を送ってきたと考えた。
そこであえて軽率な行動を取らなかった。これは曹操軍を大いに混乱させ、劉備軍の戦意を強化維持した。
それ以来、地元の人々はこの三つの丘陵を【三国包(さんごくほう)】と呼んでいる。
いかがだったでしょうか?
最初のお話は、趙雲のマントの七変化の秘密が楽しかったですね。過去ご紹介した話とほぼ酷似しているという点でも面白いです。伝わる過程で変化したのかもしれません。
しかし曹操と徐庶はお約束どおり同じセリフを言ってくれて漫才師のようでした。
このまま戦い続けていれば徐庶のいったとおり三十六色にマントが変化したかもしれません。三十六色の色鉛筆があるくらいですから色としてはありえますが趙雲の体力が持たないかも。
そもそもなぜ徐庶がここにいるのか? 三国志演義では、趙雲の活躍を見た曹操が名前を聞いて答えたのは曹洪です。
ただ長坂の戦いでは描かれませんが、このあとの“赤壁の戦い”には曹操軍の陣営で徐庶は登場していますし、龐統との逸話があるのでここにいてもおかしくはないですよね。
また歴史書・正史三国志でも、徐庶はこの長坂の戦い前後で母が捕まり曹操軍に降伏したとあり、やはりいても問題ないわけです。
とはいえ降伏したばかりの人間が、いきなり曹操の参謀をしているなんてことは普通に考えたらやはりあり得ないのかもしれません。どちらが正しいのか、思いにふけるもの楽しいです。
次は後半のお話。趙雲が部下を指揮して戦ったという地元の伝承はリアルですね。
三国志演義にも正史にもない話。やぎを利用した偽兵の計はさすが名将といわれるだけあります。英傑はピンチの時にこそ機転を利かせ活躍するものですね。
詳細は書かれていませんでしたが、この話のあとに阿斗を救出するお話に続いていくのかもしれませんね。
この地の他の民間伝承では趙雲が石段を登って曹操軍の様子を探った【望儿坡(ぼうじんは)】という場所など趙雲や劉備軍を偲ぶ場所が点在します。
さて、次週は関羽のお話です。よろしければご覧ください!
KOBE鉄人三国志ギャラリー【春の三国志会】開催のお知らせ
3月30日(土)11時~17時、三国志講座やイベントなどいろいろ行います。
今年で11回目となる春版の“ミニ三国志祭”です。
第11回「春の三国志会」イベント予定
時間:11時~17時
場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー内外
※当日、先着順 各回定員になり次第締切。当夜祭は事前予約が必要
★体験ブース
特設「関帝廟」登場!※願いを書こう用紙設置
三国志プラモデル制作※要材料費
三国志的中国将棋 ※無料 13時~
殷代甲骨ト占 占い師:須藤聡爾先生 ※有料
関羽コスプレ撮影ポイント(子供用)設置 ※無料
関羽占い ※有料
三国志アナログゲーム ※有料
横山三国志<関羽ビンゴ>大会 15時~
※1000円以上購入者にカード配布。ハズレなし
★販売ブース
オリジナル武将飾り(当日限定)
孔明の秘策袋(春&秋限定)
関羽グッズ
★三国志テスト
横山光輝三国志マニアック関羽テスト ※無料
100問テスト2024版正史演義8種 新登場 ※有料
★映像上映(当日限定)※随時上映
俳優鎌倉太郎氏三国志入門紙芝居動画(新作)「関羽千里行」上映
神戸電子専門学校 三国志テーマの漫画舞台「太陽の黙示録」上映
★講演・講座
13時 講談 「泣いて馬謖を斬る」 菊花亭いっしん氏
13時半 朗読(新作)「聞けや雷」顔良物語 樹リューリ氏
14時 兵法講座 曹操編纂孫子兵法で読解く危機管理
「日本の危機予兆考」 菅澤博之氏
★展示
関羽民間伝承パネル展
※コラムで未紹介の伝承も紹介!
そろばんの町小野市とコラボ
関羽発明「そろばん展示」
★当夜祭
孔明発明の肉まんなどを食べながら三国志交流会
・三国志推し新聞作り
・三国志お面づくり
・三国志ゲーム
17時半~20時頃 2000円 要予約
三国志ボードゲーム“三国志ドラフト会議”販売中
“三国志ドラフト会議”は、長時間にならず、多めの人数で遊べて、難しすぎない三国志というコンセプトで作成した三国志ボードゲームです。
簡単にルール説明すると君主(劉備、曹操、孫権など)となり、人材登用してそのメンバーでバトルを行って勝ち抜いた人が勝利のゲーム。プレイの模様をyoutubeでもアップしておりますので、参考にしてくださいね。
ご購入はこちらの英傑群像通販サイトにて!
岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!
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