【おすすめDLゲーム】『グノーシア』は人狼ゲーム×ループ物をデジタルに落とし込んだ傑作
- 文
- まさん
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ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回はPS Vita/Nintendo Switch用アドベンチャー『グノーシア』をお届けします。
『グノーシア』は、インディーゲーム『メゾン・ド・魔王』で話題を呼んだ独立系ゲーム開発集団・プチデポットが制作し、口コミで大ヒットしているSF系人狼ゲームとループ物が融合したアドベンチャー。プレイヤーは、最大14名の乗員たちと、人類の敵である“グノーシア”を見つけるために議論(人狼ゲーム)を行います。
ファミ通・電撃ゲームアワード2019の“ベストインディー”を受賞し、名実ともに名作といえる『グノーシア』。電撃PlayStationや電撃オンラインで何度も紹介してきましたが、これから初めて遊ぶ人たちに向けて、その魅力をもう一度お伝えしていきたいと思います。
なお、PS Vita版とSwitch版は基本的にシナリオやゲーム性などの基本的な要素は一緒です。ただし、Switch版にはバックログの追加やバランスの変更など、新たな要素が用意されています。
『グノーシア』企画記事
『人狼ゲーム』をまったく知らなくても大丈夫!
インディーゲームファンの間でメチャクチャ話題になったあの『グノーシア』が、ついにNintendo Switchで発売! ということで、もう1回プッシュしにきたライターのまさんです。このゲームですが、本当に4人で作ったとは思えないくらいの異常な作り込みが素晴らしいのですよ。実際に作り始めてから完成まで4年以上かかっているのも納得できる作品です。
なにより素晴らしいのは、このゲームは“人狼ゲーム”をまったく知らない人でも遊べること。ちなみに、人狼ゲームとはアメリカのゲームメーカー・Looney Labs.が発売したカードゲーム『汝は人狼なりや?』に端を発する、議論を中心としたパーティーゲームのことです。日本では『人狼』や『人狼ゲーム』とも呼ばれていますね。
同じルールを下敷きにしたゲームはたくさんありますし、デジタルゲームとして再現しようとしたものも過去にあるのですが、うまく人狼ゲームの仕組みを再現できたものは本作が初ではないでしょうか。議論を重ねてウソつきを見抜く、というアナログ的なゲームをデジタルで再現するのはなかなか難しいようです。しかし、本作はそれを見事やってのけました。それだけでなく、インディーゲームとしてもズバ抜けて完成度が高いです。
ゲーム中にある解説書でもシステムに関して詳しく説明していますし、チュートリアルが親切なので初めての人でも安心。『人狼ゲーム』が苦手な人でも、本作には成長要素が存在しています。キャラクターを成長させることで直感的にウソを見抜くことができたり、強いコマンド(発言)を使えるようになったりと、誰でもクリアできるようになっているので、「人狼ゲームだから……」という苦手意識をなくして遊んでほしい作品です。
ループ構造と人狼ゲームはバツグンの相性!
物語の舞台は、どこか遠い未来の宇宙。人類を消してしまう謎の存在“グノーシア”から逃れるために、宇宙船へ避難してきた15人の乗員(プレイヤー含む)を中心に壮大な物語が描かれていきます。ストアなどの解説では人狼ゲームの要素が推されているので、AIと人狼をするだけのゲームだと思われそうかもしれませんが、実はまったく違います。本作の大枠は、宇宙船を舞台にしたSFの“ループ物”アドベンチャー。人狼ゲーム(以下、議論)のシステムはあくまでもRPGにおけるバトルのようなもので、メインはプレイヤー自身が巻き込まれている時間のループ現象の謎を解くことです。
議論に勝っても負けても時間がループして、新たな配役や参加人数で議論が再スタート。自分を含めた15人の乗員たちと議論を繰り返して条件を満たしながら、最終的にはループから脱出することが大きな目的となります。
何度も議論を繰り返すことになるのですが、このループ物という設定との関係が非常に巧み。配役も参加人数も自由に設定できるので遊ぶたびに展開が変わるのはもちろん、次々と新しいイベントが発生して飽きません。最初は議論が目当てでプレイすると思うのですが、気がつくとループ物としての物語に惹きこまれると思います。
新しいイベントを見ることでキャラクターの“特記事項(プロフィール)”が埋まり、それによって新たなイベントが発生していくという物語の構造が非常にうまいんですよ。アドベンチャーなのですが、プレイヤーによって起きるイベントや手に入るスキル(議論中に使えるコマンド)の順番。特記事項が埋まるタイミングもまったく異なります。プレイヤーの性別や選択肢、議論の勝敗でも展開が変わり、クリアしても知らないイベントがあったりすることも……!?
周回して遊ぶことそのものがゲームとしてのおもしろさに繋がっていて、クリアまでのボリュームもたっぷり。1つのループ自体は15分程度でサクッと終わるのに、密度が高い! サクサク遊べて、ボイスもついていないのにクリアまでには30時間くらいのボリュームがあります。
15分程度の短いプレイと驚くようなイベントや展開があって、決して長くも短くも感じません。逆にハマり過ぎて物足りなくなるかも。
人狼ゲームのシステムも完成度が高い!
ループ物としてもおもしろいのですが、なによりもゲームの根本を支える“人狼ゲーム(議論)”のシステム自体がしっかりしているのも特徴です。本作では、いわゆる人狼ゲームの1プレイが1つのループになっており、敵であるグノーシアを見つけだして勝利するか、自分が投票されたり、グノーシアに消されたりして敗北すると1つのループが終わります。
実際に議論を行う“議論パート”と、議論が終了したあとに1日の空いた時間でキャラクターとの交流やプレイヤーの強化を行う“移動パート”が存在。1日の終わりにグノーシアに消されることがなく生存できれば、再び“議論パート”でグノーシアを探すことになります。
議論では、発言可能な回数の中で黙っているか発言するかを選びつつ、場の流れを誘導していくことに。プレイヤーは「疑う」、「かばう」といったコマンドを使えるので、それらを駆使して発言しながら、疑わしい人物に票が集まるように議論を誘導していきましょう。
ただし! 発言し過ぎて目立ちすぎると逆に疑われてしまいますし、引っ込み過ぎても疑われてしまいます。ただ誰かを疑っているだけでは勝てず、協力し合ったり騙し合ったり……。疑心暗鬼になりながら、AIと本当に議論をしているような感覚になれるのです。
本作はただの人狼シミュレータではないので議論中にハプニングが起きたり、くだらない雑談をしたりといった要素があるのも楽しいところ。疑うべき乗員たちですが繰り返し遊んでいくうちに性格や行動も読めてきて、感情移入できるイベントも発生するので気がつくと愛着が沸いてくるんですよ。
しかし! たとえ、仲よくしていた乗員たちでも本当はグノーシアかもしれません。誰が誰を疑っているのか、誰の発言が怪しいのか、よく考えながら推理しつつ、コマンドを使ってうまく議論の流れを誘導していかなければなりません。そして、発言できる回数が終わると“投票タイム”に突入。ここで、一番票を集めた人がコールドスリープで凍結されます。
もし間違った人を凍結していた場合でも、1つのループが終わるまで結果はわかりません。逆に、自分がグノーシア側やバグ(本作における敵の1つ)、AC主義者(人間なのにグノーシアの味方をする役割)だった場合は、投票が集まると敗北になります。実は本来の人狼ゲームと違って、本作では自分が生き残ることが重要。さらに、イベントを進める場合は特定の人物と一緒に生き残る必要もあります。
イベントを進めるための特殊な条件下で、どう生き残るかを考えるのもおもしろいところですね。アドベンチャーとしての大きな物語を支えるイベントと、純粋に楽しめる人狼ゲームシミュレーターとしてのシステムが絡み合い、何度遊んでも新鮮に楽しめます。
ループ物としてのストーリーも秀逸!
具体的なことを書くとネタバレになるので避けますが、本作の一番の見どころはストーリー。人狼ゲーム部分もおもしろいのですが、システムと密接に絡み合って進んでいく物語が最高です。
ループしながら新しいイベントを探して、やがてそれがラストへと収束していく。その過程で起きるイベントの順番も違いますし、プレイスタイルによっては見つけられないイベントもあります。遊ぶ人によって、進行具合もキャラと仲よくなる(特記事項が埋まる)順番も変わるので、何度遊んでも楽しいんですよ。なかには、特殊な条件で起きる隠しイベントも……!?
遊び終わったあとは、きっと誰かにオススメしたくなる。『グノーシア』は、そんな心に残る作品なのです。「人狼ゲームが苦手……」という人も、アドベンチャーとして楽しめると思うのでぜひ遊んでみてください! 今ならSwitch版がオススメですよ!!
(C)Petit Depotto.Publishing by mebius.
(C)2020 Petit Depotto.
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『グノーシア』
- メーカー:メビウス
- 対応端末:PS Vita
- ジャンル:アドベンチャー
- 配信日:2019年6月20日
- 価格:2,526円
- ※開発:プチデポット
『グノーシア』
- メーカー:プチデポット
- 対応端末:Switch
- ジャンル:アドベンチャー
- 配信日:2020年4月30日
- 価格:2,750円