問題シーンだらけ。名声を極めし者アーギュストの話を掘り下げます!(重大なネタバレあり)【オクトラ大陸の覇者シナリオ秘話インタビュー5】

タダツグ
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 スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』の開発者インタビューをお届けします。

 本作が2月4日に配信100日を迎えたことを記念し、開発ディレクターの鈴木裕人氏とメインシナリオを担当された普津澤画乃新(ふつざわ かくのしん)氏へのインタビューを、複数回に渡ってお届けします。

※ストーリーのネタバレが含まれますので、ご注意ください。

サイコキラーでマーヴェラスが大人気! “名声を極めし者”の魅力

――では、3つのシナリオの中でとくにユーザー人気が高いといわれる“名声を極めし者”編についてお聞かせください。普津澤さん、このシナリオでとくにこだわった部分などはどのへんですか?

普津澤:先ほど簡単にご説明しましたが、アーギュストの物語はヘルミニアやタイタスとは読み味が異なるサイコサスペンスものとして書きました。最初に思い浮かんだのは「マーヴェラス!」というセリフなんですよ。

――出た、マーヴェラス! アーギュスト個人どころか、『大陸の覇者』という作品を代表するセリフになっている感はありますね(笑)。

普津澤:キャラ像がまったく出来てないところから、“マーヴェラスと口にしながら人を殺すヤツ”というアイデアが降ってきまして、そこから始まりました。

 当初、このアイデアを鈴木に話したときはあまり感触が芳しくなくて。「マーヴェラスって言葉はわりと普通に思えるから、もっと別のものにしませんか?」と言われた記憶があります。

鈴木D:そうでした。

普津澤:でも、イメージを固めていくうちに“マーヴェラスでいいんじゃない?”ってなってきて……。

鈴木D:だんだんと癖になってしまって(笑)。

普津澤:初期の段階で、鈴木から“大どんでん返しを入れたい”という希望もありました、それを実現させるためにシュワルツというキャラが生まれ、最終的には1人の殺人鬼によって人生が狂わされていく人々の物語が出来上がりました。


















――“名声を極めし者”のシナリオのラストは、相当インパクトがありましたよね。アーギュストを演じていた代役の演者が天才というか変態すぎる。あれはアーギュストの指輪の力が影響したりしているのでしょうか?

普津澤:いいえ、指輪はそこまで万能なものではないです。それだけアーギュストを演じていた役者が神がかっていたとお考えいただければ。

鈴木D:ちなみに構想の段階では、アーギュスト本人と役者が演じているアーギュストで、声をあてる声優さんを変えようかとも考えていました。

 ただ、そうするとプレイヤーさんもすぐに気づいてしまい、シナリオのカタルシスはなくなってしまいます。悩んだ結果、神がかった演技力を持ちながらもアーギュストに心酔している役者であれば、当然声すら真似るだろうということで、声優さんは変えないことに決めました。

――浪川大輔さんの演技は最高でしたね。現場でもノリノリで演じておられたのではないですか?

鈴木D:そうですね。浪川さんの演技こそ、神がかっていました。想像のはるか斜め上の演技というか、120点の演技をしていただいたので、本当に感謝しています。

普津澤:ご本人から「演じていて楽しかった」とおっしゃっていただけたのもうれしかったですね。

――あのシナリオではアーギュストのみならず、フランセスカからも地味にダメージを食らいました。具体的には、毒を飲んだミハエルとアーギュストの2人に対し、フランセスカが持つ解毒薬は1つだけというシチュエーションで、彼女はどちらに解毒薬を使うのか……というシーンですね。

普津澤:ああ、あそこですね……。


――王道的なシナリオであれば母としての自分を優先し、息子であるミハエルに解毒剤を渡すと思うんですけど。まさかアーギュストを選ぶとは。でもって、そのあと彼女と戦うことになるとは!

普津澤:あれは本当にギリギリまで書けなくて悩んでいたシーンなんですけど、締め切り当日になって「これしかない!」とアイデアが固まり、あっという間に書き上げました。

 鈴木からも「今までで一番いいですよ!」って褒められた記憶があります。

鈴木D:あのシーンを「今までで一番いい」と言ってしまう自分も、サイコパス感が出てなんだか嫌ですね(苦笑)。

一同:(爆笑)

普津澤:なんかもう、みんなのテンションがおかしくなってましたよね。「もっとだ、もっと絶望を寄越せ!」みたいな感じで。

 僕はスマートフォンのゲームってもっと明るいストーリーのほうが好まれるのかなって思い込んでいたんですけど、鈴木がことあるごとに「暗い話を、ひどい話を」ってオーダーしてきたので、それに応える形でどんどんエスカレートしてしまったという経緯があります。

――結果的に、アーギュストに引っ張られてみんな精神的に狂っていってしまった感はありますよね。

普津澤:狂気が感染していきましたね。

――ちなみに、普津澤さんがシナリオを書いた順番はどうなっているんですか? やはり“富を極めし者”からスタートして、“名声を極めし者”、“全てを極めし者”の順になっているのでしょうか?

鈴木D:いや、実はゲーム内の流れとは逆になるんですけど、最初は“全てを極めし者”から書いてもらったんですよ。そのあと“富”、そして“名声”の順でしたね。

――ものすごく腑に落ちました。これまでに培ってきたものがここで爆発したというか、ノウハウが結実したというか。

普津澤:ゲームをプレイしていただければおわかりいただけると思うんですけど、最初に作った“全てを極めし者”編のボスであるパーディスは、他のボスに比べて人間として一番普通なんですよ。

 お話としてはハードな面もありますけど、まあ、リアルなクズだよなって。

 そこからヘルミニアを経てアーギュストにたどり着いたことで、最もイッちゃったヤツが誕生してしまったわけです。

――狂気が少しずつ熟成された結果がアーギュストだったわけですね。納得です。

鈴木D:ちなみにここでネタバレしてしまいますと、最初は“全てを極めし者”編を“権力を極めし者”編という想定でシナリオを書いてもらっていたんですよ。

 さらにいえば、“富を極めし者”も“名声を極めし者”も8章仕立てにする構想がありました。

 ただ、“全てを極めし者”のシナリオができあがった段階でものすごいボリュームになっていたこともあり、この量ですべてを作ろうとすると時間がかかり過ぎるし、何よりスマートフォンでゲームを遊んでいるユーザーにとって、最初に多すぎるボリュームだと受け入れづらいんじゃないかという懸念があったんです。

 なのでシナリオ的なボリュームは3章に押さえて、代わりにより際立ったボスたちを物語の中心に立てていく方向に舵を切り、今のような形に落ち着いた経緯があります。

――その方向修正の結果、ヘルミニアやタイタス、そしてアーギュストのキャラクターが立ったのだと考えると、英断だったといえそうですね。一方、パーディスは富、権力、名声のすべての欲望を内包することになり、毒性は中和された部分はあるかもしれません。結果、どうしようもないドクズになっちゃいましたけどね。“名声を極めし者”編に関するお2人のお気に入りシーンはかなりネタバレにも関連するということで、次回のインタビューでお聞きします!

『オクトラ』シナリオ秘話インタビュー

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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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