【コロナを生き抜く】元ヒーローの敵役・神威杏次監督に聞く緊急事態宣言解除後の撮影の苦労とは
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- 電撃オンライン 終末のバンギア
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二面性がコンセプトの新機軸音楽ユニット“終末のバンギア”(以下、バンギア)がレポーターを務める、特撮に関連するインタビューレポート。
7月より新たなテーマとして、新型コロナウィルスの影響により、生活様式や活動形態などの変更を余儀なくされている特撮関係者に「どのように過ごし、どのように生き抜いているのか」そして「どんな活動をしているのか」をテーマにインタビューをしてお届けしています。
今回は、前回に引き続き、特撮ヒーローの敵役を数多く演じられた神威杏次さん(以下、神威さん)にお話しをお伺いしています。神威さんの紹介は、前回の記事をご参照ください。
神威さんは現在、監督として映画を製作されており、最新作『スモーキー・アンド・ビター』では新型コロナウィルスの影響で、撮影や上映会イベントの仕様変更を余儀なくされるなかでも、上映会の成功に向けて前進していらっしゃいます。
そんな気になるお話をいろいろお伺いすることができましたので、今回はそちらの後編をお届けいたします。
最新作『スモーキー・アンド・ビター』とは
神威さんは2018年より、ご自身が監督を務めた映画を製作され、個性的な作品を世に送りだしています。今回、最新作となる『スモーキー・アンド・ビター』では、クラウドファンディングにて支援を募り、目標金額を上回る115%達成のもと製作が開始されました。
本作は、神威流となる独特の作風と世界観の“ハードボイルド”で仕上げられており、“sideA”と“sideB”の2話オムニバス形式となっています。
ふたつの物語は、同じテーマとメッセージを共有しながらも、それぞれ独立した作品として綴られており、“sideA”はライトなノリの“無国籍”なハードボイルドに。“sideB”は“邦画風”なガチガチなハードボイルドとして仕上がっています。
気になる特撮系のキャストの皆さんですが、“sideA”では、『地球戦隊ファイブマン』の銀河剣士ビリオンを演じられた“工藤俊作”さんが主役を演じています。
また、警部というシブい役どころで『人造人間キカイダー』ジロー役などを演じられた“伴大介”さんもご出演されています。
“sideB”では、前編のインタビューでもお話しが出た『科学戦隊ダイナマン』ダイナピンク/立花レイ役などを演じられた“萩原佐代子”さんが主演。
そのお兄さん役として『仮面ライダーJ』瀬川耕司役などを演じられた“望月祐多”さん(祐は示に右が正式表記です)。
元精神科医でバーの経営者という変わった役どころとして『世界忍者戦ジライヤ』磁雷矢/山地 闘破役などを演じられた“筒井巧”さんが出演されています。
まったくテイストの異なるふたつのオムニバス作品からなる『スモーキー・アンド・ビター』。9月12日(土)のプレミア上映会が楽しみです!
元ヒーローの敵役・神威杏次 監督に聞く“新たな作品への挑戦”(後編)
ここからは、前回の続きとなるインタビューの後編をお届けします。制作のタイミングで新型コロナウィルスの影響を大きく受けてしまった『スモーキー・アンド・ビター』。神威監督はどのように進めていったのでしょうか……。
前回の記事を読まれていない方は、まずはそちらからどうぞ。
――筒井巧さんはどんな役ですか?
神威さん:筒井さん(※)はですね、脚本上は精神科医なんですよ。はじめは、ザ・筒井さんな感じで描いていて、淡々と説明をするような役柄だったんですが、筒井さんと話しをして、もっとおもしろくしたいですねってことになって。
イメージとしては白衣を着てまじめな感じのシーンだったのを、すっごい派手なBARのシーンにして、筒井さんはピアス三つくらいつけて、色付きの眼鏡に派手なスカーフ付けているようなキャラクターに変えて、元精神科医で、何か悪いことをしていまは医師免許を剥奪されて、BARをやっている人という設定にしました。
映画でその設定はそこまで細かくは描いていませんが、そういう悪い男を筒井さんも楽しんで演じてくれていました。
※『世界忍者戦ジライヤ』磁雷矢/山地闘破役などを演じられた筒井巧さん
――だいぶ怪しい役柄ですね(笑)おもしろそう。伴大介さんはどんな役でしょうか?
神威さん:伴さん(※)は、警部の役です。伴さんはみんなが思うような伴さんだと思います。出演シーンは少ないのですが、重要なポイントとなる役柄で、すごい長ゼリフをしゃべっていただいています。
※『人造人間キカイダー』キカイダー/ジロー役、『イナズマン』イナズマン/渡五郎役などを演じられた伴大介さん
――おぉ。とても楽しみです!
新型コロナウィルスの影響は……
――今回の映画撮影に際して、新型コロナウィルスでの影響は受けましたか?
神威さん:緊急事態宣言が4月7日からでしたよね。まさに撮影予定が4月前半からだったんですよ。ちょうどクランクインの時期と重なってしまって……。
僕の映画って、去年とかはフライング気味に情報をどんどん出しながらやっていたんです。準備段階から興味を持っていただきたいと思っていて。
でも今回は、キャストさんの事務所との兼ね合いもあって、準備などは極秘に進めようと決めていたんですね。
それもあって撮影時期などは公表していなかったのですが……新型コロナウィルスのニュースが出るようになってから、これは先に進むほど映画を撮るのが厳しくなっていくのではないかと感じて、前倒しして3月頃から少しずつカメラをまわしながら様子を見ていたんです。
でも緊急事態宣言が出て、これはヤバいと、そこで一度撮影を中断しました。
――緊急事態宣言の期間中は、どう過ごされていましたか?
神威さん:撮影はまったくできなかったのですが、半分は撮れていたので、編集作業をしながらステイホームしていました。
――緊急事態宣言が解除されてからの撮影はどのように進めたのでしょうか?
神威さん:それぞれの事務所の方々に新型コロナウィルス対策についての話しをして、撮影に関しての許可をいただくことからはじめました。
今回メインキャストが4日間くらい千葉に通って撮影をしたのですが、その日の撮影に参加する全メンバーが6人くらいだとしたら、ロケバス1台で行けるところを、車を3台に増やして、2人ずつで乗っていけるようにしたりしました。
あと、連日撮影が続くときは、極力移動を減らした方がいいだろうと考えて、全員ホテルに泊まってもらったりとか。
撮影中はどうしてもキャスト同士が近くなってしまうことはあるけれど、せめて外部とは接触を避けられるようにできるだけ徹底しました。
それで、元の予定よりだいぶお金は飛びましたね……少なくとも20万円くらいは予算オーバーしました。あとは責任感に対するプレッシャーが辛かったですね。
もし誰かが新型コロナウィルスにかかってしまったらどうしよう……って怖かったです。
――いくら対策していても不安は拭えないですよね……。
神威さん:そうなんですよ。撮影が終わってから、久しぶりにキャストを集めての試写会をしたのですが、そのときは、定員30人のミニシアターに11人くらいだけ集めて……新型コロナウィルス対策のガイドラインに沿ってはいるとはいえ、果たしてこうして人を集めていいものか、ってそのときもいろいろ悩みました。
――主催としての心労が大きかったのですね。キャストのみなさまの反応はどんな感じだったのでしょうか?
神威さん:自分を入れて19人のメンバーで撮影をしていたのですが、役者のみなさんは理解をしてくれて……でももしかしたら、正直中止してくれないかなって思っている方もいたかもしれないのですが……最後まで僕のわがままに付き合ってくれて、感謝しています。
もうクラウドファンディングもしているし、公開の会場も決まっているので、なんとか撮り終えたい、リターンを送り終えたい、という気持ちは強かったですね。
――神威さんは、ご自身が出演するシーンは自撮りをされるそうですが、どうやって自撮りされているのですか?
神威さん:スマホの自撮りと一緒ですよ。カメラをフィックスで置いて、スタンドイン(代わりの人)に入ってもらって、カメラ位置を調整してから自分が入って、モニターをくるっと見えるようにして、撮っています。全裸監督ならぬ、自撮り監督です(笑)。
撮影中は時間がないこともあって基本的に手持ちで撮影しているのですが、自分のシーンだけ自撮りでカメラをフィックスで置いて撮影するので、自分の出ているシーンだけ安定していて妙にいいシーンになるなんて副産物が産まれたりしています(笑)。
でも今回は、自分のシーンを尼崎で撮ったのですが、そのシーンは珍しくカメラマンに入っていただいて、撮ってもらっていますけどね。
悪役をしていた経験がいまの活動に影響したこと
――役者時代、悪役をされていたころの経験が、いまの監督としての活動に影響しているような部分はありますか?
神威さん:そうですね……悪役として、そういうキャラクターとしての目立ち方、それぞれの役者のキャラクターを生かすにはどうしたらいいかという演出的な面ではもちろん生きていますよ。
自分自身が悪役キャラとして生かしてもらっていたこともあって、役者としてやってこられたという感謝がありますし、おもしろおかしく使っていただいたからいまがあると思っています。
若い役者さんに対して、自分がやりたいことじゃなくて、いま自分には何を求められているのかを考えたほうがいいよとアドバイスができたり、本人が納得いっていなくても、この子はこの方がきっといいと確信もって演出できたり……。
役者をやっていた当時、なんで自分をこんな撮り方するんだろう? こういう使い方されるの嫌だなぁ……と思っていたものでも、何年か経ってみると、そのシーンがいいと言われることもあったりするんです。
そういう意味で、悪役というキャラクターをやってきたことは、いま監督としての演出にいかされているかなと思います。
――今回、新型コロナウィルスの影響を受けてご自身の活動にも影響を受けていたりして、心持ちの部分でなにか変化したことや強く感じたことはありますか?
神威さん:あまりこういうこと言うとよくないのかもしれませんが……新型コロナウィルスは人間にとってのリトマス試験紙のようだなという感じはしましたね。
人間性がよく見えるテストになってしまったなと……新型コロナウィルスに対する考え方であったりとか、人間性がお互いに垣間見える状況が増えたような気はしますね。
でも、悪いことばかりではなくて、例えば配信ライブが増えていくなかで、改めてやっぱり生のライブがいいなと逆に見直すことができていたり、人と人が会えることって大事なことだなって再確認できるいい機会になったと思っています。
――最後に、映画『スモーキー・アンド・ビター』のみどころについて教えてください。
神威さん:今回は、特撮ヒーローをされていた方々が出演するということ。あとは、いままでできなかった、ガンアクションなどにも力を入れていて、娯楽性が高まっているので、なにも考えずに楽しく観ていただける作品になっているかなと思います。
いままでお世話になってきた特撮ファンの方々にも、元特撮ヒーローたちの違った一面を観てもらいたいですし、それを楽しみにしていただけたら嬉しいですね。
――ありがとうございました。
9月12日(土)のプレミア上映会にまだ間に合います!
神威監督最新作『スモーキー・アンド・ビター』の上映会が、9月12日土曜日に東京都杉並区の"座・高円寺2"で開催されます。こちらの公演、豪華キャストメンバーによる舞台挨拶つきとなっております。
今回の公演では、東京都杉並区の"杉並区新しい芸術鑑賞様式助成事業"として認定されていおり、杉並区の指導のもと、正しい新型コロナウィルス対策を持って開催されます。
現在、座席の予約を受付中となっていますので、今回の記事を読んで興味を持った方は、ぜひ観覧してみてはいかがでしょう?
『スモーキー・アンド・ビター』プレミア上映会
2020年9月12日(土)東京都杉並区“座・高円寺2”
1回目:開場11:00/開演11:30
2回目:開場14:30/開演15:00
3回目:開場18:00/開演18:30
<舞台挨拶・登壇予定>
工藤俊作、平塚千瑛、萩原佐代子、筒井巧、中川ミコ、緒方夏生、環みほ、香月あや、蜂谷英昭、萩田博之、坂本三成、、加賀谷崇文、神威杏次 ほか
※スケジュール調整中の方もいます
※新型コロナウィルスの情勢により予定は変更される場合がございます
チケットのご予約や、詳しい情報は専用ページをご参照ください。
今回の取材は“セブンズバー”にご協力いただきました
今回の取材では、『地球戦隊ファイブマン』ファイブブルー/星川健役などを演じられた信達谷圭さんのお店“セブンズバー”を使用させていただきました。
現在、お店は東京都の要請と指示にしがたい正しい対策を持って営業されています。この8月で10周年を迎え、新型コロナウィルス対策も兼ねて店内のリニューアルも施されています。
ファンにとってはたまらない展示もありますので、機会がありましたら訪れてみてはいかがでしょうか
“セブンズバー”
最寄り駅 大岡山駅
現在の営業時間(新型コロナウィルスの状況で変更されます)
15:00~22:00
カフェタイム18時まで
バータイム18時より
定休日:水曜日
都合により営業時間が変更される場合があります。
営業などの状況はTwitterアカウントをご参照ください。
バンギアのふたりがそれぞれ140文字で締めくくる!
いかがでしたでしょう? 神威さんのインタビュー。新型コロナウィルスの影響のなか、いろいろなことに取り組み進んで行くお姿はいろいろと勉強になります。
コロナ禍で自身の計画の変更を余儀なくされる方は多くいらっしゃいます。そんななか、少しでも今後のヒントとなるようなお話をお伺いして、お届けする……そんな思いで、引き続きこのテーマの記事を担当させていただければと思います。
それでは今回のレポートの最後として、いつものようにバンギアのふたりがSNS時代ならではの140文字以内という縛りで、それぞれ締めくくりたいと思います。
バンビ(ボーカル)の締めくくり
特撮作品の悪役の方にインタビューをするのは初めての試み。神威さんは強面でキリッと写っていらっしゃる写真が多く、お会いするまで正直ヒヤヒヤでした。でも実際は笑顔がステキで優しい方。製作・監督・脚本・出演と何でもこなす多才さも相まって、"ハードボイルド"が似合う方だなと惚れ惚れします。
ルギア(ギター)の締めくくり
悪役を演じる方にお会いしたことが何度かあり、皆さん紳士でもの腰が柔らかく、そのギャップでよりその方を好きになってしまう。強面の方は第1印象で怖がられるため、より一層気を使うのではないだろうか……。表面が怖い人ほどじつは優しくなり。その逆もしかり……そんな内面を描ける方なのだと思う。
バンギアからのお知らせ
横浜市の18区をキャラクター化して地域を紹介するとともに活性化に繋げる、市民発の民間プロジェクト“Yocco18”と“終末のバンギア”のコラボが実現し、横浜市鶴見区のキャラクター“生見尾つばさ”の歌をバンギアが手掛けました。
“白ばん”、“黒バン”の2曲があり、そのどちらもフリー音源として発表させていただきましたので、よろしければ聴いていただき、機会がございましたらぜひとも活用してください!
●『生見尾つばさの歌 白ばん』
●『生見尾つばさの歌 黒バン』
・楽曲の使用などについては“終末のバンギア”の公式サイトを参照してください。
“終末のバンギア”プロフィール
ボーカル:bamvi(バンビ)
ギター:LUGIA(市野ルギア)
二面性音楽をコンセプトにした新機軸の男女音楽ユニット。ラジオ・司会・ボイスCMなどの仕事を中心に、舞台や地上波テレビ、映画などの俳優としても活躍していたバンビと、『ファミ通』などのゲーム系編集記者として活躍しながら、数々のゲームタイトルとミュージックコラボを果たした、市野ルギアが2019年2月に結成。
そのサウンドは「白か?黒か?」。電撃オンラインのネット番組“電撃四天王(3人)の対決Showdown”の主題歌を担当。また電撃オンラインの特撮系突撃リポーターも務める。ラジオ番組『原田篤の男旅2020 今度は車で日本一周!!』エンディング主題歌担当。新たに楽曲提供させていただけるコラボ先も絶賛募集中です!
▼ラジオ番組『原田篤の男旅2020 今度は車で日本一周!!』エンディング主題歌『太陽の旅人』
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