『夢現Re：After』主演声優インタビュー連載。第2回は“ばな子”役の大坪由佳さん

　工画堂スタジオから4月23日に発売されるPS4/PS Vita/Nintendo Switch/PC/Steam『夢現Re：After』。本作に出演する声優へのインタビュー連載をお届けします。

　『夢現Re：After』は、ゲーム制作会社アドベンチャー『夢現Re：Master』の追加コンテンツ集。特定の2人が紡ぐ、“その先のアフターストーリー”がたっぷり用意されています。

　インタビューでは、演じた役や特徴、物語についてお聞きしています。なお、前作『夢現Re：Master』のネタバレが一部含まれるため、ご注意ください。

ばな子を演じた大坪由佳さんへのインタビュー

――前作のインタビューで「ばな子ルートが欲しい」とお話されていましたが、収録を終えていかがでしたか？

　軽く口走るものではないですね（笑）。でも1周回って、いや、5周くらい回ってすごくうれしかったです。

　台本を読んでいる時、ほのかさんのルートだと思っていたら知らない間にばな子ルートになっていて、「あれ？　いつから始まっていたの？」と驚きました。でも狙っていないのに自然にくっついていたのが、逆にリアルな感じがしました。

――実際にルートが追加されると思っていましたか？

　あいちゃんが「ばな子さんがいい！」って言ったら皆が驚いて、それに対してばな子が「ばぅ？」と言っているくらいの軽い感じを想像していたんです。ちゃんとしたエンディングがわからないまま、終わる……そしたら最後の最後まで描かれたので、すごく遠くまで行ってしまったような感覚を覚えました。

――前作を遊ばれたユーザーから、どのような意見が届きましたか。

　「ばな子は本当に「ばう！」しか言わないんだ」という意見はいただきました。そのうえで、ルートによって話の雰囲気が違うので、全部のルートを見ている人が多かったですね。

――ばな子さんを演じるにあたって、前作と変わったところは？

　基本的には変わりませんが、ばな子が人間の言葉がわかっているような前提で、あいちゃんが話をしてくるシーンが前作以上にありました。「なんとかって言われたような気がします」と台本にあったら、そのような気持ちでばな子を演じたので、あいちゃんとばな子が種族を越えて本当に会話している、通じ合っているような距離感は縮まっていると思います。

――本作でも「ばう！」というセリフしかないとのことですが、その中でも難しかったのはどの「ばう！」ですか？

　「大丈夫だよ」って言っているような「ばう！」と、「私のことを気遣ってくれているな」っていう「ばう！」です（笑）。

――うまくいった、自信のある「ばう！」は？

　「おめでとう」の気持ちを込めた「ばう！」ですね。合わせ台詞で皆が「おめでとう！」と言うのに続いてばな子が「ばう――――ぅ！」っていうのがあったんです。おめでたい雰囲気をばな子も感じ取って、皆と一緒にお祝いしているような気持ちで言いました。

――「ばう！」しかしゃべらないキャラを演じることは、なかなかないと思うのですが、改めてばな子を演じていかがでしたか？

　この作品は「ばう！」「ばう！」言っているのが楽しくて、むしろすがすがしく演じられる作品なので、「ばう！」を突き詰めていくのみでした。

　今回は兼ね役でみさきをやらせてもらったので、人語はそちらでたくさんしゃべりました。みさきの収録では「こんなにスラスラと日本語をしゃべっていていいのかしら？」とむしろ不安になりました（笑）。みさきとばな子がしゃべっているシーンもあるので、そこは見どころですね。

――大坪さん同士の掛け合いになっているんですね。

　そうなんです。みさきがワンワン言って、ばな子が「ばぅばぅ」と返すシーンもあるんです。両方のキャラを自分がやっているので、楽しいシーンです。

――本作を経てあいちゃんについて、見え方が変わったところはありましたか？

　あいちゃん自身が大きく変わることはないのですが、これまではあいちゃんが誰かと幸せになったり、あいちゃん自身の幸せを考えていました。そこにばな子ルートが加わったことによって“俺のあい”感はちょっと強まりましたよね。他人事ではなくなるわけです。

　逆に、他のルートでは違う女とイチャイチャしているので、ジェラシーを感じているかもしれません（笑）。

――百合に定評のある大坪さんですが、ばな子を除いたら、どの2人がお好きですか？

　今回であれば、ほのかさんとあいちゃんのルートが好きです。大人のお姉さんが、年下の女の子に余裕ぶりたいのにうまくいかない。あいちゃんはほのかさんに対して、「遠い存在なのかな？」と小さいことで悩んでいる。それがカワイらしいですよね。

　物理的に距離が離れるのではなく、お互いリスペクトし合っているからすぐくっつくはず。だからばな子が背中を押すシーンは「早くくっついちまえよ！」と思いながら演じました。そしたら、ばな子に来たから驚きもありましたね（笑）。

――今後、鳴き声だけで動物を演じられる方に、先達者からアドバイスをお願いします。

　セリフがないけど「……」や「（こちらを悲しそうに見ている）」というところは、「ヘッヘッヘッ」という息を入れておくのがいいと思います。鳴き声を入れるのではなく、ただ息が入るのが犬っぽいんですよ。

　ばな子に関してはずっと舌が出ているので、唾液が多い感じを意識しました。

　あと、演じるにあたって犬の動画を見ましたね。セントバーナード犬は大型で、低い鳴き声ばかりだったんですが、カワイらしい見た目でメスということで、高く声を作りました。そのうえで、ノドをグルグル鳴らすところや、たまに低い声を出すところで大型犬らしさを出すように演じました。

――『夢現』シリーズの魅力はどこだと思われますか？

　男性が出てこない、“百合の花園”という世界観がいいと思いました。ばな子のエンドルートがあるというところでも限界を決めずに作られている作品。種族を含め、百合の境界線を引かずにやっている、新たな百合の可能性に挑戦している、スタッフの皆さんの熱意が出ているところだと思います。